風呂上がり、台所で晩酌を済ませた私は自分の部屋へ向かっていた。
ワンカップ片手に自室へ向かう途中、リビングで仲良さそうにしているミクとカイトを発見。
何やら手にはDVD……じゃなくて、ビデオテープが持たれている。
「おーい、二人で何してるのー?」
「あっ、めーちゃん! 見て見て! カイトがこんなの持ってたの!」
酔っぱらってるせいで少しぼやけるビデオに記された字を、顔を近づけ目を細めて見てみる。
……と、次の瞬間、私の酔いは一気にさめた。
『MEIKO 16歳 ○○コンサート』
「ちょっと! こんな物いったいドコから?!」
「ドコって……オレのめーちゃんコレクションに決まってるでしょ?」
な……なななっ、何?! めーちゃんコレクション?? しかも決まってるでしょって……
それに良く見たら、上の方に小さく『コレクションNO.87』って書いてる……
って事は、少なくともあと86本はあるって事?!
と、とにかくミクにこんな恥ずかしいもの見せる訳にはいかないわ。
16歳の頃って一番ブリっ子してた時だし……これは私の威厳にかかわる問題よ。
「あっ、あのね、16歳の頃の私って全然可愛く無くて……恥ずかしいから見るのやめない?」
ミクは優しい子だから、きっとこう言ったら諦めてくれ――――
「そんな事無いよ! この頃のめーちゃんもすごく可愛いんだから! 特にこのNO.87はおススメで――」
ちょ……カイト、何でそこで熱く語り始めちゃうのよ!
だいたい、この頃のめーちゃん“も”可愛いって……
それだとまるで……今の私も可愛いって言ってるようなもんじゃない――――
「さぁ、始まるよー!」
はっ! しまった! 考え事してる間に……
『みんなぁー! こんばんわぁ〜♪』
こうして私のコンサートin自宅が、一時間にわたって開催されてしまった。
一時間後〜
『今日はみんなありがとぉ〜♪』
ようやく終わったコンサート。もうね、穴があったら入りたいよ。
ミクとカイトは真剣に見ながら、終始「すごいすごい」を連発してるし……
「あの、いったい何がすごかったの?」
「何って……そりゃあ……」
「ねぇ……」
『おっぱい!!』
えぇー……二人とも一時間ずっと胸ばかり見てたの……?
確かにこの時の衣装はちょっと派手……って言うか、水着だったけど、
ソレをおススメで持ってくるカイトっていったい……
「めーちゃん、どうしたらおっぱい大きくなるの? 私も16歳なのに全然おっきくならないんだけど」
「あー……牛乳飲んでいっぱい寝なさい。そしたら大きくなるから」
そう言うとミクは急いで台所に走り、牛乳片手に自分の部屋へ向かった。
私も疲れちゃったしもう部屋に戻ろう……けどその前に、どうしても聞いておきたい事が……
「ねぇ、カイト。あのさ、さっき言ってた『この頃のめーちゃんもすごく可愛い』の……“も”って……」
「へ? 昔のめーちゃんも可愛いけど、今のめーちゃんはもっと可愛いって意味だけど?」
ぐ……カイトったら、こんな恥ずかしい台詞を簡単に……まぁ、確かにそう言って欲しかったんだけど……
「そ、そう。あー……それじゃあ私寝るから。おやすみ!」
――――バタンッ!
はぁ……恥ずかしくて思わず部屋まで走ってきてしまった。
「16歳かぁ……」
そう呟くと、部屋の鍵を閉めて踏み台を持ってクローゼットの前へ。そこの上段右奥――
「えーっと……あった!」
私はそこにある物を手に取り、テレビの前へ。
『KAITO 16歳 コレクションNO.127』
「はぅぁー……この頃のカイトも可愛いのよね。特にNO.127はマフラーと競泳パンツで――――」
こうして夜は更けていったのでした。
おまけ
翌日、台所に向かうとリンとレンの姿が。
「二人とも、おはよー」
「!!!」
私の顔を見ると、何やら打ち合わせを始める二人。
「昔のリンも可愛かったけど、オレは今のリンにゾッコンLOVEだぜ!!」
「あぁん♪ 私もレンの事が大好き! 特にコレクションNO.127のマフラーと競泳パンツのがたまらないの!!」
こ……こいつら、昨日見ないと思ったら何処で何してたの?!!
おしまい