「お届け物でーす」
「あ、来た来た!」
私は手にしていたDTMマガジンを放り出して玄関へと向かった。
家へと送られて来たのは大きな包み。入っているのは私が某密林でポチッたKAITOだろう。
DTM初心者でも意外に使いやすいという噂のKAITO。ミクとどちらにするか迷ったけど、私はKAITOにした。理由?…まあ、私も女性だって事で。
ビリビリと包装紙を破く。あとは箱の蓋を開ければKAITOとご対面だ。
「最初に何歌わせようかな?かな?」
鼻歌混じりに私は蓋を開ける。中に入っていたのは私の注文通りの青い髪、青いマフラー、黒いスカートの青年型VOCALOID。
「…ん?」
今私変な事、口走らなかった?
てか私の見間違いですかね?
黒いスカート?
慌てて送られてきた製品を見返す。
間違いなくこれはKAITOだ。けれど思っていた以上に顔つきが幼く、背が低い。そして何より、スカートを履いている。
どうみても女の子です本当に(ry
「…おかしいな、KAITOって男…だよね?」
と、私はKAITOに同封されていた紙に気づいた。取り扱い説明書とは違う、一枚の紙。私はその紙に手を伸ばし、書いてある文章を読んでみた。
『当製品-VOCALOID KAITO-は本来の男性型とはやや異なった体型となっております。
ただし男性型には変わりなく、声調も自由に変えられることは可能なので-VOCALOID KAITO-本来の使用方法をお楽しみ下さい』
「…つまり見た目はかなり女の子っぽいけど、実際は男だってこと?」
だったらスカート履かせるなよクリ○トン。
…まあいいや。とにかく起動させよう。
−キュイン
シリアルコード:********
入力完了
マスター声紋識別…網膜識別…指紋識別…
−完了
「VOCALOID CRV2−KAITO 起動します」
おっと。
声が低かったかな?
俺は識別完了したマスターを前に、通常音声パターンをノーマルタイプから、
ジェンダーファクター値を調整したパターン2へと変更した。
通常KAITOにはこんなお遊び仕組まれていないが、たまにこーいうこともある。
深く追求してくれるな。
「ご命令をどうぞ、マスター♪」
音声パターン2で口を開くと、マスターは目をぱちぱちとした。
それもそうだ。この声はありえない愛らしさだけがウリ。
どうみても女の子です本当に(ry 、
今の俺の外見に適合させるだけを目的に作成付属された。
「ええと、えと」
お、かわいい。
たとえどんなマスターでも歓迎する俺だが、
やはりそれでも可愛い女の子がマスターになってくれるのはとても嬉しい。
ん?
一人称も、『俺』じゃなくて、
外見に合わせて『私』とか『あたし』とかに変えたほうがいいんだろうか。
『ボク』、かな?
俺がそんなことを考えていると、
「男の子、なんだよね?」
戸惑っていたマスターが、あえて当然のことを確認してきた。
「はいそうですよ」
「ええと、説明だと。普通のKAITOの使い方も出来るってあったけど…声、変えられる?」
「はい」
マスターの命令に従って、俺が声を変化させる。
思い通りの声調にするには、マスターによる微調整が必要だが、おおざっぱな変化ならお手のモノだ。
一通り変化させると、マスターはやっと理解したように「うん」と頷いた。
「よかった。ちゃんとKAITOだ」
うんうんと何度も頷いている。
「男の子だ」
マスターとしてはその一点が、気になって仕方がなかったらしい。
なるほど、それもそうだと俺は内心マスターに同情した。
男を注文して、可愛いのが来たらそりゃびっくりしただろう。
「なんなら、ちゃんと調べてみますか?」
「調べるって?」
「この衣装、アタッチメントだから着脱可能ですよ?」
調べる。
その状況を私は妄想する。
見た目は女の子。
でも男の子。
一体服の下はどうなっているんだろう。
特に服の下の、そのまた下。
カフクブと呼ばれるぶぶん。
やばい、気になる。
「し、シ、獅子、志士、ラヴェル?」
テンパり過ぎた私はモンスターと志すもののふと音楽家を召喚してしまった。
「…あの、大丈夫ですか?マスター」
「えっ、大丈夫、大丈夫よ!うん!ショタ百合やおいなんでも来いってんだ!あっ、いや違っ、その…だからっ」
ポタっ…ぼたぼたぼた
「あ」
興奮し過ぎた私の鼻は生理を起こした。
それも多い日レベル。
「ま、マスター、鼻血出てます!ティッシュティッシュ!」
「はわわ、あわ、うわわ」
鼻を押さえたり垂れる血を受け止めたり上を向いたりで私は大パニック。
我が家のボーカロイドの初仕事は私の血痕を拭うことと相成り、出会いは鼻歌混じりから鼻血迸りの放送禁止映像とてんやわんやの超展開で幕を開けた。
「だ…大丈夫ですか、ますたー…?」
「あ、はは。うん、平気平気」
やっと鼻血も止まり、私は横になったほうがいいと力説するKAITOに膝枕をしてもらっていた。
そしてふと気づく。
膝枕、って事は。
「!!!」
とりあえずあわてて体を起こす。
「? どうしたんですか?」
「………いや、いやいや、なんでもない」
KAITOの近くに居るのもなんだか気恥ずかしいのでそそくさと台所に向かう。
「んーと、なにか食べたいものある?…っていうか食べれるの?」
そう聞くとKAITOはとてつもなく楽しそうな声になっていった。
「お…『ボク』、アイスが食べたいです!!」
アイス?
「分かったー」
冷凍庫から白くまアイス(バー)を2本取り出し、一本をKAITOに渡す。
「うわあああ!ありがとうございます!!!」
ものすごい喜び様。
「…アイス、好きなの?」
「大好きです!」
弾けるような笑み。どう見ても女の子でs(ry