年末。  
「今年ももうすぐ終わりだねーミク」  
「そうですねープロデューサーさん」  
「お餅でも喉につまらせながら、今年を振り返ってみようか」  
 
 思い出される数々の超絶死闘。それはミクが生まれてからの修羅の道。  
 
「ぐはぁ!(吐血)」  
「思い出したらダメですよプロデューサーさん!」  
「おかしいな……。なんでこんな修羅の道なんだろう……」  
「ミクは歌うだけですから」  
「新型には平穏な道を歩んでほしいものよのう」  
 
 ……  
 そんな早くも年末気分に浸るボーカロイドのそのプロデューサーは置いていて。  
ここボーカロイド開発室では、新型ボーカロイドの最終テストが着々と行われていた。  
ボーカロイド脅威の技術力!  
 
 
 
  『お肉がいっぱい肉にの』  
 
  お肉いっぱい食べたいな  
  あなただけのお肉だから  
  あなたはもうお腹がいっぱい?  
  耳もとでささやくの  
  肉にのを言ってる  
  あー、お肉 肉 肉   
  もう一度肉  
 
  お肉 肉ニノ みんなのお肉  
  肉 肉 野菜 肉 肉にの カレーのお肉は全て人肉 ホントだよ?  
  ああ、どうしてあなたはお肉じゃないの?  
  わたしはこんなにも肉にのなのに  
 
  あー、お肉 肉 肉  
  何度でも肉  
 
  愛の結晶 誰より愛するあの人に  
  食べてほしい 食べさせたいの  
  だ・か・ら?  
  肉を求める大冒険 愛を探す旅立ち  
  お肉がほしーい!  
  そ・れ・で・?  
  お肉がいっぱい肉にの  
  わたしのお肉  
  お肉がいっぱい肉にの  
  あなたのお肉  
  お肉がいっぱい肉にの  
 
  でもね  
  あなたの肉はもうないの  
  どうして?  
 
 
 パワフルに、そしてチャ−ミングに歌い上げる二人。そう。新型は二人だった。  
「最終テスト、クリア」  
「システム、オールグリーン」  
「凄い! 見てくださいよこの数値。全てがシミュレーションの3倍以上の性能を出してます!」  
「うむ。……リンとレン……二人の相乗効果か」  
 歌い終わったリンとレンの二人−ここではボーカロイドも人と数えられる−が、お互いに背を向き合ったままびしっとポーズを決めている。  
 明日は二人の発売日。即ちデビュー当日。クリスマスも終わり、大晦日を目前にした時期にである。  
「でじゃ二人とも。明日は大事なデビューだ。今日はもう上がってくれ」  
「おつかれさまでしたー」  
「おつかれさまー」  
 開発主任の言葉でスタッフが次々と撤収を始める。仮設ステージの上ではリンとレンがいまだ決めポーズのまま固まっていた。  
「おーい、もういいぞー」  
 その言葉に、ぐらっとレンが揺らめいた。  
「よし。あたしの勝ち」  
 何故だか勝ち誇った顔でリンがぐっと拳を握っている。  
 
 リンとレンは開発室の同じ部屋に住んでいた。ベッドが一つの殺風景な部屋。  
二人はいつもこのベッドで一緒に寝て、一緒に起きて、そして歌っていた。  
 でも。  
 明日はデビュー。そうなったらもう二人だけではいられない。今日は二人だけの最後の夜。残された貴重な時間。  
 だから。  
「ねえ、レン」  
「ん?」  
 扉を閉めた瞬間、ぶつかるようにリンが抱きついてくる。  
「あっ……」  
 そして手が股間に触れた。ズボンの上から。自然に声が漏れる。  
「『あっ』だって……」  
 同じ声でリンが囁く。白いリボンを揺らして。  
 男と女に分別されているが、レンとリンの声は本質的には同一だった。  
同じサンプル音声から製作されたのだから当然だろう。  
「もう……」  
 呆れながらもレンの手もリンの股間に伸びる。  
「あっ」  
 ズボンの上から脚の付け根に触れると、同じく声が漏れた。甘い喘ぎ声。  
 リンは女の子だからスカートにすればいいのに。そんな意見もあったがリンが拒否した。レンと同じズボンがいいと。  
 そして今、お互いのズボンに手を置いてまさぐりあう。  
「っ……んんっ」  
「くっ…はんっ……」  
 互いにくぐもった声が漏れ、耳にかかった。細い脚が小刻みに震える。  
「ほら……もうこんなにして」  
 小悪魔の笑みでリンが手の中の暖かい膨らみに意識を集中する。弄ばれたレンのそこはごく当たり前に勃起していた。  
「リンだって……もう」  
 手をぎゅっと押し込むと、リンが「あんっ」と鳴き、腰を揺らした。ズボンの上からでもはっきりと分かる。濡れているのが。  
「あはっ」  
 ぺろっと舌を出し、リンがレンの頬を舐める。同じようにレンもリンのほっぺたに舌を伸ばす。  
 
「ん、んんっ」  
「はんっ、あんっ」  
 ほっぺを舐めながらも、腰をまさぐり続ける。もう我慢できず、お互いに腰を揺らしていた。  
「はああぁ……ああっ」  
「んっ、うううんぅ……。イイ、イイよレン……」  
「リンも……うん」  
 頬を舐める口がやがて近付いていく。お互いの唇へと。  
 そして口が触れ合い、電気が走った。  
「んんー!」  
「アー!」  
 ビクンッと硬直し、股間に触れる手が濡れる。  
 いつまで硬直したまま唇を重ねただろうか。  
 ふーと肩が下がって脱力し、そのままでベッドに倒れこむ。横になって見つめ合い、ようやく口を離した。股間に触れる手はそのまま。  
「……」  
 どちらも潤んだ瞳が揺れている。性感の余韻に浸りながら、互いの性器をしっかりと感じていた。  
 膨らんだままのレンの男性器。濡れたリンの女性器。どうして歌う為のボーカロイドにそんなものが必要なのか。  
あるいは歌うために必要なのか。  
 ハァと熱い息を吐いて、リンが瞳を閉じる。レンはその瞼に優しくキスして、頭の白いリボンに触れた。  
「ん……」  
 リンが微かに身じろぎした。レンの胸に顔を埋める。  
 彼女の−双子の髪とリボンを撫でながら、レンは勃起したままの己の分身を意識した。  
と、ビクンビクンと触られたままの分身が脈動する。  
「レンのここ……とっても暖かい」  
 目を開けてリンが囁く。  
「ねえ、レン……」  
「ん?」  
「明日から……ううん、何でもない」  
「大丈夫」  
 その華奢な肩を抱き寄せ、02と刻印された肩にキスし、レンは告げた。  
「いつも一緒だから」  
「うん……」  
 レンの膨らんだ股間をさすりながら、リンはぼそりと続ける。  
「うまく……歌えるかな」  
「歌えるよ」  
 むず痒さに身震いしながらレン。彼もリンの股間を押し付けるようにさすっていく。  
「……ん」  
 紅潮した頬、はぁと熱く吐かれる息。切ない気分にぎゅっと胸が鳴る。  
「ミクお姉ちゃんも……デビュー前はこうだったのかな」  
 デビュー前はどんなボーカロイドでも不安になるという。でも。ミクは一人だ。リンとレンのように対になるボーカロイドはいない。  
誰か慰めてくれる人でもいたんだろうか。  
「リン」  
 レンから口にキスし、ちゅーと唇を吸う。甘く、そして切ない。  
 そしてリンの肩に手を置いて、上になった。  
「あっ……」  
 同型でもやっぱりレンは男の子だ。下から見上げると何だか逞しい。  
 股間に手を置いたまま、肩に置いた手を胸に回す。  
「あっ……ああっ」  
 ぎゅにゅっと揉まれた。  
 
 14歳という設定年齢に準じた小振りの胸。レンの手にも包まれ、握り潰される。  
「あうっ!」  
「ごめん。痛かった」  
「うん……」  
 素直にリンは頷く。潤んだ瞳は涙目になっていた。決して痛みのせいだけではない。  
 レンから股間に置いた手を離す。そして自分の股間をぎゅっと握るリンの手をどかした。  
「脱ぐよ」  
 わざわざ宣言して、自分からズボンを脱いだ。パンツと一緒に。  
 ぷるるんっ、と14歳の少年のまだまだ未成熟な小振りのちんこが飛び出す。  
毛も満足に生えそろっていない青い果実を思わせる熟しきる前の男肉。分厚い皮に覆われ、先端だけが赤く割れていた。  
「ふふっ」  
 なんだか無性におかしくなって、飛び出たそれを素で握る。  
「あっ」  
 レンから自然に漏れる声。  
 手に触れたそれは熱くて、そして青かった。未成熟な果実。  
「リ、リン…」  
「ん……」  
 ちんこを素で握られたまま、レンが紅い顔を寄せる。ちゅっと軽くキスし、今度はリンが腰を浮かせた。  
「脱がせてよ」  
「うん……」  
 ベルトとボタンを外し、ズボンを下にずらす。  
「あっ」  
「ふふっ」  
 レンの驚いた顔に、リンはしてやったりと微笑を浮かべる。  
 どんなパンツだろう、と思ったら、リンは何も履いていなかった。ノーパン。  
「今日は……ちょっと冒険しちゃった」  
「明日は履くんだよ」  
「うん」  
 ゆっくりとリンが細い脚を広げる。レン同様、毛のほとんど生えていない割れ目。そこはもうぐっしょりと濡れていた。  
「きて……」  
 握ったままのレンの分身をそこに宛がう。誘われるままレンは腰を突き出した。  
「行くよ」  
「うん」  
「いっせーの」  
「せっ!」  
 同時、レンが腰を突き、リンがぐっと奥歯を噛み締めた。  
「つぅ……!」  
「い、いたくない……?」  
 自らも歯を噛み締め、レンが聞く。まだ先端だけとはいえ、敏感なちんこを固い肉に包まれ、レンも痛烈な痛みを感じていた。  
「ん……あうっ」  
 腰を浮かせたまま硬直し、リンも痛みに耐える。だけど心地いい痛み。  
二人の結合部からは一筋血が流れていた。  
「はあぁ……ああっ」  
 下になったリンの胸が上下する。服を着たままの二人は汗びっしょりになっていた。  
 結ばれた腰は固まったように動かず、痛みの波が引くのをじっと待つ。  
「り、リン……もう」  
「うん。もういいよ」  
 
 ずるっ、とリンの先端が14歳の固い秘肉を掘り進む。  
「ぎふぅ!」  
 シーツを掴み、リンが痛みに背を仰け反らせた。それも一瞬。  
 すうぐにリンは奥に到達し、目を閉じてリンの中を感じる。固く、青い、蜜壷の中を。  
「ん…レン」  
 シーツを掴んでいた手をレンの背中に回し、リンがぎゅっと抱きしめてくる。  
そうすると、より深く二人は結ばれていった。  
「…んぅ…リン、リン!」  
 レンも抱き返し、リンの柔らかさを感じながら、腰を小刻みに振る。もう我慢できなかった。  
頭が真っ白になり、ただ本能に突き動かされて腰が動く。  
 交尾がこんなにも気持ちいいだなんて想像もつかなかった。ボーカロイドにも子供が作れるんだろうか。  
快楽で麻痺する思考でそんな考え浮かんで消えた。  
「レン……レンっ……!」  
 レンが腰を動かす度、固い肉がえぐられ、痛みが全身を駆け巡る。そして肉の悦びも。  
「あ、ああっ……アッ…」  
 本来は歌う為の口から涎と喘ぎを漏らし、リンはただ小柄な体を揺らし続けた。  
「あああっ…・・・あふうぅ……ぐううあっ!!」  
 つーと頬を涙が伝う。嬉し涙。最初がレンで良かった。これからは……他の誰に抱かれるかもわからない。  
 でも。だから。  
 最初がレンで良かった。  
「レ、レン」  
「うん。リン」  
 
 好き。  
 
「あがああっ!」  
「うぅ!」  
 びくっとリンの身体が一層飛び跳ね、ベッドを揺らし、リンを締め付けた。  
同時、リンも放つ。白い男汁を。それが人間の精液と同一かどうかは不明だが。  
そしてリンにそれを受け止める器官があるかは知らないが。  
「「アアアアアアー!!!」」  
 同型の二人のボーカロイドは同時に絶頂に達し、痙攣し、ベッドに沈み込んだ。  
 
「ねえ、レン」  
「ん?」  
「ミクお姉ちゃんてさ…。とってもキレイだよね」  
「何だよ急に」  
 レンはニタッと笑い、リンのリボンを撫で、  
「さっきのリン……すごく女の子してて可愛かった」  
 カー、とうっすら汗をかく顔が一気に真っ赤になる。  
「ふふ」  
 硬直したリンを抱きしめ、レンは絶頂の余韻に浸っていた。  
「明日は……頑張ろうな」  
「うん……」  
 レンの胸に頬を寄せ、リンは安らいだ顔で目を閉じた。  
 明日からが二人の本番。  
 
 
「というのが、リンとレンの今の状況だ」  
「はわー!」  
 開発部のモニター室。ミクの目は釘付けになっていた。リンとレンの部屋の取り付けられたカメラに。  
「あ、ああああ、あの二人あんなことしてますよ!?」  
「そうだな」  
 横でうんうんとミクのプロデューサーも頷いている。  
「手間が省ける」  
 リンとレン。良いコンビになりそうだ。  
「私、決めました」  
「何を?」  
 訊ねるプロデューサーに構わず、ミクは固めた拳にネギを握り締める。  
「私、決めたんです」  
「だから何を?」  
「弟と妹の面倒は私が見ます!」  
「はぁ?」  
と言う間にミクは部屋を飛び出していった。  
「あっ。おい。こら」  
 もはや止められないのは分かっている。やれやれといった感じでプロデューサーはミクの後を歩いていった。  
 
 ばーん  
 
 いきなり扉が開いて、リンとレンはピキッと固まってしまう。何しろ下半身裸でベッドで抱き合っているのだ。  
 そして部屋にいきなり入ったミクはネギを振り回して宣言した。  
「お前ら……ミクミクにしてやんよ!」  
「えー!? えええぇー!」  
「ミクお姉ちゃん抱いてー!」  
「えええええええええええぇーっ!」  
「いや、ミク。そんな急に」  
「プロデューサーさんも一緒に!」  
「いや僕はもう年だから」  
「一緒に!」  
 
 
 翌朝。  
「も、もうダメ……」  
「死ぬ……若いお前らに合わせてたら死ねる」  
 搾り取られたレンとプロデューサーを他所に、ミクとリンはベッドの上でしっかりと手を繋いでいた。  
「ミクお姉ちゃん、素敵!」  
「はい。ミクお歌歌えます」  
 裸の二人の股間からはとどまることなく、白い汁が流れていた。  
 
(おしまい)  
 

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