――――異世界シェオーリア。魔王バァル・ベオルの城塞。  
 
「ふぁう・・・・うぅう・・・・はぁくぅううッ・・・・!!」  
 
これまで、嫌というほど思い知らされてきた逞しい男根が、涼子の膣へと押し入ってきた。  
太さも熱さも硬さも、亀頭の形も、輪口のくびれ具合も、すでに馴染みの感覚となっている。  
 
(ダメなのに・・・・イヤなのに・・・・あああッ・・・・で、でも・・・・!!)  
 
ずぅん、と体重を乗せて一気に貫かれると、  
肉襞の一枚一枚が燃え上がるような喜悦に打ち震え、  
子宮の奥から、じゅるじゅるとした愛汁が勢い良く溢れ出して来る。  
捏ね回すような腰の動きに媚肉が攪拌され、  
雄々しく張り出した肉キノコのエラに繊細な粘膜が磨り潰されていった。  
 
(感じる・・・・感じちゃうッ!!くぅッ・・・・くはあああッ!!)  
 
槍先に突き回される膣奥に熱い感触が弾け、  
圧し歪められた子宮の中身がグラグラと煮え滾っていく。  
規則正しいリズムを刻む肉棹に絡みついた壷口からは、  
卑猥な水音の伴奏付きで半透明な蜜が溢れ出し、シーツの上に大きな水溜まりを作っていた。  
 
「フフッ、射精しますよ、母上。しっかりと受け止めて下さい」  
 
未だ声変わりを迎える前の、ボーイ・ソプラノの美声が、涼子の耳朶に突き刺さる。  
びくん、と身体を震わせたポニーテールの少女に邪悪な微笑を投げかけるのは、  
自分より5、6歳年下にしか見えない少年――――イオ。  
強大な魔力でシェオーリアの覇権を握った、魔王バァル・ベオルと、  
彼に戦いを挑んで敗れ、奴隷の身に堕した、<レヴィアスの戦士>涼子との間に生まれた、闇の王子である。  
 
やや短めに切り揃えたプラチナ・ブロンドの髪が良く似合う、整った面立ちは、  
まるで水晶の塊を彫り込んだかのように美しかったが、  
血の色をしたその瞳は凍てついた光を湛え、邪悪な知性に満ち溢れていた。  
すらりと伸びた手足は未だ少年期の瑞々しさを保っているが、  
実の母親の胎内に突き入れられた肉の大槍は、  
大の大人も、かくや、と思われるほどに、太く、逞しい。  
 
・・・・その巨根が、涼子の膣穴の中で、びゅくんッ!!と大きく弾けた。  
 
「そぉら、出てますよッ!!  
母上が私を生んだ穴にッ!!生まれる前の私が過ごしていた暗渠の中にッ!!」  
 
沸騰した濁流が、トロトロに蕩けた肉襞を舐め尽くしていく。  
燃えるように赤く染まった粘膜が真っ白な飛沫に塗り潰されていくにつれ、  
しなやかに伸びた手足が、ピーン、と突っ張り、感極まってガクガクと震え始めた。  
一瞬、閃いた驚愕の表情が、たちまち恍惚に染まり、淫らな欲情に流されていく・・・・。  
 
「あふぁぁぁッ!!・・・・ぁあんッ・・・・ひぐぅあああッッッ!!!!」  
 
白濁した精汁をドクドクと流し込まれる膣孔は、  
溝という溝、襞という襞全てに、透明な蜜を滲ませ、  
あさましく波打ちつつ、猛り狂う怒張をしゃぶり立てていた。  
粘り気を増した愛液と注ぎ込まれる精液とが交じり合い、  
擦れ合う淫肉の狭間でジュプジュプと卑猥な音を奏でながら、割れ目の外に溢れ出していく。  
 
(あああ・・・・ダメェ・・・・ダメなのぉ・・・・!!  
堕ちてしまう・・・・ガマンできないの・・・・もう、だめぇェェェッ!!!!)  
 
深紅のポニーテールを振り乱しつつ、裏返った声で悲鳴を上げる<レヴィアスの戦士>。  
圧倒的な性の快楽が、僅かに残った理性を押し包み、咀嚼してしまう。  
魔王との戦いに敗れて以来、昼となく夜となく、何百回も味わわされてきた、  
最低最悪の敗北感と無力感、そして、絶望が、  
涼子の心を漆黒の闇で覆い尽くし、<戦士>としての力を削り取っていく。  
 
(・・・・お、お願い・・・・たすけて・・・・誰か・・・・!!  
このままじゃ・・・・あたし・・・・あたし・・・・!!)  
 
 
 
夢幻界。ヴァニティ城。幻想王女ヴァルナの居室。  
 
「どうして、ダメなんですかッ!?」  
 
よく整った・・・・だが、見る角度によっては、あどけなさも少し残っているようにも映る顔面に、  
驚愕の色を浮かべつつ、猛然と目の前の人物に食ってかかる少女――――朝霧陽子。  
後頭部ではなく、頭の左側で結んだ、紅いポニーテールが勢い良く揺れ、  
両肩から張り出した、濃紺色の防具が、ガチャガチャと騒がしい音を立てる。  
 
「ヨーコの言うとおりだよ、なんで助けに行っちゃいけないの?  
あたしたち、<戦士>の仲間が苦しんでるのに・・・・!?」  
 
<レダの戦士>の横で息巻くのは、  
惑星ラルの王女にして、王家に伝わる聖剣<リバースの剣>を操る事の出来る唯一の剣士、キャロン。  
最近になって、つとに女性らしさを増してきたルックスとは異なり、  
頬を、ぷぅっ、と膨らませ、唇を尖らせるその表情は、  
自らの出生の秘密を知る以前のお転婆な村娘時代のものとほとんど変化が無い。  
 
「・・・・お、お二人とも・・・・あの・・・・そのお気持ちは・・・・とても良く分かる・・・・のですが・・・・」  
 
二人の<戦士>に詰め寄られて、  
部屋の主――――夢幻界を統治し<明>の力と調和を司る、女王ヴァルナは、  
困惑しきった表情を浮べ、しどろもどろになりながらも、必死に説得を試みていた。  
数千年の永きに渡って暗黒界と対峙し、三界のバランスを維持し続けてきた、偉大な先代と異なり、  
ヴァニティの玉座に就いてから殆ど間の無い彼女は、未だ統治者としては未熟であり、  
誠実さだけは人一倍だったが、自らを韜晦し人心を巧みにコントロールする術は会得していない。  
 
「仕方ないのよ・・・・彼女の場合は」  
 
見かねて口を挟んだのは、  
ヴァルナの側近にして直属のエージェントたる、<ヴァリスの戦士>桐島麗子。  
何か言いかけたヴァルナを、ラベンダー色の双眸の一瞥で沈黙させると、  
陽子とキャロンに向き直り、ゆっくりとした口調で説明を開始する。  
表情も態度も、決して威圧的という訳ではないのだが、  
こういう時の彼女は、抜き放たれた真剣を連想させるような、近付き難い雰囲気を漂わせていた。  
 
「・・・・涼子の場合、シェオーリアという世界の、レヴィアス神という女神、  
――――要は、シェオーリアにおいて、<明>の力、ヴァリスが顕現した存在なんだけど、  
彼女によって召喚され、<戦士>としての力を与えられたのよ・・・・」  
 
落ち着き払った、だが、ギリギリの所でイヤミに聞こえないよう、節制を効かせた語り口は、  
興奮状態にあった陽子とキャロンの心を、すうッ、と冷却させる効果があった。  
つい先程まで、ヴァルナに食ってかかっていたのが嘘のように、  
二人の少女は押し黙り、まるで教師に悪戯がバレた悪ガキのように、しゅん、となる。  
 
「・・・・でも、その時点で、すでにレヴィアス神の力は、  
魔王バァル・ベオル――――シェオーリアにおける<暗>の力、ヴェカンタの顕現――――に対して、  
全く太刀打ちできないほど弱体化していたの。  
涼子一人がどれだけ頑張ってもどうしようもない、絶望的な力の差が出来ていた、という訳。  
その結果、涼子は敗れ、囚われの身となって・・・・今も、責め苦を与えられ続けている・・・・」  
 
「・・・・でも、冷たい言い方かもしれないけど、それはシェオーリアと涼子の問題なの。  
『涼子が可哀相だから』というだけの理由で、私たち、外部の人間が介入する事は出来ないわ」  
 
「そんなッ!?」「ヒドイよッ!!」  
 
異口同音に発せられた非難の言葉に、わずかに表情を硬くする麗子。  
だが、夢幻界の<戦士>は、その程度の事で冷静さを失ったりはしなかった。  
 
「涼子の敗北は、シェオーリアという世界の根源的な部分で、  
<明>の力が<暗>の力に及ばなかったのが原因よ。  
それは、私たちにとっても、とても残念な事だけど、  
戦い自体は、多元宇宙を律している、<法則>に則って、公平に行われたものだわ。  
暗黒界側が、シェオーリア――――バァル・ベオルに対して直接的な支援を行っていたのならともかく、  
そうではない以上、その結果を覆すために、夢幻界が介入する事はルールに反するやり方なの」  
 
「良く分からないんだけど、麗子の言う、<法則>とかルールとかって、そんなに大切なものなの?  
前に聞いた話だと、そのヴェカンティって世界の人たちは、結構、平気で破ってるみたいだけど・・・・」  
 
麗子の説明に対して疑問の声を上げたのは、  
スレンダーな体躯を深紅の甲冑に包んだ銀髪の少女――――カナンの<銀の勇者>レムネア。  
陽子やキャロンと年齢的にはあまり変わらないのだが、  
捕囚の身となった恋人を探して、孤独で過酷な旅を続けてきた経験によるものだろうか、  
エメラルド・グリーンの瞳に浮かぶ輝きはずっと落ち着いたもので、  
何処と無くではあるが、目の前に佇む、黒い鎧の<戦士>に似た雰囲気を漂わせている。  
 
「ええ、そうよ。<法則>は大切なもの。  
・・・・より正確な言い方をすれば、守らなければならないもの、かしらね」  
 
<銀の勇者>の理知的な双眸の前に、曖昧な表現は通用しない、と判断したのだろう、  
麗子は、極めて明瞭な、かつ、それ以上に、率直な言葉を用いて説明を続ける。  
 
多元宇宙を構成する三つの世界・・・・夢幻界、暗黒界、現実界の在り様を定めた<法則>は絶対のものであり、  
特に、夢幻界または暗黒界の者が、現実界に対して直接介入を行う事は重大な禁忌とされている事。  
過去、これに反した場合には、例外なく、大いなる災厄  
――――例えば、大陸が一夜にして海に沈んだり、都市が大地の割れ目に飲み込まれたり、  
最悪の場合は、世界ごと亜空間に引き摺り込まれて消滅したり、等々――――に見舞われている事。  
にもかかわらず、暗黒界の者による現実界への干渉が後を絶たないのは、  
その災厄が、必ずしも、禁忌を冒した者の上に降りかかるとは限らないから、である事・・・・。  
 
「つまり、<法則>に従わず、現実界に介入すれば、確実にしっぺ返しを喰う。  
けれども、それは、必ず自分に跳ね返ってくるという訳ではなく、  
暗黒界の勢力圏に属する、全く関係ない場所に向かうかもしれない。  
だから、暗黒界の力ある者達は、自分さえ良ければ他はどうなっても構わない、と、  
現実界への介入を繰り返している、という次第なのね・・・・」  
 
一応の得心が言ったらしく、銀髪の少女は軽く頷き、麗子に礼を述べた。  
どういたしまして、と応じながら、ぐるり、と周囲を見回す、黒衣の<戦士>。  
さすがに、今の説明を聞いた<戦士>たちは黙り込み、反論を試みようとはしない。  
どす黒い欲望にまみれたヴェカンティの諸侯ならばいざ知らず、  
ヴァニティの加護を受け、<戦士>となった少女たちの中に、  
自分の目的を達するためならば、無関係な他者がどうなろうが構わない、  
などという利己主義的な考えを抱く者は皆無だった。  
 
「・・・・でも、涼子はともかく、ライディや麗夢をさらったのは、暗黒界の奴らなんでしょ?  
だったら、こっちが多少やり返したとしても、ルール違反にはならないんじゃないの?」  
 
唯一、(微妙に話題をずらしながらではあったが)食い下がってきたのは、  
豊かな黒髪を独特な形状に結い上げた、チャイナドレスの娘――――第108代魔物ハンター・真野妖子。  
同年代の少女たち・・・・  
それも、防具と言うよりも、金属製の水着か下着と表現する方が適切な、  
肌の露出を厭わぬ鎧を纏った者たちの間ではそれほど目立たないが、  
きわどいスリットの中からは、しなやかな美脚がチラチラと覗き、扇情的な雰囲気さえ醸し出している。  
 
「・・・・・・・・」  
 
嫌な質問が来たな、という表情を浮べた麗子は、  
背後にいる主君を振り返り、無言の問いを発した。  
決断を迫られ、不安の感情を面に出す、夢幻界の女王・・・・と、その時。  
 
「本当の事を、お話しする方が良いと思います」  
 
重々しく、だが、決然とした口調で言い切ったのは、もう一人の<ヴァリスの戦士>。  
今は亡き先王ヴァリアにより、その素質を見出され、  
暗黒王ログレスと残忍王メガスというヴェカンティの二大巨頭との死闘を制した、  
夢幻界、いや、三界最強と謳われる<戦士>――――麻生優子。  
 
「私たちは、みんな、大事な仲間であり、大切な友達です。  
友達同士で隠し事をするのは良い事とは思えません・・・・」  
 
あきれる程単純な理屈だったが、  
優子が口にするのと彼女以外の誰かが発するのとでは、説得力が桁違いだった。  
現実界の平穏な生活の中から、いきなり激烈な戦いの渦中へと放り込まれ、  
恐怖と孤独に責め苛まれながら、それでも、信じる心を失わなかった少女。  
その薄青色の瞳に見つめられて、良心の呵責を覚えない者などいる筈もない・・・・。  
 
「・・・・分かりました。真実をお話いたします・・・・」  
 
かすかに震える声で話を切り出す、女王ヴァルナ。  
一瞬だけ、何か言いたそうな表情になる麗子だが、  
彼女でさえ、じっと自分を見つめる優子の視線には勝てなかった。  
 
「・・・・実は、ライディと麗夢の失踪は、  
ヴェカンティの手の者の仕業では無い可能性があるのです・・・・」  
 
「ええッ!?」「そんなッ!!」「それって、一体、どういう事なんですか!?」  
 
居並ぶ<戦士>たちから驚きの声が次々に上がり、  
その中の幾人かは、食ってかからんばかりの勢いで、目の前の小柄な少女に詰め寄ってくる。  
慌てて間に割って入った麗子のお陰で事無きを得たものの、  
ヴァルナは顔を青褪めさせ、細い肩を震わせて、今にも泣き出しそうだった。  
やむなく、赤毛の側近が主の後を引き継ぎ、説明を続行する。  
 
「・・・・一番大きな疑問は、ライディと麗夢が姿を消したにも関わらず、  
二人の居た世界での<明><暗>のバランスは殆ど変化していない、という点ね。  
つまり、暗黒界側には、二つの世界を支配下に置こうとする動きは無かったのよ」  
 
「そんな・・・・ならば、どうして、ライディさんと麗夢さんは攫われたのです?」  
 
衝撃から立ち直り、真っ先に疑問の言葉を発したのは、  
短いケープの付いた純白の鎧を身に纏う、小柄な少女  
――――魔法の白鳥から力を借りて、怪物たちから臣民を守る、ララマザー芸術王国の王女・シルキス。  
同じ王女でも、幼少の頃から辺境の農民の子として育てられたキャロンとは異なり、  
王宮仕込みの物腰の柔かさと品の良い言動の持ち主で、集まった<戦士>達の中では珍しいタイプである。  
 
「それは、こっちが教えて欲しいぐらいだわ。  
世界を手に入れるため、というなら、一応の理由にはなるけど、  
そうではない、となると・・・・正直言って、皆目見当もつかない。  
だからこそ、あなた達、各世界に散らばっている<明>の庇護を受けた<戦士>に、  
ヴァニティ城に一時避難して貰う事に決めたのよ・・・・」  
 
厳密に言えば、これも<法則>に抵触しかねない行為なのだけど、と付け加えて、  
夢幻界の<戦士>は、シルキスを、そして、この場に詰めかけた少女達全員の顔を見渡す。  
打ち明けられた意外な真相に対する、彼女達の反応は各人まちまちで、  
衝撃を受けている者もいれば、困惑している者もいたが、  
少なくとも、麗子とヴァルナの口から語られた真実に疑念を抱く者はいないようだった。  
 
「・・・・これで、良いわね」  
 
ほっとしたような表情を浮べて、優子に向き直る麗子。  
未だ緊張したままのヴァルナに、もう心配ありませんよ、と優しく囁きかけながら、  
蒼髪の少女は、お疲れさま、とばかりに、ニッコリと微笑んだ。  
 
(・・・・まったく、いつまで経っても、優子にだけはかなわないわね・・・・)  
 
ほんの少しだけ、ほろ苦い想いを覚えながら、麗子も微笑みを返す。  
普段はおっとりとして、虫も殺せないよう性格なのに、  
一番肝腎な時には、誰よりも積極的に、そして、果断な決断を下す事の出来る彼女は、  
昔も今も、麗子にとって最大のライバルであり、同時に、最も感情を通い合わせる事の出来る親友だった。  
 
(優子だけは失いたくない・・・・そう、何に代えても・・・・)  
 
――――何処とも知れぬ地下の迷宮。魔性の炎が照らし出す、闇の祭祀場。  
 
「にょほほほほほッッッ!!」  
 
血の色をした狩衣を纏い、頭には黒い烏帽子を頂いた壮年の男が、  
あでやかな装飾を施された扇をヒラヒラさせながら、奇ッ怪な舞を舞い踊る。  
顔中に白粉を塗りたくり、唇には紅を点したその姿は、絵巻物の中に描かれた平安貴族そのもの  
・・・・だが、見開かれたその瞳には魔性の気が宿り、口元から迸る哄笑には狂気が滲んでいる。  
 
「ククク・・・・これまで、我ら鬼獣淫界を散々に苦しめてきた、天津の羽衣姉妹が、  
こうもあっさりと我が手に落ちるとは、まるで夢を見ておるようじゃ」  
 
「フフッ、お褒めに預かり、恐縮ですわ、時平卿」  
「・・・・では、あたし達は、次の仕事がありますので、これにて」  
 
暗渠の隅に佇んでいた二人組の少女が、囁くような声を発する。  
一人は、小柄な体を、黄金の縁取りのある真紅の甲冑で包んだ緑色の髪の娘。  
もう一人は、より肉付きが良く、扇情的とまでは言えないにせよ、十分官能的な肉体に、  
要所を金属製の防具で強化した、レオタード状の鎧を纏った赤銅色の髪の娘。  
いずれも、その表情は能面のように無機質で、ある種の妖気さえ漂わせていた。  
 
「おうおう、綾小路殿もらいでぃ殿も、此度はご苦労でござったの。  
お二方の助太刀のお陰で、忌々しい子守衆共も悉く狩り出され、淫魔大王さまの復活も順調。  
現し世を淫乱地獄へと作り変えんとする、我らが悲願の成就は目前におじゃる・・・・」  
 
淫乱の司祭――――鬼獣淫界を統べる魔王、鬼夜叉童子の化身たる、前左大臣・藤原時平の哄笑は、  
二人の<戦士>がその場を辞去した後も、止む事無く、響き渡るのだった――――。  
 
「フフッ、天津の巫女姉妹も大した事無かったわね」  
 
微笑を浮べつつ、隣を歩く<雷の戦士>に話しかけるのは、  
実際の年齢よりも少し幼く見られる事の多い、緑毛碧眼の少女。  
――――太古の昔より連綿と続く、祭祀民族<夢守の民>の末裔にして、  
人間の心の隙間に入り込み狂気を植えつける異界の住人<夢魔>から、  
人々を守るべく戦い続けてきた、<ドリーム・ハンター>綾小路麗夢。  
 
「亜衣、って言ったかしら、双子のお姉さんの方、ちょっと夢の中に侵入して内容を書き換えてやったら、  
ヒィヒィよがり出して止まらなくなっちゃったわ・・・・今頃は理性もドロドロに溶け崩れてるんじゃない?}  
 
・・・・だが、今の彼女には、  
異形の者共の魔の手から力無き者を守り抜いてきた、気高き<戦士>の面影は何処にも無い。  
むしろ、その双眸には邪悪な知性が宿り、  
己に備わった天賦の力を用いて、無辜の人間を嬲り抜きたい、という衝動がとぐろを巻いていた。  
あたかも、彼女自身が、今まで戦い続けてきた宿敵・・・・<夢魔>と化してしまったかのように。  
 
「アハハッ、男嫌いで通ってたみたいだし、案外、溜まってたんじゃないの?」  
 
けらけらと愉快そうな笑い声を立てながら応じたのは、  
麗夢とは対照的に、女性としての美しさと<戦士>としてのしなやかさを兼ね備えた、紅毛赤眼の少女  
――――悠久の昔から、人と魔族が果てしない闘争を繰り広げ、  
剣と魔法の叙事詩を紡ぎ上げてきた異世界、<エルス大陸>において、  
凄腕の女冒険者として鳴らしている、<雷の戦士>ライディ。  
 
「それにくらべると、麻衣、って妹の方は素直な娘だったわね〜。  
お姉ちゃんを助けてやる、って言ったら、拍子抜けするぐらい、あっさり降伏してくれたし。  
ま、それじゃ、つまんないから、電撃で少し遊んであげたけど・・・・」  
 
得意とする電撃の魔法から、前述の二つ名を奉られている彼女だったが、  
同時に、きっぷの良さと人情味溢れる性格で好感を集め、  
駆け出しの冒険者(特に同性)からは憧れの対象として意識される存在でもあった。  
・・・・だが、隣を歩く麗夢と同様、今のライディの瞳には、  
飽くなき闘争への渇望と共に、大地に這い蹲り慈悲を乞う敗者を心ゆくまで痛めつけたい、という、  
おぞましい嗜虐欲求がメラメラと燃え盛っている。  
 
「・・・・そう言えば、聞いた?  
夢幻界の女王が、<戦士>たちを集めてる、って話」  
 
麗夢の問いかけに、少し首を捻りながら答えるライディ。  
 
「アスカから聞いてるわ。どうやら、こっちの動きに気付いての事らしいわね。  
もっとも、アイツの話じゃあ、夢幻界の連中は例の<法則>って奴に縛られてるから、  
暗黒界側が優勢を保ってる世界にいる<戦士>たちには手が出せないみたいだけど」  
 
「フフッ、さすがは<変幻戦忍>ね」  
「ああ、エルス大陸にもいたけど、ニンジャってヤツらは、とにかく、地獄耳で、何処にでも入り込める。  
きっと今頃は、ヴァニティ城に忍び込んで、<戦士>共の中に上手く潜り込んでるんじゃないか?」  
 
いささか羨ましそうな表情になる<雷の戦士>を横目で見やりつつ、  
<ドリーム・ハンター>もまた、その光景を想像して、  
遥か時空を超えた場所にいる、くのいちの少女に想いを馳せる。  
 
「噂に聞く、<ヴァリスの戦士>がどれほどのものか、早く手合わせしてみたいよな〜」  
「二人いるみたいだけど、どっちが好み?わたしは、麗子っていう赤毛のコを頂くつもりだけど」  
「そうか。じゃあ、あたしは、優子の方を貰うよ。  
クククッ、楽しみね〜。あの綺麗な顔を、あたしの電撃で苦痛に歪ませてやるのが・・・・」  
 
 
 
――――――――TO BE CONTINUED.  
 

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