バックの体制から正常位に変わり動き始めると、
ネルの口からは予想外の言葉が発せられた。
「マスター……この格好、ちょっと恥ずかしい…………」
うーん……さっきまでの格好の方が、今よりずっと恥ずかしいと思うんだけど……
いったい何がどうなって恥ずかしがっているのかを聞くと、
どうもこの顔が見える事に抵抗があるらしい。
「あたし……マスターとセックスしたら、多分いっぱいエッチな声出して、いっぱいエッチな顔してると思うんだ。
だから、そんなトコ見られたくないよ……」
そう言って枕でポフッと顔を伏せて目を合わせないようにするネル、
でも、そんな事を言われると、余計にそのエッチな顔ってのが見たくなるのが男の心情だ!
「んっ……んぁ、あっ……あぁっ! 中が……あっ、熱い……ょ……」
腰を動かすと、枕で押さえられて少しこもった喘ぎ声が聞こえてくる。
しかし枕を掴む手にはギュッと力が入り、無理やり奪い取るのは難しそうだ……何とか力を抜かさせなくちゃ……。
抜けない様にゆっくり腰を動かしながら体を前に倒し、ネルの胸に口づけをする。
「ひゃ……ッ! こ、こら! そこはダメだって何回も……ぁ……ッ」
その声とともに一瞬力が抜けるのを見逃さなかったオレは、素早くネルの顔を隠す枕を奪い取り、
ついに恥ずかしい顔とやらを拝む事に成功した。
「うぅ〜……マスターのバカッ! いじわるばっかりするなっての!!」
少し涙の溜まった目でキッと睨みつけ、顔を真っ赤にするネル。
これがエッチな顔ってやつなのかな? 良く分からないけどネルはすごく恥ずかしそうだ。
枕を奪い取っても両手で顔を覆って目を合わせようとしない。
「ネル、どうして顔見られたくないの? そんなにエッチな顔なんてしてないよ?」
「うるさぃ! ダメな物はダメなんだよ!」
「でもそうやって顔を押さえてると…………――――」
「あっ、……んんっ、ヤメ……きゃ……ぅ…………」
手で顔を押さえている為、無防備になっている胸の先端に再度口付けをすると、体を弓なりに反って大きく反応する。
胸は小さい方が感度が良いって言うけど、あれはあながち嘘じゃないかもしれない。
もし本当なら……言ったら怒るだろうけど、貧乳のネルは超敏感だろう。
「こらっ、あっ……離れろってば……んっ、あぁ……っ!」
我慢できなくなったのか、顔を覆っていた手で頭をポカポカと力なく叩き、
それでも続けていると、やがてその手は止まりオレの頭を抱える様に抱きしめる。
「マスター……イクッ…………!」
ネルは小さい声でそう言うと、頭を抱える力を強くして体を数回ビクビクッと反応させた。
ネルの反応が収まり解放され、ようやく頭をあげると、
「エヘヘッ……どうだ、今みたいにしちゃえばイク時の顔は見えないだろ?」
と肩で息をしながらも自慢げにそう言うネル。
そうか、最後に頭を強く抱えたのはそのせいだったのか。
「ネルはエッチの最中って言うか、イク時の顔を見られるのが恥ずかしいんだな……?」
「えぇ?! なんでその事……あっ! ……しまっ…………こらっ! そんなの反則だぞ……ッ!
ネルが油断している間に、両手首を掴んで抵抗できないようにし、
そなまま体を揺さぶる様に激しく腰を動かす。
もう自分も我慢の限界、これが今日最後のチャンス。
「ネル……気持ち良い?」
「んー! ……んっ、んんーー!!」
問いかけに、眉をハの字にして涙を浮かべ、下唇を噛みしめて首を横に振るネルの姿は、
Sとかそう言う属性の無いオレですら「少し虐めてみたい」と思わせるほど気持ちを高揚させる。
「そんなに首を横に振っても止めてあげないよ?」
耳元で囁いた後、堅く閉じた唇を開かせる様に舌を這わせ、ゆっくりと中へ侵入させていく。
そう言えば、コンビニからの帰り道にほっぺにキスはされたけど、まともなキスはこれが初めてかな?
ネルの唇は薄くて……でも凄く柔らかい。
「ふ……ぁ、んんっ、……あっ、……マスター…………」
「……なに?」
「もう、顔隠さないから……あ……んっ…………手、離してくれよ。何かにしがみ付いてないと我慢できないって……」
そう言われて手を離すとネルは体に手をまわしてきて強く抱きしめ、ジッとこっちを見つめる。
「なに?」
「………………」
問いかけには答えず、ただジッと見つめるだけのネル。
「ちゃんと言わないと分からないよ?」
すると今度は視線を逸らしモジモジとし始め、ようやく開いた口から出た言葉は、
「キスの続き……マスターがしたいなら、してもいいぞ…………」
と、あくまでも強気で自分からしたいとは言わなかった。
でも、これ以上虐めるのは可哀そうだし――――
「じゃあお言葉に甘えて、ネルお嬢様にキスさせてもらおうかな?」
「もぉー! 変な言い方しなくていいから早くしろ! …………ほらっ!」
せかす様にネルは目をつむって、唇を少し前に突き出す。
「うん、それくらい意地っ張りな方がネルらしくて可愛いよ」
「なに……あっ、ん…………んん……」
会話を遮り、さっきよりも長くて少し激しいキス。ネルの腕に力が入り背中に爪が食い込む。
それでも止めない、……いや、止めれない。
背中の痛みなんて忘れてしまう程にネルとのキスは気持ち良くて、気分を高めていく。そして――――
「ネル……オレ、もう…………」
「んっ……うん、分かってる。マスターの……さっきから中でビクビクってしてるもん。
いいよ、今日だけ特別に中に出させてあげる……」
その答えを聞くと同時に、オレは我慢していたものをすべてネルの中へ注いだ。
「あっ、あ…………出てる、マスターの……せーし…………口以外で貰うのって初めて……」
ネルは少し口を開いたまま、少し緩んだうっとりとした表情をすると、
今度は背中にまわしていた腕に力を入れ、少し苦しそうにしている。
「マスター、私……またイキそう……ハァッ、……いっぱいせーしかけられて……だから中が熱くて…………
さっきまでより、もっと凄いのがきそう……」
「うん、いいよ。ネルがイクところ見ててあげるから」
「バ……カ、そんな事……あっ、く……んっ、あっ、あっ…………んあぁぁぁぁ!!!!!」
ネルはこの日一番の大きな喘ぎ声を上げると、体を震わせながら愛液を吹き出し、
ベッドに大きな世界地図を作ってしまった。
「な……何これ…………ヤダ、止まらない……こ、こらっ! ……マスター、見るなぁ…………うぅ……」
結局その場ですべて出しつくしたネルは、そのままうつ伏せに寝転がって顔を隠してしまう。
……顔を隠す前に、もっと隠す所があるだろうに……まさに頭隠して尻隠さずと言った所か。
「ネル、そんな格好してたら風邪ひいちゃうよ? ほら、一緒にお風呂入って夕飯にしよ?」
「いやだ、恥ずかしい! 今日はもう晩ご飯いらない!」
「そうか……今日はネルの大好きなハンバーグなのに残念だなぁー」
わざとらしくネルに聞こえる様に大きな声でそう言うと、ネルはピクッと耳を動かして立ち上がり、
「ほらっ、さっさと風呂入って晩ご飯にするぞ!」
と、風呂場へサッサと行ってしまった。
それにしてもお風呂で体を洗っていると、どうにもネルがVOCALOIDだと言う事が信じられない。
一応電化製品だよな……? なのにご飯は食べるし、シャワー浴びてお湯に浸かって――――
「ん? なんだマスター? ジロジロ見て」
「いや、ネルってこうしてると本物の人間みたいだなぁーって思っててさ。人間と何が違うの?」
「そりゃいろいろ違うさ。……って言っても、そんなに変わらないかな?」
なんだそりゃ、ハッキリしない答えだ。
「あっ、違うと言えば、私達って寿命は10年くらいだったと思うよ? だから大事に使って長生きさせてくれよな」
10年……機械だから仕方ないとは言え、短いな……。
機会の寿命って事は、死ぬって訳じゃなくて、止まるって事になるのか?
まぁ、寿命の話なんてしても何も面白くない。今聞いた事は心の隅に置いて、オレはハンバーグを作るために先に風呂を出た。
夕飯を食べ終わった頃にはいつも通りのネルに戻って、テレビを見てケラケラ笑い、
夜にはオレの布団に潜り込んで来る。
ただいつもと違うのは、ベッドが濡れているため、寝る場所がベッドではなく布団だと言う事と、
さすがに疲れたのか今日の寝る前の奉仕が無かった事くらいだろうか。
――――――――
そしてあっという間にネルが家に来てから一年が経ち、この日は節目と言う事もあり大掃除をする事になった。
ネルは台所担当、オレはその他……つまり家の8割がオレの担当。
とにかく始めないと終わらない。そう思って居間を掃除していると、押し入れの中から懐かしいものが出てきた。
「あっ……これってネルが入ってた箱か。懐かしいな……」
押し入れから出てきたのは穴のあいた大きな箱。確かネルが勝手にこの箱から出てきて……
それであの日、確かオレは何かやらかしてネルに殴られたんだよな。
そんな事を考えていると、箱の中からまた懐かしいものを発見。それは注意書きの紙。
ネルに殴られて気絶する寸前にこの紙が顔の上に落ちてきて、「性格に難アリ」って気づいたんだっけ。
なんだか懐かしくなったオレは、その紙を手に取り内容をもう一度読んでみた。
――――――……え?
内容を見て一気に懐かしむ気分は吹っ飛び、代わりに嫌な汗がにじみ出る。
「性格に難アリ」紙には確かにそう書いてある。そしてあの日、オレもここまでは見た。
問題はその下、気を失ってちゃんと読んでいなかった所……
『従来のVOCALOIDの寿命は10年程度となっておりますが、
当商品は一部欠陥がある為、およそ1年で停止します――――』
およそ一年って……今日で丁度一年なのに……
じゃあ、ネルはもういつ止まってもおかしくないって事か?
そう思うと一気に台所にいるネルの事が心配になり、立ちあがろうとしたその時、
――――ガシャンッ!!!!!
……何かが壊れる音が聞こえた。
いくらなんでも、こんなタイミングよく事が起こる筈が無い。
とにかく落ち着けと自分に言い聞かせ、名前を呼んでみる。
「……ネル? どうかしたか?」
「……………………」
返事が無い。
恐る恐る台所を覗くと、そこには割れたコップの破片。……そしてその横で倒れているネル。
それを見た瞬間に自分の体中、全ての血が一気に凍りついてゆくのが分かった。