teen age:恋に恋するとき。
人生でもっとも動揺するひととき。
出典はわたしの辞書。
欄外にシャープペンで書いてある。
わたしは恋に恋していた。
でも、わたしのまわりに“おあつらえ向き”なステキなオトコノコは見当たらない。
カイトはお兄ちゃんて感じだし、メイコさんと取り合うほど大したものでも…。
teen age一年生のレンくんはまだまだお子様。リンちゃんと遊んでなさい。
はたと気付いて、わたしはひとり。
たくさんのラブソングを歌えても、恋未体験のわたしにラブを詩うことはできない。
叶わないほどアコガレルのは何故かしら。
わたしは食事に行くと、カラオケに行くと、喫茶店に行くと、まずメニューのデザートを確認する。
“甘い恋”を食べさせる店は未だ見つけられない。
もしかしてメインディッシュ?…お子様ランチの隣にあったりして。
その日、わたしは居間で少女漫画のなかの恋を味わっていた。
友達から借りたのだけど、ちょっと退屈な漫画。
ヒマを持て余し、わざときわどい感じに脚を組んで、向こうでリンちゃんとゲームしているレンくんをこっそり観察。
居間はスリッパで歩くことになっているけど、フローリングのひんやりした感触が好きなわたしは、ニーソックスも脱いだ素足だった。
レンくんの視線はチラチラとわたしの脚のあたりをさまよい…あっ、目が合った。
ふふふ、慌てちゃって。
見てたのバレバレだよ?
“女の子”を活かしたイタズラでレンくんを困らせているとき、
「こんにちは…その前に、はじめまして、かな」
神威がくぽは現れた。
違うかもしれない。
でも、そうかもしれない。
わたしには彼が、“神威がくぽの姿をした恋”かもしれないと思えた。
これがわたしの初体験?
ガイケンにひかれたケイハクなヒトメボレ?
そうかもしれない。
でも、違うかもしれない。
がくぽに続いて居間に入って来たメイコさんが、わたしとリンちゃんとレンくんに彼を紹介した。
ほとんど聞こえない。
聴いてるけど聞いてない。
彼の白い喉にみとれていたら、目が合った。
慌ててしまう。
慌てて俯くと、わたしだけスリッパを履いてなくて、ぺたぺたと素足。
恥ずかしくなる。
隠せるはずもないけど、読んでた漫画を前に持つ。
うう、さっきはごめんよレンくん。
恋は心を変にするんだって。
たしかに変かも。
わたしは辞書の“不可能”を塗りつぶしたのをおもいだした。