僕がMEIKO姉ちゃんのことを好きになったのは、ただの成り行きだ。  
まず僕のマスターはKAITO兄ちゃんとラブラブ。入る隙間がありゃしない。勿論毎晩お楽しみだ。  
こっそり狙っていたミク姉ちゃんは、いつの間にか僕の片割れであるリンの恋人になっていた。てか百合自重。  
そうなると残りはMEIKO姉ちゃんしかいない訳なんだけど、MEIKO姉ちゃんは仕事が恋人ってタイプなんだよね。歌が全て。僕なんてアウトオブ眼中。  
でも、そう思われてると思うと、逆に燃えるって言うか。気付いたら姉ちゃんのことが本当に好きになってた。姉ちゃんが歌っている姿、酒を呑んでいる姿、KAITO兄ちゃんを張り倒している姿、全部好きになってたんだ。  
 
「しかしMEIKO殿は一向にレン殿の恋心に気付く様子がない、と?」  
「うん…」  
僕はがっ君の家の縁側でがっ君と話しながら、緑茶と一緒に出されたたくあんと茄子の漬物を摘まむ。うん、美味しい。  
「姉ちゃんにとって僕は完璧『可愛い弟』なんだよね。性的な目で見られたことなんて一度もないんだ」  
「まあ、相手はMEIKO殿だからな…彼女みたいな方はそういうことに疎い」  
私の想い人と同じだ、とがっ君は笑う。  
「ねえがっ君、なんかいい方法とかないかな?本当は僕の力で姉ちゃんを振り向かせなきゃいけないんだけど、もう無理なんだ…」  
ああ、こんなんだからヘタレンなんて言われるんだろうな…。でも、なりふり構っちゃいられないんだよ。  
「ふむ…なら、これを使用してみては如何かな?」  
そう言ってがっ君が取り出したのは、粉末が入った小さな袋。  
「なにこれ?」  
「俗に言う媚薬、という代物だ」  
「媚…!?」  
さ…さすがにそれは不味くない!?  
「『なりふり構っちゃいられない』のだろう?安心せよ、心身に害はない。一時的に性的部分を敏感にさせるだけだ」  
「十分卑怯だと思うけど…でもがっ君、なんでこんなの持ってるのさ?」  
「それは…私の想い人に使用しようとしたんだが、すぐバレて、な…」  
「…」  
さすが神様の治療をする人なだけある。小道具は効かないのか。  
「…わかったよ」  
男は度胸。僕は溜め息を吐きつつ、媚薬が入った袋を受け取った。  
「健闘を祈るっているぞ、レン殿」  
「うん」  
幸い明日は姉ちゃんと僕だけオフ。こうなったら当たって砕けろだ。  
 

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