『――――うあぁ・・・・あああッ!!』
秘唇に食い込んでくる、荒縄の感触。
未だ完全に生え揃ってはいない、初々しい恥毛に飾られた割れ目が広がり、
鮮やかなピンク色の花弁が曝け出されていく。
『何をグズグズしているの、優子。さっさと前に進みなさいよ!』
ぴしッ、と、革鞭が打ち鳴らされて、『優子』と呼ばれた少女が、ビクン、と身をすくませた。
・・・・そして、非常にノロノロとではあるが、太ももの間に深く食い込んだ野太い股縄を手繰り寄せ、
一歩、また一歩、と、よろめくように歩き始める。
『ほら、立ち止まるんじゃないよッ!!コブを咥え込むんだ!!』
再び、鋭く鞭が打ち鳴らされる。
ううっ、と、くぐもった声を漏らすと、『優子』は、下半身に力を込め、
荒縄を結わえて作られた、握り拳ほどの大きさの結び目を、己自身の恥ずかしい場所で包み込んだ。
――――あうッ!!とくぐもった呻き声を漏らしつつ、頤を突き上げ、真っ白い喉元をさらす、蒼髪の少女。
身に纏っていた甲冑は、肘当てと脛当て、それに、腰周りを覆う丈の短いスカートを除いて、残らず剥ぎ取られ、
代わりに、丈夫な革紐が、形の良い乳房をはじめ、全身の急所をきつく締め上げている。
両腕は後ろ手に緊縛され、分厚い木製の手かせまで嵌められて、ピクリとも動かせず、
足元では、赤錆の浮いた鉄製の足かせが自由を奪い去っていた。
『ああッ・・・・んはぁああッ!!』
そして、何よりも、少女の五体の自由を封じ込め、抵抗の意志さえ萎えさせているのは、
秘裂の内側、サーモンピンクの襞の一枚一枚に丹念に塗り込まれた、強力な催淫液。
その効果は凄まじく、膣内はタバスコでも擦り込まれたかの如く、じんじんと火照り、
何百匹もの地虫が這いずり回っているかのようなむず痒さが下半身全体を覆っている。
――――魔液の効果はそれだけではない。
革紐によってきつく結わえられた二つの乳房はぐっしょりと生汗に覆われ、
桜色の乳首は、つん、と尖り切って、フルフルと小刻みに震えていた。
スカイブルーの双眸は妖しげに濡れて、
潤んだ眼差しが、股間に深々と食い込んだ縄目と、所々に作られた醜いコブに釘付けになっている。
口元はだらしなく半開きになり、はぁっ、あぁっ、という熱い吐息が、引っ切り無しに漏れ出していた。
最も恥ずかしく、大切な場所を、強くこすりつけながら、ゆっくりと縄の上を進んでいく『優子』。
通過した後の股縄には、半透明な恥蜜がねっとりと絡み付き、
腰の高さに張られた縄がミシミシと軋むたび、
コブを呑み込んだ下半身が貪欲にうねり、むっちりとした尻たぶが汗粒を撥ね上げながら揺れ動く。
『ほら、休むんじゃないッ!!次だ、次ッ!!』
少女の背後で革鞭を構えて、
ほんの少しでも体を休めようとするたびに怒声を張り上げ、
時には実際に、むき出しの背中に向かってしたたかな一撃を振り下ろしているのは、
年の頃ならば彼女と殆ど同じ年代の、やや赤みを帯びたブラウンの髪をサイドポニーに括ったスレンダーな娘。
緊縛こそされていなかったが、彼女もまた、胸と腰の甲冑を剥ぎ取られ、
やや小ぶりだが、形良く整ったバストと程よく引き締まったヒップとを露わにさせられていた。
『優子』と同じく、両肘に残されたラピス・ブルーの防具、それに、しなやかな脚部を包んだ同色のブーツが、
生汗の浮いた白い柔肌と絶妙なコントラストを描いて、淫猥さを引き立てている。
『ひはぁああッ!!』
突然、サイドポニーの少女が甲高い悲鳴を上げて、その場に崩れ落ちた。
見れば、こんもりと茂った逆三角形型の恥毛に覆われたクレバスから、
無数のイボイボが突き出した、ニガウリのような形状の張り型が半身を覗かせている。
随分と長い間、膣内に咥え込まれていたせいだろう、表面は大量の蜜に覆われ、
外に押し出された時の反動で、下腹部にも太腿にも、潮を吹いたかのような大量の愛液が飛び散っていた。
『・・・・ハァイ、残念でしたね〜。
我慢出来なくなっちゃったから、『陽子』、アナタにも縄を跨いで貰うわよ〜』
ふるふると肩を震わせながら蹲るサイドポニー娘に向かって、場違いな程に陽気な声が掛けられ、
彼女と同じく、胸と腰の甲冑を剥がされた女戦士たちが駆け寄ってくる。
そして、有無を言わせず、脱力した少女のカラダを抱き上げると、
張り型を引き抜き、太股を開脚させて、未だ愛液の湧出の止まらない秘裂に淫縄を跨らせた。
『ふあぁあッ!!だ、駄目・・・・下ろしてェッ!!』
責める側から一転して責められる側となった『陽子』が、
イッたばかりの身体をガクガクと震わせながら、情けない悲鳴を上げる。
つい先程まで、奇怪な張り型を根元まで咥え込んでいた花弁に、
媚薬をたっぷりと塗り込まれた縄目が深々と食い込み、擦り上げていく。
『くひぃッ・・・・ひあぎぃいいいぃッ!!!!』
『んうぁああッ!!き、気持ち良いよぉぉぉッ!!!!』
『優子』と『陽子』、裏返った二つの声が木霊し合った。
一方が荒縄を喰い締めた牝膣を淫猥に揺り動かすと、
その動きが伝わって、もう一方も、むっちりと盛り上がった尻たぶをぷりぷりとうねらせる。
『優子』の愛液をたっぷりと吸った結び目の上に、『陽子』の秘唇が重なり、
ゴツゴツとした表面を、二人分の蜜がいやらしく彩っていく・・・・。
『ああッ!!い、いやぁああんッ!!』
『優子』と『陽子』が股縄踊りを披露している傍らでは、別の淫舞が繰り広げられていた。
オレンジ色の髪の毛を後ろで括り、肌に張り付く真紅の戦衣を身に纏った娘が、
M字の形に開脚した姿勢で拘束されている太股の間、大きく横にずらされたクロッチの中に、
『陽子』に挿入されていたのと同形のバイブを咥え込まされて、激しく喘いでいる。
年の頃は、『優子』や『陽子』よりも若干下、およそ14、5歳といったところだろうか?
未だあどけなさを残した相貌に、エメラルド・グリーンの瞳が良く似合っている。
身に帯びているのは、彼女たちのような甲冑ではなく、短いショールの付いたレオタード風の戦衣だったが、
胸の部分は無残に破り取られて、まだ発育の途上にある事が一目で分かる、小ぶりな乳房が露わになっていた。
両腕は後ろ手に縛められ、割り開かれた太股も閉じる事が出来ないよう、きつく緊縛されている。
『やめてェ・・・・もうイヤ・・・・イヤなのォッ!!』
豊かなオレンジ色のポニーテールを打ち揺らしながら、
あられもない悲鳴を上げて泣きじゃくる半裸の少女・・・・『キャロン』。
未だ一本の恥毛も生えてはいない(その事は、彼女にとって密やかなトラウマとなっていたのだが)、
聖らかな谷間は、半透明な牝汁に濡れまみれ、
その真ん中では、ピンク色の真珠玉が包皮を割ってまろび出ようとしている。
『ああッ、お願いよ・・・・もう、こんな玩具なんかじゃイヤなのッ!!
オチンチンが、熱くて硬いオチンチンが欲しいの・・・・ふあああッ!!!!』
狂ったようにかぶりを振りながら、『キャロン』は腰を撥ね上げた。
イボイボ付きのバイブがうねり、サーモンピンクの陰唇粘膜から大量の愛潮が溢れ出る。
発育途上のカラダがビクビクと震え、グレープフルーツを一回り大きくしたぐらいの大きさの胸乳が痙攣して、
・・・・その直後、全身から、ガクン、と力が抜け落ちて、手足の筋肉が弛緩する。
『・・・・あああ・・・・お願い・・・・欲しいの・・・・。
オチンチン・・・・本物のオチンチンで・・・・あたしをイカせて・・・・もっと・・・・もっとォッ!!』
エクスタシーの余韻に浸りつつも、弱々しい声で訴え続ける『キャロン』。
ゴトリ、と重い音がして、締め付けを失った股間から異形の張り型が地面に転げ落ち、
ドロドロとした愛汁が、みずみずしく健康的な下半身を卑猥に飾っていく・・・・。
「・・・・フン、やっぱり、こんな人形共の茶番では物足りないね」
冷やかな視線を、目の前で繰り広げられる痴態とそれに参加している『人形』たち・・・・
『優子』『陽子』『キャロン』他、オリジナルの<戦士>を模して作り出された複製人間に投げ付けると、
メタル・シルバーの生体装甲に身を包んだ<変幻戦忍>は、吐き捨てるように言い放った。
余程苛立ちが強まっているのだろう、足元に傅いていた複製<戦士>の一人・・・・、
艶やかな赤毛を肩口のところで切り揃えた、ラベンダー色の双眸の少女を、野良犬か何かのように蹴り飛ばす。
「おやまぁ、随分とご機嫌斜めな様子だねぇ」
アスカの蹴りをもろに喰らって、数メートルあまりも飛ばされた複製人間・・・・
『麗子』に、チラリと一瞥を投げかけながら、エルス大陸の<雷の戦士>がくつくつと笑う。
その言い方がカンに障ったのか、ツインテールの女ニンジャは、
目の前の女戦士をキッと睨みつけると、更に声を荒らげた。
「当ッたり前でしょッ!?
あたしが欲しいのは、こんな出来損ないの肉人形なんかじゃないッ!!」
「おお〜、コワイコワイ」
からからと打ち笑い、
赤茶色の豊かな髪の毛をパンダナと黄色いリボンで纏めた女戦士・・・・ライディは肩をすくめた。
その仕草に少しだけ怒気を抜かれて、チッ、と舌打ち鳴らす<変幻戦忍>。
「まぁ、そういつまでも引き摺りなさんなって。
麗子を仕留めるチャンスは、近いうちに必ず訪れるわよ」
僚友を慰めながら、ライディは手近にいた複製人間を引き寄せると、
赤いチャイナドレスの胸元から零れていた片方の乳房を無造作に掴み取り、ムニュムニュと揉み回した。
艶やかな黒髪を頭の両側で円を描くように結い上げた少女の口元から、
たちまち、アアッ、という艶かしい喘ぎ声が漏れ、色白の手足がブルブルと敏感に震え始める。
「・・・・あたしが何を引き摺っているだって?そんな訳ないだろ!?」
(・・・・充分、引き摺ってるように見えるけど・・・・)
そう感じたものの、エルス大陸の女戦士は自分の思いをストレートに口にする事は控え、
代わりに、そうか、それは悪かったな、と返した。
心にも無い謝罪の言葉だが、アスカの機嫌を直すには充分だった。
やれやれ、ニンジャのくせに単細胞なヤツね、と、胸の奥で毒づく<雷の戦士>。
「そう言えば、麗夢の姿が見えないが?」
そうとは知らず、<変幻戦忍>は、先程足蹴にした赤毛の少女を手繰り寄せながら、問いを発した。
『麗子』はと言えば、おびえた表情を浮かべはしたものの、
複製人間の悲しさ、感情は有していても、主の命令には逆らえず、ノロノロとアスカの傍へと近付いてくる。
「麗夢なら、アンタと入れ違いでヴァニティ城に向かったよ。
女王と居残り組の連中を悪夢の底に引きずり込むんだってさ・・・・」
「居残り組、だと?どういう意味だ?」
「ああ、つい先程、ヴァニティ城からの次元転移反応をキャッチした。
何人かの<戦士>が、複数の世界を経由しながら、この鏡面世界へと向かってきている。
多分、アンタがココに転移したのに気付いて、女王が<門>を開いたんだろうな」
ライディの言葉に、思わず身を乗り出す<変幻戦忍>。
はずみで、引き寄せたばかりの『麗子』の体を、今度は思い切り突き飛ばしてしまう。
「それで、あの娘はッ!?」
「さすがに、誰が出撃したか?までは調べようが無いよ」
そう言って軽くいなしたものの、
<雷の戦士>は、少なくとも、現時点で自分達の許に向かっている者の中には、
目の前の女ニンジャが執着する赤毛の<戦士>の姿はないだろう、と予想していた。
(何とか凌ぎ切ったとは言え、アスカの秘奥義を受けてタダで済む者など居ない。
・・・・クククッ、あの技は、女には特別に良く効くからねぇ)
「チィッ、なら、麗夢に聞くまでだ。
ヴァニティ城に残ってる奴らの中に、あの<ヴァリスの戦士>はいるのか?って」
言い捨てるなり、アスカは、くるり、と踵を返し、
蹲ったままの『麗子』には目もくれず、大股にその場から立ち去っていく。
そんな事する必要ないのに、と思ったライディだが、
いい加減、女ニンジャの相手をするのも面倒になってきた事もあって、口には出さなかった。
(・・・・まぁ、あの子のお守りは麗夢に任せるとしましょ。
あたしは、もうじき、ここにやってくる連中を歓迎する準備をしなくちゃ)
リズミカルに乳房を揉み込んでいく指の動きに耐え切れ無くなったのだろう、
赤いチャイナドレスの少女が甲高い嬌声を上げる。
心地よい響きに、たっぷりと唾液を絡ませた赤い舌先で形の良い唇を舐めながら、
ライディは琥珀色の双眸に陰湿な光を浮かべ、ほくそえんだ。
「――――鏡面世界?」
聞き慣れない単語に、何人もの<戦士>たちが聞き返してくる。
――――ええ、そうです、と答えた<夢幻界>の女王は、
その直後、彼女たちからの質問の集中砲火を浴びて、たじたじとなった。
「それって、鏡の中の世界ってコト?」「どこにあるの?どうやって行くの?」
「どんな世界?」「教えてください、ヴァルナ女王ッ!!」
「ちょっと、あなたたち、静かになさいッ!!」
大声を張り上げたのは、つい先刻、どうにかベッドから起き上がる事が出来たばかりで、
未だ全身に疲労が色濃く残る、赤毛の<戦士>。
ヴァルナに詰め寄らんばかりだった少女たちも、さすがに気勢を殺がれて、静まり返る。
「質問は一人ずつ、順番になさい。
前の人の話が終わらないうちに、話かけるのも禁止。分かったわね!?」
「は、はい・・・・」「ごめんなさい、麗子」「分かったから・・・・そんなムリしないで」
互いに顔を見合わせながら、口々に軽率な言動を謝罪する少女たち。
ふう、と小さくため息をついた、黒衣の<戦士>のこめかみを、生温い汗の滴がゆっくりと流れ落ちていく。
かろうじて人前に出れる程度には回復したものの、
未だ本調子には程遠く、むしろ、こうして立っているのがやっとの状態だった。
本来ならば、居並ぶ<戦士>たちへの説明も、彼女の役目なのだが、
それすらも思うに任せないため、やむなく、主君であるヴァルナに負担を強いる仕儀となってしまっている。
(くぅッ、なんて情けないッ!!)
歯噛みする思いの麗子だが、
<変幻戦忍>から受けた秘奥義のダメージは心身の奥深く沈殿して、
完全に取り除くにはまだまだ時間が必要だった。
無論、アスカを追って鏡面世界に向かう事など不可能だったし、
それどころか、今、あの女ニンジャが襲ってきたら、一人ではまともに戦う事すら困難だろう。
「ええと、皆さん、そもそも鏡面世界というのは――――」
麗子をアテにできないせいだろうか?何処となく、心細そうなヴァルナの声。
それでも、<夢幻界>の女王としての責任感に命じられるまま、
懸命に言葉を絞り出し、詰め掛けた<戦士>たちの質問に答えていく。
(・・・・申し訳ございません、ヴァルナさま・・・・)
無力感に苛まれながら、自分を責める麗子――――と、その時。
「・・・・・・・・」
関節が白く浮き出るほど、きつく握り締めた拳の上に、そっと重ねられる掌の温もり。
目を上げると、スカイブルーの双眸に穏やかな光を湛えた蒼髪の親友が、
気遣わしげな、けれども、決して押し付けがましくは無い微笑みを浮べつつ、じっと自分を見つめていた。
(・・・・優子・・・・)
「そんなに自分を責めないで・・・・麗子」
赤毛の少女にだけ聞こえるように、そっと囁く<ヴァリスの戦士>。
我知らず、胸の中が、じぃん、と熱くなった麗子は、
こみ上げてくる感情に抗し切れず、親友の腕の中に己れの身体を投げ出すと、
・・・・今にも嗚咽を漏らしそうなほどの弱々しい声で、囁き返した。
「ご、ごめん・・・・優子、ちょっとだけ、このままで居させて」
(・・・・・・・・)
返事を返す代わりに、蒼髪の<戦士>は、
目の前の、黒いバンダナで纏められた艶やかな赤毛をそっと指で掬い、撫で下ろした。
ほうっ、という安堵に満たされた呟きを漏らしながら、
母親に甘える赤子のように優子の体の温もりを求める<夢幻界>の少女。
<現実界>の少女もまた、無言のまま、彼女の髪を撫で続ける――――。
・・・・・・・・しばらくの後。
「・・・・・・・・えーと、まだ良く分かんないんだけど、
とにかく、そのキョウセンメカイってトコロに行けば、敵の手がかりが見付かるかもしれないんだよね?」
場違いな程に明るく、溌剌としたキャロンの声に、
その場に居た大多数の者は、今まで一体何を聞いてたのよ?と、げんなりとした表情を浮べたものの、
惑星ラルの守護者たる<リバースの剣士>は、どこ吹く風とばかり、意に介さない。
元より、細かい事は気にしない性分だし、
何より、長ったらしい議論を重ねるよりも、実際に自分の足で現地に赴き、自分の目で確かめる方を好む性格なのである。
「じゃあさ、とにかく一度、みんなで見に行けば良いんじゃない?その、キョウセイメンカって場所を・・・・」
「キ・ョ・ウ・メ・ン・セ・カ・イ、よ・・・・いい加減、ちゃんと覚えなさいってばッ!!」
口を尖らせたのは、胸の部分に陰陽和合のシンボルを染め抜いた、真紅のチャイナドレスの少女・・・・
第108代魔物ハンター・真野妖子。
大胆なスリットの入った腰に手を当てながら、
オレンジ色の髪の毛をポニーテールに束ねた、ラルの<戦士>を睨みつける。
「まぁまぁ、そんなに大声出さなくても・・・・」
半ば呆れたような口調ながらも、妖子を宥めにかかったのは、
ラピス・ブルーの甲冑を身に纏った<レダの戦士>・・・・朝霧陽子。
一方、真紅の甲冑に身を包んだ銀髪の少女――――カナンの<銀の勇者>レムネアは、
女王ヴァルナと二人の<ヴァリスの戦士>に向かって、どうしたものか?と、目で問いかける。
「そうね・・・・さすがに、私たち全員でここを空ける訳にはいかないわね。
シルキスと茜たち三人には、ヴァニティ城とヴァルナさまを守るために残って貰わないと」
レムネアの言わんとする所を正確に看て取り、
即座に答えを発したのは、漆黒の鎧を身に纏った女王の側近。
――――だが、続いて発した言葉には、口では言い表せぬ無念さが滲んでいた。
「・・・・それに、私もね。
残念だけど、この身体では皆に同行するのはムリ・・・・足手まといになるのがオチだわ」
「・・・・そんな、足手まといだなんて・・・・」
反射的に反論を試みる優子。
だが、赤毛の夢幻界人は、静かにかぶりを振ると、
一呼吸置いて、きっぱりと言い切った。
「認めるのは癪だけど、アイツ・・・・飛鳥の術の影響は、私の体の奥深くにまで達しているわ。
今の状態では、とてもじゃないけど、まともには戦えない・・・・鏡面世界行きは諦めるしか無さそうね」
「・・・・・・・・」
押し黙る優子。
陽子や妖子たちも・・・・キャロンでさえ、言葉を失って、沈黙に沈んだ。
半ば予想していた事とは言え、麗子が同行できないのは、純粋に戦力的な面だけを考えても非常に痛い。
「・・・・分かったわ。残念だけど、麗子がそう判断したのなら、仕方が無い」
唯一人、感情に流される事無く、冷静な口調を崩さなかったのは<銀の勇者>レムネアだったが、
彼女とて、その表情は暗く翳り、不安を隠せない様子なのは皆と同じである。
――――と、重く沈みかけた空気を振り払うかのように、
麗子の叱声が彼女たちの・・・・とりわけ、優子の耳朶を激しく打った。
「ちょっと、何、黙り込んでいるのよ。
私が行けない以上、優子、あなたには皆を引っ張って貰わないといけないんだから、しゃんとなさいよッ!!」
「ええッ・・・・わ、わたしが!?」
目を丸くしつつ聞き返す、蒼髪の少女。
だが、赤毛の親友は、当たり前じゃないの、とにべもなく言い放った。
考えてみればその通りで、<戦士>としての実力から言っても、また、ヴァルナからの信頼度から言っても、
今、この城の中にいる人間の中から麗子の代役を決めるとしたら、
同じ<ヴァリスの戦士>である優子がまず第一の候補者として挙げられるだろう。
「ううっ・・・・で、でも・・・・わたしに、そんな大役が務まるかしら?」
不安を隠し切れない様子で、周囲の仲間たちの顔を見回す優子。
・・・・だが、彼女の心配は杞憂だった。
「優子がリーダーなの、それ、賛成ッ!!」
「あたしも、優子なら良いわ」
「そうね、わたしも優子が適任だと思う」
「よろしくお願いするね、リーダー!!」
(・・・・ふふッ)
口々に優子を支持する<戦士>たちの姿に、微苦笑を禁じ得ない赤毛の少女。
強いリーダーシップの持ち主という意味では、多くの点において、
ややおっとり型で、人前で自分の意見を強く主張するよりも、
一歩引いたポジションで皆の意見をよく聞き、妥協点を見出そうとするタイプの優子よりも、
アグレッシブな性格で、言いたい事はズバズバ言い放ちながら、皆を先導していくタイプの麗子の方に軍配が上がるだろうが、
同時に、リーダーシップに恵まれている、という事は、必ずしも、周囲から認められる人望の持ち主である事とイコールではない。
(・・・・結局、いつまで経っても、優子、貴方には敵わないわね)
ぽつり、と小さく呟くと、
麗子は、親友の背を押して、仲間たちの輪の中へと飛び込ませた。
・・・・そして、彼女を半ば揉みくちゃにしている仲間たち一人一人に向かって、信頼を込めた眼差しを投げかける。
(皆、優子の事、頼んだわよ。必ず、全員無事で戻ってきて・・・・)
「―――来たか、<夢幻界>の<戦士>ども」
耳障りな警告音・・・・空間転移による侵入者の存在を知らせるアラームを聞きながら、
<雷の戦士>は、にんまり、と邪まな笑みを浮かべた。
その視線は、目の前で繰り広げられている複製少女たちの痴態に、じぃっと注がれている。
「フフフ・・・・さあ、お前たち、仕事の時間だよ。
奴らを一人ずつバラバラにして、鏡面世界の迷宮に閉じ込めてやるんだ。
ククク、現実と虚構の狭間にある無限の牢獄に、ねぇ・・・・」
――――――――TO BE CONTINUED.