「どうしたの、カイト? 妙に上機嫌じゃない」
「え、えぇ? そそそ、そーかなぁー? あはっ、あははっ♪」
メイコの言う通り、この日のカイトは朝から様子がおかしかった。
妙に落ち着かない様子でソワソワしたり、ニヤニヤしたり、テカテカしてたり……
食べるアイスの量もいつもの倍近くだ。
「めーちゃん、ミク達は何所に行ったのかな? まだ帰ってこないかなぁ?」
「んー……公園に行くとか言ってたけど…………それがどうかしたの?」
「そーか、公園かぁ〜……フフフッ、本当はお花屋さんだったりして……いや、アイスやさんかな?」
何故かちびっ子3人組が帰ってくるのを楽しみに待っているカイト。
そしてカレンダーを見てニヤニヤ…………その時、ようやくメイコはある事に気づいた。
(……あっ、今日って父の日か……まさかカイトの奴…………)
『母の日』、メイコに花束をあげたちびっ子3人組。それを見ていたカイトは、
メイコの察する通り『父の日』と言う事で、自分も何か貰えると期待していたのだ。
楽しみで仕方無いのか、目じりが垂れっぱなしのカイト。
それを見てヒヤヒヤするメイコ……。
(あの子たち……何か用意してるのかしら……?)
『たっだいまぁー♪』
玄関から聞こえる3人の声を聞き、カイトは真っ先に玄関へ向かう。
「お、おかえり! どこ行ってたの?」
「え? 公園だけど? どうかしたの?」
「ん……えーっと…………いや、なんでもないよ……」
「ほぇ〜? 変なカイト。あっ、めーちゃん! ごはんごはん♪」
そう言ってカイトの横を通り、台所へ向かう3人。無残にも崩れ落ちるカイト。
今日一日カイトを見ていたメイコは、涙を拭いながらその姿を柱の陰からコッソリ眺めていた。
食事が始まると、さっきまでの元気は何所へやら……カイトは俯いたままテレビの前に座り、
一人淋しく膝を抱えて体育座りをしている。
「カイト、ご飯出来てるわよー」
「……うん……今はいいや。アイス食べててお腹いっぱいだから…………死にたい」
あまりにも悲惨な姿を目の当たりにし、
メイコは仕方なく3人を呼んで耳打ちをする。
「あのね、今日は父の日なの。それでカイト期待してて、だからね……ゴニョゴニョ――――」
『うん、分かった!』
「カイト―!!」
ミクの声に気付いてカイトが振り返ると、そこにはちびっ子3人組。
リンとレンはカイトの左右に座り、ミクは向かい合って座る。
「カイト、今日お父さんの日だから……これ、プレゼントね♪」
「一応感謝してるんだから、ありがた〜く受け取りなさいよ!」
「そんな言い方しなくても…………リンも本当はカイト兄に感謝してるんだよ。だから――――」
『いつもありがとー……――――んー……チュッ♪』
右頬にリン、左頬にレン、そして唇にはミクの熱〜いキッス。
カイトはあっという間に顔の色を真っ赤に変え、みるみる元気になっていく。
「あーッ、なんだかカイトの唇って甘い! アイスの味がする!」
キスを終えたミクがそう言うと、
「ミク姉、それホント? ……ちょっと、カイト! あたしとも唇でキスしなさいよ!」
「そんなのずるいよ! ボクも甘いの欲しい!」
こうして約3分間ちびっ子に唇を略奪され続けたカイトは、
文字通りその場にアイスのように溶け、幸せそうな顔をしていた。
「ほらっ、早く食べちゃわないとご飯冷めちゃうわよー」
『はぁーい』
メイコに言われてようやく台所へ3人が戻ると、
今度はメイコがカイトの元へやってきて、そっと囁く。
「私も父の日のプレゼントあげなきゃね」
「え?! ……その、もしかして……めーちゃんもキスしてくれるの?」
「そうね、……どこにキスして欲しい? 唇? ほっぺ? それとも…………ココが良い?」
「んっ……と、最後のところが良いかな……」
「うん、素直でよろしい。……そうと決まればさっさとご飯済ませて、ちびっ子達には寝てもらわないとね♪」
メイコは軽く握っていたその部分から手を離すと、3人のいる台所へと戻り、
カイトはご飯も食べずに寝室へ戻り、3人が寝静まるまでベッドの上で正座をしていたという……
おしまい