時間は午後7時前。
間もなく千聖がやってくる時間だ。そわそわと時計を見上げて、真奈美は緩む頬を押さえた。
大学生になった千聖は実習に、講義に忙しく、また不破家23代当主としての責務に追われ、
なかなか自由な時間が取れなかった。
真奈美も新しく受け持ったクラスに慣れるまで、慌しい日々を過ごしており、4月以降、
数えるほどしか会えていない。
お互いの環境が変わったばかりだし、慣れるまでは仕方ないと言い聞かせても、卒業までは
毎日顔を見ることが出来ていたのに、と切ない気持ちを我慢していた。
今日は久しぶりのデートだ。
もう一度時計を見上げようとした時、玄関のチャイムが鳴った。
「真奈美」
洗い物を済ませ、リビングへ行くと、ソファに座った千聖が手招きをした。
「なに?千聖君」
近づいた真奈美にニヤリと笑みを浮かべ、千聖は真奈美の手を掴み引いた。
「きゃっ!」
バランスを崩した真奈美は、千聖の腕の中に倒れこむ。ふわりと千聖の香りが鼻先をくすぐり、
心臓がドキンと跳ねた。
「こうやって、おまえと会うのも久しぶりだな……会いたかった」
二人の距離がゆっくりと縮まり、が重なる。
「私も、会いたかったよ」
啄ばむようなキスを繰り返しながら、真奈美は千聖に囁いた。真奈美の言葉に気をよくしたように、
千聖のキスが深くなった。真奈美の口内へ舌を滑りいれ、歯列を舐める。
「んん!」
千聖の舌は自由に蠢き、真奈美を翻弄する。気持ちよくて、頭がぼんやりとしてくる。
けれど――このままでは、千聖のペースに乗ってしまう。
千聖の与える快楽に流されそうになりながら、必死で真奈美は千聖を押し返した。
突然の中断に不満げに視線を絡める千聖の瞳に、欲情が揺らめいていて、真奈美を煽る。
熱くなっていく身体を必死に宥めながら、真奈美は口を開いた。
「や、やっぱり……するの?」
「あたりまえだ」
返事をしながら、千聖は唇をゆっくりと首筋に落とす。
吐息が肌をくすぐり、ビクンと真奈美の肩が跳ねた。
「嫌なのか?」
「い、嫌じゃないけど。……ぁ、んん」
千聖の手がシャツの上から真奈美の胸に触れ、強く揉みしだく。
嫌ではない。千聖と肌を重ねるたびに、愛しさが深くなる。ただ――
「明日は、体育祭だから……1回だけだよ」
「なんだと!?」
「だって……明日、走れないと、困るもの」
真っ赤な顔で、真奈美は呟く。いつも、千聖は何度も求めてくるのだ。激しく揺さぶられ、
角度を変えて突かれる。声が嗄れるまで喘がされて、最後には指先さえ動かせなくなるのだ。
情事の記憶を思い出して、真奈美の胸が甘く疼いた。
不満そうに眉をしかめる千聖に、申し訳ない気持ちになりつつも、いつものように抱かれて、
仕事に影響が出るのはまずい。
「久しぶりに会ったのに……。会ったらおまえにもっと触れたくなる。それを我慢しろというのか」
「私だって、ずっと会いたかったし、触れて欲しいよ」
「じゃあ――」
「でも、困る」
千聖の眉間のしわが深くなる。
「……やっぱり、嫌なのか」
「……嫌じゃないから、困ってるんだよ。だって、いつも、気持ちよすぎて、もっと、って
思っちゃうんだもん。私だって我慢するんだよ?」
最後の言葉は千聖の唇に吸い込まれた。歯列を割り口内を千聖の舌が蹂躙する。真奈美の舌を
絡め取ると、強く吸った。
「は、ぁ」
時折洩れる甘いく湿った吐息に、濡れた音が混ざり、二人を包む空気がじわりと熱を帯びる。
「分かった。今日は我慢してやる」
真奈美の耳元に近づき、囁いた。湿り気を帯びた吐息が耳の中に届き、ぞくぞくとした快感が
真奈美の背中を駆け上がる。
「1回だな」
「……いいの?ぁ、やン」
予想外にあっさりと了解する千聖を、一瞬、奇妙に感じたが、耳の中に舌を突き入れられ、
思考はかき消された。
「今日だけな。俺が1回イったら、終わってやろう」
しゃべりながら千聖は手早く真奈美の服を剥ぎ取り、先ほどのキスで火照った肌へ指を滑らせた。
千聖の触れた箇所から情欲に塗れた期待が真奈美の中に広がる。巧みに蠢く指に煽られた熱が、
真奈美の腰に溜まっていった。
「あ、……ふ、ぅ」
鼻に掛かった甘えた声が真奈美の口から洩れた。
千聖の大きな手のひらが真奈美の胸のふくらみを収め、強く揉みしだく。白く柔らかな乳房が、
千聖の情欲のままに激しく揺さぶられ、歪む。その中心がぷっくりと尖り、胸を包む千聖の掌に
存在を主張する。指の腹で尖りを軽く押されると、それだけで甘い痺れに真奈美の息は止まった。
充血し、ジンジンと疼く乳首を弄るように擦りながら、千聖はひどく優しい声で囁いた。
「もう、こんなに硬くなっている」
「や、あ……ん」
乳首をぎゅっと摘まれ、真奈美は喉を仰け反らせて嬌声を上げた。痛いほど尖った乳首を口に
含まれ、舌でぐにゅりと乱暴に潰される。電流のような強い刺激に、じわりと真奈美の瞳が潤む。
「っ……ふ、あ……あっ!」
両胸を唇と指に激しく攻められ、高くなっていく声を抑えられない。
「だ、めぇ……っ!」
途切れることなく耳に届く甘えた声が恥ずかしくて、真奈美は千聖を睨む。が、甘く蕩けた瞳では
逆に千聖を煽る結果にしかならない。千聖の指がヘソの横を掠めて、下へと降りてく。
「相変わらず敏感だな。真奈美は」
茂みの中へ指を滑らせると、千聖は指で蜜を掬った。真奈美の秘部はトロトロに溶けて、たっぷりと
蜜を滴らせていた。その中へ指を入れ、濡れた音を響かせる。
言葉とは裏腹に歓ぶ身体に、真奈美の頬が羞恥に紅く染まった。
「やだ……千聖君」
「ここが、イイんだろ?」
「やぁ!」
つい、と割れ目の中の突起を撫でると、真奈美の身体に甘い痺れが走る。蜜を塗りこめるように
ゆるゆると千聖の指が動き、時折軽く摘まれる。千聖の与える快感が、波のように何度も襲い、
真奈美はキツク噛み締め耐える。
「どんどん溢れてくる」
千聖は真奈美の反応を確かめながら、強く、弱く、快感の蕾を責め続ける。執拗な愛撫に熟れた
蕾が弾けんばかりに膨らんでも、千聖はギリギリの強さで責め続け、耐え切れなくなった真奈美は、
潤んだ瞳で千聖を見つめる。
「千聖君……もう」
許しを請うように眇められた瞳の奥で劣情の炎が揺れている。もっと激しく、もっと奥を抉って
欲しい。太く熱い塊で貫いて欲しい。焦れた身体はジンジンと疼き、期待に激しく脈打っていた。
「ダメだ。今日はおまえをもっと感じさせる。真奈美の中に入って直ぐに終わったらもったいないだろ?」
「っ!……そんな……ひどい」
思わぬ拒絶に、真奈美の瞳が歪む。緩く追い立てながら、千聖は優しく笑う。
「ひどくない。ちゃんと約束は守るんだからな。真奈美は俺を感じていろ」
ギュ、と蕾を強く摘まれ、真奈美の身体がビクッと跳ねた。
「あ、ぁああ!」
喉を逸らし、高い声を上げる。
強すぎる快感にパクパクと口を動かすが、言葉にならず、身体に燃え広がった熱情を宥めるように、
大きく胸を上下させた。絶頂を向かえ、力を失った身体を満足そうに見つめ、千聖は真奈美の膝に手を掛けた。
両膝を立たせ、その間に顔を近づける。
「……ん、ぁ……」
肌を撫でる吐息にさえ感じてしまい思わず声が洩れた。甘く震える声に応える様に、千聖は割れ目に
舌を這わせる。先ほどの愛撫で大きく育った蕾を、ねっとりと濡れた舌が包み込む。一度達して敏感に
なったソレを、舌で転がし、乱暴に潰し、強く吸って、甘く歯を立てる。千聖は時間をかけて真奈美の
身体を煽り続けた。真奈美の口からは絶え間なく荒い息と喘ぎ声が洩れる。
千聖の舌は絶妙なタイミングで真奈美を追い立てる。
けれど、絶頂を迎えるには少しだけ足りない強さで――耐え切れなくなった真奈美が腰を押し付けると、
その分だけ千聖は身体を引いて力を緩める。欲しくて欲しくて、焦れておかしくなりそうだった。
「千聖君……ね、え……も、無理ぃ」
「なにが無理なんだ」
「もう、イかせ、てぇ……」
昂ぶった感情が、涙となって真奈美の頬を転がる。
「俺が欲しいか?」
真奈美はこくこくと頷く。グズグズに溶けた体の奥に、早く千聖を受け入れたい。
熱い楔を深く深く埋め込んで欲しい。
蕩けた身体を乱暴に掻き混ぜて欲しかった。
千聖はようやく身体を起し、真奈美の身体を見下ろした。
「……千聖君が、欲しい、の」
真奈美の声は喘ぎすぎて掠れていた。とろ火で炙られるような快楽に、真奈美の身体は柔らかく
蕩けきっていた。熱く火照った肌はうっすらと汗が浮かび、泣きすぎて目元は紅く染まっている。
真奈美の痴態に、千聖は満足そうに喉を鳴らした。
千聖の獰猛な、獲物を狙う野生の獣のような視線に、真奈美の胸が期待に震える。
「お願い……」
「しかたないな」
甘やかすように千聖は微笑むと、真奈美の腰を摘む。肌に触れた千聖の手の平は燃えるように熱く、
千聖の興奮を真奈美に伝えた。
「いくぞ」
千聖は真奈美の濡れた場所に自身を押し当てると、一気に身体を進めた。
「あっ!あ、あああっぁーーー!」
激しい進入に、一瞬真奈美の意識が霞む。待ち焦がれた質量に、全身を甘い痺れが駆け抜けた。
焦らされ続けた身体は、千聖を逃すまいと無意識に絡みつき蠢く。
「う……そんなに締め付けるな。もっていかれそうだ」
千聖は眉目を寄せ、耐えるように細く息を吐いた。それから、繋がった秘部を大きくゆっくりと抉り、
浅い抜き差しを繰り返す。焦らすようなゆるゆるとした刺激がもどかしくて、真奈美は無意識に腰を揺する。
真奈美の身体を押さえるように、千聖は身体を寄せて、真奈美の耳元へ囁いた。
「腰が揺れてる。イヤらしいな」
深くなった結合と、耳に吹きかけられた息に、ゾクゾクと快感が背筋を伝う。
その弾みで真奈美の中が収縮し、千聖の存在を強く感じる。
「だ、って」
「真奈美の中……熱くって、絡み付いてくる。もっとゆっくり、おまえの中を味わいたいのに、
気持ちよすぎて……我慢できないな」
千聖は腰を引くと、今度はぐい、と奥まで自身を突き入れた。
「あぁ!」
真奈美の片足を上げると、さらに二度三度と深く深く抉りこむ。待ち望んだ強い快感に、真奈美は
脚を強張らせて快感に耐えた。千聖は我慢できないとの言葉通り、激しく真奈美を責め続ける。
堪え切れない喘ぎ声が、真奈美の口から途切れることなく洩れ、勢いよく肌のぶつかる音が部屋に響いた。
感じる場所を何度も擦られて、真奈美は大きく背中をしならせて、高い声を上げた。
絶頂を迎えた身体を、千聖は更に何度も穿つ。
「ダメぇ……おかしく、なっちゃ……う…。……んんっ!」
焦点の合わない瞳から、次々に涙が零れる。
ビクビクと快感に震える真奈美を、千聖は容赦なく追い上げていく。何度も何度もイかされて、快感の
鎖に縛られ、自由を奪われる。千聖の与える甘美な責め苦に、何度も気を手放しそうになる。
「真奈美……さすがに、もう……」
苦しげな千聖の声が洩れる。
「千聖君……千聖君……っ!」
耐え切れないように名前を呼び続ける。真奈美の中で、千聖の質量が増した。勢いよく腰を引き寄せられ、
より深い場所に抉りこまれた。激しい電流のような快感に貫かれて、とうとう真奈美は意識を手放した。
千聖は上がった息を整えながら、ぐったりと横たわる恋人を見つめる。
いつでも強く求めすぎて、真奈美を限界まで追い詰めてしまう。
無理をさせてしまうことに罪悪感を覚えないわけではないのだが、好きな気持ちを押さえられない。
湧き上がる激情をうまくコントロール出来なかった。
真奈美は目が覚めたら、多分、自分を責めるだろう。
「面倒だな」
言葉とは裏腹に、千聖は笑みを浮かべて真奈美の髪をそっと撫でた。