「う〜、トイレ、トイレ」
今トイレに向かって全力疾走している僕はvocaloidのごく一般的な男の子。強いて違う所をあげるとするなら双子の姉がいるって事かな。名前は鏡音レン。
そんな訳で、玄関近くにあるトイレにやってきたのだ。
「あ、レン」
あ、リン。
「ちょっとそこどいて。私トイレ使うから」
え? ダメだよ。僕が今から入るんだから。
「私おしっこ漏れそうなの。だから先に使わせて」
僕も限界だよ。おしっこ漏れる寸前。
「私が先!」
僕が先だよ!
「う〜…」
参ったなあ。流石双子というべきか。もよおすタイミングまで一緒なんて。
「じゃあこういうのはどう? 私に譲ってくれたらバナナおごってあげる」
じゃあみかんプレゼントするから僕に譲って。
「う〜…」
ダメだ、完全に睨み合いになっちゃった。意地でも譲れない。
「そうだ!」
なに?
「私に譲ってくれたら、トイレの後にえっちしてもいいよ」
え?
「最近収録忙しくてごぶさただったでしょ? 溜まってるんじゃない?」
そ、そう言われると…いけね、漏れそうなのに勃ってきちゃった。
「だからお先〜」
だ、だめだよ!
「何よ、えっちしたくないの?」
それはリンもじゃないの?
「えっ?」
最近リンも気持ち良さそうにしてるもん。溜まってるのはリンもじゃない?
「うぅ…」
自分もしたいのに、まるでさせてあげるみたいな言い方は卑怯だよ。
「と、とにかく! 私に譲って!」
嫌だ! 僕が先に入るんだい!
「ね、ねぇレン。いぢわるしないでよぉ。私本当にもう漏れそう」
僕だってもう限界だよ…何かのはずみで気が緩んだ瞬間に漏れちゃう…
「でも、このままじゃ2人してお漏らしになっちゃう」
だったらリンだけ漏らしてよ。僕まで巻き添えにしないで。
「うぅ…」
うぅ…
と、その時。
「あわわわわわ! リン、レン、どいてええええええ!」
「あ、KAITOお兄ちゃ…」
ドンッ!
「きゃあ!」
わあっ!
KAITO兄ちゃんが僕らを突き飛ばしてトイレに駆け込む。
「「あ…」」
それは、同時だった。感知の言葉が口から漏れた時、もう一つの漏らしてはいけない方も、意思に逆らって下着を内側からあっという間に濡らして汚していく。
KAITO兄ちゃんに突き飛ばされ、一瞬肉体も精神も緊張が緩んだ瞬間だった。
「「あ、あ、あ…」」
もう止まらない。僕もリンも下着やズボンだけじゃ飽き足らず、床までどんどん汚していく。
「はぁ〜、間に合ったあ。やっぱ一食で4個目のアイスはお腹に来ちゃうね。反省反省っと」
ドアの向こうからの陽気な声が、僕らに深々と突き刺さっていた。
「ただいまー」
「あ、お姉ちゃんおかえりー」
「あれ、皆は?」
「お兄ちゃんならトイレとバトルってるよ」
「また? 本当懲りないわね。リンレンは?」
「さっきお風呂場で泣きながらお互い慰めあってたけど?」
「精神的に? それとも肉体的に?」