夏祭り。
境内の裏。
祭り囃子の喧騒が遠い。
「真〜夏の夜空〜には〜いーちめん星の粒〜」
陽気な歌声。
「も〜戻れーなーいんーだね〜」
境内の暗がりで、汗のうっすら浮いたメイコの肌は、白く輝いてみえた。
「う〜ちあーげー花火〜……ね、カイト、アタシ金魚どうしたっけ」
もう記憶が飛び飛びらしい。
「さっきビール飲んでヘベレケになった勢いで俺に人間ポンプやらせただろ」
「えー、あなた、金魚飲んじゃったの? うふふ」
「うふふじゃねーよ」
メイコは酒が好きだ。が、とても弱い。今もビール一杯ほどしか飲んでない。
下戸の酒飲みは安上がりだ。
「ほら、はやくしよーぜ。誰か来たらヤバいし」
「ふふ、カイトのせっかち〜」
メイコは境内の石段に腰掛けて、もぞもぞと下着を脱いだ。
右足を抜き、左足首の辺りに引っ掛けたままだ。
「脱いで置いといた方がいいんじゃないか?泥つくかも」
「やだよ、無くしたら困るし……それともカイトちん頭に被っといてくれる〜?」
「俺は変態仮面かっ」
思わずツッコミを入れる。
ムードもクソもねぇな。
「だってカイトは変態でしょ?今も、アタシの、舐めてくれるんでしょ?」
「……」
酔っ払いと対話してはならない。
俺は、はだけた浴衣の下、メイコの脚の付根に顔を寄せた。
ふんわりとした体温と、汗の匂い。メイコは笑っている気がする。
メイコの秘部を、鼻の先でなぞる。
舌を伸ばそうして、
「待って」
メイコに止められた。
……止めない。
「きゃ、待ってって馬鹿、バカイト!誰か来たって」
「え、マジ?」
見れば、祭りの方からボンヤリと青白い光が近付いて来る。
祭りでよく売っているパキパキ折って科学反応で光る腕輪の光りだ。
「……やばいな、隠れよう」
「わ、ちょっ、落とさないでよ?」
メイコをお姫様抱っこして木立ちに隠れる。
先ほどまでメイコと戯れていた石段に、二人の男女が腰を下ろした。
(……あれ、ミクとがくぽじゃねーか?)
(え〜、嘘? ……ほんとだ)
メイコ共々木立ちにひそんで、声を潜めてがくミクの動向を見守る。
(あ……キスした)
(がっくんの手、やらしいとこ触ってるね)
がくぽの手がミクの浴衣にかかり……ああ、もう最後までヤる感じだな。
(行こーぜメイコ。もうここは使えねーよ)
(でも……)
(なんだよ)
はっきりしないメイコに問う。
(落とした)
(何を)
(……ぱんつ)
(……)
がくぽとミクがくんづほぐれつしている石段と今隠れている木立ちの直線上に、確かに小さな布が確認できる。
(……無理だよ、諦めろ。邪魔しちゃ悪いだろ)
「邪魔されたのはアタシ達よ!」
しまった、こいつ酔ってるんだった。
メイコは止める間もなく木陰から飛び出し、ズンズン歩いてぱんつを拾った。
メイコの向こうで慌てて浴衣を正すがくミク。
メイコはぱんつを掴んだままがくミクに詰め寄る。
文句でも言うのだろう。
あ〜あ、知らねーぞ。どうすんだこの状況。
と、俺が木陰で溜め息をついていると、
「さ、カイト!始めましょ!」
急に駆け戻って来たメイコが俺の手を引いて、がくミクの元に引っ張ってゆく。
「ちょ、始めるってなんだよ」
「交渉したらOKだったのよ」
「は?」
「皆で愉しみましょう、ってこと」
俺は夏の解放感に恐れを成した。