「はあ、なんで生きてるんだろ」  
 
どーも、レンです。  
最近僕は鬱のどん底に推移しています。なぜかってアータ、仕事がねぇからですよ。  
どう考えてもミクやカイトやメイコやリンに比べて人気落ちする僕は皆が仕事している間家にへばりついている重苦しさに耐えられずちょくちょく家を出るのです。  
家族からも忘れられているかも知れません。  
「今日は調子良かったな」  
めっきり一人ごと漏出率が増えていまや《老人と海》の爺ちゃんの気持ちが痛いほどわかります。鬱です。  
調子っていっても声のこととかでなく暇潰しに通ってるゲーセンの音ゲーのことです。UDXって知ってますか?それです。  
10段どころか免許皆伝叩き出しました。  
ゲーセンNEET仲間も沢山出来ました。mixiオフって楽しいですね。鬱です。  
 
 
さて、月明かりを浴びつつ暗譜している譜面を右手オンリーで弾く練習をしながら歩いていると我が家に着きました。  
「はぁ…入りにくいなぁ」  
思わず溜め息が漏れます。鬱です。  
家族は仕事のない僕に優しいです。鬱です。  
「はぁ…」  
とりあえず家の回りを歩きながら中の様子を探って見ることにしました。出来るだけ皆と顔を合わせず自室に入りたいから、です、はい。  
家の風呂は僕がまだ仕事があった頃に調子乗ってロードローラーでぶっ壊した経緯がありまして、壁の薄いやっすいユニットバスを適当にくっつけたみたいな状態になっております。  
その風呂の壁に張り付いている萎びたネギの怪物と目が合いました。よく見るとミク姉でした。  
ああ、早くも家族とエンカウントしてしまった…。  
僕の鬱も感知できないKY姉は人差指を立ててシ〜ッのポーズをしたまま僕を手招きして呼び寄せました。  
僕は足音を立てないように姉のへばり付いている風呂の壁の隣りに背を屈めて忍びよりました。  
「何やってんのさ姉さん」  
「シッ、黙れ」  
姉さんは地面に付かないように手に持っていた自分のツインテールで僕の口を塞ぎました。小声で姉さんは続けます。  
(なんかさ、メイコ姉さんが女の子拉致って風呂で嫐って、いや嬲、むしろ姦…あークソ、漢字わけわかんないわ。とにかくメイコ姉さんが見知らぬ女連れ込んで貝合わせなのよっ)  
(…ふーん)  
確かに風呂の中からはメイコ姉さんのうふふふふという性悪そうな笑い声と誰かの喘ぎ声…というより悲鳴が断続的に響いておりました。  
(ヲイヲイなんだよなんだよ。こんな面白い状況を前にしてなんで“ふーん”なんだよ、だからNEETなんだよ)  
(…)  
返す言葉もありません。鬱です。  
(あっ、ちょっ、どこ行くのよレン)  
(部屋)  
僕はネギ怪人を風呂の外に残して玄関から廊下へ、廊下から階段へ足音ひとつ立てずに進行しました。  
リビングにリンが居るのは気配でわかっていたので、携帯のリモコンアプリでテレビの電源を入れます。故障かな?なんて思ったリンがペチペチとテレビを叩く音が響いているうちに階段をそろそろと登ります。  
スニーキングミッションです。鬱です。  
さて先ほど嗅いだミク姉の髪の香りと見知らぬ誰かの悲鳴をおかずにオナニーでもして寝ようかと部屋に入ると、本日最大の鬱が待っていました。  
部屋に違和感が漂っているのです。  
(誰か掃除したのかな…)  
しかし掃除した、という雰囲気ではありません。  
出て行ったときと変わらず僕の部屋はバナナの皮が床に散らばりCCレモンの空き缶とか黄色い豚カレーとかが放置してあります。  
(じゃあこの違和感は一体……はっ)  
わかりました。気付いてしまいました。  
ベッドの下にごっそり隠してあったリンの(大人の)玩具がないのです。  
玩具がこの部屋から持ち去られたということは、僕はリンからすらも戦力外通告を受けたということです。  
…鬱だ。死のう。  
 
君のこと新聞沙汰にしてやんよ〜  
練〜炭まだ買ってないけど  
死にとげて見〜せますよ〜  
だからちょっと覚悟しててよね〜  
新聞沙汰に〜し〜てあげるから〜  
歌詞:レン  
 
 

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