風呂場から聞こえる賑やかな声。それを背に受け、カイトはまだ一人体育座りをして部屋の隅っこでいじけていた。  
「なんだよ、なんだよ。二人とも……」  
ハクが風呂場に入って行った時、  
『いくら人見知りしない二人でも、いきなり女将のハクに入って来られたら困るだろう』  
と、心の中で思っていたカイト。しかし現実にはそう行かなかった。  
 
メイコはハクが同じ酒豪だと知ると、すぐに意気投合。二人仲良く酒盛りを始め、  
一番の不思議ちゃんミクも、相変わらずのテンションでハクにちょっかいを出し、  
更に酒を飲んだハクは妙に愉快な人間に豹変し、ケラケラと笑いながら楽しそうにしている。  
 
「それじゃあ、お料理持ってくるから。めーちゃん。ミクちゃん。ばいばーい」  
「ハクちゃんバイバーイ♪ あははっ、めーちゃん、楽しかったね♪」  
「そうね。……でも、まずコイツを何とかしなきゃ……」  
風呂から出て来たときメイコの目の前には、生ける屍と化したカイトが、部屋の隅で天井を見上げ佇んでいた。  
 
「へへっ……いいんだ。どうせオレなんて……ただの財布、スポンサーなんだから…………」  
「はぁ〜……こりゃ重症そうだねぇ……」  
何やら独り言を呟くカイトの姿を見て、さすがメイコもかける言葉が見つからない。  
しかしミクは、ハクを見送るとお構いなしにカイトに飛びついた。  
 
「ねぇねぇ、カイトー! ハクちゃんってすっごい面白い人なんだよっ!」  
「そう……良かったね、ミク…………」  
「?? ……カイト元気ない?」  
さすがのミクもカイトの異変に気づいたのか、不思議そうな顔をしている。  
すると、メイコは良い事を思いついたと、手をパンッと鳴らしてニヤッと笑った。  
 
「ミク、ほっぺにチュッてしたらカイト元気になると思うよ〜」  
「ホント? じゃあ、――カイト元気出して〜♪」  
 
――――ちゅっ  
 
 
カイトに抱きついたまま、言われた通りにほっぺにキスをするミク。  
「カイト、カイト! 元気出た?」  
「なっ……そ、そんな事で機嫌が直るとでも……」  
悲しい事に、ミクのキス一回でカイトの機嫌は10割回復。元気が出てしまっていた。……いろんな所が。  
しかし、一人でいじけていた恥ずかしさから、変な意地を張ってなかなか素直になれない。  
 
「そっか機嫌治らないかぁー。こーんな可愛い子に裸で抱きつかれて、キスまでされたのに……」  
その言葉を聞いて、カイトが慌てて横で抱きついているミクの方を見ると、  
そこにはお風呂から出て体も拭かず、ビショビショのままのミクが心配そうに顔を覗き込んでいた。  
 
「うわっ……わわわっ…………」  
「カイト、大丈夫? 元気でないの? もう一回チュッてしよっか?」  
「だ、大丈夫だから! もう元気出たよ、ありがとうミク」  
 
慌ててミクの体を引き離し、目をそらすカイトを見てミクは首を傾げている。  
しかし股間に目をやると確かな膨らみを発見し、ミクは大きな声をあげて喜びだした。  
「あー! カイトのおちんちんおっきくなってる! めーちゃん、ここが大きくなるとカイト嬉しいんだよね? ねっ?」  
「ふふっ、そうね。ミクのおかげでカイトも元気になったみたい…………色々と♪」  
二人のやり取りを聞いて、カイトは顔を真っ赤にしながら浴衣を手に取り、後ろ向きで二人に投げ渡す。  
 
「めーちゃんもミクも、早く体拭いて浴衣着て!」  
「本当は嬉しいくせに……まぁ、良いわ。ミク、こっちおいで」  
こうして2人は浴衣を身につけ、ようやくまともに顔を見合わせる事が出来た。  
 
ほどなくして夕食が到着。さすがに旅館の自慢とあって、豪華な料理がならんでいる。  
メイコは一杯やりながら刺身を、カイトは揚げ物を、ミクは最初っからデザートを……と、みんな楽しく食べていた。  
 
しかし、カイトがメイコの領土、刺身帝国に箸を伸ばした事で事件が勃発。  
「こらっ! カイト、刺身は私のなんだから! あんたはツマでも食べてなさい!」  
「なっ……! この料理だってオレのお金で食べれてるんだよ……ッ!!」  
 
刺身を争い、箸でカチカチと攻防を繰り返す二人。  
それを笑いながら見ていたミクの目に、ある物が飛び込む。  
「……めーちゃんのコップ……お酒……」  
二人のやり取りを見て、こっそりお酒に手を伸ばし、ミクはそれを口に運ぶ。  
(んっ……苦くて変な味……)  
そう思ったミクは、ソッと元の場所へコップを戻した。  
 
「このタイの刺身は……誰にも譲れーーん!!」  
メイコの雄叫びと共に舞い上がる箸。それはカイトの敗北を意味していた。  
「うぅ……酷いよめーちゃん。みんなで仲良く食べないと……ミクもそう思…………って、うわぁぁ!!!」  
「……ほぇ?」  
驚くカイトの目の前には、浴衣を脱ぎ捨て、赤い顔をして素っ裸になったミクの姿が。  
 
「なんかね、体がポーって熱くって……フラフラするの……」  
「フラフラって……あっ! ここにあった私のお酒、もっとあった筈なのに……もしかして……」  
この状況、誰が見てもミクがお酒を飲んだのは明白。  
メイコはミクにお水を飲ませ、隣の部屋へ連れて行き、とりあえず布団に寝かせた。  
 
「めーちゃん! ミクは大丈夫なの?」  
「まぁ、そんなに飲んでないしね。少し横になれば大丈夫だと思うわ。……それよりも――――」  
何かを言い留めたメイコの視線は、カイトの下半身へ向けられていた。  
 
「カイトくぅーん? コレなーんだっ?」  
スッとカイトに身を寄せ、メイコは大きくなったソレを掴んだ。  
どうやら先程のミクの裸を見て、再び元気になってしまったらしい。  
 
「確かお風呂でも……それにミクに抱きつかれた時も大きくしてなかったっけ?」  
メイコの意地悪な質問に、カイトは恥ずかしくて黙り込んでしまう。  
するとメイコはカイトの帯に手をかけ、そのままシュルシュルと解いてしまった。  
 
「めーちゃん?! ……な、何するの?」  
「何って、こうするの。……えい♪」  
メイコはその帯でカイトを後ろ手に縛ってそのまま押し倒し、自らも浴衣をずらして肩をのぞかせる。  
「溜まってるんでしょ? 今日はチビちゃん2人も居ないし、ミクも寝てるし……久しぶりにお姉さんが相手してあげるッ♪」  
そう言いながら、ソレを足でグリグリと擦り始めるメイコ。  
 
「やめっ……ダメだよ、ミクだって隣にいるのに……こんな事……」  
「嬉しそうにビクビクさせて何言ってるの? 相変わらずドMなんだから。すぐにそんな口きけなくしてあげる」  
メイコはその場にしゃがみ込み、ソレを掴んで口を大きく開けた。……と、その時。  
 
――――ジリリリッ  
 
突然なりだす部屋に備え付けの電話。  
「もう、せっかくいい所だったのに!」  
メイコは文句を言いつつも、電話に出た。どうやら相手はハクで、  
先程の酒盛りの続きをしようと言う、お誘いの電話らしい。  
 
「カイトー、ちょっとお出かけしてくるから、ミクの事よろしくね〜♪」  
「えぇ?! ちょっ、こんな状態で……せめて解いて……めーちゃん? めーちゃーーん!!」  
ルンルン気分で部屋を飛び出したメイコにカイトの言葉は届く事は無く、カイトはその場に放置プレイ。  
 
「はぁ……どうしよう。こんな恰好、もしミクに見られたら…………」  
「――――カイト」  
その凄く聞き覚えのある声を聞いて、カイトは固まった。  
恐る恐るそちらを見る……そこにはやはり裸のミクが立っていた。カイトの頭にオワタ行進曲が流れる。  
 
「ミク……いつからそこに? ……えっと、まず手を解いてくれないかな? 話はそれから――――」  
テクテクと歩み寄るミク。カイトはとりあえず助かったと思った。  
……しかし、先程までメイコが立っていた位置まで来ると、ミクは立ち止まってカイトのソレを見つめている。  
 
「わぁっ! カイトのここすっごく大きい……めーちゃんに踏まれて嬉しかったの?」  
「え?! そんな事まで見てたの?! ……じゃなくて、いや、それは」  
「エヘヘッ、ミクも踏んであげるね♪ ――――えぃ♪」  
「ちょっ、違っ……いや違わないけど、でもそうじゃなくて……あっ――」  
 
こうして縛られカイトとほろ酔いSミクの、少しエッチな食後の運動が始まった。  
 
 

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