「・・・っ、ぁ」  
 「イ、くよ」  
 「ゃっ、まっ・・・っ!」  
 
 ほぼ力の入っていないその手が俺の肩にあてられた。何故か、恨めしげ  
な表情。始めた時に、半ば強引なのがいけなかった?と、言ってもリンも  
俺も結構ゲンカイ。それでも、俺は彼女をといつめる。その髪に手を差し  
込んで、優しく梳いて。わざと腰を揺らしながら、追い詰めるようなぎり  
ぎりの感覚で。  
 
 「なに?」  
 「っ、ぁ・・・まっ、てって・・・」  
 「うん、だから、なに?」  
 「・・・っわ・・・、たっしが・・・っ」  
 
 顔を紅色に染めながら、いいよどむリン。恥ずかしいなら言わなきゃい  
いのに。でも、その表情にもゾクリとする。その変化を胎内でリアルに感  
じ取ったらしいリンは切なげな声を漏らす。このまま、揺さぶろうかと腰  
に手を当てたら、リンは意を決したように俺を睨み上げた。その視線、いいよね。  
ゾクゾクする。  
 
 「わ、たし・・・が、するっ、」  
 「え?」  
 「だ・・・て、いつも・・・レンが、」  
 
 つまり、主導権を握られているのが不服と言う事で。双子、ということ  
も手伝ってか、本当に負けず嫌いだ。いつも、リンは俺に負けまいと必死  
になって努力をしてる。どんなに努力をしたって性別の違いもあるし、近  
づけない事もある。けれど、リンはそれさえも埋めるようにいつだって頑  
張っている。そんな彼女が、たまらなく愛しい。だから、分かってて俺も  
手を出す。  
 
 「いいよ、なら、」  
 「ふぁ、あっ」  
   
 挿入したまま、ぐるりと体勢を変えてやる。体重の分、先程よりも奥まで  
俺のものが入り込んで軽く達したのか、リンの背中が波を打っていた。  
 
 「うん、これはこれで良い眺め」  
 「あ、ぁ、レンっ・・・深っ」  
 「膝立ちじゃなくて、俺の上にそのまま座ってごらん。もっと奥に当たるから」  
   
 言うなり、俺はリンの足を無理矢理開かせて腰を落とさせる。びくりとリン  
は背中をそらした。どうやらまた軽く達してしまったらしい。はぁはぁと忙  
しなく肩で息をするリンを俺は尚急かす。鬼畜だなんだと言われたって、原  
因は俺の本能をくすぐるリンにあるのがいけないのだ、という俺の理論は崩  
れない。  
 
 「ほら、動いて」  
 「・・・ぁ、っ、」  
 「できないの・・・?」  
 「・・・・・・、」  
 
 悔しそうに眉根を寄せた姿も、今では色気を出す物でしかないと言うのを  
判っているのだろうか。俺はリンの腰を掴んで、自分に、圧しつける。奥に  
当たるそれから逃れようと腰を引くリン。しかし、俺が圧している為に引い  
た分だけ挿入れられることになる。つまり、意図せずとも彼女は抽送を繰り  
返している。ぐじゅり、と艶かしい音と共に、端からゆっくりと暖かい液体  
が俺のものをつたって漏れ出してきた。なんていやらしい、愛情の雫。  
 
 「・・・っ、あ・・・レ、ンッ、ぁ、あ、もっ・・・っ、?」  
 
 彼女が言葉でも体でもイく事を知らせた。(だから、止めたんだけど)俺が  
腰の動きを止めると、切なさと怒りがかすかに混じった目で睨みつけてくる。  
全然、怖くない。むしろ、逆効果なのに、リンはいつまでもそれに気がつか  
ない。君の存在自体が、甘い媚薬のようなものだと言うのに。  
 
 「ほら、動かないといつまでたってもこのまま、だよ?」  
 「っ、」  
 
 再度、下から一度強く突いた。ゆらりと潤んだ瞳が、閉じる。 俺の腹部に  
手を置いて。彼女は緩慢な動作で、腰を、動かし始める。くねくねとレゲエ  
ダンサーが踊るように動く、求愛のダンス。  
 「・・・っん、んっ、ぁ、」  
 「っ、自分っ、だけ気持ちヨくなっても、ねぇ?」  
 「・・・どこ、が・・・いぃっの?」  
 
 微かに位置を変えながら、深く浅く、リンは俺を誘うために上下運動を繰  
り返す。俺が一瞬気持ちよさに顔を歪めたことに良くしたのか、些か余裕が  
出てきた表情で、リンは尚も踊り始めた。  
 
 「へ、ぇっ・・・なかなかっ、上手い、ね」  
 「‥こ、こっ?」  
 「っ・・・!」  
 
 あれだけもたもたしていたのはなんだったのか。俺がさらに顔を歪めたら、  
彼女はちらりと舌を見せて。自分の為でなく、腰を動かす(俺を、イかせるた  
めに、)(あぁ、これは何て快楽の宴)  
 
 「・・・はっ、・・・ぁ、‥ね、レンッ……」  
 「な、にっ、」  
 「きょ、うは、・・・わたしがっ、貰って、く、ねっ・・・?」  
 
 (その、脆くて、崩れそうな危うさに、俺はどうしようもなく惹かれたんだ)  
 
 「ね、・・・耳、貸して」  
 
 でも純情なきみは簡単に耳を寄せてしまう。  
 
 ――それが、罠だとも気付かないで。なんて可愛らしい。悪に染まりきれ  
ない白い花のままで、君は永遠に。  
 
 「ひ、あっ、ぅ!」  
 「甘いよ、リン――――?」  
 
 ほら、耳元で名前を呼んだだけでこんなに濡らして。ずぶずぶと貪欲に俺  
を飲み込んで、離してくれない。  
 
 「やっぱ、こうでなきゃ、ね」  
 
 腕を引いて、リンを押し倒した。目下の彼女はしまった、とばかりに顔を  
歪めている。でももう遅いんだ。君はこれから、俺のためだけに歌えばいい。  
 
 「さ、たっぷりとお礼、しなきゃな?」  
 「え、んり・・・っ、ぁ、そ・・・な、急、っだめ、っ」  
 「いいね、そのっ、カオ。たまらない、」  
 
 頭上で拘束している手のひらに、片手を重ねるとすがるように彼女は俺の  
手を握る。俺より一回り小さい手をぎゅっと握りしめると、これからくる快  
楽の波を恐れた彼女が縋るように握り返した。  
 
 「・・・あっあっ、レンっ」  
 「イきそ・・・?」  
 
 惜し気もなく綺麗な涙をこぼしながら、彼女は数回首を縦に振る。その涙  
を唇で拭って、俺は強く腰を圧し付けた。  
 
 「・・・っ、あ、ぁ!」  
 
 くっ、と俺を締め付ける事すら、愛おしい。その唇に、一度だけ口づけを  
捧げて、俺も、彼女と共に、――――――。   
 盲目的な盲愛の宴、御開きの時間はまだ早い。  
 

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