父の日。
俺に関係のない日。
今はもちろん、子供の頃も。
子供だった俺は、大人だった親父が嫌いだと決め付けて接していた。
子供のまま俺は都会に出て、そのまま就職した。
子供だった俺も、大人だった親父も、みんな休学したまま、大学だけ卒業して。
子供でもできればあの日々の親父の気持ちも分かるだろうか。
子供どころか結婚する相手も居ないようじゃ、まだまだ親父の気持ちは分かりそうにない。
パソコンと睨めっこする仕事に疲れて、アパートに帰って、俺はまたパソコンと睨めっこを始める。
趣味がDTMだから。
俺にもし子供が居るなら、この娘かな。
起動させたミクは別段なんの手も加えていない、普通の音声合成ソフトだ。
キオ式でもKEIの絵が動くでもない。
調律を開始しようとして、ふと見慣れないファイルに気がつく。
簡素なテキストファイル。
それにはただ一言、
【貴方の作ってくれる歌が大好きです。いつもありがとう、私のお父さん。 Miku,H】
とだけ。
誰が書いたんだか。
でも…なんか、粋なイタズラだな。
普段は何の祝日かなんて気にせず休みをただ喜ぶのに、覚えているってことは。
やっぱ気になってんだな。
俺は親父の携帯に、
【父の日だな。ありがとう親父】