楔を宛がわれた瞬間、アリーシャの背筋が凍りつく。  
 
先ほどの指などとは比べものにならないほどの硬さと熱を孕んでいるだけでなく、何より絶対的な質量が違う。  
ぐっと先端がナカに押し込まれたと同時に下腹部を圧迫するような痛みに襲われる。  
投げされた両の手で手近なシーツをきつく掴み、喉の奥から弾け出しそうな声を一度深く飲み込んだ。  
 
硬い異物にナカを押し広げられる未知の感覚、それは膨大な量と熱であっという間にナカを埋め尽くしていき  
それでもアリーシャは、ぐるぐると蟠って今にも暴れだしそうな熱をぐっと殺してブラムスが奥へ至るのをひたすら待った。  
しかし奥へ奥へと向かってくると、その痛みは2乗3乗にも膨れ上がり、ある地点に至った瞬間。  
 
「っ、……ぃ、や、いた……いっ、…!!」  
 
とうとう我慢しきれずに押し出された声と一緒にぽろぽろと溢れ落ちるしずく。  
同時に下腹部の奥の方から刺すような痛みが一度滲んで、何かと一緒に剥がれて落ちていくような感覚。  
ブラムスが声に気付き眉を顰めたのは、声を我慢するあまりアリーシャが自らの唇を噛み切っていたから。  
血がにじみ出てくる下唇を軽く舐めると、アリーシャはしゃくりあげながらブラムスへと手を伸ばす。  
 
「しっかりしがみついておけ…」  
 
声に頷くことさえも出来ず、小刻みに震えるアリーシャだったが心地よい熱気と囲う腕の力強さにほだされたのか、  
必死に奥歯を噛んでいたアリーシャの面差しから硬さが若干解れてきたのに破瓜の激痛が幾分か和らいだのを知り。  
呼吸も落ち着いた頃にブラムスは慎重に抽送を開始すべく動き始めた。  
 
膨大な質量を銜え込んだまま慣らされていた場所に突如喪失感が訪れて若干の余裕を生むが、  
それも束の間、再び膨大な熱を孕んだ剛直が下腹部を痛みと一緒に満たしてくる。  
アリーシャの面差しを注意深く見、少しでも息を呑んだり、眉目が歪んだりすると、  
しがみついてくるアリーシャを抱き寄せて、何度も口づける。  
こうしてやると、一時ではあるけれどアリーシャの薄く朱を差す頬が柔らかく弛緩する。  
 
自らの剛直を半分ほど抜き出しては再びアリーシャのナカへと埋めていき、徐々にその深さを増していくのを繰り返す抽送。  
それでも小さな身体は変化を敏感に掬い上げ、少しでも至っていない場所へ侵入すると  
アリーシャはその度に喉をくっと鳴らしながら苦しげに声を飲み込む。  
その割にスムーズにナカへと収まるのは、彼女の破瓜の証が滑りを良くしているだけでしかない。  
 
「っ、ふ、……は、あぁっ…!!」  
 
明らかな変化を帯びてきたのは、随分抽送を繰り返した後だった。  
ブラムスに必死にしがみついていたアリーシャの身体の強張りが少しだけ抜けて、  
耳を掠める吐息に幽かではあるが艶が乗り始めた。  
アリーシャの方から求めてきたのに応えて、その口を覆うように塞ぎながら、奥へ向かって深く身体を進める。  
 
「ぷあっ…!!!ぁ、あっ!!!あぁああっっ!!!」  
 
熱く硬い剛直が一番弱い場所を一度、強く突き上げると白い喉から一際甲高い嬌声が零れ、  
媚肉は膨大な熱を享け入れた悦びに打ち震え蠢き、きつく締めあげてきた。  
熱を抜き出そうとすると、まるでそれを引き止めるかのように甘い媚肉が絡み付いてくる。  
幼さを僅かに残すその容貌は甘美な恍惚に染め抜かれ、必死に空気を貪るその面差しは淫靡以外の何物でもなく  
小さく白い身体は何度も小刻みに震えながら、痛みとは別の感覚を選り分けて掬い始めている。  
 
「まだ痛むか?」  
「…っ、ちょっと、だけ…、でもへいき…っ」  
「嘘ではないな?」  
「お、く…が、…なんだか…ぁっ…!あ、つ…いぃっ!!!」  
「判った」  
 
まだ自身ではそうと認識していないようだが、アリーシャが確かな感覚を得ていると知ると  
ゆっくりとした慎重な抽送がある程度のリズムを保った抽送へと変化する。  
 
「ひゃっ…!ぁああっっ!!!ん、はっ、うあぁあっ!!!」  
 
小気味よく奥を突き上げられる度に抑えきれない声が溢れ出し、  
痛みは既に身体の一番隅にまで響き渡って感覚という感覚を奪い去る甘い波紋に掻き消され。  
熱く囲う腕の中で猛烈な勢いで身体を過ぎていく快感に打ち震えるアリーシャ。  
深く繋がっている事を示す蜜を掻き混ぜられる卑猥な水音もまた、確実に快感を追う助けとなっている。  
身体を奥から何かを引き出されそうな感覚の後、ぐっと深くまで熱を押し込まれると  
内側が自らには知れない悦びに震え歓喜し、浅い場所を彷徨う意識は肌に触れる心地よい熱気に存分に酔いしれる。  
 
そしてしばらくすると、その瞬間が訪れた。  
アリーシャの身体の一番深い場所で産まれたのは、小さな小さな火花。  
 
「ふあっ!!!あ、つぃ……!」  
 
硬い先端を何度も最奥に打ち付けられている内に小さな火花がぐるぐると疼き始めた。  
それは剛直を突きつけられると悦んで一気に増幅し、手には届かないのにどんどん浅い場所へとせり上がってくる。  
一定のリズムで媚肉を擦る律動と共に、目一杯に満たされているナカが咥え込む質量が更に膨れ上がったように感じた。  
 
「やっ……、だめぇ!!んあぁああっ!!!」  
 
反応でアリーシャの頂が近いのを悟ると、ブラムスはしがみついてくるアリーシャを抱き寄せて  
僅かだけ足を開かせて一際奥へと剛直をねじ込むように深く挿入する。  
 
「きゃうぅっ!!!やっ!!!も、くるっ……!!!ぁあああっっ!!!!」  
 
一番弱い場所の更に奥へと侵入してきた硬い先端がもたらした快感は凄まじく、  
指先が一気に感覚を失い、内側を彷徨っていた火花が瞬く間に火の玉と化して身体中を暴れまわり始め。  
小刻みに震えるアリーシャの背が軽く撓み、部屋を乱反射していた嬌声が一気にトーンダウンすると、  
ブラムスの腕の中でしなやかな肢体が柔らかく弛緩するのが如実に解った。  
 
「は、っ…、んぅっ……、ふあぁ……っ」  
 
耳を掠める切れ切れの吐息、口の端から溢れ落ちそうな唾液を飲み込む音。  
朱く上気した頬は美酒に酔いしれるかのように愉悦を刻み。  
膨大な熱を銜え込んだ媚肉までもがそれに連動して甘く蠢いている。  
ゆったりとあたたかい波に抱かれて、微睡むような感覚。  
 
そこへ丁度、頬の感触を確かめるような大きな掌。  
何度も優しく撫でられるのが何とも云えず心地よくて、無意識に小さく声が上がる。  
続いて耳たぶを軽く唇で挟まれるようなくすぐったい感触の後。  
 
「もうしばらく付き合ってもらうぞ…」  
 
近くに響く低い声。少しだけ掠れている。  
「え?」と問い返す前に既にブラムスは体勢を変えにかかっている。  
未だ繋がったままのアリーシャを抱き起こし、  
そのままの体勢で下から弱い場所を狙って抉るように突いてきたのに甲高い声が上がった。  
 
「ひぁ、くっ!んああぁっ!!!!」  
 
指先から急速に感覚を削いでいく快感が再び奥から続々と産まれ、  
体内を容赦なく巡るのに身体を何度も震わせながら抱えてくれるベクトルに吸い寄せられるように凭れかかった。  
重力の負荷も加わり、剛直がより深い場所まで達する事による軽い痛みと同時に  
未開の場所が次々に暴れていくのに何故か強烈な眩暈を伴う得も言えぬ愉悦を感じる。  
 
思考は既に快感を追いかける事にのみ集中しつつも、ぼんやりと端から霞みがかり。  
それでも剛直が奥を突き上げてくる衝撃と快感だけは余りにも明確で。  
律動の強さを増すのと比例してベッドの古いスプリングが苦しそうにギチギチと鳴らす不快な音と  
自らの鼓動の昂ぶりとが徐々に同調していくのを感じている。  
過ぎる快感に苛まれ、響きにも成り損なって呻くかのような声が集まってすすり泣きにさえ聞こえる。  
時折それが止むのは、ブラムスが切なげなその声を自らの喉の奥へと導く所為。  
 
「んく…、ぅ、んむぅ……っ」  
 
舌をゆっくりと何度も絡ませ合いながら零れるアリーシャの声に甘い響きが含まれ  
より深く熱く繋がりあい、ふれあう肌の境界がにじんで蕩けていくような感覚に取り込まれそうになる。  
 
こんな行為の最中、端から薄れていくアリーシャの思考がふと描いたのは  
シルメリアがドラゴンオーブの守護をいずれ自分に任せようとしていたことだった。  
 
 捧げるにさえ値しないであろうこの身には それが適当だろうと思っていたのに  
 それなのに こんなに深く 貪欲に求められて  
 受け入れてくれる肌のぬくもりと くるまれる熱気の心地よさを覚えては  
 
「…辛いか?」  
離れていく唇は、すぐさまそう紡いだ。  
何故そんなことを聞くのだろうか、と思った次の刹那に両の目尻をしずくがゆっくりと伝っていく。  
赫い双眸はいつにない憂いを携えて右の目尻を唇で、左の目尻は大きな親指で同時に拭ってくれた。  
アリーシャはことばなく首を横に振り、「へいき…」と彼の耳元へとそっと声を運んだ。  
 
再びブラムスはアリーシャをベッドへと横たえた時、潤んだ蒼い双眸は  
「おく、が…あつ…いのっ……、また…、なにか、きそう……」と訴えかけてきた。  
ことばなく頷いたブラムスはアリーシャの細い腰を掴んで一番奥へと向かって剛直をねじ込んだ。  
 
「んぅっ!!!!くはぁあぁああっ!!!!」  
 
白い身体がびくりとはね上がり、腰を掴むブラムスの手首を握って爪を立てる。  
そのまま最奥にまで強く響き渡る長いストロークでの抽送が強さを維持したまま間隔だけが短くなり、  
互いの内股同士が触れ合い弾き合う鈍い拍手のような音が部屋にあふれ出した。  
それに呼応するようにアリーシャの甲高い声は徐々に鳴りを潜め、  
その代わりにふたり分の空気を貪る荒い呼吸と互いの欲の交じり合う水音、ベッドのスプリングが軋む音だけが響き始めた。  
昏い闇の中を淫らに彩るそれらは、手繰れる限りの快楽を貪るには相応しすぎる。  
 
時期に芯まで愉悦に染め抜かれたアリーシャの甘美な断末魔がこだまし  
「ふあっ!!!も、くる、……!!!あっっ!!!!あああぁあぁっっ!!!!」  
のたうちまわっていたアリーシャの身体が叫びと同時に頂を越えていった直後。  
秘所を埋め尽くしていた熱が一気に引き抜かれていき、内側からの圧迫感から解放されて余韻に下腹部が一層熱くなった。  
大きな波長が身体をどんどん過ぎていくよりも近いところで幽かにぬくみを感じる。  
 
 
ぬくみの正体も解らぬ間に、再び心地よい熱気がそっと包み込んでくれるのが解った。  
ナカから未だ濃厚な蜜と破瓜の証が絡み合った愛液が押し出されるかのような感覚に苛まれるアリーシャの  
汗で額に貼りついた前髪をそっとかき上げ、一度深く口づけあう。  
 
 心地よいそれを享け 白んでいく意識の端で 不意に襲われた予感に何を感じたのか  
 
「…お、ねがい、ここに居て…っ」  
 
分け合う余韻が消えてしまう前に「今だけでいいの…」と小さく呟いたまでは良かったが、  
それ以降は少しだけ間を置いてから瞼を伏せてしまったアリーシャの身体を離したブラムスは  
視界の端を掠めた備え付けの椅子の背にかけてあったタオルで拭ってやる。  
 
 薄い桜色に上気したアリーシャの肌の其処此処に容赦なく撒き散らされた多量の精  
 子を生(な)す種子などありはしないのに それは単純に蒼い瞳の少女を穢すだけでしかなく  
 それを直視する事が出来なかった  
 
黙々と名残を拭い去っていくブラムスの手が何も変わらずあたたかいのが却って切なくて。  
今にも溢れてしまいそうなしずくを気付かれないようにそっと拭った。  
それでも止まりそうにない両目の奥の熱に連動するように、胸のごく浅い場所がまた痛み出すと  
ブランケットの柔らかい感触と一緒に心地よい熱気に身体を深くくるまれる。  
 
何も云えなくなって、何から紡げばいいのか解らなくなって。  
云う事が見つかったのに、胸がいっぱいで息が詰まって声にもならない。  
 
何度も何度もプラチナブロンドを丁寧に梳かれて落ち着いた後。  
「…ごめんなさい」と云うのが精一杯だった。  
変わらぬ声は静かに「眠れそうか?」と問うてきたので、ひとつ頷こうとしたが  
そうしたらきっと彼のこと、また自分の居るべき場所へと帰ってしまうと踏んで、わざと首を横に小さく振る。  
 
すると、呆れて軽く笑うような声が洩れて  
「お前の望むまま、此処に居よう」と囲う腕の熱も貰ってようやくそっと瞼を伏せたアリーシャだった。  
 
**  
 
アリーシャの体内時計が目覚めの時間と報せてくれるのに素直に覚醒して瞼を開くと、  
思いもしない大きな姿が目の前に横たわっていた。  
 
「ここに居て」と云っておきながら、実際に居てくれたのだと思うと不思議な気がしてならない。  
自分が完全に眠ってしまったら、彼はきっと戻ってしまうと思っていたから。  
実際、瞼を伏せ、その巨体を横たえて眠っているらしいブラムスの姿など  
戦場(いくさば)に於ける彼の姿を見ていると不思議と云うか不自然と云うか。  
 
どうしてよいか解らず、ただじっと、ブラムスの覚醒を待つ事にする。  
きつく囲われて身動きが出来ないのだから、そうする以外に手段はない。  
 
暫く見つめていると、一度だけ眉間に皺が深く刻まれてから、瞼の向こうから赫い瞳が姿を現した。  
 
「…眠れたのか?」  
まずは大きな手櫛が寝乱れた髪を整えるように梳いてくれる。  
今度こそは素直にこくりと頷くと、「そうか」と薄い笑みを浮かべた。  
上目遣いでしかそれを見れないのは、今頃になって妙に気恥ずかしい所為。  
 
不意に声と一緒に心地よい熱気が急速に薄くなる。  
離れていくのにつられるように顔を向けると、そこには既に見知った姿をしたブラムスが立っていたが  
けれど、窓から入り込んでくる陽光にその姿は薄く透けている。  
彼は自分の居るべき場所へと姿を移すのだと解って、アリーシャはとりあえず肌を隠すために  
被っていたブランケットを掻き集めて、自らの身体にへと巻きつけて  
薄く色を失っていくブラムスの姿をじっと見つめていた。  
喉の奥から溢れ出てしまいそうなことばを飲み込んで。  
 
手が白い頬に伸びてきた。  
感覚はなく、熱気もない。  
アリーシャの短剣で削ぎ落とした爪は、まだ再生していないようだ。  
 
その色もかたちも溶けて消えてしまった後になって、ひとつぶだけ、しずくが頬を落ちていった。  
 
 
 
 
「…どうしたんです?その肩」  
ファーラントがブラムスの左の肩に何かを見つけて秀麗な眉目を顰める。  
背後からそう云われて振り向く見慣れた姿。  
丁度ブラムスの右手後方をついて歩くアリーシャの視点からはそれが彼自身の姿に阻まれて見る事は出来ない。  
「…なんだこれ?歯型じゃねぇか?」  
アリューゼがそれを見つけ、訝しむように触れるのを「触るな」と嫌がるブラムスに、  
思い当たる節がありすぎて、思わず両手を口に当てて顔を青くするアリーシャ。  
 
こっそりと見てみると、襟に隠れてはいるものの首筋にもひとつ、歯型らしき痕が残っている。  
すると。  
 
「昨晩」  
ベッドの中で聞いた低く響く、重厚だけれど優しい声。  
 
「蒼い眼をした仔猫に何故か見つかってしまってな。妙に懐いてくるものだから好きにさせていたのだが…」  
そうか、いつのまにか噛まれていたのか。と、苦笑を浮かべる。  
アリューゼは「猫かよ…」とそれ以上は興味なさげに歩を進める。  
ファーラントは「治しますか?」と問う。  
 
 
ふと彼らから視線を外して、別の場所へとそれを向けると  
先には蒼い瞳の少女が白い頬を朱く染めながら、その手には癒しの術の輝きを携えていた。  
 

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