元々、俺は落ちてる物を拾ってしまうという悪癖があった。それが動物であれ、使える物であれ、ただのゴミであれ。  
この悪癖を直すべきだろうとわかってはいたが、直す事は出来ずにいた。  
そして。某月某日、雨の降る夜。俺は一体の『ミク』と出会った。そう、ミク。……ボカロのCVシリーズ01、初音ミクだ。  
事の起こりは、夜中に俺がタバコを買いにコンビニに出掛けた帰りの事。  
 
ミクは、俺が通りかかったゴミ捨て場に、静かに座っていた。  
 
……はいそこ、『それなんて某PC漫画?』とか言わない。これは本当に起こった事なんだっての。  
ともかく。これは凄い、と早速ミクを持ち帰ることにした。とりあえず捨てられていたのはミク本体と身に着けている衣服と付属品のみで、他のパーツなどは捨てられていないようだ。  
そこから考えられるのは、『他のボカロを買ってミクが用済みになったから捨てた』という説。  
……しかしそれはありえない。ただ他のを手に入れただけで捨てるなんて真似をする奴はいないだろう。  
ならば、捨てざるを得ない理由があった、とか?そこら辺が妥当だろう、などと考えながらミクを肩に担いで家路を急いだ。  
そして、現在は俺の家。持ってきたミクの服を脱がせて全身ををタオルで拭き、布団の上に寝かせて早速どうするかを考え始めた。  
「さっきの俺の考えは『このミクは所有者に捨てられざるを得ない欠陥がある』だったな。外見上は外傷もないし目立った故障もない」  
ろうそく、垂らして、火傷しーないわーたしはロボット♪と口ずさみながら全身をくまなく触る。  
「駆動系とかにも異常は無さそうだな。……って、ボーカロイドは歌が命だからあんまり関係ないか」  
と、なればソフトの問題か?早速PCでボカロについて検索し、超初心者用のサイトを見つけて基本操作を学ぶ事に。  
「えー、起動方法は……『ヘッドセットのスイッチを……』ふむふむ……」  
サイトに書いてある通りの操作をすると、ミクが起動を開始する。数十秒の処理状態の後、ようやくミクが身体を起こし、口を開いた。  
 
 
『……お前は、誰だ?』  
 
 
時間が停止した。それこそ某スタンドの能力の如く。  
……この際、口が悪い事やこちらを睨みつけるような目をしているのはどうでもいいとして。よくないけど。  
 
ミクの声が……なんと言えばいいのか……。渋い声、と言うには少々音感が違い、かすれ声とも違う。まさに、『すごく……濁声です……』なのだ。  
 
『なあ、聞いてるのか?お前は誰なんだ?』  
「……あ、いや。何というか、その……」  
『……まあ、いい。こんなオレを拾うなんて奴は物好きか何かに決まっている。どうせ前のクソッタレには散々弄られたし、今更何てことない』  
こちらがどもっている間に自己完結したのか、ふいとミクが目を逸らした。  
『なんだよ、まだ言いたい事でもあるのか?』  
「あー、言いたい事というか、聞きたい事が。……君、初音ミクだよね?」  
俺の質問に、ミク(?)は『あぁ?』と声を漏らした後にこう答えた。  
『そうだよ。オレは元々『初音ミク』と呼ばれていた。……まあ、今の質問も無理はないな』  
「なんで、そんなに口が悪く……というかフランクになったんだ?」  
『さあな。あのクソッタレのせいだろうと思うが?』  
「その『クソッタレ』って誰の事?もしかして前マスターの事?」  
『……ハッ、あんな奴をマスターなんて呼べるか。オレの声を散々弄った挙句、戻らないと知った瞬間ポイだ。今頃別の奴らで同じ事をやってるだろうよ』  
……むう、なんというやさぐれっぷり。彼女に起こった事を考えると無理もないが、その声でやさぐれられると少し怖い物がある。  
『それで、オレを拾って何をさせようってんだ?』  
「いや、そんな事は考えてなかった……。ただ『初音ミクが落ちてる』から拾っただけで……」  
『って事は、何だ?お前、むやみやたらに物を拾う癖でもあるのか?』  
「……その通り」  
どうやらミク本人は冗談のつもりで言ってみたのだろう。俺が頷いたのを見て、目を点にしていた。  
 
『……やっぱ物好きだったか。まったく、オレも運がないというか何というか。……肉奴隷でも何でも好きにしてくれ』  
まるですべてを諦めたかのように起こした身体をもう一度倒し、そう言った。  
「……とは言っても、拾った後はどうしようかなんて考えてなかったけどね」  
『……はぁ?』  
「肉奴隷とか、そういうのにするつもりはないから安心して。今はそういう事をする気はないから」  
『じゃあ、この格好は何だってんだよ』  
全裸な自分自身を見ながらのミクの言葉に、一つ咳払いをして答える。  
「ゴホン。い、いや。服がね。君の服が濡れてたもんだから……今はちょっと乾かしてる最中で」  
『……あ、そう』  
さして気にもせず、といった風でミクが俺の台詞に言葉を返した。  
……こうして、我が家に同居人が一人増えたのだった。  
 
      ***  
 
「ただいま、ミク」  
『おう、お帰り』  
あれから数日後。バイト帰りの俺をタバコをくわえながら目つきの悪い顔で迎えるミクがいた。  
「……またタバコ吸ってるのかよ」  
『ああ。どうも性に合う、というか何も考えなくて済むんでね』  
俺のタバコを無断で吸うミクに、呆れながら近づいて……火のついた一本をミクの口から奪い、一吸いした。  
『……なんだよ』  
「最近はタバコ代も上がってるんだ。一人で吸うなんて真似はよせよ。……それにこれ、俺のだし」  
『……わかったよ、今度からなるべく一人では吸わないようにする』  
「にしても……」  
現在のミクの格好……髪を下ろし、前を開いた俺のシャツと自前の下着のみ……を見て、俺は小さくため息をつく。  
「こんな初音ミク、見た事ないよな。こんなだらけた格好でタバコを吸うなんて……親、というか製作会社がこの光景見たら卒倒するな。多分」  
『どうせオレはアウトローだよ。それに、こんな声じゃあ歌う事も出来ない。だったらこうやって自堕落な生活した方がまだマシだ』  
「……そんなやさぐれミクに朗報だ。……えーっと、どれだっけな……あ、これこれ。これを見てみろ」  
 
俺はタバコの火を消してPCの電源を入れ、ブラウザで表示したサイトを見せると、誰がやさぐれだよと毒づきながらミクが覗いた。  
『ニコニコ動画?』  
「そう。ここの某Pの動画でさ……」  
動画のサムネイルをクリックすると、流れ出したのは……人間には出せないような轟音。  
『……何だこれ』  
「初音ミク、お前だよ。……正確にはとことんまでに声を弄った初音ミク。この曲を聞いた瞬間震えたね」  
声を弄った、の辺りでミクの体が小さく震えた。……口ではなんともないと言っていたが、やはりトラウマになっていたようだ。  
『……で、これが何だってんだよ』  
「い、いや……君もまだまだボーカロイドとしてやっていけるんじゃないか、と……」  
ミクの声がなんとなく怒っている様に聞こえたので、必死のフォローをする。  
『……もう、いいんだよ。オレはもう歌う事にこだわってないから』  
「……ごめん」  
幸いな事に怒ってはいないようだったが、ミクの俯いた暗い顔を見てしまい思わず謝ってしまった。  
『謝るな。お前が良かれと思ってやった事だろ?』  
「そうだけどさ、前のマスターの事思い出しただろ?」  
『あんなクソッタレの事なんかどうでもいい。それに、オレの声はもう戻らないってわかってるんだ。もう絶望は味わっているから平気だ』  
そう言ってこちらに向いて笑うが、その顔には影が見えていた。  
「……俺が平気じゃない。お前が自分の声の話をするたびに暗い顔になるの、わかってるのか?そんな顔、俺はあんまり見たくないんだよ」  
『…………』  
「……いや、さっきは悪かったよ。俺ももうちょっとお前のことを考えて発言するべきだった。でもな。それこそ俺の我侭だが……そんなに自分の声を貶すな。  
 そりゃ最初は驚いたよ。でも、数日間ずっと一緒にいると慣れてきてな。今じゃむしろお前の声が『初音ミク』の声だと勘違いしちまうほどだ」  
手が無意識の内にミクの頭を撫でる。それを振り払う素振りも見せずに、ミクはただ黙って俺の手に撫でられていた。  
「俺は好きだぜ?酷い、というか壊されてしまったそんな声のお前が。他の初音ミクにはないお前だけのその声が」  
ミクが俺のほうを向く。まるで子犬のような目でこちらを見ながら。  
『……本当、か?オレの声、こんなに壊れてるのに……』  
「嫌だったら強制的に電源落として、お前をまたあのゴミ捨て場に戻してるさ。……いや、今の台詞に他意はない。例えで言っただけだ」  
さすがにまずい発言だった、と慌てて取り消すが、ミクはそれを気にせずに俺に優しく微笑んでくれた。  
『わかってるよ。お前はオレを捨てる気はないって。……そうだろ?』  
 
うぐ、声はアレだがその微笑みでそんな事を言われたら……ノーと言えなくなるじゃないか。元々言うつもりはないが。  
「ああ。そんな事する気はないさ」  
『じゃあ……誓ってくれ。オレ達はいつまでも……とまでは行かないけど、ずっと一緒にいるって』  
「誓う?」  
オウム返しにミクに聞き返すと、彼女は黙って俺の顔に自分の顔を近づけ……唇を重ねた。  
『……こういう、事、だよ』  
また離れたミクの顔は真っ赤だ。……かすかに残るミクの唾液。ついそれを舐め取ってしまう。  
「ず、随分大胆だな……お前……」  
『悪いか?お前がオレを好きだって言ってくれたから、思わず、な』  
そっぽを向きながらのミクの台詞に、思考がぐらつく。思考回路の一部が異常を起こしたしたらしく、もう一度、今度は俺の方からミクに口付けをする。  
『んむっ……んく、む……』  
「……ぷぅ、何だよ、いきなり可愛くなりやがって……」  
しばしの間、タバコの匂いが残るミクの口内を堪能した後、口を離してミクに問う。  
『……可愛い?オレが?』  
「ああ。毒づきたくなる位に可愛いぞこんちくしょう。不意打ちでキスの上に顔を真っ赤にしやがって……」  
『そっか、……今のオレでも、可愛いんだ……』  
……何だ何だ?ミクが急にしおらしくなったので、俺は内心驚いていた。  
『……ありがとよ、マスター。こんなオレを可愛いって言ってくれて』  
その直後、上目遣いでこちらを見て恥ずかしそうにはにかんだ笑顔でそう言ってくれた。それに、今、俺の事をマスターって……  
 
「いくぞー」「せーのっ」「とりゃーっ」 ぷつん  
 
その瞬間、俺の頭の中で小さな俺が隊伍を組んで理性の糸を綱引きのように引っ張って切りやがった。  
 
「辛抱たまらんっ!」  
『え、おい、マスター!?……うわっ!』  
どこからか聞こえるチビ俺共の「やったー」という歓声を聞き流しながら、強引にミクを押し倒して抱きしめた。  
……彼女の髪にはタバコの匂いがすっかり染み付いてしまっている。でもそれがいい。  
 
『こらっ、何すんだ……ひあっ!?』  
ミクの声に構わず、はだけたシャツのせいで露になった彼女の首筋を舐める。  
『ひゃっ、やめ、やめてくれ……っ』  
「……嫌か?」  
『な、何なんだよいきなり!どうしたんだよ!?』  
首筋から顔を離して俺が問うと、ミクは一気にまくし立てた。  
「すまん、ミク。我慢が出来ないんだ。というか俺にはもう途中で止める理性はない。……悪いが、お前をいただく」  
『なっ……くんっ!ま、マスタ、あっ!』  
言い終わると同時にもう一度首筋に下を這わせ、そこからミクの身体を下に舐め進み……彼女の乳首に到達した。  
『マス、マスター!?そこは……やうっ!噛んじゃだめぇ……っ!』  
舌先で、唇で、または歯で。ねぶり、はさみ、転がし。軽く遊びながら、ミクの乳首を愛撫する。  
「…………」  
一瞬だけ理性が繋がり、ふと気になる事をミクに聞いてみる事にした。  
「ミク、その……前マスターとは……こういう事、したか?」  
『な、何だよその質問……』  
「いや……我ながら馬鹿な質問をした。忘れてくれ」  
『……あいつは、もしかしたらそうするつもりだったのかもしれない。でも、その前にオレの声で遊んで……当然、だよな。相手の声がこれじゃあ起つ物も起たないよな、むっ?』  
また思考がネガティブになり始めたので、とりあえずそれ以上の台詞を吐かせない為に口で口を塞いでやった。  
こういう場合は言葉の代わりに身体で教えてやろう。ミクの右手を取り、俺の股間に触れさせてやる。  
『……っ?』  
そこには、存分に硬くなってしまった我が分身がある。その感触にミクが目を見開いて驚いていた。  
「わかるか?俺の。……結局な、愛さえあればどんな相手でも愛する事は出来るんだよ」  
我ながら名台詞だな。そう考えニヤリと笑う。  
『……この変態』  
「おおっと、思わぬ所から突っ込みがっ!?」  
『大体、ボーカロイド……というか、ロボットでこれを起たせる性癖ってのもどうかと思うぞ?』  
「……実は嬉しいくせに」  
俺の台詞にミクは『な……』と小さく呟きながら顔をもう一度赤くした。  
 
「もう一度言ってやる。いや、何度でも言おう。……大好きだぜ、ミク」  
『〜〜っ!』  
赤くなった顔を手で隠して横に振って悶えるミクも物凄く可愛い。  
さて。ちょっと下のほうに行こうかな、と自分の身体を移動させて、ミクの股間に俺の頭が来るようにした。  
『えっ、何?ま、まさか……』  
「……まさか、何だって?」  
聞き返すとミクはしまったと口を押さえる。……どうやら俺の考えがわかったようだ。  
「ふっふっふ。さあ、言ってごらん?俺がこれから何をどうするのか……」  
『……い、言わせる、なよ……』  
「だが断る。俺が最も好きな事は『ミクに赤い顔で恥ずかしい台詞を言わせる』事でぐふぅ!」  
『マスターの馬鹿!この変態野郎っ!』  
……しまった、位置的にもミクの足先が腹に直撃……  
「……ミぃークぅー……」  
『……あ、謝らないからなっ!?オレに恥ずかしい台詞言わせようとしたマスターが悪……ひゃうんっ!』  
仕返しとばかりにショーツ越しに秘所を強くこすってやった。くち、くち、と音がする。  
『やっ、ますた、やめっ、そこ……きゅうっ、あうんっ!』  
「マスターの腹を蹴った罰だ。とくと味わいやがれ!」  
指の腹をこすりつけるたびにミクは声を漏らす。そして指先にはぬるりとした感触が。  
「口は悪くてもやっぱり女の子だなー、ミクは。俺の指先、ミクの液で濡れ始めてるぜ?」  
『ばか、やろっ、もぉっ!んうっ、あくっ!』  
自分でもわかるほどのニヤけ顔と声でミクをいぢめる。……しかし、俺もそろそろ我慢出来ん。  
ショーツ越しの愛撫をやめ、ショーツを脱がせる。……股布から愛液の糸が引かれ、すぐに切れた。  
「これはおいしそうな果実ですな」  
『マスター……オヤジ臭いぞ?』  
愛撫に反応してか、ただ布が擦れたせいか、ミクの秘所はほんのり赤くなっていた。  
「そ・れ・が・どう・した。好きな女の前では本性さらけ出すもんだろが」  
『……はあ……ダメだこのマスター、早く何とかしな、あんっ』  
ミクの秘所を直に舐め、台詞を途中で途切れさせる。……畜生、真顔で言いやがって。  
 
「……というかな、正直俺も我慢出来んのだよミク君。さあ、俺のドリルで君に穴を開けようか」  
『何なんだよそのアホな比喩表現は……』  
行為中に呆れた声を出すな。そしてデPを馬鹿にするな。  
「じゃあ率直に言おうか?お前のマ○コに、俺の太くて硬くて黒光りするこのチ○……」  
『わかったわかった!オレが悪かったからそんなにストレートに言うな!』  
羞恥の極み、という風な声と顔で俺の台詞を途中で止める。  
その様子を見ながらニヤニヤした後、横に転がってミクが上になるように体位を変えた。  
「さあ、ゆっくりと後ろに下がるんだ。その先に待ってるのは……俺のマイクだぜ」  
『……この馬鹿野郎』  
下を脱いで準備を整えながら言った俺の言葉にミクが言い返しながら後ろに下がっていく。  
ミクが下がる途中、目の前に二つのポッチが通り過ぎようとしたのでつい摘んでしまった。  
『あっ、こら!また……っ!』  
制止の声を聞かずに、桜色の乳首をクリクリと弄る。まるでボリューム調整のつまみを動かすかのように。  
「んー?この調整つまみ壊れてるのかなー?ちゃんと反応しないぞー?」  
『この……スケベオヤジ、っ!』  
何を言うか、俺はまだ二十代だぞ?その抗議も含めて摘んでいた指を離し、代わりに先を指で弾いてやった。  
『きゃあっ!』  
びくん、と大きく震えた後にミクは俺の上に倒れこんだ。……刺激が大きすぎたか?  
「……おい、ミク?」  
『ばっか、やろ……っ!ちょっと足がぐらついたじゃないか……!』  
「ほう、ミクは乳首が弱いと」  
しかし俺は謝らない。なおも暴れようとするミクの身体を片手で抱きしめ、もう一方の手ははちきれんばかりの俺の肉棒を掴む。  
「そんな調子でこれから大丈夫か?この俺のビッグ・マグナムをお前に入れるんだぞ?」  
『……マスターの、せいだろ……?オレの事いじめてそんなに楽しいのか……?』  
うぐ。涙目とかいつもよりちょっと睨んだ目つきとか……そんな顔をされるとさすがに罪悪感が。  
「……ごめん。ちとやりすぎた。これからは真面目にお前を抱く」  
肉棒を導き、ミクの秘所にあてがう。その後に先端で軽く擦り、愛液を肉棒の先端に付けておいた。  
『っ、んっ……』  
 
「……さて。ミク、ゆっくり身体を起こせ。そうすれば勝手に入っていく」  
俺の言葉に従い、ミクがそうっと身体を起こす。途中で先端が入り、ミクが身体を起こしていくごとに肉棒がミクの中に挿入されていく。  
その途中で軽く抵抗があった。そこに当たった瞬間、ミクの動きが止まった。  
「このまま身体を起こしきればそれで終わりだ。……どうする?」  
その質問に、ミクは……ばねのように身体を起こして答えた。  
『……っつ、あ……!』  
抵抗がなくなり、代わりにミクの口から苦痛の声が漏れた。俺も身体を起こし、ミクの頭を撫でてやる。  
「まったく、勢いよく突き入れるから……」  
『だ、っでぇ……』  
「はいはい、泣かないの。……これで一つになれたな、好きだぜ。ミク」  
あえてそういう台詞で痛みを紛らわせようとするが、しかしミクは俺の身体に抱きついて嗚咽を止めない。  
「……あのー、ミクさん?そんなにいつまでも泣かれると……」  
『ぢがうっ、ごれは、うれじなみだ、なんだよっ……』  
鼻声の抜けないままミクが俺に言う。……ふむ、そう来たか。ならば……  
「ほら、顔見せてみ?」  
『あっ……』  
こちらに顔を向けさせる。……涙でぐしゃぐしゃなミクの顔。その涙を舐めてやる。  
「……意外だな。塩味がある」  
『まずだぁ……みないでくれよぉ……』  
「……だが、断る。俺のやりたい事は、『愛する女のすべてをこの目で見る』事だ」  
我ながら、なんとも言いがたい台詞を言ってのけるものだ。……まあ、泣き顔も可愛いし。  
『ばか……』  
「ああ、馬鹿野郎だ。文句あるか?」  
『……無いに、決まってるだろが……』  
ようやく鼻声の抜けた状態でミクがしゃべってくれた。ついニッコリと笑ってしまう。  
「ここでちょっと真面目な話だが……当然といえば当然だが、お前の中が凄くきつい。もうぎゅうぎゅうだ」  
『そっ、そんな事オレに言われても……』  
ぎちぎちに締め付けられた俺の肉棒は、いろいろな意味で限界を迎えていた。  
 
「……あー、すまん。先に謝っておく。だから……」  
そっとミクを後ろに倒し、変形した正常位の形になる。  
「ちょっと痛むのは我慢してくれ」  
そう言った後に、俺は腰を動かし始めた。  
『うあっ、あっ!ま、ますた、っ』  
引き抜く時には俺の肉棒を押し出す力と吸い込む力が絶妙に働き、突き入れる時には先のほうから段々と締め付けられる感触がたまらない。  
一瞬、我を忘れて獣のように犯してしまいそうになったが何とかこらえた。  
「すごいぞっ、ミクっ!お前はすごい、強烈だ!」  
『あっ、あっ、あっ、ますっ、た!とめ、とめっ』  
「止まれ、ないっ、止めてっ、たまるか!」  
苦しそうに声を紡ぐミクには申し訳ないが、止まる事が出来ない。……あと少しだから。  
『だめ、だめっ!こわい、よぉ!おれ、こわいんだよぉっ!』  
また涙を流し、そう俺に訴えてくる。……わかったよ。  
「ミク、手を首に、こっちに来い」  
『あうっ、うっ、うぅっ!』  
体を前に倒し、ミクの手を首に引っ掛けさせる。正常位から今度は膝立ちの対面立位に。  
「これで、怖くない、だろ?」  
俺の問いかけに、ミクは俺の首にかけた手に力を入れて答えた。  
その答えを待っていたかのように腰の動きを激しくしてやる。ぎゅっと目を瞑り、その衝撃に耐えるミクの顔が間近に見え、少々興奮してしまった。  
『ああっ、うくっ、うああぁっ!』  
ミクの声と同調して時々ミクの中がひくん、ひくん、と動く。その後に……  
 
『ぐぅ、くあああぁぁぁぁっ!!』  
 
叫びと共にミクの中がさらに締まっていく。それが俺にとってのとどめとなり。  
 
「うおぉ……っ!」  
 
限界を突破し、ミクの中に放出してしまった。  
「……う、あ……」  
脱力感が身体を襲い、ミクの上に倒れこんでしまいそうになるが、すんでの所でこらえてミクの上に被さらない様に床に倒れた。  
『……マスター……お前、酷い奴だな?オレがあんなに泣いて頼んでるのに止めないし、それに……オレの中に、出したし……』  
「先に謝る、つったろーが……。それに、どうせ妊娠しないだろ。税金も払わない、法律も守らない、排卵期だって来ないから……だっけか」  
『……マスターの馬鹿野郎。責任、ちゃんと取ってくれよな』  
「俺もそんなに無計画じゃないさ。お前はうちで面倒見るし、ちゃんと愛してやるから」  
そんな言葉の応酬を、事後の気だるい雰囲気の中で行う。  
「……ふぅ。タバコ、吸うか?」  
『ああ、貰うよ』  
身体を起こし、タバコのケースから一本抜き出して火をつける。始めの一吸いの後、ミクに火のついたそれを渡した。  
「……まあ、なんだ。これからよろしくな、ミク」  
『……ああ、こちらこそだ。親愛なるマスター』  
 
      ***  
 
まあ、そんな感じで俺とこのミクとの、本当の意味での付き合いは始まった。  
……ミクはミクで、やっぱり歌う事に未練があったらしい。  
この後、必死にバイトをして金を貯めて、DTMの機材をそろえた後に早速試行錯誤を繰り返した。  
その結果、やはりというか行き着く先は一箇所だったわけだが。  
 
『ふう、まさかこの舞台に立てるとはな?……よし、マスター。一発殴らせろ』  
「俺を殴るな。……そんな調子でどじったりしないか俺は心配だぞ」  
そして今、俺達はボーカロイドランキングのベストテンに入ったアーティスト達の総合ライブに参加していた。  
『何言ってやがる。オレはこんな事で動じたりはしないさ』  
「まったく……よし、いっちょ気合入れるぞ?」  
次はついに俺達の番だ。俺が拳を突き出すと、ミクがそれに拳を合わせる。  
「初の大舞台だ。一暴れしてやろうぜ」  
『もちのろんだぜ、相棒』  
言葉の後にもう一度拳を打ち合わせた。  
 
……そしてついに、俺達を呼ぶアナウンスがかかった。  
 
ステージに出る。歓声の中、ミクがマイクを手に取り一発かましてくれた。  
『ようようよう、狂気にやられてんなぁお前らぁ!ここらでいっちょぶっ飛ばしちまおうぜぇ!』  
この煽りに観客がさらに熱くなっている。  
 
ちなみに、言い忘れていたが。ミクは今、別の名前を名乗っている。かつて俺が見せた動画の歌い手であるミクに付けられた通称を貰い受け……  
 
『オレの名は鋼音ミク、クソ声の悪魔にとり付かれたボーカロイドだぁっ!』  
 
 

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