めーちゃんは優しい。少し乱暴なところもあるけど、  
それは僕らのための強さであり、本気のときはいつだって正当な理由がある。  
 
 
「えーと、今日の晩御飯は4人分でよかったかな…」  
仕事帰りに食材を買って家に向かう途中の僕は、  
今日の家族の予定を反芻する。  
ミクは休み、リンとレンは15時までレッスン。  
めーちゃんは19時からレコーディング。  
そして僕はバンドのサポートメンバーとして  
コーラス・ベースを担当してきたところだ。  
現在の時刻は18時45分。  
めーちゃんはもうスタジオに着いてる頃かな。  
今夜はカレーにしよう。  
めーちゃんが帰ってきたときに、すぐ温めて出せるように。  
 
僕とめーちゃんの二人暮らしに、去年の夏ミクが加わり、  
年末に双子が転がり込み、家族として暮らし始めて  
半年が経った。人が多くなるに連れてにぎやかにはなったけど  
それに比例するように仕事の量も増えた。  
僕がめーちゃんの仕事を手伝いながら  
二人で細々と暮らしていた頃が何だか懐かしい。  
 
そんな訳で、夕食当番は僕とめーちゃんとミクの持ち回り制だったりする。  
リンとレンは子どもらしく、基本的に仕事は  
朝から夕方までの時間だけなので、夜は家で誰かの手伝い。  
ミクも一応未成年なので、多忙でも21時には帰らせてもらえてるみたい。  
僕とめーちゃんは、仕事の数的にはミクより多くないけど  
深夜・朝方関係なしで不定期に入るので  
夕食は全員揃って食べられないこともしばしば。  
 
 
 
 
 
「ただいまー……あれ?」  
玄関のドアを開けると、いつもなら聞こえてくる  
談笑の声やテレビの音が聞こえない。  
「お、おかえり、お兄ちゃん…」  
ミクが困ったような顔をして出迎えに来た。  
靴を脱いで上がると、居間のソファーにリンが寝転がっているのが見えた。  
眠ってはいないようだが、顔はクッションに埋めている。  
「もしかして、リンとレンがケンカでもしたの?」  
「うん…。ケンカはもう収まったんだけど、レンが部屋にこもっちゃって」  
お姉ちゃんに怒られたのがショックだったみたい、と付け加えるミク。  
「めーちゃんが?」  
ケンカ両成敗主義のめーちゃんに怒られて、レンだけ拗ねるなんて  
どういうことだろうと不思議に思う。  
「ケンカの原因はたいしたことなかったんだけど…」  
ミクの話では、いつも仲良しでケンカもよくする二人が  
いつものように言い争っていたところ、今日は取っ組み合いにまで発展してしまい、  
レンの放った手刀が、リンの首元に正面からクリーンヒットしてしまったらしい。  
その瞬間、今まで黙ってソファーで雑誌を読んでいためーちゃんが  
レンの横っ面を張り倒し、叱り飛ばした…ということだ。  
 
話を聞いていくうちに、段々顛末が分かってきた。めーちゃんらしいや。  
「それで、レンはそれに納得しなかったの?」  
めーちゃんのことだから、ただ叱るのではなく理由を述べて  
納得させたのだろうと思っていたのだけど。  
「ごめんね…私怖くてびっくりして、最後まで聞かずに部屋に入っちゃって…  
お姉ちゃんが仕事に行ったあとは、見ての通りなの」  
「なるほど…」  
ミクはいい子だ。めーちゃんを本気で怒らせることは確かに今までなかった。  
それ故、本気のめーちゃんを見て彼女もまたショックだったのだ。  
「分かった。レンには僕から話しておくよ。  
今夜はカレーにするから材料だけ切っといてもらえるかな」  
スーパーの袋をミクに渡し、切った野菜の中にネギが混入してないことを  
祈りながら、僕はレンの部屋に向かった。  
 
「レン、入るよ」  
鍵のない子ども部屋のドアを開ける。  
ベッドの上のレンは枕に顔を埋めて足をぶらぶらさせていた。  
同じ格好の居間の片割れを思い浮かべ、少し笑ってしまった。  
「カイ兄、何の用」  
くぐもった声。ちょっとふてくされてはいるが、話せないこともなさそうだ。  
「リンとケンカしたんだって?」  
「それはもういいよ」  
レンはごろりと仰向けになる。女所帯の中の男二人とあって  
僕とレンにはある種の連帯感が生まれつつある。  
他の兄弟に話せないことも、僕にはたまに相談してくれるのだ。  
「じゃあどうして?」  
僕はレンのベッドの縁に腰掛けた。  
「なんか…びっくりした。ふざけて拳骨食らうことはあったけど、  
俺メイ姉に本気で怒られたの初めてだったし」  
「なんて怒られたのさ」  
「自分のしたことを考えなさいって。分かったら  
リンに謝れって。だからずっと考えてたんだ」  
思春期の子にしては珍しく素直な態度だ。めーちゃんの圧政…いやいや  
しつけのよさがよく分かる。  
「答えは見つかった?」  
「…俺、何にも考えてなくて手振り回して、あ、でもリンのヤツも  
俺のこといっぱいボコってたし。でも…でも多分俺がリンの喉に  
当てちゃったのがいけなかったんだと思う。  
リンは咳き込んでたし、声が出なくなったらどうしようって  
今になって怖くなって…」  
「大正解。ちゃんと分かってるじゃん」  
僕はレンの頭を撫でてやる。  
めーちゃんは少年の心の成長に賭けてみたんだろうな。  
僕は初めっから理由付きで怒られる(諭される?)タイプだったみたいだ。  
「カイ兄もメイ姉にこんなことで怒られたことあんの?」  
僕の手を煩わしそうに払いのけながらレンが聞いてくる。  
「そうだねぇ…。昔若気の至りでタバコに手を出しちゃったときは  
すごく怒られたかも。もちろん20歳は越えてたんだけど、  
喉に悪いからって。後、口に怪我したとき」  
「怪我って…どうせツララかなんか齧ろうとして口切ったんだろ?」  
「言わせておけば…このっ!」  
レンは笑いながら、僕の拳をベッドから飛び降りて回避した。  
この調子ならもう大丈夫かな。  
「レン、リンに謝っといで。ミクも心配してたしね」  
「うん」  
部屋を出て行こうとしたレンは小さく、カイ兄サンキュ、  
と言い残して居間に降りていった。  
さて、夕飯の支度を始めなきゃと僕はふうっとため息をつく。  
レンに話したタバコの話は本当のことだ。  
僕自身もあまりおいしいものではないな、という感想を持ったので  
タバコにはそれ以降手を出していない。  
口に怪我…というのは正確には間違いだ。  
あの時のことを思い出し、少しドキドキする。  
 
 
僕とめーちゃんがまだ二人で暮らしていた頃――  
仕事が上手く軌道に乗っていなかった僕が自暴自棄にならずに済んでいたのは  
めーちゃんのおかげだ。二人っきりの部屋で、僕の歌を聞いて  
飾らない言葉で褒めてくれて、一緒に歌ってくれることで、歌う楽しさを忘れないように  
励ましてくれためーちゃん。僕自身もそんなめーちゃんに心配をかけたくなくて  
落ち込んだときでも明るく振舞えるように、自分を鍛える術を学んだと思う。  
そんな日々の中で、僕はめーちゃん自身の歌う姿勢や、ボーカロイドとしての  
ポリシーをたくさん教えてもらった。  
恥ずかしい話だけど、僕はずっとめーちゃんにべったりだった。  
僕にとって母であり、姉である存在のめーちゃん。  
いつ頃からか家族としてのめーちゃんに女性としてのめーちゃんを  
意識するようになり、日々のスキンシップの中にもしばしば  
下心が混じるようになってきた頃。  
 
その日の僕は、仕事に行くめーちゃんにすがって駄々をこねていた。  
一人になりたくなくて、めーちゃんにそばにいて欲しくて。  
めーちゃんはそんな僕をはいはい、とあしらっていたけど、  
冗談を装って我侭を言っていた僕から、たまに隠し切れなかった  
素の部分を感じ取って、一瞬ガードが甘くなった。  
その時の僕はというと、さすがに仕事をキャンセルさせる訳にはいかないけど  
せめていい思いをして、留守番の寂しさを紛らわそう…と邪なことを考えていた。  
つまるところ、僕に同情して振り払う手が止まっためーちゃんの胸に  
僕は思いっきり顔を埋めたのだ。  
こんな時の僕が、幼児の感覚で衝動的にやってしまったのか、そういう目的だったのか  
めーちゃんは僕の心が読めるのかと思うほど的確に見分ける。  
「いい加減に…」  
やっぱりバレたか…と覚悟を決める。  
「しなさいっ!!」  
ぱしぃっと気持ちのいい音が…鳴らない代わりに、ゴッという鈍い音が響いた。  
至近距離だったせいか、目測を誤っためーちゃんの平手打ちは  
掌底が僕の左頬にめり込む結果となった。  
 
しびれたような感覚とともに、口の中に鉄の味が広がる。  
ああ、口の中を切ったなと思いつつ、  
「めーちゃ…」  
ひどいよ、と抗議の声を上げる途中で言葉を飲み込む。  
めーちゃんは僕の半開きの口から見える、赤い舌に気付いたのだろう。  
大げさなほど目を見開き一瞬の後、顔を歪めた。  
「カイトっ!!ごめん!ごめんなさい!口の中見せて!!」  
頬に手を添えられ、その剣幕に思わずあー、と素直に口を開けてしまう。  
すぐに止まるだろうけど、口の中を気持ち悪く流れていく赤い体液と、  
ごめんねごめんねと繰り返すめーちゃんと。  
 
めーちゃん可愛いなぁとか、過保護すぎるんじゃないかとか  
切れたところが痛いなぁとか、時間大丈夫かなとか  
はたまたさっきまでの悩み事や不安まで、色々な感情が合わさって、  
一言で言うなら「もうどうにでもなれ」という気持ちになった僕の口からは、  
自分でも驚くような言葉が出てきた。  
 
「めーちゃん、キスしてよ。痛いところ舐めてくれたら早く治るかも」  
 
はっと我に返って、なんてね、と笑ってごまかそうとしたところ、  
ふいに唇が塞がれた。めーちゃんの舌が僕の口の中を這い回り、  
歯が当たって切れた頬の内側を舌先でなぞられる。  
ぴりぴりとした痛みとそれ以上の快感で  
僕はしばらくぽーっとしたまま動けなかった。  
ほとんど無意識にめーちゃんの舌を追いかけると  
めーちゃんは少しの逡巡の後、舌を絡めあってくれた。  
喉の奥を流れていく血交じりのの唾液の味を感じつつ、  
めーちゃんの口にも同じものが入っていってるのかと  
考えたところで唇が解放された。  
代わりに頭を両手で抱え込まれ、髪に指を差し込まれる。  
「私たちにとって喉と口は、歌を歌うのに一番大事なトコロだから…  
だから大切に、気を使わないといけないのにね。ごめんね」  
 
心から僕を傷つけたことを後悔して、僕の身体をを心配してくれて、  
僕を同じボーカロイドとして大切に想ってくれていて、  
そんなめーちゃんの純粋な気持ちを利用してしまった罪悪感と  
初めてキスしてもらった満足感がごちゃまぜになった状態で、  
僕は仕事に遅れそうになるめーちゃんを玄関先で見送ったのだった。  
 
 
22時過ぎ、帰宅したら真っ先にレンの部屋に行こうと思っていたらしい  
めーちゃんは、レンが玄関で出迎えてくれたことにたいそう驚いたようだった。  
「ちゃんと分かってくれたみたいでよかったよかった」  
満足げに頷いて、杯を空けるめーちゃん。  
先ほど子ども部屋に電気を消しに行った際に見た、仲良く眠る双子の姿を思い浮かべた。  
「めーちゃんはレンが自分で考えることを見越して答えを教えなかったの?」  
僕は空になった自分のグラスと、めーちゃんのグラスに酒を注ぎ足す。  
「あの二人は、私たちと出会う前…それこそ生まれる前から  
一緒にいたんだから、少し考えれば相手の気持ちを  
ちゃんと分かってあげられると思ったのよ」  
めーちゃんはグラスをかちん、と僕のグラスに触れ合わせ、口に運ぶ。  
「あんたがレンの背中を押してあげたんでしょ?  
和解できないまま、明日一緒に仕事に行くことになったら大変だと思って  
急いで帰ってきたんだけど、その必要はなかったようね」  
「それくらい僕のこと信用してよね。長い付き合いなんだからさ」  
僕もグラスの中身を一気に半分ほど空ける。今日は何だかピッチが早いかも。  
 
ところで、とめーちゃんが僕の方を見る。  
「『カイ兄も昔メイ姉に怒られた話をしてくれた』ってレンが言ってたけど、  
まさか、あの話はしてないでしょうね」  
あの話、とは…あの話のことなんだろうな。  
「ご心配なく。子ども相手ですから」  
「…あんたそんな風に捕らえてたのね。あの頃はまだ純粋だったと思ってたのに…」  
ニコニコと頷く僕に、めーちゃんが心底悲しそうにため息をつく。  
「めーちゃん、僕だって男だよ。それに僕はめーちゃんのことが大好きだし!」  
グラスを手に取ろうとして気付く。あぁもう空けちゃった。  
 
何だか気持ちがいい。僕はめーちゃんの横に移動して肩にもたれかかる。  
「重い」  
めーちゃんがお酒を飲み干すのをぼんやりと薄目で見つつ  
もぞもぞと抱きついてみる。風呂上りのほのかなシャンプーの香りが心地いい。  
「飲みすぎよ。今日は早く寝たら?」  
めーちゃんが僕の頬に手を当てる。いつもは暖かい手が気持ちよく感じられるのは  
僕の体温が高いせいなんだろうな。  
「あれぇ、怒んないの?」  
めーちゃんの手を上から掴み、頬より熱い首筋に移動させる。  
冷たいお酒の入っていたグラスを握っていた、めーちゃんの手はひんやりして気持ちがいい。  
「今抱きついてきたのは無意識でしょ。その手も。あんたは素直すぎるから、  
下心があるときは、一瞬ためらうからすぐ分かるのよ」  
はた、とめーちゃんの手を離す。  
そうか。自分では気付いていなかったけど、僕はそんな分かりやすいヤツだったのか。  
「じゃあ素直に言う。今日は一緒に寝てほしいな」  
僕はめーちゃんの胸元に手を伸ばす。柔らかい膨らみに指が埋まる感覚が気持ちいい。  
ぺしん、と頭を軽くはたかれた。  
「部屋に移動してからになさい」  
めーちゃんはやっぱり優しい。  
 
めーちゃんの首筋は白くて綺麗だ。  
ここから出る声は、細くたおやかで、安定感があって力強い。  
今めーちゃんの吐息混じりの甘い喘ぎ声を出させているのが  
僕自身だと思うと腰の辺りがぞくぞくしてくる。  
そんなことを言ったらバカ!と怒られた。  
めーちゃんは顔を背けて恥ずかしがるけど、それがますます  
気持ちよくて愛おしくて、もっと感じたくなる。  
「…そんなこと言ってっ!カイトの方こそ…  
こ、こういうときには、やたら色気のある艶っぽい声出してきて!  
ずるいにもっ、ほどがあるじゃない!」  
めーちゃんが顔を真っ赤にして、僕の喉に手をかける。  
喉仏の辺りを撫でられてくすぐったい。  
「そ、そうかな?別にそんなつもりはないんだけど…」  
それが本当なら、きっとこういうときは無意識にそうなるのかな。  
人間のような感情が備わっていてよかったなと思う。  
 
めーちゃんが僕に伸ばしている手を取り、指先を絡めあう。  
ボーカロイドは歌を歌うための存在だけど、楽器の扱いも多少は  
インプットされている。  
めーちゃんのバイオリンを奏でる細くて綺麗な指。赤い爪。  
僕のピアノを弾く長い指。青い爪。  
こうして合わせてみると、色合いも形も誂えたようにぴったり似合う。  
実際僕という存在ははめーちゃんのために誂えてあるんだけど。  
歌だけじゃなくて、存在そのものがめーちゃんに合わせてあるんだなと  
改めて感心し、めーちゃんに一番ふさわしいのはやっぱり僕だけだと  
勝手に満足してしまう。  
 
「なんか違うこと考えてるでしょ?」  
めーちゃんがもう片方の手で僕の顔を引き寄せ、額に軽くキスをする。  
「ぜんぜん。僕はめーちゃんのための存在で、  
それがすごく幸せだって思ってたところ…めーちゃん痛い痛いぃ!」  
本当のことを言ったのに、何故か頬をつねられた。  
でも顔を真っ赤にして、泣きそうで、ちょっと嬉しそうな  
めーちゃんの顔が見られたので、痛みなんか忘れて嬉しくなる。  
「カイト………ありがと」  
ぼそっとめーちゃんが呟いて抱きついてくれる。  
「めーちゃん可愛いよ…!」  
耳元で息を吹き込むように囁くと、めーちゃんの体が  
びくっと震える。今のは意識して色気を出してみたんだけど、大成功みたいだ。  
めーちゃんが反応してくれる度に、繋がってる部分がすごく気持ちいい。  
「カイトっ…私、もう…っ!」  
「んっ…!めぇちゃ…ん…!僕もそろそろ…」  
めーちゃんがぎゅっと僕の背中に回した腕に力を込める。  
僕もめーちゃんを強く抱きしめる。  
…やっぱり僕らの相性はぴったりだ。いろんな意味で。  
 
 
一戦交えた後のめーちゃんはいつも僕が眠るまで頭を撫でてくれる。  
こんな時はお姉さんみたいだ、と思っては背徳的な気分になって、  
想像を頭から振り払う。でもそれとは別格で、  
つい頼んでしまうことがあるのだ。  
「めーちゃん、子守唄歌って」  
「…童謡はあんたの得意分野じゃなかった?」  
「めーちゃんの歌が聞きたい。次は僕が歌ってあげるからさ」  
お願い、と手を合わせると、めーちゃんは約束だからね、と  
念を押して、すっと息を吸う。  
めーちゃんの子守唄は優しい。  
きっと僕は生まれる前からこの歌声を知っていたんだろうと思う。  
僕がこの世に生まれ出でてからも、苦しくて、辛くて、寂しい夜に  
めーちゃんが歌ってくれると、楽に眠りにつくことができた。  
それくらい安らげて、心にすんなり染み込んでくるのがめーちゃんの声。歌。  
明日からも頑張ろう、と元気をもらえる睡眠を感じながら、  
僕の意識は穏やかに眠りについていった。  
 
 
******  
 
「…あれ、めーちゃん、おかしい…。頭が…何でこんなに頭が痛いの…?」  
「…いつも私が3日で空ける一升瓶が、空になってるんだけど…」  
「めーちゃ…お願い…助けて…。遅刻する…」  
「…。私にはどうにもできないって…」(合掌)  
 
END  
 
 

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