そう言えばカイトのマフラーって、何のために巻いてるんだろう?  
 
冬も終わり、春になってすっかり暖かくなったって言うのに、  
カイトは毎日マフラーを着用している。家でも、寝る時も……  
もしかしてマフラーの下に、何か重大な秘密でも隠されてるのかしら?  
まさかあのマフラーで首がつながってるとか? それとも、アイスでも保管してたりして……  
はぁ……、そんな訳無いか。さすがのカイトもあんな所にアイス入れたりしないだろうし、  
せいぜいキスマークを隠すとかよね。 そうよ、キスマークとか…………  
 
――――キスマーク?!!! …………kiss mark?!!!  
 
バ、バカバカ! 私のバカ!! どうして今までその事に気付かなかったの!?  
そうよ、カイトは宇宙一カッコ良いんだから、その辺の女が放っておくわけ無いじゃない!  
あー! もう、こんな事なら私が先にキスマークの一つでも付けとくんだった!  
 
……って、落ち着くのよメイコ。まだそうと決まった訳じゃないわ。  
もしかしたら、カイトはあのマフラーが気に入ってるだけかも知れないし、  
何かマフラーの下を確かめる良い方法ないかなぁ…………ん?  
ふと目に入ったのは、ワイワイ遊んでいるミク・リン・レンの3人。  
そうだ、あの子たちを使って……  
 
「ちょっと、ちびっ子たち。こっちいらっしゃい」  
私が呼びかけると、手をピタッと止めて駆け寄ってくる3人。  
「どーしたの? めーちゃん」  
「あのね、……わ、……私とゲームしよっか!」  
「ゲーム?」  
「うん! ルールは簡単、カイトのマフラーを取ったらあなた達の勝ち。もし取れたら一人100円ずつあげる!」  
100円と言う言葉を聞くと、3人は顔を合わせて無言で頷き、カイトの元へ走って行った。  
 
「カイト――――!!!」  
「あれ? そんなに急いでどうしたの? 3人と……も゙ぉ゙!!!?」  
勢いよく走って行ったミクは、そのままカイトの体へタックル。カイトを押し倒した。  
そして残る二人がマフラーに手をかけ、一気に引っ張る。  
これで謎が解ける、カイトのマフラーの秘密が!  
 
……あれ? なんだかカイトの様子が――――あ゙っ!  
 
「ちょっ……ちょっと、リン、レン! しまってる! そっちに引っ張り合ったらカイトの首絞まっちゃってるよ!!」  
「へ?」  
 
慌てて手を離す二人、しかしカイトはピクリとも動かなかった。  
 
「良かった、息はしてるみたい」  
依然意識を失ったまま天を仰ぐカイトの口元に耳を近づけてそう伝えると、3人はホッとした表情を浮かべる。  
でもこれは……カイトには悪いけど、マフラーの下を覗く絶好のチャンスだわ。  
ゴクリと唾を飲み、カイトのマフラーへと手をかけ、  
目を瞑ってマフラーを取り外し、一度大きく深呼吸をした私はゆっくりと目を開く。  
 
「ウソ……だよね…………」  
カイトの首元にはキスマークが……それも一つや二つじゃない。  
そうだ、これはきっと見間違いなんだ。私は今何も見なかった。うん、そう……  
「あーっ! カイトの首キスマークがいっぱいついてるー!!」  
ミクのその一言が、逃避しようとした私の意識を再び現実へ引き戻す。  
 
「ゔ……うーん…………」  
意識を取り戻し起き上がるカイトを見て、私は思わず後ずさりをしてしまい、  
そのまま壁まで下がりきると、その場にペタンと座り込んでしまった。  
「あれ? みんなどうしたの?」  
「カイト、キスマークいっぱい!」  
「え? うわわっ!」  
慌ててマフラーで首を隠すカイトの態度を見て、何かの間違いと言う僅かな望みも消えてしまった。  
 
――――バカ! カイトのバカ!! なによ、私がいるって言うのに!  
 
そりゃあキスもまだだし、正式には付き合っては無いかも知れないけど……  
でもずっと一緒に仲良くしてたじゃない! なのに他の女と、そんなっ……  
私、はじめてはカイトと……って決めて、今日までずっと守ってきたのに!  
 
「めーちゃん? 顔色悪いけど、どうかしたの?」  
「ャ……ダ…………ヤダッ!! こっち来ないで! カイトの不潔!! 浮気者!!」  
クッション、時計、リモコン――――とにかく手元にある物を手当たり次第にカイトに投げつける。  
「わわっ、ど……どうしたの?! 急にそんな……イテテッ!」  
なによ、まだしらばっくれるって言うの? それなら分かりやすく言ってあげる!  
 
「そのキスマークは何よ! グスッ…………ど……、どこで誰に付けてもらったのよ!!」  
「どこって……それは…………」  
ほら、言えないじゃない。やましい事があるんでしょ!  
「家で……めーちゃんに」  
 
カイトの言葉を聞いて手を止め、思考回路は一時停止。  
「あの……めーちゃんって、私?」  
「そうだよ? もしかして覚えて無いの??」  
「そんないい訳、……騙されないわよ! だって私は昨日リビングでお酒を飲んで……」  
あれれ? おかしいな、その先が何も思い出せない……  
 
「ほら、めーちゃん毎日お酒飲んだ後、オレの部屋に来てるでしょ?」  
「へ?」  
何それ? 初耳だわ。私そんな事してたの?  
でも、確かに毎日リビングでお酒飲んで記憶を失う割に、朝起きたらベッドの中なのよね……  
 
「あの……ここじゃミク達もいるからさ、ちょっとオレの部屋で話さない?」  
カイトはそう言うと、私の手を引いて部屋へ向かう。  
そして部屋に入るやいなや、カイトは突然私に謝り始めた。  
「ごめんなさい! おれ、そうとは知らずに……」  
「なになに? どうしてカイトが謝るのよ、勘違いしてたのは私なんだから――――」  
 
意味が分からず私が困っていると、カイトは手鏡を私に渡し、首元を見る様に言った。  
「あっ……これって…………」  
髪がかかって見えずらいクビの後ろの方、そこには確かにキスマークの様な物が、  
「あの……コレってもしかしてカイトが……?」  
私が尋ねると、カイトは申し訳なさそうにコクリと頷いた。  
 
「べ、別にいいわよ。私だって知らないうちにしてたんだし、お互い様だよ」  
むしろ数的には圧倒的に私の方が多いんだけど。  
しかしカイトは一向に頭を上げようとしない。別に怒ってないのになぁ……。  
「めーちゃん、オレあっち向いてるから、スカートの中……見て」  
カイトはそう言うと、まわれ右して後ろを向いた。  
スカートの中?? 急に何言い出すんだろ?と思いながらも、言われた通りに中を見てみる。  
 
「別に何も……ん? あれ?? んんんっ??!!」  
えっと、あ……っと、この下着に少し隠れる辺りにあるアザみたいなのって……キスマーク?  
でも、なんでこんな所に??   
「その……オレ、キスされてめーちゃんが誘ってるのかと思って……それで、えっと……」  
「も、もしかして……これもカイトが?」  
もしそうなら……私はカイトにこんな所に口づけされる様な事してたの?  
 
「あの……もしかして、私たち……えっちしちゃったとか……?」  
すると黙ったまま再び頷くカイト。  
って事は、私は知らない間に処女を喪失してたの?!   
相手がカイトだから全然良いんだけど……でも、酔って知らない間に喪失って……  
 
「カイト、昨日の事は忘れなさい!!」  
「えぇ?!」  
「だって知らない間に初めてのエッチしてたなんてヤダもん!……だから、その……今夜改めてお願いします……」  
 
私はそう言って部屋を飛び出した。  
さて、まずはお風呂でしっかり体洗わなくちゃ……今日はカイトと初エッチの日なんだもん!  
 
 
 
――――で、一方カイトの部屋では……  
 
「めーちゃん……えっちは昨日だけじゃなくて、去年からほぼ毎日なんだけど……言わない方がいいのかな……」  
 
 
 
終わり  
 

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