「ねぇ、ご飯ちゃんと食べてるの?」
そう言ってメイコがソファで寝ていた俺の頬を抓った。
「心配しなくても、ちゃんと食べてるよ」
抓られた頬に爪が刺さって痛い。
だらしなくソファから落ちそうになっていた身体をゆっくり起こそうとすると
メイコの綺麗な手がそれを邪魔した。
白のジャケットの隙間から指を忍ばせてインナー越しに腰に触れると顔をしかめる。
「ちょっと…痩せたでしょ?」
「そうかな?あんまり気にしてないから良く分からないな…」
仕事は前より増えている。
歌よりも写真などの露出がメインとなっている現状はあまり嬉しくないけれど、
それでもなんとか毎日の食事に困らない程度には独立…出来ていると思う。
「少しくらいは気にしなさいよ…」
色付いた唇が苦笑した。
不自然に紅く艶めくメイコのそれは洋菓子の上のドレンチェリーのようだった。
だから…その唇があまりに甘そうに見えたから、もっと深く味わいたくなった。
「……」
後ろに手を回し、引き寄せて啄む。
「…ンッ」
メイコは驚いたみたいだけれど、そのまま唇を割って舌を絡ませると抵抗することなく俺を受け入れた。
夢中になって水音を立てながら存分に甘いキスを味わう。
唇を離すと二人の間を銀糸が結んだ。
「…コラ。疲れて寝てたんじゃなかったの」
呆れながらメイコが言った。
「ん…疲れてるけど?」
確かに疲れているけど、それとこれとは話が別だ。
「うちにいるってことは…ご飯食べてくつもりだったんでしょ」
「うん。でも今日はメイコをいただこうかな」
「…バーカ」
ゆっくりとメイコがその身をこちらへと委ね、もたれかかるとソファが軋んだ。
「いただきます」
そう呟いて、首筋に唇を寄せる。
空腹を満たすよりも先に、俺は久し振りにこの食事を楽しむことにした。