むかしむかしあるところに、青の国と呼ばれる大きな国がありました。
青の国の王様は戦争が好きで、周りの国々から恐れられていました。
隣の赤の国に攻め入り、属国にしてしまったのは今から15年ほど前のこと。
多くの人々が殺され、生き残った人は奴隷として青の国に連れて来られたり、
青の兵の監視下で怯えながら暮らす日々を送っていました。
次は平和を愛する緑の国へ、と手を伸ばしかけた頃、
王様は病に倒れ、帰らぬ人となりました。
王の跡継ぎである青の王子は、王とは似てもつかぬほど心優しい青年でしたが
真面目で世間知らずなため、大臣の言うままに王の後を継ぎ、緑の国を侵略する
意向を固めてしまったのです。
ねぇ、メイコ。僕はもうすぐ王になるんだって。妻も迎えなくちゃならないし、
父上の意志を継いで緑の国を征服しなくちゃならない。
だからまず緑の国の末姫と結婚して、その後に緑の国に攻め入れば一石二鳥じゃない?
戦わずして勝つことができるなんて素晴らしいことじゃないか。
それにね、緑の国のお姫様はすごく可愛い子なんだ。肖像画を見て、一目で気に入っちゃったよ。
僕はあの子のこと好きみたい。好きになっちゃったんだ。
あの子がお嫁さんになってくれれば毎日楽しいだろうなぁ。
いつも僕だけに微笑みかけてくれるに決まってる。
え、緑の王家?うーん、抵抗しなければ市井で普通の暮らしを送るくらい出来るんじゃないかな。
あ、そうだ。メイコみたいに城で働いてもらうのもいいかもね。
私の家族はもういない。王だった父も后だった母も、
優しいお姉様たちも、最後まで私の身を案じてくれたお兄様も…。
末の王女だった私だけが、処刑から逃れ、青の王子に仕えるようにとこの国に連れて来られた。
自分の人生に絶望したこともある。青の王を殺したいほど憎んだこともある。
でも今はもう諦めがついてしまった。少なくとも王の血筋だからという意味で王子のことを憎んではいない。
生まれてすぐに母親を亡くした王子の身の回りの世話をするため、私が連れてこられた。
大人ばかりに囲まれていた王子は、私のことをたいそう気に入ってくれた。
まだ幼くて、自分の境遇をよく理解していなかった私だが、
彼といると家族を喪った悲しみを少し安らげることができた。
もし主従関係ではなく、同じ庶民の子ども同士だったなら、
私たちはよい幼馴染だったと言えるだろう。
月日が経ち、とうに成人の歳を迎えた今でも、王子に一番近いところに仕えているのは私だ。
大臣たちが、側近を私以外に変えるように(特に護衛として役に立つ男)と進言しても
「メイコがいい」といって彼は頑なに突っぱねる。それが嬉しくもあり複雑でもある。
城内の召使の間では、王子が私に手をつけている、との悪意ある噂も流れているが、馬鹿馬鹿しい!
彼は純粋に私のことを気に入っていて、時には子どものように甘えて抱きついてくるような男だ。
…だからこそ今回の件は、例え政略結婚だとしても喜ばしいことのはずなのだ。
彼が嬉しそうに緑の姫に好意を寄せていることを話すのに、微笑みながら相槌を打つ。
でも、心の中でもやもやとした感情が渦巻くのを感じる。胸が痛い。
そこでようやく、私は彼のことが好きだったんだと気付く。
王子としてではなく。幼馴染の少年として。
身分違いの許されない恋であっても。
それと同時に心の中で固く誓いを立てる。この想いは生涯誰にも気付かせてはならない、と。
青の国の人を初めて見ました。鬼のように恐ろしい人たちだと、小さい頃から教わってきたので
私たちとあまり変わらない姿をしていることに、びっくりしてしまいました。
えと…どうして青の国の王子様たちが私のお城に来たかというと、お城でパーティを開いたからです。
なんでパーティを開いたかというと、友好条約?というものを結ぶためだそうです。
もうすぐ青の国の王様になる青の王子様と、緑の国の王様であるお父様が
「青の国と緑の国は戦争しません」って約束をして、仲良くなるんだそうです。
でも…ざわざわしているはずなのに、会場の空気はなんだかギクシャクしています。
パーティが始まる前に、お兄様とお姉様とお話しました。青の国は信用できない、と二人とも言っていました。
お兄様が私に言いました。青の王子はお前を妃に迎えようと言い出すかもしれない、と。
お姉様は少し泣き顔になって、ミクが人質に取られてしまうのね、と私を抱きしめました。
よく意味は分からなかったけど、私は大丈夫よ、と答えました。
お父様やお母様たちと離れて暮らすことになるのは寂しいけど、
毎日みんなでお歌を歌ってお散歩ができなくなるのは辛いけど、
今まで怖いと思っていた、青の国の人たちとこれから仲良くできるのなら、ミクは頑張ります。
そう思っていたはずでした。
会場には音楽が流れ、パーティに出席している人たちは、思い思いに踊ったりお酒を飲んだり料理をつまんだりしています。
遠くにお父様の姿が見えました。横には青い髪の男の人。お約束のお話は終わったみたいです。
ああ、お父様が無事でよかった、と隣にいるお姉様が胸を撫で下ろします。
青い髪の王子様は、優しそうに微笑んでいて、全然怖くなさそうでした。
あの人のお父様が、赤の国を征服してしまったなんて、あんまり想像できないなぁと思いました。
王子様の横に、背の高い女の人がいました。茶色の髪に、暗い色の地味なドレスを着ています。
薄く微笑んでいるだけでしたが、とても綺麗な人でした。
王子様が羽織っていたマントを脱ぎ、女の人に渡します。そのとき、女の人の手首に赤黒い模様が見えました。
お姉様、あの女の人の手はどうしたの?私が首をかしげて振り返ると、
お姉様は私の手をぎゅっと握って、硬い声で言いました。
彼女は赤の国のお姫様だった人。家族をみんな青の国の王に殺されて、青の王子の召使として
働かされているの。手首の痣は青の国が奴隷につける焼きごてで焼いた火傷の痕なのよ。
それを聞いたとたん、背筋がぞっと寒くなりました。
お兄様とお姉様が心配していたことがようやく分かりました。
次にあの女の人になるのは私なんだ…。お父様たちを殺され、国の人たちを殺され、
奴隷のような生活をしながら、毎日泣いて暮らすことを考えただけで、足が震えてきました。
恐怖と憎しみの入り混じった目で青の王子様を見つめていると、かちっと視線が合ってしまいました。
王子様はぱっと顔を明るくし、こっちへ近づいてきます。
怖くて怖くて、でも足が動かないので、お姉様の手を握り締めることしかできません。
私の前に立った王子様は、にこやかに微笑んで優雅に一礼してみせました。
「初めまして、緑の末姫」
王子様は握り締めていた私のもう片方の手を取り、口付けをしようとしました。
「いやっ!」
思わず私はその手を跳ねのけてしまいました。
「あ、赤のお姫様にあんなひどいことをして…っ!ミクは絶対あなたの王妃様になんかならないんだから!!」
不思議そうな顔で私を見ていた王子様の顔がさっと強張るのがわかりました。
どうしよう…!このままじゃ殺されちゃうかも!
いてもたってもいられなくなり、私はばっと身を翻し、パーティ会場を飛び出しました。
帰りの馬車の中、一言も口を開かなかったカイトは、城に着くとすぐに自室に篭ってしまった。
無理もない。あんなに期待していた緑の姫との初対面で、あからさまな敵意を向けられ逃げられてしまったのだ。
この状況、外交的に考えてもあまりいい流れではない。今頃大臣たちが額を寄せ合って
今後の策を練っているのであろう。
メイコは葡萄酒を盆に乗せ、カイトの自室に向かう。食欲はない、と断られるのが分かっているからだ。
落ち着いたらアイスクリームでも出そうと考えながら扉をノックする。
子どもの頃から大体このパターンで収まるのがカイトだ。
「王子、入りますよ」
この自室まで足を踏み入れられるのがメイコだけだという前提で、鍵は簡単に開けられる。
カイトは正装のままベッドに寝転がり、背を向けていた。
テーブルに盆を置き、葡萄酒をグラスに注ぐ。何と言って声をかけようかと思索していると、
めいこ、とくぐもった声が聞こえた。
「何です?」
なるべく穏やかな声で返すことにする。
「ミクに嫌われちゃったよ」
「初対面ですから、よくあることですよ」
「僕はあんなにあの子のこと好きだったんだよ?」
「もっと時間をかけて話さなければ、上手くいかないのは当たり前です」
「でも彼女は僕が話す隙すら与えなかった!」
激昂したようにがばりと身を起こすカイトに、メイコはなだめるように微笑してグラスを差し出す。
「誤解してるんです。緑の国との国交は今まで無いに等しいものでしたから…っ!?」
カイトは差し出されたグラスではなく、メイコの手首を掴んだ。
手から離れたグラスが、がしゃんと音を立て、床に赤い染みを広げる。
「…あの子はこうも言ってた。僕が赤の姫にひどいことをしたって」
「…王子?」
「この痣をつけたのは…?俺が悪いの?俺がメイコを不幸にしてるの?」
飛び散った葡萄酒の残りが手から滴り、赤い痣が溶け出したかのように錯覚する。
それをちゅうっと啜るカイトの瞳の奥に昏い色を見て取ったメイコは身を強張らせる。
「何を…言って…?」
言い終わらないうちに、メイコの手は引き寄せられ、ベッドの上に押し倒される。
覆いかぶさるようにして、カイトはメイコを見下ろす姿勢になる。
「俺が怖いから、ミクは俺を避けたの?メイコがあそこにいたから、
ミクの目に入るところにいたから、俺がメイコをいじめてると思ってあの子は逃げたの?」
腰にやった手からするりと抜かれたのは、短剣。その切っ先をメイコの喉元に突きつける。
「…王子?…このようなことが知られたら、いくら王位継承権第一位の者でも問題になりますよ…?」
メイコは平静を装ってゆっくりと短剣を持つ手に指を伸ばす。今ならまだなかったことにできるはず…。
しかしその手はカイトの左手によって空中で縫い止められる。
「安心して。殺したりなんかしないから」
狂気じみた笑みを口の端に貼り付けながら、カイトの短剣はメイコの服を切り裂いていく。
「メイコが死んだら俺は生きてはいけないから。…でも」
露わになったメイコの白い脇腹に冷たい刃先が当てられる。
「ちょっとだけならいいよね?」
ゆっくり滑らせた刃の軌跡が紅く描かれる。
「や、やめ…」
メイコの拒絶は唇を塞がれることで途切れた。
優等生ほどキレたら恐い…とはこういうことなのか。
今まで長い間一緒に過ごしてきた中で、ここまで箍の外れたカイトは見たことがなかった。
しかし、一時の感情に流されるほど、終わってみればコトは大きくなる。
メイコは懸命に説得を試みた。体中を這い回る指と舌に身を震わせながらも
今ならまだ、間に合うから、とカイトを引き戻そうとした。
そして、努力の甲斐も空しく、彼自身がメイコに押し入ろうとしたとき、
メイコは抵抗を、しばしの間、中止した。
もう何度彼女の中で果てたのだろうか。
時間の感覚はなく、部屋に響く音といったら、いやらしい水音と
己の荒い息遣い、そしてそれに時折混じるかすかな喘ぎだけ。
ぐたりと力の抜けたメイコの腰を持ち上げ、後ろから犯しているせいで彼女の表情は見えない。
ただ、歯をくいしばっているのか、喘ぎ声も吐息の音すらも聞こえてこないことに
今更ながら気付く。気に食わなかった。奴隷の癖に、と自分の意のままにねじ伏せられない
彼女に対して、どす黒い感情が湧き上がってくる。
左手で彼女のわき腹をなぞる。見つけた。服を剥いだ際につけた傷痕にぎりぎりと爪を立てる。
「いっ…た…ぁ…っ!?」
たまらず声を上げるメイコの体がびくりと跳ね、繋がっている部分がいっそう強く締め付けられる。
嗜虐に歪む笑みを浮かべたまま、更に傷口を暴いた。
「う…あぁぁ…っ!」
指先にべたべたと付着する生乾きの血に、新しく流れ出た温かい血が絡まる。
苦痛に呻くその隙を逃さず、彼女に覆いかぶさるように体勢を崩し、血に塗れた指を
彼女の口に突っ込む。
「うぐっ!?…っあぁ…!!」
思った通りだ。主人の指を傷つけまいとメイコはカイトの指に歯を立てられないでいる。
「あ、あーっ…、あー…。はっ…かはっ…!!」
メイコの舌先から、口内から流れ出る、ゆるゆるとした唾液がカイトの指を伝う。
いつも凛として自分の後につき従う彼女を痛めつけるのは気持ちが良かった。
嫌がる彼女をねじ伏せて、無理やりいたぶるのは楽しかった。
ああ、メイコは何て言って僕を拒んだのだっけ。
(王子!止めてください…!)
首筋に顔をうずめ、紅い痕を付けてみる。
(こんな、こんなことをしてっ!)
そろそろまた上り詰める頃だ。
(こんなことをして傷つくのは、)
いっそう激しく腰を打ちつける。
(私じゃなくて、優しいあなたの方なんですよ…!?)
欲望をぶちまけるのと同時に視界が真っ白に染まる。
口に入れられていた指がずるりと抜かれ、終わったようだ、とメイコはぼんやりと思う。
自分の血の混じった唾液を嚥下する。少しむせた。
げほげほと咳をし、体を震わせたついでに、ほんのちょっと身をくねらせ、挿さっていたモノを抜く。
どろどろと内股を伝う感触に眉を顰める暇も無く、背後から腕を回される。
「……メ、」
「大丈夫ですから、何も言わなくて結構ですよ」
「大丈夫なもんか!!」
抱きしめられている指先が小刻みに震えているのが分かる。ようやく目が覚めたようだ。
「ごめんごめん!メイコごめんなさい!!」
「侍女相手に謝らなくてもいいんですよ」
泣きそうな声に、ため息混じりに返す。
「ど、どうしよう。責任とって結婚したほうがいいのかな…!?」
「どこで覚えてきたんですか、そんな台詞…って結婚?」
冗談も休み休み言って欲しい。戯言にもちくりと反応してしまう自分の心の弱さを呪う。
「メイコは僕の召使だけど、子どもの頃、人を好きになる、とか、結婚、とかの意味を知ったとき
一番に思い浮かんできた相手がメイコだったんだよ」
「ちょ、ちょっとちょっと!何を物騒なことを言ってるんですか!
その発言がばれたら私は処刑ですよ!王子にお仕えすることができなくなるんですよ!?」
一国の主ともあろうものが、なんて発言をするのだ、とたしなめたつもりだったが、
よくよく考えると、言っていることが双方何かおかしい気がする。
「あーでも…それくらい大事に思ってたメイコにこんなひどいことして…。
ほんっと最低だ…。ミクが正しかったよ…」
「そ、それ!ミク姫のことはどうなったんですか!」
メイコは動揺する気持ちを何とか押さえつけ、話をコトの前に戻そうとする。
「………」
はた、とカイトは黙り込む。急に部屋がしんと静まり返り、メイコは唐突に自分の格好を思い出す。
多少汚れてはいるけれど、生まれたままの姿で、好きな人の腕の中にいる自分。
こんな状況にも関わらず、嬉しくてふいに涙がこぼれそうになる。
おそらく、生涯二度と来ることのないだろうささやかな幸せ。
「止めた。全部止めてやる」
カイトの言葉で現実に引き戻されるメイコ。
「一体何を、ですか?」
「父上の意志を継ぐのを止める。緑の国を攻めるのも止める。そして、赤の国を赤の王家に返還する」
「は…?」
大真面目な顔で言い切ったカイトに、メイコの思考は着いていけない。
「僕はミクのことが好きだと思ってたけど、ほんとはメイコのことも好きで、
でも今の僕は二人とも不幸にしてしまいそうだし、大体なんで父上の意志を継ぐことが前提
にあるのかも分からないしどーでもいい」
「まずタカ派の大臣を全部解任して、反戦派の議員を宛てよう。それと緑の国と正式に友好条約を
結びなおしてー、赤の国復興支援組織を作ってー」
世間知らずでお人よしな王子の思考は単純そのものだったが、このとき確かに歴史は動いたのだった。
「あれ、メイコ、どうしたの?な、泣かないで。やっぱり痛かったよね?ごめんね。
あ、そうだ、子どものとき僕が泣いたら慰めてくれたときみたいにしてあげるね…」
青の王子様が恐くて逃げ出してしまった私は、お城の庭でベンチに座っていました。
冷たい夜風に当たっていると、段々頭が冴えてきて、王子様がいくら恐い人でも
あんなところで私を殺したりなんかするわけない、と思い当たり、ちょっと恥ずかしくなりました。
お姉様やお兄様はやっぱり私のことまだまだ子どもだと思ったんだろうなぁ…。
それから、最後に見た王子様の顔を思い出しました。何だか…ちょっと泣きそうだった。
ざりっという足音がして、私はお城の方を振り返りました。
えと、あれ、ちょ…。一言で言うと変な格好の人が突然立っていました。
髪は紫で長いし、来ているものはひらひらで細長いし、えーと、とりあえず、すごく…うさんくさいです…。
「隣に座ってよいか?」
変な人は私のベンチの隣を指差しました。ほんとは嫌だったけど、何となく、はい、とうなづいてしまいました。
「あなたは誰ですか?」
髪の色はともかく、顔立ちや服装は、この国ではあまり見たことがないものです。
「神威だ。東の島国の出身でこの大陸を遊学中…といったところか」
「そうなんですかぁー」
じゃあどうしてパーティにいるのかしらと思いましたが、ニンジャなのかもしれないと思って黙っておきました。
「そなたは何故ここに居る?姉君が心配しておったぞ」
「えっ…それは」
この人はお姉様と知り合いなのでしょうか。でもそれならある意味信用できる人なのかもしれません。
「青の王子様が恐くて逃げてきたんです。でも…王子様はほんとは恐い人じゃないかもしれなくて、
えっと、それで、もしかしたら傷つけちゃったかなと思って…」
「そなたは優しい娘だな」
神威さんは私の話をたくさん聞いてくれました。お兄様より物腰が優雅で、お姉様より私の言いたいことを
よく分かってくれて、意外にも、一緒にいてもっとお話したくなるような不思議な人でした。
そろそろお城に戻らなければならない時間になったとき、神威さんは別れ際に私の手を握ってくれました。
「近いうちに我が国へ観光にでも来てみぬか。美しい自然と豊かな食べ物が豊富な国であるぞ」
「本当ですか!そこには私の知らない楽器があったり、たくさんお歌を歌ったりできますか?」
私の問いに神威さんはにっこり笑って頷いてくれました。
神威さんと別れた後、お城へ戻る私の足は自然と弾んでいました。
この次はちゃんと青の王子様と話そう。そしてごめんなさいって謝ろう。
ひどいこと言ってごめんなさい。王妃様になれなくてごめんなさい。
だって私、好きな人ができちゃったから。
その後、青の国は赤の国に正式に謝罪し、民を解放しました。
新しく女王を掲げた赤の国は、青の国、そして同時期に三国で友好同盟を結んだ緑の国の
援助のおかげもあり見事な復興を遂げました。
赤の国がすっかり以前の街並みに戻った頃、こっそりと女王に入り婿志願してきたものがいました。
「あなた…王としての務めはどうしたのよ」
「従兄弟に全権譲渡してきたwwwもうあそこにいても僕ができることはないしね」
青い髪をした入り婿は、赤の国を救った功労者として、暖かく迎え入れられたそうです。
END