「めーちゃん」
いつになく、真剣な目をしてカイトはめいこを見る。
「な、なによ」
さっきあげたカクテルのシャーベットがいけなかったのかなぁ、とめいこはひそかに反省した。
別にカイトの目は据わっていないようだったが、しかし正座からちょっと腰を浮かした姿勢で
じりじりと間合いを詰めてくる。そして…。
「俺、めーちゃんの最初の男になりたい」
「はぁ?」
その突拍子もない言葉に、めいこは唖然とするより他なかった。
「めーちゃんが欲しい」
そう言うや否や、カイトは後ずさりするめいこの肩にいきなり手をかけ、押し倒した。
「ちょ、カイト…」
のしかかられる形で、さすがに隠れた筋肉質というか男の身体だなと見た目より重く感じる
カイトの存在感を再確認しながら、めいこはこのまま受け入れてしまっていいものかどうかを
懸命に考えた。…が、しかし。
「……」
「…え?」
沈黙するカイト。めいこはこんなパターンを、漫画かインターネットで見た覚えがあった。
「うう、アタマ痛い」
翌日、二日酔い?に痛む頭を抱えるカイトと、それをガン無視するめいこに戸惑うミクとリンが
いた。
「ね、ねえ。ミクお姉ちゃん。カイトお兄ちゃんあたまにたんこぶ出来てない?」
「……うん。頭の形変わってる」
しかしそれをカイトに伝えることは出来なかった。何故なら心配そうに声をかけるとめいこが
ものすごい顔で睨み付けてくるのである。
「まあたカイト兄ちゃんがめいこ姉ちゃんの酒入アイス食べたんじゃないのか?」
レンが涼しい顔をして冷凍庫を開けた。確かに、そこにあったものが昨日より二個減っている。
「あ、ホント。めーお姉ちゃん一日一個しか食べないのに」
めいこはあえて否定しなかった。さっきまではカイトに同情気味だったきょうだいたちの意識は
一斉に批判的なものに変わる。
「あぁ…」
確かに食べた覚えはある。だが、それは確かめいこが勧めたからではなかったか。カイトは
そう言いたかったが、自分に都合のいいように覚えているのかもしれないと思うと言い訳することも
出来なかった。