朝方にふっと目を覚ますと、アラタくんが目の前で寝息を立てていた。
少し方向を変えようにも、彼の腕に抱きしめられていて動けない。
けっしてきつい拘束ではないけど、少しでも動いたら彼を起こしてしまいそうで動けないのだ。
変わりに視線を顔に向けてみる。
眼鏡で隔てられる端整な顔立ちや、オールバックを降ろした髪型、歳相応の少し幼く見える寝顔に頬が緩む。
……やっぱり、かっこいいんだな。
改めてそう思うと何故か急に恥ずかしい気がして顔から視線を反らしてしまう。
窓の外は夜と朝の空が混ざり合って、不思議な色合いだった。
「……オレに見とれちゃってたのかな? 可愛い妖精さん」
いきなり声をかけられて心臓がどきりと鳴る。視線を上げると意地悪に笑うアラタくんが居る。
「い、いつから起きてたの?」
「そりゃーもう、MMS……もぞもぞされちゃあ、ね。ンフッ」
「起きてるなら、その、起きてるって」
「声かけようと思ったら可愛い顔で熱視線されちゃったから」
「……どうせ私の慌てる顔とか、見たかったんでしょ」
少しだけ拗ねてみると、否定も肯定も無く改めて彼は私の背中に触れる。
大きい手のひらは私をなだめるように撫でていく。
「それに、綺麗な空に大好きなアナタの姿があるんだよ? 芸術を愛するオレとしては見とかなきゃ系じゃない」
「……綺麗な朝焼けよね、確かに」
アラタくんは背中に触れていない手で私の前髪をかきあげる。そしてそのまま唇を落としてくれる。
「……おはよう、真奈美さん」
「うん。おはよう、アラタくん」
朝日が昇り、窓に眩しい光が差し込んでくる。けど、設定した目覚まし時計が鳴るまではこうしていたい。
その考えを共有するように、私たちは見詰め合って手を繋いだ。