『聖帝の小悪魔、化け物になる』  
 
 
とある日の放課後。 体育館での出来事。  
いつも通り補習をさぼって逃げていった仙道 清春を追いかけて担任の南 悠里が体育館に行ってみると。  
 
「喰らえ!水鉄砲」  
「きゃーーーー!!」  
清春の放った真壁家特製スーパー水鉄砲の強力な水流が悠里の顔面を直撃した。  
まったく避けることもできず、正面からモロ、水を被ったせいで頭からスーツ、靴までビタビタになってしまった。  
「カベに頼んで今日は前回よりももっと特製の水を仕込んでおいたぜ〜、ターゲットに命中した数秒後、ナメクジのようにヌルヌルに  
なる薬だぜ〜? 精々すっころんで廊下に這いつくばってなー! キシシシッ ………………あれ?」  
 
「イヤー、本当にヌルヌル〜、気持ち悪いーー!!」  
「よお、……オマエ、服、透けてきてっぞ」  
「へ? ええっーーーーーー!! な、何よこれーーーーー!!」  
「いや、透けてるっつーより、溶けてる?」  
スーツの上着が見る見るうちに溶けて消えていく。  
その下に着ている白いブラウスも既に色が薄くなり地肌が透けはじめて……。  
「きゃぁーーーーーーー、ど、どうして、いやーーーーー!!」  
「あ、ブラウスなくなっちまった。 へー、オマエ。ブラジャー、ピンクか。 案外カワイイのしてんのなー。て、それも色薄くなってんぞ。   
まさかそんなもんまで溶けちまうの? 流石、真壁財閥の研究チーム、すげえ薬作るよなー。 いやー、オレ様もこれには驚くってーの」  
「そんなトコで感心してないで、どうにかしてー!」  
「どうにかっつってもなー。 オマエの今の顔、面白いし。 おお!こりゃまたとないシャッターチャンス!! デジカメデジカメ(パシャ)」  
「もう!清春君! 酷いじゃないの!! こんな事するなんて」  
「ああ? オレはこんな薬頼んじゃいねーっての。 オマエのハダカ観たいほど女に不自由してねーしなぁ? 多分翼が薬、間違えたんだろ」  
「そ、そうなの? ごめん。 ああ、もう今そんなことはどうでもいいの。 早くこの薬、止めてよー」  
「あ、ブラジャー殆ど溶けてなくなっちまったな」  
「きゃあああああヽ(`Д´)ノ 見ちゃだめー!!」  
必死で両腕を胸に巻きつけて身体を清春に晒さないように丸くうずくまる。  
「ほらよ、取り合えずコレ着とけ」  
そう言ってあさっての方向を見ながら清春が投げて寄越したのは清春が今まで着ていた制服の上着だ。  
 
「ありがと〜」  
藁にも縋る思いで、それを受け取り身体に被せる。  
が、それは綿菓子が熱でトロけるように、みるみるうちに溶けて消えようとしていた。  
「ちっ、その液で濡れた衣服は全部溶けちまうみたいだなー。 まあ髪の毛は大丈夫そうで良かったなー。ククク」  
「そ、そんな事言っていないで、なんとか……はっ!!」  
体育館の外で微かに男子生徒の声がする。   
(このまま誰かが体育館に入ってきたら私は晒し者に!! ど、どーしよ〜)  
スカートも殆ど残っていない。下着がなくなるのも時間の問題だ。  
顔から血の気がひいていくのが解る。  
 
「ったく、しょーがねーなー」  
清春が物凄い勢いで体育館の出入り口に向かって走っていく。  
(まさか、私をこのままにして逃げる気!?)  
しかし、清春がとった行動は悠里の想像とは異なっていた。  
床掃除のモップの柄を使って中からツッカエ棒にして出入り口を塞ぐ。  
外からは『あれ? 鍵が閉まってる?』『どうする、バスケできないじゃん』『誰か鍵取ってこいよー』などと声がしている。   
どうやらこれで暫くは外からは誰も入ってこれないようだ。  
「よ、よかったぁー」  
悠里がほっとしている間に、更に清春は用具室に駆け込むと中からビニールのブルーシートを持って来てくれた。  
「ホラよ。多分こいつならビニールだから、布よりは溶ける時間が稼げるかもな。 早くシャワー浴びて来い」  
「う、うん。ありがとう清春君」  
元はといえば清春に変な薬をぶっ掛けられて素っ裸にされたわけだからありがとうもないもんだが。  
ブルーシートはゴワゴワで身体に巻き付けにくかったが、それでもなんとかこれで歩けるようになった。 清春がこのシート  
を持ってきた時点で、もう悠里の服は下着もストッキングも、靴もゴムの部分だけを残してすっかりに溶けきっていた。  
 
「シャワー室が体育館の隣で良かったー」  
暖かいお湯であの正体不明な液体を洗い流す。  
「あー、さっぱりした。この学校って良いシャンプーとリンス使ってるわねー。さすがブルジョワ校ね」  
「……おーい」  
シャワーの個室の外から声が聞こえてきて悠里の身体がビクリと跳ね上がる。  
「きゃ!どうして入ってくるのよ」  
「……なんだよ、タオル要らねーのかよ。 それならオレ様はこのまま帰っちまうぜー」  
「要ります、要ります。お願いします、タオルください」  
「オレの使ってるヤツしかないけど、いいか?」  
「うん、ありがとう、清春君」  
個室のドア越しに聞こえてきた声。 その声に向かって手を出す。 すると手にフワリと柔らかいタオルが置かれる。   
急いでタオルで身体をゴシゴシと拭いて、恐る恐るタオルの状態を見る。   
「うん、タオル溶けてない。 もう大丈夫みたいよ? 清春君」  
「ふーん、そっかー、良かったなー、センセー」  
その声は思いのほか自分の直ぐ近くで発せられていることに気が付いた。 いつのまにか個室の中に清春が入ってきていた。  
「きゃっ!ちょ、ちょっといきなり入ってこないでよ。ここ女子専用よ!」  
清春の姿に慌てて後ろを向き、タオルを巻きつける。  
「せんせー。 俺達の初めてだからさー、選ばせてやるよ。 ここ?それとも保健室?」  
「……何の事?」  
「良いから選べよ、今すぐにだ」  
「だから、何のこと?」  
「あー、いっとくけどぉ、『どっちもイヤン』はナシ!! そんな興ざめな事言いやがったら、今すぐココで突っ込むから覚悟しろぃ」  
「?」  
「あのさぁ。マジでオレの言ってる意味わかんないわけ? オマエさー、そういうこと無知過ぎ、無防備すぎ。それとも  
センセー、オレ様の事煽ってんのかよ」  
目がいつもの悪戯好きで子供っぽい清春と違っている。 ギラギラとした……男の目。 流石に鈍感な悠里も清春が  
何を言っているのか理解する。 とにかく時間が稼げれば……。  
「え、あ、あ、あの……あの……、じゃ、ほ、保健室、かな?」  
 
「そうか、保健室なー。 OKーOKー。 やっぱベッドの上の方が良いよな。 それにあそこ『明るい性活指導』の一環で  
ゴムがダースで置いてあるからなー。 便利だよなー保健室って。オレあそこの合鍵持ってんだ。 キシシシ。 そいじゃまぁ早速行きますか」  
そういうが早いか、清春は先ほどのブルーシート使って悠里を『簀巻き』にした。  
「ちょっとー!何するのよー」  
「オマエが素っ裸でシャワー室から保健室まで歩いていくのならそれでもいいんだぜー?」  
「そんなの……できるわけないでしょ!」  
「オレ様はオマエの肌を凡人のクズどもなんかに小指の欠片さえも見せたくねーんだから、大人しくシートに巻かれ  
とけっての! ほら長イモには巻かれろっていうだろが」  
「それを言うなら『長いものには巻かれろ』でしょー。 バカー!! いいから離してよ!!」  
 
(折角、舞踏会のとき露出度の高けードレス着た先生を他のヤツラに見せたくなくてあんな苦労までしたのに、  
ここでマッパなんか誰が拝ませるかっての!! B6の連中でも絶対にゆるさねぇ)  
 
抵抗もむなしく、簀巻きにされた悠里は清春に肩から担がれて保健室に運び込まれてしまった。  
 
(ビニールから転がり出たと思った場所は保健室のベッドの上で私はタオル一枚しか身につけていない。ドアには  
ご丁寧に鍵がかけてあって目の前には悪魔が1人。 絶対絶命の大ピンチ???うううぅ〜)  
 
「ね、ねぇやはりここは学園内だし、私は教師で貴方は生徒だし、こういうのは良くないと思うのよね。 ね、聞いてる?   
なんでそこで戸棚から包帯とか出してるの……かな?」  
「あー、それはオマエがおもいっきし暴れそうだから、取り合えず両手封じ込めようと思ってさ」  
「そ、それだけは、止めて、お願いしますから。 こんなことがバレたら私はクビで、清春君は退学になっちゃうよ?   
今までこんなに補習してきたのに、全てムダになったらイヤでしょ?」  
「別にぃー?クククッ。 どうせこんな時間まで他の生徒は誰も残ってねーよ。 保健医も帰っちまってるし。   
バレなきゃいいんだよ。 ホラ両手を出せ」  
「ダメ!絶対にダメです!!」  
 
「出せよ。……気持ちいいことしようぜ〜。 それともオレが相手じゃ不服かぁ〜?」  
「そんなに、か、顔近づけないで」  
ベッドの上では逃げるのにも限度がある。 追い詰められてそのまま馬乗りに成られて、とうとう両腕を包帯で  
グルグル巻きにされてベッドのパイプに縛り付けられてしまった。  
「これでよしっと。 このタオルはもういらねーな」  
ペラリと剥がれて、ついに清春に肌を晒すことになる。 タオルと一緒に教師という仮面も剥がされてしまった気がした。  
「ヤダ、清春君、やめなさい! ……お願い、……見ないで。見ないでよ〜」  
教え子に自分の全裸を見られる……。そう思うだけで羞恥に肌がピンク色に染まっていく。  
「さっきも思ったけど、結構胸あんね、オマエ」  
ギュっと両手で胸を捕まれて身体が跳ね上がる。  
「……ァ…ん……」  
「なんだよー、イヤイヤつっといて、ヤルキマンマンじゃーん?」  
何とか抵抗をしようと両手を動かしてみるが包帯はしっかりとベッドの結わえられていて一向に解けそうにない。  
唯一自由になる両足もヘタにジタバタすると下腹部がむき出しになって更に辱めを受けるだけとあって、悠里は  
結局身悶えするより他なかった。  
「なんだよ、ヒャハハハ ……もう抵抗しねーの?」  
(出来ないから困ってるんじゃないのー!)  
頭では彼のこれからの将来の事を考えて、今すぐにでもこんな事を止めさせなければならないと解っている。  
でも、身体がまったくいう事を聞いてくれない。 このハンサムな顔で迫られたら……何も考えられなくなる。  
 
清春の丹精な顔が近づいてきて首筋をネロリと舐められる。  
そのままキュウっと痕がつくまでキツク吸われて、それがそのまま快感になる。  
「……ァ・・ンァ……」  
唇はそのまま下がっていって胸元にもキスマークで占有の証を刻まれる。  
「やわらけー」  
両胸を鷲掴みにされる。 悠里の太股には清春の欲望があたっていて、それを意識した悠里の身体に震える  
ような感覚が走る。  
「足開けよ」  
「ダメ……そんなのダメ、んッ……んん……」  
否定的な事を発する口を塞がれていた。 歯茎も、歯も、その裏も、舌も、およそ舌を這わせられるところ全てを  
清春の舌が蹂躙する。粗野で攻撃的な口付け。 なのに身体の芯から蕩けそうになる。  
指がするすると腿の内側を撫上げ、悠里が一番感じる部分に手を挿し入れた。  
 
自分でもまったく気が付いていなかったがそこは既にぬめりを帯びていた。 部屋にクチャクチャと水音が響く。  
「ったく、なんだよ、この濡れようわよー。 清純な女教師ちゃんは実は淫乱でヌレヌレ〜?キャハハ もうオレ様の  
魅力にメロメロだなぁ。 ホラ、この指見てみろよ。ネチャネチャだろ〜」  
そう言って悠里の目の前に突き出された清春の左手は、確かに悠里の愛液で濡れそぼって、指を開いたり  
閉じたりする度にキラキラと糸をひいていた。  
「イヤ……イヤ……」  
自分の痴態を突きつけられて真っ赤になりながらイヤイヤをするように頭をふる。 今までどんな悪戯をされ  
ても泣かなかった悠里が初めて清春の前で涙を零した。  
「いーなー、その顔。ゾクゾクするぜ。ククク」  
悠里の額に清春は自分の額を押し当てて、悠里の瞳を覗き込む。 悠里は清春の瞳の中に、隠しようも無い  
サディズムを感じる。 こんな年下の生徒に辱められてイヤなのに。 ムリヤリ自分の欲望を暴かれて恐いのに、本気で止められない。  
(こんなことしちゃダメなのに……。私は清春君のは先生なんだから。たとえ好きでも ダメなのに……)   
また涙が一筋零れる。  
 
「ヤベーなー。……オマエがそんな顔してっから、嫌がらせして寸止めするつもりだったのに、もー止めてやれなくなっちまったぞ」  
清春は手荒く悠里の足を広げてそのまま両脇に抱え込むと、自分も手早く上半身の衣服を脱ぎ捨てて、制服のズボンの前を寛げると、  
一気に悠里の中に入ってきた。  
「ふ、ぁあ……やあああぁッ……ン、ぁあッ!!」  
中に中に腰を進めて奥まで暴かれる。  
「ん、き……もち……イイっ……オマエ、の中……凄ぇ……イイっ……くっ……もってかれそー……」  
 
衝撃を抑えるためにじっとしていた清春だが、徐々に、徐々に。腰が激しく動き出す。快感にぶるぶると震える悠里の胸を  
鷲掴み、腰を強く、激しく突き入れる。 そのまま暫く激しくストロークを繰り返す。  
 
「ぁ、やぁ……き、よはるッくん、あ、ああ、ンあっ、あああ……あ!!」  
「なんか……ヤってる最中に名前呼ばれると、こ、腰にくんなー。 あー、オレ様、もうダメそう……」  
ついに極まりつつある清春が更に腰を強く、激しく突き入れる。  
「えっ? あ? やあぁ……そんな激しく、……しないでぇ……ああ、ぉあぅッ、ん、んんッ……!!」  
「お、れもッ、もう……ゆーり……ゆーり……く、ぅあ!!」  
清春は汗だくになった悠里の身体を強く抱きしめながら、ついにベッドにくずおれた。  
悠里は清春の重みを胸で受け止めながら、快感でボーとした頭で(清春君の真剣な顔、初めて見るな……)と呟いた。  
 
  □◆□  
 
……あれからどれくらいの時間が経ったのか。  
 
「や、やぁッ、駄目……、だめだよ……きよはるくんッ……、もう、駄目……あ、あ、ああッ!!」  
(また……イっちゃった……)  
過ぎた快感のせいで、頭が回らない。 それどころか足も……。もう指一本動かせない。  
まだ快感を引きずって蕩けるような顔をしている悠里。 頬は薔薇色に染まって額には汗で前髪が張り付いている。   
それを指ですくようにして清春が除けてやる。  
「カワイーなぁー。もう本当にオマエはよー。そんなカワイー顔してっから喰っても喰っても喰いたりねぇよ。 あー全然  
足りねぇ。もっと喰いたい。 ……骨までしゃぶりたいぜ、子ブタちゃん」  
「子豚は……止めてって……言ってるでしょー。……もうダメ、限界。 君、何回やれば気がすむわけ?ちゃんと  
数えてないけどもう5回はしてると思うんだけど……ハァハァ」  
「んー、あと4、5回ってとこかぁ? ヒャハハハハ」  
「げぇ!ダメ、そんなの絶対ダメ。 死んじゃう。私死んじゃうよ。バスケで鍛えてる清春君にそんなに付き合いきれる  
わけないでしょ!!この化け物!!」  
「キシシシッ。んじゃあと10回くらいはしてやるからな。十代の性欲を舐めんなよー!死ぬ前にぃ〜天国にいきな!!」  
「……お願いします。 もう勘弁してください」  
そんな激甘ピロートークを繰り広げているベッドの衝立の陰からいきなり思わぬ人の声がした。  
 
「いい加減にしろ、清春」  
「きゃあああ、つ、翼君!!」  
真壁 翼が立っていた。 いつの間に保健室の中に入ってきたのだろうか。 鍵が掛かっていたはずなのに。  
 
「二時間後に担任の着れそうな服を持って来いというから、このオレ様が自ら持って来てやったのに、貴様はいつまで  
待たせれば気がすむんだ!」  
「なんだよカベ。 オマエが仕込んだ薬で迷惑こーむってんだから、オレ様のパシリになるのは当然だろ! ところで勝手に  
入ってくんなよ。 オレのモノ勝手に見るな」  
清春がベッドのシーツを引き寄せて悠里に丸ごと被せて翼の視界に悠里が入らないようにする。  
そんな清春の独占欲まるだしの行動に呆れながらも内心目のやり場に困っていた翼はやっと衝立の影から出てくる。  
「まったく迷惑が聞いて呆れるな。 どうみてもrackからボタモチだろう。 逆にこのオレに感謝しろ。  
それに…………オマエ、いい加減にしないと、先生マジで死ぬぞ。 運動バカのオマエの体力と一緒にするな」  
 
「うるっせーよ。 それより言ったもんちゃんと持って来てくれたか?」  
「ああ、任せろ。スーツと女性用下着。 バストがXXcmウエストがXXcm……」  
「モガモガ、ちょ、ちょっと、なんであんた達が私のスリーサイズ知ってるのよー!!」  
「清春に聞いたからな」  
「き、清春君!!」  
「この間のオマエの身体測定の結果見たんだよ。 オレ様の手に掛かればそんな情報ちょろちょろい、クククッ!」  
「三角形の面積の出し方すら覚えないくせにそういうのだけは直ぐに覚えるんだから!」  
「オマエのセイカンタイはいっぱつで覚えられんのになぁ〜。キシシ」  
シーツでは覆い切れなかったパイプベッドに包帯で縛り付けられた悠里の両手に目をやって眉を潜めながら、それを見なかった  
ことにして翼は出口に向かう。   
(人のコイミチを邪魔するヤツはhorseにkickされるんだったか?日本のことわざでは)  
 
「……まあ、今日は学園は立ち入り禁止にしておいてやったから、ほどほどにしておけよ、バカップル」  
「サンキュ〜カベ。気が利くじゃん」  
「バレたら先生がクビになるんだからな」  
そう言って翼は少しだけ羨望を含んだ眼差しで振り返ったが、そのまま部屋を出て行った。  
 
「ちょ、ちょっと待って翼君、出て行かないで、お願い。せめてこの包帯だけでも何とかして!!お願い帰ってきてー!!」  
「おうおう、オレ様の腕に抱かれながら他の男の名前を呼ぶたぁいい度胸だな。 罰としてあと5回追加してやるよ、  
ヒャハハハハ! だいたい今まで、オレ様がどれだけ我慢してやってたんだと思ってんだヨ! 二人っきりの教室でノンキに  
薄着で補習したり、オレん家のオレの部屋まで押しかけやがって。 今日と言う今日は思う存分ヤラせて貰うからな!!」  
「もう……やめてぇ〜……」  
 
 
翌日、あまりのされように、流石に寝込んで起き上がれなかった……。   
そして、一週間後のバカサイユでのランチタイム。  
 
「ね〜、キヨ〜。最近マジメにホシュー出てるみたいじゃん。 どうしたのぉ〜? 最近はイタズラもあまりしてないって皆  
言ってるしさ。 センセに言われてマジで改心しちゃったわけ?」  
悟郎が清春に話しかける。 清春はたしかに最近真面目に補習を受けるようになった。他の生徒や先生達に悪戯を仕掛ける  
ことも少なくなっている。  
「バァーカ。改心なんてこのオレ様がするわけねぇーだロー?」  
「……じゃあどういう心境の変化だ?」  
瞬も不思議そうにしている。 今までは瞬が清春のしかける悪戯の一番の被害者だったから喜ばしい事なのだがあまりにも  
急に被害が減って少々気味悪がっているようだ。  
 
「おコチャマなイタズラはもう飽きただけだっつーの。 こいつありとあらゆる事を試したけど全然ヘコタレねぇからよー。   
それとさー。ククク。 ……こいつ泣かすのに、もっと効率のいい方法に気が付いちまったしなあー。 なー悠里?」  
 
「えっ? うぐっ、ごほごほっ!」  
いきなり話しを振られて悠里は思わず食べていたお肉を喉に詰まらせる。  
「あ〜、センセの事、名前で呼んじゃってー。 なんか二人ともア・ヤ・シ・イー」  
悟郎が冷かすのも何食わぬ顔で、悠里にその悪魔的に色っぽい顔を近づける。  
「ククク。 イタズラで泣かすより良い声で啼くもんなー。次はもっともっとイイトコ発見してやっからなー。キシシシッ」  
「!?」  
 
何を言われたのか私の鈍い頭で理解した時には、すでに他のB6にもその意味を悟られていた。  
(な、なんでバラすのよおー)  
どう言って誤魔化したらいいのか解らない。 今更遅いし。 恥ずかしすぎてもう顔を上げられない。   
涙目で清春君を睨みつけると悪魔は満面の笑みを返してきた。  
 
「センセ、なに俯いてんのーって。 わー、センセ!顔ユデダコだよー」  
「おい、まさか、先生がこんなヤツと……ヨモマツだな」  
「それを言うなら”世も末”だろナナのバァーカ」  
今まで我関せずだった瑞希やトカゲのトゲーも顔を覗き込む。  
「…………トマト…………みたい……」  
「トゲー?」  
 
翼は上品な仕草で、ナプキンを使って口を拭うと高笑いをした。  
「ハーッハッハッハ。 『聖帝の小悪魔』を手なずけたケウ?な教師だと思っていたが、調教が行き過ぎて悪魔に取り  
付かれたか。 担任。一生逃げられないぞ。 ま、せいぜい頑張れよ。 Good luck」  
「ちょ、ちょっとー?」  
いまだに顔の色が真っ赤なままの悠里の肩を強引に抱き寄せ清春が宣言する。  
「ったりめーだっつーの! おめぇらも手出すなよー。コイツに指一本触れたらぶっ殺ーす! 今だってコイツのカワイー顔を  
おめぇらに見せるのは嫌なんだからなぁ」  
「じゃあ、なんで見せてるんだよ」  
すかさず一に突っ込まれるが、一の方には目もくれず悠里の頤を清春が持ち上げる。  
「バァーカ。見せ付けてるんだよ! オレらのラブラブさをなー。 ……ちゅ」  
(今、キ、キ、キ……キスされた。 しかも唇に! B6の面前で!!)  
 
「……つまり、牽制しているワケか」  
一同が呆れる中、瞬は無視を決め込んで自分のランチをせっせと頬張る。 翼は流石に食傷気味でランチを下げさせて秘書の永田を呼ぶ。  
「フン、下らん。 これ以上目の前でされるのも気分が悪いな。 永田、バカサイユに、今度からベッドルームも用意してやれ」  
「はい、翼様」  
「そんなもの用意しなくていいから! って、な、永田さんもいたんですかー? もうイヤーーーー!!」  
 
ところで本当に一生逃げられないのは決定なんですか?……。 この”イケメンだけど馬鹿でスタミナの化け物”な悪魔から……。  
 
〜おわり〜  
 
 

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