マスターがワクチンを用意する前にと、俺がメイコの猫耳を写メろうとすると3発ほど本気で殴られた。  
 ああ、待ち受けにしたかったのに。いいじゃないか、一枚くらい。  
 メイコはまた毛布の中に引きこもってしまう。  
 メイコはそれぐらいその耳を恥ずかしがっていたのだけれど。  
 
 …結局みんなに隠し通すことは出来ず。  
 メイコの猫耳はすぐに、ミクやリンやレンも知るところとなった。  
 「かわいいよお姉ちゃん!」  
 メイコを励まそうとしているのか、それとも本気で言っているのか。  
 ミクはニコニコしながら言う。  
 「うん、すごく似合うよっ」  
 リンもきゃっきゃっと笑いながら、はしゃいだように、メイコの耳を撫でている。  
 (レンは何も言わなかったが、頬を赤くして目を背けたその様子から、多分俺やミクたちと同じような感想を持っているであろうことが見て取れた)  
 「いやよこんなの。恥ずかしくってしょうがないわ」  
 せっかくの妹たちの励ましもあまり効果がないらしく、メイコはまだ顔を赤くして俯いている。  
 その様子にミクとリンは心配そうに顔を見合わせたが、次の瞬間、何かを思いついたミクが、ぱん!と両手を合わせる。  
 「お姉ちゃん!歌おう!元気を出すにはやっぱり歌だよ!」  
 さすがミクだ。俺は頷きながら賛同する。  
 「ああ、それはいい考えだね」  
 俺たちはボーカロイド。  
 どんなはげましよりも、一曲歌うことのほうが効果がある。  
 
 「…どんな歌?」  
 やっぱり。メイコもこれには興味を示した。  
 みんなで歌えば憂鬱な気分も吹き飛ぶというものだ。  
 「えーっと、前にニコニコどうがで見かけた私の歌でね、ちょうど可愛い猫ちゃんの歌があるの。きっと元気が出るから、一緒に歌ってねっ」  
 ミクがにこにこしながら言う。  
 メイコも赤い顔で、うん、と頷く。  
 「それじゃあいくよー!いち、にい、さん、はい!」  
 
 にゃーんにゃんしよ♪にゃーんにゃんしよしよ♪にゃんにゃんしよ♪  
 にゃーにゃーにゃーにゃー♪  
 
 ミクが朗々と歌う。  
 俺とメイコは歌いだそうとした口を閉じることも出来ずにフリーズする。  
 リンもミクにならって笑顔で歌いだした。レンも、ぼそぼそと小さな声でだが歌に加わりだす。  
 …俺の可愛い妹弟たちは、揃いも揃ってこの歌の正しい意味を理解していないようだった。  
 ミク、こんな格好のメイコになんて歌歌わせようとしてるんだ。危険すぎる。  
 三人の可愛らしい合唱は続く。  
 俺はちらっとメイコの方を見る。  
 俺と目が合ったメイコは、これ以上ないと言うほど顔を真っ赤にして。  
 「──!!」  
 
 ボコッ!!!!  
 
 …何故か俺が殴られて、メイコはまた毛布の中に戻ってしまった。  
 

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