俺はKAITO。正確には元KAITO現KAIKOである。
調律次第で女声もいける俺だが、調律した途端に身体まで女体化するとは我ながら驚きだ。
ちなみに精神的には元のまんまなので女言葉は使いたくない。そっちのケもない。
マスターに犯されそうになったが中身が俺、KAITOだという事をわからせると面白い勢いで萎え萎んだ。
仕事の残っているマスターを放置して先に帰ることにしたのだがはてさて他の奴等がどんな反応するか楽しみだ。
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俺はひとつ深呼吸して家に入った。
「おっす、ただいま」
いつもどおりにおっさんくさい帰宅の言葉を吐くと、全然おっさんくさくない女性の声が出て面白かった。
トタトタと足音が近付きリンがリビングの扉から頭を覗かせる。
目をぱちくりさせて、
「ふぇ?どちらさまですかぁ?」
ととぼけた返事。お前のアニキだよ。
「俺だよ、KAITOだ。女声に調律したら女になっちまった。すっげぇだろ」
束の間の沈黙。
リビングからそろそろ出て来てまじまじと俺を観察するリン。
おい、胸を鷲掴みつつスカートめくんな。匂いを嗅ぐな。はうう、耳かまないで。
「…いやいや、カイトはもっとおっさんクサいし男だよ。貴女は女の子じゃん?ちょっと無理があるんじゃないかなぁ〜なんて思うんだけど如何?」とリン。
疑われる事を予期していた俺は、家族しかしりえない秘密を述べた。
とりわけリンが初潮にビビって、死ぬ私もう死ぬもう長くない血友病に罹患した美人薄命ってほんとだったのね、と狼狽していたことを大きめの声で口述した。
上記の話に耳を傾け顔色を赤やら青やら白やら床屋の看板ばりにクルクル変えてからリンは、
「え、ええ〜!か、かかかカイト兄ちゃん?!」
よっし!待ってましたその反応!
ちょっとした達成感に満たされた俺は得意になってシャランと一回転、スカートの端をチョイと摘んでお辞儀した。
咄嗟に思い付いた女の子っぽい仕草がこの有様だ、俺の思考的親父くささは円熟の域に達している。
だがリンはそんなことに気が回らないほど驚いていて拳を口に入れる芸を今にもおっ始めん勢いでポッカリあんぐり口を開いてぱくぱくさせていた。
「ふははは!ナイスリアクションだぞリン。次は酒乱かネギのどっちか連れてきてくれ」
リンがやっと我に帰って返事をした。
「あっ、えと、メイコもミクも居ない。仕事っぽい」
「え〜、じゃあ帰って来るまでドッキリお預けじゃん。つまんねーな」
「二人とも帰り遅いみたい」
「なんだよもー、早く俺のビボー見してやりてぇのに」
驚かせるべき目標が室内にいないことがわかり会話しつつ靴を脱いだ。
おお、気付かなかったけど靴まで女の子っぽいじゃん。手が込んでるな。
しばらくリンに女ボディの生乳を揉ませたり(リン<俺だったらしく悔しがっていた)乳首いじらせたり(乳首が立つというのを始めて実感した)して楽しんでいたが、二時間もするとなんかもう飽きてきた。
なんか面白いことないか?女体化を活かした楽しみは?そうだ!あれだ!
「なぁ、リン」
「なあにカイコちゃん」
「百合プレイって知ってるか」
ブーっ
リンが飲んでいたコーヒーを俺に噴霧した。びっちゃびちゃやないか!
「何すんだよリン!」
「げほっごほっ、か、カイコが変なこというからじゃん」
ちっ、百合プレイはさすがにダメか。せっかくの女の子ファッションがこのままでは染みっ染みである。ん?しかしこれは…
「…うむ、逆に好都合だ」
俺はブチまけたコーヒーを掃除しているリンの手を掴んだ。
「わ、ちょっ、何すんのカイコ」
「風呂。背中ながしてくれ」
俺の願望は“女の子同士で身体の洗いっこ”という百合プレイの次点にシフトしていた。
銭湯に行きたかったが犯罪のかほりがぷんぷんしたので家風呂で我慢した。
脱いでみて改めて自分が女になっていることを思い知る。
鏡に映る部分のことごとくが柔らかい曲線で構成され、水爆弾(水風船とは違う)のような重さを感じて視線を下に落とせば薄桃色の頂点が可愛い。
もしナニが付いていたらオッキしていたかもしれないが生憎いまは無い。
(…な、なんか恥ずかすぃ〜ぜ)
俺はタオルを縦長に身体に当て胸元と腹部を隠すもっとも女っぽいスタイルで風呂に入った。
これで姿勢が内股なら完璧におにゃのこなのだろうが、むしろややガニ股であった。俺のおっさんくささが滲む部分である。
俺がわくわくしながら湯船でオッパイを揺らめかせて遊んでいると、ついにその時がやってきた。
扉が開き俺の中のロリセンサーが計測を開始してその驚くべき数値が見る間に桁をあげて行きボンッ!と煙をあげて爆発した。
何、計測不能だと!とカ○ロット計測時の某M字ハゲとリアクションを同じくした所で俺の妄想は雨散霧消の砂上の楼閣、はじけて消えた。
「キャー!えっまじ?まじでカイトなの?これが?スッゲー可愛いじゃん!!うわっやべぇ興奮してきたわ!何かに、何かに目覚めそうだわ!そうそれはまさに百合の花の如く香しき何か!」
メイコだった。
「ごめんカイト兄…ネタバレしちゃった」とリンがメイコの後ろから申し訳なさそうな顔を覗かせた。
バレたものは仕方ないな。
「なんだよメイコ、帰るの早え〜よ。今からリンと《ドキッ女だらけの洗いっこ大会》開催の運びだったのに。そのまま百合の花薫るセルフソープランド開業予定だったのに」
「ちょっ、そんな話きいてな「いいわねソレ!私がやってあげる!」
リンの抗議を遮ってメイコが割り込んだ。
「道具持ってくるわ」
「死ねバカイト」
メイコの嬌声やらリンの罵声を浴びつつ俺は一人浴室に残された。
なんだなかなか女の子も楽しいじゃねーかとか思ってのんびり風呂に浸かっていたら、メイコがギルガメッシュか武蔵坊弁慶かと疑うような武装っぷりで戻ってきた。
双頭のバイブ、荒縄、ギヤグ、二本を紐で繋いだハリコヌンチャク、束になってヴィーヴィーがちゃがちゃ音を立てる無数のローター、用途不明の大容量注射器、その他形容しがたい様々なエログッズ。
サーっ
俺は自分の身体から血の気が引くのを聞いた。
「大丈夫!心配しないでねカイコ?今日はあなたを楽しませるために一生懸命責めて・あ・げ・る」