「敵……!!」
頭上からの襲来に、一瞬、油断していた。
サレットをぐいと直す。崩れた姿勢を立て直し、すぐさま距離を取った。
「死の……先をゆく者達よ!!」
レナスの体は光り輝き、エインフェリアが召喚される。いつも通りだ。
だが。上空から飛来した魔物は、精霊の森の住人マンドラゴラだった。
これは厳しい戦いになる。レナスは、キリと唇を噛んだ。
「ぶべらっ!!!」
蘇芳、鼻血。
マンドラゴラ───下半身こそ巨大な植物に覆われているが、上半身は一糸纏わぬ姿。
新緑の髪、穢れの無い無垢な瞳。しかし、ほんのりと肉付いた体の双丘は、その存在を主張している。
神秘さと、グロテスクを孕んだ不思議な魅力。
魔物とはいえ、堅物をタコにするには、十分だった。
「し…ッ………詩……帆…」
蘇芳亡き今、三人で戦うしか無いようだった。
「………来る!!」
レナスが告げる。
しゅるしゅると、マンドラゴラはその花から種を射出してきた!
思わぬ攻撃に怯むが、冷静に避ける。
「その程度か」
「喰らうかよ!!」
種は炸裂し、辺りに爆音が響く。あれを喰らえば、ひとたまりもないだろう。
「……ここが……死に場所……」
後ろから何か聞こえた気がしたが、気にしないことにした。
「ぐぅ……!?」
もう一体のマンドラゴラの攻撃。花びらを先程より大きく広げ、目一杯に射出したのだ。
これはたまらない!
「避けろ!!」
遅かった。
先の回避に気を取られたアリューゼは、種の爆発に巻き込まれてしまう。
詩帆も同様だった。イリュージョンでは避けきれず、強烈な一撃を浴びた。
「く……強い!?」
レナスの端整な顔つきが、ギリリと歪む。