「いいか、絶対絶対ぜーーーーーーーーってえヤメロ、俺様のタメっていうならヤメロ、絶対だ!」  
 目の前でぷぅっと頬をふくらませて『納得いかない』という表情を露わにした悠里が拗ねたような目線を送ってよこす、いつもならばそんな彼女の表情も可愛くて仕方がないのだが、こればかりは頷くわけにはいかない。命がかかっているのだから。  
 
 もうすぐバレンタインというある日の事だった、料理の腕前だけはB6並と評された悠里が「今年はどんなチョコがいいのかな?」などと聞いてきたのは。  
 日々の食事すら俺が作るのに(悠里を喰う前に腹壊すのはぜってぇイヤダからな、嬉しそうに美味しいといって食べるアイツを見るのもそんなに悪くネェし)寄りによって恋人達のイベント、バレンタインに手作りチョコダァ?ありえネェ。  
 しかし、今回はなかなか悠里も引き下がらなかった。  
 結局喧嘩したいわけでもないってぇワケで手を打ったのが「一緒に作る」という案だった。  
 いくら何でもつきっきりで側にいりゃ、真っ黒な不思議物体を作り出す事はないだろう。俺様がちょいちょいっと調べりゃ普通の作り方くらい覚えられるし。  
 ──ソレで悠里のカワイーい顔が見られるなら、俺様だってチョットくれぇは我慢してやるよ!  
   
「よし、じゃ作るわよ!清春くん」  
「ヘェヘェ」  
「ちゃんと手を洗って、エプロンしてね?」  
 と俺様に愛用のエプロンを手渡す。(モチロン悠里と色違いの俺様専用だ)  
 慣れた手つきで身につけて「準備出来たゼェ?」と声を掛ければ、赤くなった頬を隠すように後ろを向いて、  
「そんな姿も格好いいなぁ」  
 などとぶつぶつ呟いてる。  
 考えてる事が全部だだ漏れなのも可愛くて仕方がない、畜生、こんなことしてネェでお前を早く喰いてぇのにヨ。  
 それからの小一時間は……中々に凄かった、正直ビデオを仕込まなかった事を後悔するほどに。  
「オィ悠里、湯煎用のお湯フットーしてんぞ?チョコの適温は50℃って書いてんぞ」  
 と、ちんたらチョコを刻んでる悠里に声を掛けた。  
「えー、清春くん火とめてー!」  
「っと何ナニィ?刻んだチョコレートの2/3をボウルに入れ、湯煎にかけて50℃に温める−って……ウォイ!お前手元よく見ろ蒸気はいんぞ!」  
「え、お湯は入ってないわよ?」  
「水蒸気入ったら変わんネェダロォ?」  
「そういえばそうね」  
 ──悠里の料理がとんでもない事になるのは、持ち前の才能だけじゃなくてこの意外と大雑把なところに原因が在るのかも知れネェ。ほんの少し謎の解明に近づいたぜ。  
 
 その後はもう一生懸命だった、補習の時よりも必死だったかも知れない。  
 なんせ、悠里が自分でやっているような気を保たせつつ、且つ万全にフォローしたのだから。  
「ホレ、次は残りのチョコレートいれてソォーットソォーット混ぜんだぞぉ?こーんな風にナ?」  
 悠里をすっぽりと抱きかかえるようにして背後から手をとってスパテュラごと握る。  
「まぁーぜまぁーぜっットォ」  
「ふふ、清春くん何か楽しそうね?」  
「マァナァ俺様料理は嫌いじゃネェぜ?……お前が美味しいってカワイーイ顔してくれっからヨォ」  
 そう耳元で囁いてやると触れた頬があっという間にアッチくなんのが堪んネェ、今すぐ押し倒してやりテェくれーだが、これが終わらない事には悠里は絶対首を縦には振らないだろう。俺様の可愛いオモチャはそういうとこには頑固だ。  
「あっ、清春くん!みてみて、滑らかよ!」  
 温度も適温32度前後に下がった、ココまではなんとかクリアってところか。  
 悠里が温度計をチョコの中から抜いて、流しに置こうとしたところで俺にぶつかった。  
「きゃっ」  
「おーっトォ、怪我ねえか?温度計割れなかったか?」  
 ガラスだから気をつけねぇと危ないゼェ、中身もヤバイけどな。  
 そういって悠里の手からチョコに塗れた温度計を取り上げる、ぶつかった拍子に温度計に付いていたチョコが悠里の腕にべっとりと付いていた。  
「どれどれ、味見すっカァ?」  
 言うなりベロっと腕に付いたチョコを舐め取ると悠里が真っ赤になって悲鳴を上げた。  
「きゃー!な、なにするの君は!」  
 腕の中で身を捩るその姿で、我慢に我慢を重ねていた俺様の自制心って奴が音を上げる。  
 悠里に付いたチョコはこの世で食べたどんなチョコよりも旨く感じた。  
 ──もっと喰いテェ  
「クククっ、何って味見だってぇの……悠里、俺様イイ事思いついたゼェ?」  
 抗う悠里の身体を抱きすくめ、片手に丁寧にテンパリングしたチョコが入ったボウルをもって台所を抜け出した。  
「ちょ、ちょっと?清春くん??まだ終わってないじゃないのー」  
「あー……、俺様もー我慢限界」  
「え?」  
 ボウルを座卓に置くと、悠里を側に座らせ思いのままに抱きすくめ低く甘く囁いてやった。  
「今すぐ喰いたい……チョコもお前も、だかラァ、たっぷり喰わせろよ?」  
 指でチョコを掬って悠里の口に差し入れて、唇でチョコを拭ってから口付けた。  
 そっと舌を差し入れれば、驚きから立ち直ったのか悠里が身体を身じろぎさせるがそんなものお構いなしに口腔内を舐め尽くしてやる。  
「はぁっ……チョコの味すんゼェ?」  
「当たり前じゃない……バカ」  
「お前も……」  
 悠里を促して同じようにチョコを俺に含ませてキスをする。  
「甘ェナ、もっとだ悠里」  
「……うん」  
 
 何か熱に浮かされたかのようなそんな悠里はやけに艶っぽい、チョコの甘い匂いに酔っちまったんかな、俺たち。  
 抵抗らしき抵抗もないので次に進むか、と悠里の服の裾をたくし上げる。中途半端にはだけた姿で押し倒して、チョコをたらりと滑らかな肌の上に垂らした。  
「あっ」  
 微かに漏らした声もやけに俺を煽りやがる。  
「き…よはる…くん」  
「何だよ?」  
「まさか、その……わたしごと食べる気なの?」  
「オォ、ブチャにしては察しがイイじゃネェか、たっぷりあっからナァ……たっくさん喰えるゼェ?」  
「ちょっと、清春くん!だめよそんなの。食べ物を粗末にしちゃいけないんだから……あっんぁっっ」  
 ぺろりと、肌に垂らしたチョコを舐め取るとくすぐったそうに甘い吐息を漏らして背をのけぞらせた。  
 背中が浮いたところに手を這わせて下着を取り去れば、もうこちらの思うが侭ってやつで、悠里はいつものようにとろんとした顔で俺の服をしっかり掴んでいる。  
「ちょっと身体舐めたくれぇでんなトロットロになってんじゃネェよ悠里、まだまだこれからなんだからヨォ」  
 上半身から衣類を取り去り、まずは胸に垂らしたチョコを舐める、丁寧に丁寧に、解きほぐすように。  
 こんなのだめよ、ちゃんとベッドでと懇願する余裕などもうやらない。  
「言ったロォ?俺はチョコごとお前を喰うんだってナァ!」  
 胸の頂を舐るように口に含む、口内に広がる甘い甘いチョコの味。  
 胸も脇腹も、へその辺りまでたっぷりしゃぶり回してやり、背中も同じように味わった。  
 腕も、脚も。チョコと俺の唇が這っていないところなどないかのように。  
「はぁっはぁぁっ、おねが……きよはるくん、もう」  
「モォ悠里チャン我慢できませーんってカァ?……そのカワイーイおねだりに免じて」  
 そこで一旦言葉を区切って、悠里が俺の目を見るのを待つ。  
 目を閉じないまま唇を重ねて、そして唇が触れあったまま呟くように言った。  
「たっぷり愛してやるよ」  
 するりと下着に手を差し入れ、すっかりぬかるんでいたそこをなで上げる。  
「クククっ、すっげートロットロだナァ?チョコみてぇだゼェ」  
 やだ、と羞恥に身を竦める所を、無理矢理押し開いて下着をはぎ取りそこに顔を埋めた。  
「チョコ塗ってネェのに甘ェナ、お前はどこもかしこも甘ったリィ」  
 震える脚を押さえつけ、舐め回す。  
 力の全く入らない手が俺様の髪を梳くように撫でるのを感じて口角をあげた。  
「悠里、もう力はいんネェんじゃね?クククっ……たぁっぷり啼かしてやンゼェ」  
 指をぬめりのわき出る内に潜り込ませなで回す、もうすっかり身体が覚えている悠里のイイトコロを探り当てるとぐっと強くそこを押し上げ、目の前で自己主張をしている部位をついでに吸い上げた。  
「やぁっ清春くん、そこだめぇ」  
「オゥ、イッチまえよ。悠里、最っ高に可愛いゼ……オラ、もっとイきテェか?」  
 ぐりぐりと痛みを覚えない程度に力をいれて弄ってやれば、甘ったるい声で啼いてすがりついてくる。  
 甘えるように身を寄せる悠里が愛しくて、可愛くて。  
 もっと啼かせて、俺だけ欲しいと言わせてみテェなんてサディスティックな願望が身体を駆け抜けた。  
 手早くゴムをつけてソレを悠里のぬかるみにつぷっと先端だけ埋め、蕩けたその顔を覗き込む。  
「……あ、きよはるくん」  
 腕をお互いの首にからめて引き寄せ、唇を合わせる。  
 もうここがドコで、その身にチョコを纏っている事など忘れてしまっているのだろうか。  
 時折り、チョコの残る部位に甘く噛みついてやると切なそうな吐息を零す。  
 物欲しげに俺の腕を掴み、遠慮がちに悠里が口を開いた。  
「あの、清春くん?……どうして?」  
 それ以上は出来ぬとばかりに唇を閉じる。  
「何で、挿れねぇかっテェ?」  
 わざと悠里が口にしなかった言葉を言ってみせる、そしてぺろりと唇を舐め、ほんの少し身を沈めて、嬉しそうに俺を受け入れようとした悠里をみて引き抜いた。  
 どうして?と訴えるような目をした悠里に、ニヤニヤとした笑みを浮かべて浅く軽く煽るように音を立てた。  
 
「きょーはバレンタインダロォ?俺様に愛を打ち明けてくれる日じゃネェのかヨォ。  
 お前の愛を見せてクレよ、ナァ悠里、俺様のこと欲しがれよ。  
 じゃーネェと、ずうっとこのまんまだゼェ?イキてぇだろ?」  
 淫らに頬を染めて甘い悲鳴を上げながらも、なかなか聞きたい一言を言ってくれない。  
 俺は、俺様のこと欲しいって、お前の口から聞きテェんだヨ!  
 いい加減観念して、俺様にメロメロになっちまえ。  
 浅く入りかけては抜き入りかけては抜き、ちゅぷちゅぷと音を立てさせ時折、外して少し上に堅く張り詰めた快楽の固まりをなでさする。  
「もう、お願いだから……きよはるくん……意地悪しないで、──欲しいの、清春君が欲しいの」  
 切望していたその言葉は思ってた以上に俺を熱くさせた、言うなり恥ずかしそうに目を伏せる悠里の両頬を挟み込み顔を覗き込んで、  
「よぉーっし、イイ子だ悠里」  
 ちゅぅっと唇に吸い付く。  
「たっぷりご褒美にイかせてやんぜ」  
 ぐっと悠里の中に突き立てて、中をこすりあげる。  
 ホントにお前はどこもかしこも甘い、声まで。  
 さっき散々可愛がった、悠里のイチバンイイトコロを俺のモノで狙い撃ちにしてやれば、お気に入りのカワイイ声が際限なく零れ出す。  
 まるで正面から抱き合った時みたいにきゅうきゅうと絡みついてくる悠里の内側を好き放題に撫で回して、涙も声も枯れるほど可愛がってやりテェ。  
「愛してんゼェ悠里」  
 息も絶え絶えになるほど身体を責め立てて、心は言葉で責め上げる。  
 俺の名前を何度も呼んで、大好きと縋り付いてくるこの俺様の大事なオモチャを今日はどれだけ啼かせてやろうか?  
 悠里の最も奥深いところで熱を吐き出した俺は悠里を抱きすくめて囁いた。  
「今日はとことん愛してやっからナ、とりあえず−、俺の気が済むまで服は着られないと思ってイイゼェ?」  
「──もう、バカ」  
 力なく振り上げられた拳は俺の頭に下ろされる前に床に縫い止められた。  
「好きにイッテロヨ、今日の俺様は超ご機嫌だからナァ」  
「なんでよ?」  
「アァ?たっぷり腹壊さネェチョコ喰わせてもらったし−?悠里はたっぷりごちそうになれるかんナァ。  
 まだまだお前は喰いたりネェから延長戦と行こうゼェ!」  
   
 情けない悲鳴を上げる悠里を組み敷いて、キシシっと笑い声を上げる。  
 残ったチョコレートや台所、チョコに塗れた身体の事はまた後で考えようと、思考を悠里を料理することに集中することにした。  
   
   

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