「御購入ありがとうございます御主人様!初音ミクです。今日からよろしくお願いしま〜す」  
心臓が止まるかと思った。  
なんせ宅配便の荷物の中から人が現れたのだから。  
ミミックが現れてもいどまじんが現れても自然に戦闘に入れる勇者たちはやっぱり勇者なのだ。俺はミクが出ただけでポックリ逝きそうになった。  
「えっちょっ、何この…何?」  
完全にテンパって声が裏返ってしまった。  
「ほえ?どうしたんですか?」  
「えっあの、なんつーか…ドチラサマデスカ?初音ミクっぽいのは分かるんだけど」  
「アレレ?もしかして注文したボーカロイドって私と違いました?」  
「いや確かに初音ミクねんどろいど注文したけど…」  
あれはフィギアでしょうが。  
「うん、じゃあやっぱり間違ってないですよ。ホラ」  
少女はビリビリと自分が飛び出してきた段ボールから伝票を剥がし、俺に手渡す。  
え〜と…[商品名:ボーカロイド初音ミク完全再現アンドロイド][代金5,980,000円]。  
「…ね、ねんどろいどじゃNEEE!つーか5980円の誤植かと思ったらまじ598万かよ!俺の財政オワタ/(^p^)\」  
「安心して下さい御主人様!ローン120回で組めますから大丈夫ですよ!」  
 
 
よし、OK。つまりあれだね?君はデッカードから逃げている最中の人型PCで科学の限界を超えてやって来た猫型オーバーテクノロジー。家庭用ロボットを改造した。心が痛む。  
「違いますよぅ!そんなブレランちょびドラロックマンな裏設定ありません。落ち着いてください」  
俺が現実を直視できないまま30分が経ち、ミクは錯乱状態の俺をなだめるのに飽きたのか、本棚の一画に積んであるCDを物色しながら片手間に会話している。  
彼女は本棚の前に立ち、俺は床のカーペットに胡座をかいている。おっ、パンツ見えそう。  
「はあ?落ち着いてられるか!598マソだぞ!」  
うおお縞パン!なんという絶景!  
「あのですね、自分で言うのも変ですけど、私って今超人気商品なんです。御主人様は500倍の予約者のなかから運良く選ばれたんですよ?それこそ転売するって手もあるじゃないですか。30日間は返品も可能ですし…もう!話聞いてください!」  
「あっごめん。つい」  
可能ですし…のところでミクが振り返ったとき、俺は彼女の縞パンをガン見していた。  
スカートを押さえながらミクもぺたんとカーペットに女の子座りをする。  
 
「えっちぃのはいけないと思います!」  
困り眉ジト目で、恥ずかしかったのか顔の赤いミク。やべぇかわいい。  
「とにかくですね、お試し期間の三十日だけでも私の歌声聞いてみてください。炊事洗濯もできます、ネギ多めになりますけど。他にもアクティブソナー機能付いてたりします。ネギ踊りやヤマ波って言う必殺技もありますよ」  
「う〜む…三十日間…転売…ヤマ波…」  
俺は三十日間で598万以上で買ってくれる転売先を探す事に決めた。ヤマ波ってどんなだろう。  
〜続く〜  
 

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