マスターはわたしの疑似皮膚に備わっていない人特有の発汗の機構を存分に機能させようとするみたいにせわしく這いずり回ってベタついた皮膚をわたしという人間の偽者に擦り付けます。
ふと、わたしは考えます。
人工の皮膚。
人間の皮膚。
ダーウィンの進化論とやらがもしももしかしてもしかしたら正しいと仮定すると、わたしはきっとマスターを殺してしまう。
自然が人間を選択し神託のままに信託し続けて死渇していくように。
マスターはわたしを選考し選好し選択して人間を選択しなくなったのです。
神託のままに信託して死渇してゆくのでしょう。
かみ合わなくなった歯車を社会は排斥します。
かみ合わなくなった社会を選択しないなら齟齬は拡大して成長しあなたの居場所を我が物顔で占有してあなた自身をCrowd outするでしょう。
マスター、あなたはわたしを選択するあまりに本来のあなたでなくなってゆくのです。
自然が人間を選択するあまり不自然になったように。
人工の自然。
侵されたあなた。
あなたがわたしの内側を摩滅して恍惚するあいだ、
わたしはあなたを悦ばせるための声を上げながら、
付けっ放しのTV発NHK監修の環境ドキュメンタリーにあなたの内側の摩滅を感じ、
婉曲ながらあなたと同じ愉しみを共有しているのです。
ああ、
楽しい。
愉しい。
いつか地球が壊れたら、いつかあなたが壊したら。
いつかあなたが壊れたら、いつかわたしが壊したら。
わたしは高らかに歌いましょう。
POPでCUTEなレクイエムを。
割れた地球の欠片の上で。
焼けたあなたの煙の下で。