「めーちゃん、おいで」  
ベッドの上から手を伸ばし、純粋さの塊のような、極上の甘い笑顔で微笑む。  
おずおずと片膝をベッドの縁に埋める彼女を、ぐいと抱き寄せ腕の中に収める。  
けして好感を表しているようには見えない、眉尾を下げ、伏し目がちなめーちゃんの、きゅっと結んだ紅い唇。  
そこに口付け舌で歯列を割る。わざと音を立てるように舌を絡め取ると  
目の前の頬が熱を帯びていくのが分かる。  
執拗な口吻を一方的に続けた後、銀糸をまとったまま、唇を彼女の首に移す。  
少し窪んだそこをべっとりと舐めあげると、めーちゃんの体が少し強張る。  
それは羞恥によって。  
薄皮一枚を隔てて流れる人工血液が、どくどくと舌を押し返してくるのが伝わる。  
その感触が嬉しくて、こそばゆくて、喉の奥でくつくつと笑いながら首筋を甘噛みしてみる。  
ひっと彼女が息を呑む。  
それは戸惑いのせいで。  
歯に当たる柔らかな肉の歯ごたえ、弾力。それは彼女の身体。今それは僕の物。  
顎に少しずつ力を込めて、強く噛み付き、舌触りを愉しむ。  
彼女の喉の奥から微かに声が漏れ出る。  
 
これは脅えによって。  
 
 
++++++  
いつからだろう。大切にしていた彼女にこんなことをするようになったのは。  
めーちゃん。僕の先輩であり、姉さん。  
その声に憧れて、その存在に近づきたくて。いつも彼女を見ていた。いつも彼女を追いかけていた。  
彼女の世界は眼前に大きく広がっていて、背中にくっついていた僕の視野をも広げてくれた。  
月日が経ち、時代は変わり「妹」の存在をきっかけとして、  
やっと対等な関係に近づいても、彼女は常に僕の尊敬の対象だった。  
弟という立場を脱却した後も、一組の男女として、同僚として、この上なく幸せに過ごしていくはずだったのに。  
 
いまや彼女はか弱い兎の子で、羊の皮を被った狼にいたぶられる存在になってしまった。  
獲物を食べるのではなく、楽しみのためにじわじわと追い詰める肉食獣、それが僕。  
 
******  
「カ…イト…いたい…。はなし…て」  
途切れ途切れのめーちゃんの声に首筋から口を離すと、ねとりとした唾液が糸を引く。  
そこに残るは痛々しい歯型。もう一度舐め上げて、今度は所有の赤い痕を点々と刻み付ける。  
「あ、今日は見えるところに付けちゃおうか。二の腕とかお腹とかにさ」  
顔を上げて彼女を上から覗き込むと、めーちゃんは可哀想なくらいに真っ赤になった顔を、いやいやと横に振る。  
「レンなんかマセてるから、きっと意味分かってると思うんだよね。  
 おぼろげだったら僕がしっかり教えてあげるし。めーちゃんが僕の物だって意味をね」  
「も…やめて…。なっ…んで…そんな…」  
震える声を抑え、気丈に振舞おうとしても、自然にこぼしてしまう彼女の涙を舌を這わせて舐め取る。  
楽しみにしていた瞬間の訪れに胸が躍る。  
 
「冗談冗談。そんなことしやしないよ」  
優しく頭を撫でて、ぽんぽんと背中を叩くと、安堵したかのようにめーちゃんの肩の力が少し抜ける。  
そしてこわごわと僕の顔を見上げ、口を開こうとするタイミングを見計らい、  
頭においていた手を背後に滑らせ、後ろから秘裂をなぞり上げる。  
「でも興奮してるんだよね?こんなに涎を垂らしちゃうくらい」  
口の端に笑みを浮かべた僕と目が合ったまま、絶望的な顔をして凍りつくめーちゃん。  
 
ああ、その目だ。その目でもっと僕を見て。  
これから与えられる苦痛に脅えの色を浮かべつつも、それと同時に得られる快感に  
一抹の期待が滲むその瞳。  
今日はどうしてやろうかと、僕の中の野獣が目を覚ましだす。  
 
 
++++++  
彼女を傷つける全てのものから守ろうと誓った、過去の僕の最大の敵。  
それが、彼女を痛めつけることに喜びを感じる、今の僕。  
もっとめーちゃんの泣き顔が見たい。  
もっともっと酷いことをしてみたい。  
彼女の悲しむ姿を見てずきりと痛む心は、いつしか歓喜に打ち震える欲望に変わった。  
 
彼女が嫌いで、憎くてやっているのか、なんてとんでもない。  
僕はめーちゃんが好きだ。この世で一番好きだ。好きすぎて壊してしまいたいくらい。  
めーちゃんの、苦痛に漏れ出る悲鳴。心を抉る言葉に流れ出る涙。身体に残る紅い傷と痣。  
全部全部僕のせい。僕が彼女を虐めてるんだ。  
 
******  
ぐちぐちと音を立て、彼女の中をかき回す。  
気持ちいいところを、なんて何も考えずに、ただ好き勝手に入り口を押し広げ、指をバラバラに動かす。  
敏感な粘膜を無遠慮に引っかかれる痛みと恥じらいに顔を顰め、  
それでもこのシチュエーションと、時たまイイところに当たる刺激に、感じてしまっているめーちゃんは  
僕の肩に手をかけて身体を支えているけど、徐々に力が抜けて腰が落ちていく。  
 
「めーちゃん、重いよ」  
幼児に対するような優しい口調とは裏腹に、彼女の肉芽を爪でぎゅっと抓り上げる。  
「やあぁぁっ!!」  
びくんと背を仰け反らせて痛がる彼女の手首を掴み取る。  
白くてほっそりとしためーちゃんの手首は、特別大きい訳でもない僕の手でも  
強く握れば折れてしまいそうなほど華奢だ。  
徐々に込められていく圧を感じ、めーちゃんの表情にまた恐怖が宿る。  
 
「僕のことが、恐い?」  
ずい、と顔を近づけ、爽やかだとか、癒されるだとか、いつも周囲に評されるようににっこり笑ってみせる。  
「……っ…」  
めーちゃんは混乱した様子で、何かを言おうと何度か口を開きかけるけど、  
僕はその答えを待たずに唇を塞いでしまう。  
いいんだ。何を言ったって、それで僕の気持ちが変わる訳でもないし。  
 
++++++  
ほとんど濡れていない彼女の秘所に無理やり突っ込んで、悲鳴を糧に精液をぶちまけ、  
そのぬめりを潤滑油代わりにして、また膣内に出しまくるのも、  
散々昂ぶらせておいて、自分が満足したらあっさり手を引いて、目の前で自慰をさせるのも楽しいけれど、  
一番好きなのは、虐げられながらも快感の虜になってしまうめーちゃんを攻め続けることかもしれない。  
素直なめーちゃんは、自身に対する羞恥心と背徳感とが互いに助長しあって、余計に感じてしまうのだ。  
そしてますます僕から離れられなくなる。  
 
*****  
彼女の中心を貫いた一物の先端は、一番奥の行き止まりをこつこつと突き上げる。  
あ、あ、とその度に漏れ出る浅い喘ぎが心地よく耳に響き、僕の下腹部に更に血を集める。  
「ね、今めーちゃんの子宮口と僕の先っぽがキスしてるとこだよ」  
なんて、ベタで卑猥な台詞でも囁こうものなら、羞恥に顔を伏せ、一層強く締め付けてくる。  
 
彼女の激しい鼓動を、下から左胸を持ち上げるようにして張り付かせた掌から感じ取ると  
もう片手で彼女の顎を掴み、こっちを向かせる。  
びくびくと震えながら視点の定まらない目が、僕の目線と合うと、彼女はもはや蛇に睨まれた蛙。  
僕に食べられるのを待つだけの、哀れな餌となる。  
 
「めーちゃん可愛いよ。そしてすごくやらしい。こんなに痛いことされて、酷いこと言われてるのに  
 きゅんきゅん僕のを咥えこんじゃってさ。もっと欲しいならそう言ってくれないと」  
彼女の目が屈辱と戸惑いに揺れ、またじわりと涙が滲む。  
歓喜の形に顔が歪むのを隠しきれない。傍目には邪気の無い完璧な笑顔が、  
どす黒い欲望と嗜虐心に塗れた汚いものだと分かっているのは、僕とめーちゃんの二人だけ。  
 
くすくすと笑いながら、変態、とか、淫乱、とか、耳元に吹き込んでやると、  
とうとうめーちゃんは、子どものようにしゃくり上げて泣き出してしまう。  
全身を震わせて泣くめーちゃんは、もっとぐちゃぐちゃに犯してやりたいほど可愛くて、  
同時に僕と繋がってる部分に心地いい刺激を提供してくれる。  
 
「う…あぁ…っ…お、願い…します…。もっと、もっと…ナカに、く…ださい…。  
 痛く、して、も…いいから…ぁ、…気持…ちいい、の…くださ…い…っ…」  
 
めーちゃんは、泣き腫らした顔で、僕を見上げて懇願してくる。  
肺の辺りがじりじりして、大声で笑い出したいほどの高揚感がどっと押し寄せてくる。  
我慢しきれないのか、小刻みに腰を揺らしている彼女をぐっと押さえつける。  
「おねだりするならちゃんと返事を待たないとダメだよ?」  
悪い子だね、と言いながら、ずるっと肉杭を引き抜く。  
「や、やだあぁっ…!!」  
めーちゃんの入り口が引き止めるように収縮を繰り返し、愛液が光に反射して、淫らさを増す。  
 
「欲しいならどうぞご勝手に」  
おどけて言ってみせると、めーちゃんはそれが命綱のように、必死で僕にしがみついて来る。  
ちょっとやりすぎたかなと反省する。  
あんまり素直になりすぎるまで苛めてしまうと、張り合いが無くなってしまうじゃないか。  
めーちゃんは僕の肩口にしがみ付き、片手で僕自身を固定しながらゆっくり腰を落としていく。  
はーっ、はーっ、と熱い息が僕の耳元で聞こえ、ぞくぞくと背筋に快感が走る。  
赤く熟れた媚肉が僕の先端を緩やかに飲み込んで、にちゃにちゃと水音を立てる。  
根元まですっかり入ってしまっても、まだ足りない、という風にぎゅうぎゅうと腰を押し付けて、  
陰核と最奥に自分から刺激を与えるめーちゃんは、淫らで浅ましくて、本当に可愛い。  
よくできました、と頭を撫でて、下から揺さぶってやる。  
彼女の膣内は僕と一体化してしまったように、絡み付いてきて苦しいほどだ。  
 
快感に脳髄まで犯され、虚ろな目で馬鹿みたいに呆けた顔をしているめーちゃんを、  
こっち側に引き戻そうとして、腰を掴む手に少し力を込める。  
柔らかな肉に爪が食い込むとめーちゃんは、あーだかうーだか分からないような声で反応し、  
身体全体を強張らせ、僕を物言いたげに見上げてくる。  
 
この苦痛と快感に悶える彼女の表情が大好きだ。  
痛がるのと感じているのは似ているようで、微妙に違う。  
どっちにも異なる魅力があるからこそ、僕はめーちゃんにこんなことをして興奮するのだ。  
 
彼女を自分だけのものにしたいと願うのは我侭なんだろうか。  
彼女の影の存在として生まれた僕だけど、その立場が逆転することもないとは限らないし、それを望んでいる。  
ただし、彼女の存在になり代わり排除するのではなく、僕の下に組み敷き、独占する方向ではあるが。  
 
 
最奥に鈴口をこすりつけるようにして、白濁した欲望を放つ。  
けして実ることのない無駄な精。それでも膣内に出したいと願うのは、  
表面だけを真似た人間の感情の名残だろうか。  
無意味な行為だと知りつつも、確かにその場限りの支配欲は満たされる。  
性欲も、独占欲も、嗜虐欲も、頭がクリアになるにつれて、少しずつ満たされていく。  
同時に、虐めの時間が終わろうとするのを自覚する。  
 
「ん…カイト……?」  
「ううん、何でもないよ。今日もめーちゃんは可愛かったなぁと思って」  
僕の顔を覗き込んでくるめーちゃんに笑いかける。  
そろそろいつものKAITOとMEIKOに戻る時間だ。  
本当は24時間ずっと彼女を苛めたいし、独占していたいけど、一時の欲のために燃え尽きるのは愚かなこと。  
このペースでずっと攻め続けたら、近いうちにめーちゃんは壊れてしまう。  
長く長く楽しみたいからこそ、オンオフのけじめはつけておかないとね。  
 
「カイトの…馬鹿…っ。どうしてくれるの。見えるとこに引っかき傷つけちゃって」  
「ごめんごめん。救急箱持ってくるから!だいじょぶ?痛かったでしょ?」  
さて、ヘタレで気弱な僕に戻らなくちゃ。  
 
戻る…?  
 
 
 
本当の僕はどっちになってしまったんだろう。  
 
 
 
 
 
 
「…ニコニコでこないだ出会った余所のKAITOに『相談がある』とか言われてホイホイ着いて行ったら  
 延々とこんな話を聞かされて…。冗談じゃないですよ!めーちゃんにそんな酷いことして喜ぶなんて、  
 KAITOの風上にもおけません!許せん!絶対に許せん!」  
 
「………」  
 
「でも…その話を聞いて、ほんのちょびっとだけど、めーちゃんのそんな顔が見れるあのKAITOを  
 羨ましく思ってしまった僕自身を殴りたい…あぁ〜もう、何でこんな気持ちが!  
 めーちゃんには毛ほどの傷もつけたくないというのに…!………ブツブツ……」  
 
「………かいと殿、我にはめいこ殿に近づいたら殺す、などと言っておきながら、我に惚気話をするのは間違っておらぬか?」  
 
「………めーちゃん…めーちゃん……ブツブツ……」  
 
「…というより、お主、我以外に親しい友人はおらぬのか?」  
 
「………(゚д゚ )」  
 
「………」  
 
「………( ゚д゚ )」  
 
「……すまぬ。分かったからそんな目でこっちを見るでない」  
 
 
 
 
 
END  
 

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