こんにちは。ミクです。  
 
……どうもお兄ちゃんとお姉ちゃんがデキてるっぽい。  
うーん、まぁ薄々はそんな気がしていたけれど。  
カプ厨のマスターの差し金で、一気に進展した模様。  
普通に目のやり場に困ります。当てられまくり。  
リンとレンも最初っからあんな感じだし。  
 
もう、やだやだ!みんなして!!  
私が何も気が付いていないとでも思ってるの?  
……思ってるんだろうなぁ……。自重して、なんて言えないし。  
 
あ、マスミクってのも、あるだろ、って言うだろうけど。  
残念ながらうちのマスターは女の人です。私終了のお知らせ。  
しょうがない。私は「みんなのアイドル」路線を突っ走るわ。  
恋に恋しながら恋の歌を歌うわ。  
 
諦めて落ち込んでいたことさえすっかり忘れてしまっていた、そんなとき。  
我が家のPCに新しい人がやってきたの。  
 
「マスター、また家計が火の車なんじゃないですかー?」  
「もやしでお腹一杯になれるよ!心配ナッシング!」  
「っていうか、電気止められたら私たちアウトだからー」  
「そっちの心配かよ!」  
 
ディスプレイの向こうで、マスターがwktkしながらソフトの封を切っている。  
やがて、ROMが回る音がして。新入りさんが目の前に現れました。  
 
「……っ!」  
何?なんなの!!この綺麗な人は!!  
事前にネットとかで見てたけど!  
白馬の王子様…とは要所要所違うかもしれないけど!  
ナスとか、ナスとか、ナスとか。それ以外は王子様…だよね?  
 
完全に舞い上がっている状態で、第一声を聴いて。  
「お初にお目にかかる。神威がくぽでござる」  
 
盛大に、そりゃもう盛大に。恋に落ちる音がしました。  
まるで後頭部を鈍器で殴られたかのように。  
 
 
「ミクー、ちょいちょい」  
「はぃいっ!!何ですか!!」  
「どーしたよー、最近ボーっとして」  
マスターがニヤニヤしながら声をかけてきた……  
 
こりゃー多分、バレてるんだろうなー。  
 
そして、耳元でささやいたんです。  
「相手はお侍さんだからさー、ロリでもショタでもいけるんじゃねー?  
 先手必勝だよーミクさんよォー」  
 
けしかけてるよこの人!!そういや、マスターはカプ厨だったっけ。  
 
「いっ!!言われなくたってーーー!」  
「よーし、その意気だ!」  
総元締めのお許しも出たことだし!遠慮無くアタック開始だ!  
 
 
がくぽさんとの家族ぐるみのお付き合いが始まりました。  
同族で同業者で同じPC内の仲間として。  
 
姉ちゃんとお兄ちゃんは、自分達が散々苦労してきたから、  
出身の違う新人さんのことを色々気遣っている。  
リンレンもすっかり懐いちゃってるし。  
「バカイト兄よりよっぽどお兄ちゃんっぽい」とか言いながら。  
 
見目麗しいだけじゃなくて、礼儀正しさと物腰の柔らかさが魅力なのかなぁ。  
 
現状では私の恋のライバルになるような人も居ないし、  
がくぽさんが既に出来上がってる二組に入って行く様にも思えない。  
だって、男性陣がガッチリとガードしてるんだもん。あからさまに。  
そのガードが無い分、私はがくぽさんにお近づきになりやすいんです。  
だから、これといって問題は無いんですが。  
 
 
子ども扱いされているのがありありとわかるの。  
そりゃ、お姉ちゃんに比べれば貧乳だしさー。  
でも結婚だって出来る年齢だよ?  
お侍さん自体がその辺のストライクゾーン広いって聞いてたのに!  
 
……そもそも、どうアタックしていいか、なんてわからないのよね。  
この想い、伝わるわけがない。うーん、これは困った。  
 
 
そんなこんなで。すっかり今では園芸友達です。  
今日も今日とて、青空の下、一緒にお互いの畑の雑草取りしてます。  
 
「ミク殿、この地は冬に雪は降るのか?」  
「うーん、そういえば前の冬は降ってなかったですよー」  
「農作物と気候の間柄は長い目で見ないとわからぬからなぁ」  
とか、  
「連作障害はどうしたらよいものかのう」  
「ナスは大変ですね。土はマスターに相談したら取り替えてくれるかも?」  
とか。  
 
何よ、このムードもへったくれも無い会話。  
なーんて思いながらも、こんな風に二人っきりで過す時間が大好き。  
ネギよありがとう、そしてナスにも感謝。  
 
今までは畑で一人で歌いながら寂しく農作業してたから。  
軽く歌を口ずさめば、お互いにハモってみたりして、即興セッション。  
本当に気持ちいいんだ、がくぽさんの低音。  
嬉しいのに、楽しいのに……なんだか涙が出そうになる。  
やっぱり、恋してるんだよね。きっとこれが切なさ、ってヤツ。  
 
暑い。夏野菜は収穫期まっさかり。  
太陽の恵みは雑草の生命力も高めるワケで。  
「もーーー草取っても取ってもキリが無いよー」  
「いやいや、おかげで採っても採ってもキリが無いほど実っておるぞ!」  
多分夕食は麻婆茄子になりそうだなぁー、とか考えていたら。  
 
急に空が暗くなってきた。  
「これは一雨来るな、早く終やしてしまおう!」  
早く作業を終えようと急いでいる私達にお構いなしで、大粒の水滴が空から落ちてきた。  
「やだーーー!これ、ゲリラ雨だ!!」  
雷鳴と共に冷たい風が吹いてきた。  
「早く家に戻るぞ!!」  
 
がくぽさんは私の手を取り、それに引かれて私は走り出した。  
あ、手を繋いでくれた!よっしゃーーーー!!  
……って、ちょっ?!  
 
「きゃああああああーーーー!!」  
養分たっぷりの土壌が、水を含んで容赦なく私の足をあらぬ方向へと!  
どうすることも出来ず、思わず目を瞑る。  
 
地面へ見事にダイブ……あれ?感触が違う。何だかやわらかい。  
 
恐る恐る目を開けてみると。  
私の下にがくぽさんがいるしーーー!!  
「怪我は無かったか?」  
「ど、どうして!?」  
バランス崩した私を庇って、咄嗟にクッションになってくれたんだ。  
それを理解するのにちょっと時間がかかった。  
「……!ごめんなさい!!がくぽさんこそケガは無い?!」  
「この程度で怪我などしてたまるか。女子を守れぬほど軟ではないわ」  
この状況で見せる、その穏やかな笑顔を見て。  
 
やだ、涙が。  
 
「どうした!やはり怪我を……!?」  
「ちがっ!」  
 
バリバリバリ!!  
光とほぼ同時に雷鳴が轟く。  
思わず悲鳴を上げてがくぽさんにすがりついた。  
「大丈夫だ、近くに落ちたからもう此方には落ちぬ」  
私の頭を、大きな手が優しくなでる。  
「降りも本格的になってきた、早く戻るぞ……」  
 
だめだ。動けない。  
「どうしたのだ?」  
がくぽさんも困っている。でも、どうしても。  
この言葉を押し込める事は出来なかった。  
 
「……私、がくぽさんのことが好きなんです…!!」  
「……今何と?」  
雨音に、雷鳴に、かき消されないように声を振り絞る。  
「私はがくぽさんが!大好きなんです!!」  
 
泣きながら叫ぶ、なんて告白なの。  
惨めだけど、堪え切れなかった。涙も止まらない。  
私を抱えたまま、無言でがくぽさんは上体を起こす。  
どうしよう。自分で言っておいて何なのよ私……。  
 
「拙者も、ずっと、ミク殿のことが好きだった」  
 
自分の耳を疑いながら顔を上げると、がくぽさんの真っ直ぐな目線が。  
 
荒れ狂う空の下、お互い貪る様にキスをしていました。何度も何度も。  
 
 
「流石にこのままでは、ちとまずくはないか?」  
「ん……」  
雨でずぶ濡れ、転んで泥まみれになって、  
茄子畑の真ん中に居る、という事をやっと思い出した。  
 
「……完璧に状況忘れてた…」  
「このままでは風邪をひいてしまう。早く帰って風呂に入って着替えた方が良い」  
「やだ……離れたくない!もっと一緒にいたい……!」  
「……ならば、一緒に拙者の家に来るか?」  
 
これまでの流れを踏まえて。  
完全に外と切り離された空間へ移動する、ということは。  
おそらく一線を越えてしまう、ってことになるよね?  
バツの悪そうな顔をしているがくぽさん。  
やっぱりそういうことよね。  
 
「うん、行きます……」  
 
多分、これは自然な流れだと思う。  
躊躇することなんか、何も無かった。  
 
 
 
「結構質素なんですね」  
お城なんかを想像していたので、ちょっとびっくり。  
和風のお屋敷っぽい佇まいの家でした。  
「あぁ、必要に応じてこっちに来ているからな。拙者と馬だけだ」  
馬……交通手段のアレのことか。  
 
「気にするな、後で拭いて置くからそのまま入ってまいれ」  
一応ニーソを脱いで、廊下をヒタヒタとついていきました。  
「ここが風呂だから、先に入っておれ。今拭くものと浴衣を出してくる」  
 
随分と広いお風呂。檜風呂ってやつ?旅館みたい。  
良かった、普通にシャワーも使える。まぁ基本的に同じPC内だからね。  
暖かいお湯を浴びながら、ここまでの事を反芻。うわぁ。顔から火が出そうだ。  
「ここに着替え置いておくぞ」  
がくぽさんの声にいて、びくうっ!っとなったよもう。  
 
嬉しい……でもやっぱりちょっと怖いや。  
浴衣の帯を締め、言われたように奥の部屋へと向かう。  
 
「上がったか、お茶を出しておいたから飲んで待っているがいい」  
入れ替わりにがくぽさんは部屋を出て行く。  
 
がくぽさんと同じ、不思議な匂い。部屋で炊いてるお香の匂いだったんだ。  
 
質素な広い和室。物がほとんど無い。  
確かに時代劇でみるとこんな感じだったかも。  
隅のほうに机があって、その一角だけ山のように本とノートパソコンがあったり。  
 
……目をそらしていたけれど、この準備はいかがなものかと。  
既に布団が敷いてあるんです。布団が一組、枕は二つで。  
気配りが細やかなんだかもう、ワケがわかりません。  
 
平静を取り戻そうと、緑茶をすすりながら茶菓子を食べる。  
普段と同じ行動なのに、やっぱり違う……落ち着けるわけが無い。  
喉を通るものも通らないよ。お茶で流し込んだけど。  
 
 
「待たせたな!」  
同じ浴衣を着たここの主が戻ってきた。褌姿とかじゃなくて良かった。  
襖をパシンと閉めると、ズカズカとこっちへ進んできて。  
「ふぇ?」  
いきなり抱え上げられたかと思ったら、そのまま布団へGO! ぼふっと、着地。  
浴衣の襟元を広げようとしているその手を何とか静止して。  
「ちょ、ちょっ!!待って、待ってってば!」  
「ん?どうした?嫌だったのか?!」  
「そ、そうじゃなくて!私、初めてなんだから、もうちょっとムードとか、気遣いとか!」  
「……すまぬ。つい嬉しくてな……」  
しょうがないなぁ、この人は。  
 
チラッと見えたがくぽさんの胸元。ん?  
「これ、体に直接付いてたんですか?」  
「あぁ、このディスプレイか。直に付いておる。そなた達より機械的な設計をされているみたいだ。  
 どうした?興ざめしたのか?」  
「ううん、そんなんじゃない」  
この波形は音声、色の揺らぎは感情、後ろに見える波形は拍動。  
「私も同じエンジンだから……なんとなく、わかるの……」  
あ、何か色が暖色系に変わった…。  
「そんなにまじまじと見るでない。思っていることが見透かされているみたいで恥ずかしいではないか」  
「がくぽさんってば、可愛い。ディスプレイ見なくても、顔に出てる〜」  
ふふ、照れてる照れてる。ポーカーフェィスっぽいけど、その分余計にわかりやすい。  
 
「〜〜〜〜!!今のお主ほど可愛らしいわけがあるか!!」  
ヤバイ、今度はこっちが赤面してる。  
言っちゃなんだけど、「可愛い」なんて言われ慣れているのに。  
やっぱり好きな相手に言われるのは違うなぁ、なんて思いながら。  
 
暫しの沈黙。  
「……もう、良いか?」  
私はそっぽを向いたまま、頷いた。  
 
 
抱きしめられて身動きが取れないまま、いつの間にか帯は取り払われていた。  
「やっ、恥ずかしい……」  
襟で胸元を隠そうとする両手首を取られ、押さえ込まれる。  
下着は雨でびしょ濡れだったから、着けていないのに。  
 
「これからもっと恥ずかしい事をすると言うのに、何を言っておる」  
反論する間もなく、私の口は塞がれてしまった。  
容赦なく柔らかい感触が中を侵食していく。  
……さっきと全然違う。  
H前提のキスが、こんなに……いやらしいものなんて。  
もう抵抗できない。抵抗する気なんて無かったけれど。全然、力が入らない。  
 
唇が、首筋を這いながら胸元へ降りていく。  
「やだ……大きくないから…見ないで…」  
「まだ言うか。そんな事は知っておる。よい形をしてると思うがのう?」  
そういうと、下のほうから先っぽに向かって舐め上げる。  
「ひあっ!!」  
思わず声が漏れてしまう。やだやだっちょっと!!  
「〜〜〜〜〜〜!!」  
これ以上恥ずかしい声を出したくない、と必死で堪えているのもバレバレ。  
「我慢してもいい事は無いぞ。もっとそなたの声を聴きたいのだが」  
 
唇に今度は触れるだけのキスを落とされ。  
手首を押さえていた手を、背中にまわしてギュッと抱きしめられる。  
「……もっと、力を抜けぬか?  
 怖い思いをさせていたのなら、すまぬ。いささかこちらも余裕が無かった」  
「ちがっ!そんなんじゃ!!」  
怖いのには変わらないけど、それはがくぽさんが悪いわけじゃなくて。  
「そりゃ…怖いです…でも覚悟してるもん!」  
「辛ければ、辛いと言えばいい。いつでも止める。……だから、我に身を委ねておけ」  
「……うん……」  
そして、再び長いキス。うん、多分、もう大丈夫。  
 
キスをしながら、自由になった両手が私の胸を弄ぶ。  
自分で触るのとやっぱり違う……。  
揉みしだきながら、その先端を吸い上げて、舌で転がす。  
「…んあっ…それ……気持ちいいです……」  
「大分素直になってきたみたいだな。その調子だ」  
 
先っぽをこね回しながら、谷間を舐めている、と突然。  
「痛っ!なっ?!」  
「んー、なかなかいい光景だ。もっと赤い花を咲かせてしまおうか」  
胸元や、おなか、わき腹、色んなところを嘗め回され、キスマークを付けられてる。  
もう、すっかり為すがまま。  
 
「こっちにも付けねばな」  
両膝をガッチリと押さえられ、閉じるに閉じられなくなってしまった。  
内腿にも赤い痕が付けられていく。  
モゾモゾと身を捩らせるたびに、グチュ、と言う水音が生み出されている。  
「…や、やだ、見ないで……」  
「もうこんなに蜜を垂らしているではないか」  
押さえていた膝を更に開き、ふっと、ソコに息を吹きかける。  
「やああっ!!」  
思わず、身を捩る。  
「まだ触れておらぬのに、敏感な体をしておるのう。花弁もこんなに膨れて…」  
愛液を絡めた指で、ソコを撫で回す。  
そして、一番敏感な核に舌を這わせる。  
「……ああっ!!ダメっ!!そんなトコ舐めちゃっ!!」  
「本当にダメなのか?ここから溢れてきておるぞ?」  
あっ…指が…中に入ってきてる…!  
「指一本ならまだ痛みも無かろう」  
そんな、深いところまで、私まだ指も入れたこと無い!!  
「少しずつ、ほぐしていかないとな……」  
やだ、掻き混ぜないでっ!舌の刺激もあるのに!!  
反論しようにも、吐息混じりに言葉にならない声が混ざるだけ。  
「……もう一本行くぞ?」  
卑猥な音と、私の漏らす声が部屋に響く。  
 
「ふあっ!あーーーーーっ!!」  
体が硬直してのけぞってしまった。  
「どうやら達してしまったようだな……」  
朦朧とした意識で、がくぽさんの顔を覗き込むと、不敵な笑顔でこう言った。  
「本番はこれからだ……」  
 
「……首につかまっておれ」  
言われるがまま、怖い気持ちを払うかのように、がくぽさんにしがみ付く。  
……下腹部に、硬いものが当たっている。  
これが入ってくるのか…怖くて見れない。  
「力を抜くのだ、辛かったらちゃんと言うのだぞ?では……」  
あ…熱い塊が入ってくる……結構大丈…痛っ!!  
「待った!痛いっ!!」  
「もう少しだ、少しだけ我慢しておけ」  
歯医者か!!なんて、全然関係無いことを考えながら、痛みを我慢。  
 
「全部、入ったぞ、大丈夫か?」  
「う…ズンズン痛い…」  
多分、今酷い顔してると思う……。  
「よく耐えたな」  
そう言って、がくぽさんは私の涙を拭い、顔に貼りついた髪を払うと、軽く唇を重ねる。  
「しばらくはこのまま、慣れるのを待つとするか」  
繋がったままに、全身に愛撫を受ける。  
さっきと違う、この感触。やたらと肌が敏感になっているような。  
なんと言うか…下半身に意識が行くというか…異物感が……うぅ。  
痛みが薄れ、中の熱がどうしようもなく…じれったくなってきた。  
 
そんな様子を見抜かれたのか。  
「ん?もっと欲しいのか?」  
「……多分……」  
「一応手加減はしておくからな」  
あ……私の中でゆっくり動いてる…。  
「……いい…気持ちいいの…あ……」  
「そ、そんなに締め付けるでない!出てしまうではないか!」  
「あっ…あっ…中で、出していいよ……やっ、ああーーっ!!」  
結局、私独りでイッてしまった。  
 
「……ごめんなさい、私ばっかり…。あとシーツ、汚しちゃった……」  
「これも傷だからな、風呂で洗い流しておいた方が良い」  
されるがままに、お風呂に運ばれる。  
あー、もう力入んないーー。  
余韻に浸らせてよ、っていうか、むしろ休ませてよぉ……。  
 
「湯も張っておいた。ゆっくり温まるぞ」  
え?一緒に入るのー!?  
「ほら、入ってまいらぬか」  
タオルで何とか体を隠しながら、浴室について行く。  
「見ないでください!!」  
「今更何を言っておるかー」  
背を向けて、下半身を流す。  
傷に沁みるって事は無いけど。色々と付いてるからなぁ。  
招かれるがままに、湯船に。もちろんタオルで死守。  
 
「いやー、やはり湯船に浸からないと風呂に入った気がせぬのぅ」  
なんだか、がくぽさんの膝の間が定位置になってしまったようで。  
広い浴槽なのに…。  
健全なんだかそうでないんだか、色々悩むところではある。  
 
ふと、引っ掛かっていた疑問をぶつけてみた。  
「ずっと好きだったって、いつからなの?」  
「ん?それは、初めて見たときからだ」  
「私と一緒じゃない!早く言ってくれれば良かったのにー!」  
「いや、会った時ではなく『初めて見たとき』だと言ってるであろう?」  
「どういうこと?」  
「……そうか、そなたは知らぬのか」  
 
他社製初のボーカロイドとして産み出されたされた彼は、  
初期段階、意識が芽生えるか芽生えないかのときから、  
私のデータを見せられてながら、開発されていたらしい。  
 
「そのときからなのだがなぁ。慕う気持ちがあったのは。  
 だがそれがどういった感情なのか、自分では判断できぬではないか。  
 雛の刷り込みのようなものかもしれぬ、等とこれでも色々悩んでおったのだぞ?」  
 
後ろからぎゅっと私を抱きしめて、こう続けた。  
 
「実際に会うて言葉を交わしているうちに、慕う気持ちが益々大きくなってな、  
 如何したら良いのか…というときにミク殿に想いを告げられた、という訳だ」  
 
……どうしよう、すごく嬉しい。  
 
「この曲、研究所内でミク殿を想いながら歌っておった。聴いてくれぬか?  
 …いや、共に歌ってくれぬか?2トラックを任せるぞ」  
 
 
   君に逢いたくて 誰よりも逢いたくて  
 
 
がくぽさんの声が、ブレスが、浴室に響く。リバーブもいいカンジにかかって。  
サビに入り、私の声が重なる。音の中に居る、この心地良さ。  
歌い終え、笑い合う二人。  
 
「ありがとう、がくぽさん。すごく嬉しい。  
 でもね、私はこの歌みたいにどこも行かないから。  
 …がくぽさんとずっと一緒に居るから……」  
「拙者は三国一の幸せ者だな!」  
 
抱き合い、唇を重ね、しばし見つめあう……。  
……?あれ?また微妙に目を逸らしてるんですが?  
「あー、なんと言うかだなーー、もう一回よいか?」  
「ん?いくらでも歌いますよ?」  
「そうではなくて!もう一回抱いてよいか言っておるのだ!!」  
「え!!体に気遣ってたんじゃないんですか!!」  
「よいではないか、よいではないかーーーーー!!!」  
この人、これが素なのー?!  
思わず吹き出してしまった。  
 
「……歌、嬉しかったから。がくぽさんの好きにしていいですよ?」  
私は、両手を広げ、彼を迎え入れた。  
 
……どれだけ時間がたったんだろう?落ちてましたよ完全に。  
だるい。ものすごくだるい。  
死ぬかと思った。いやマジで。  
まどろみながら幸せを噛み締める余裕もないって、どういうことよ……。  
 
もう一回、って。何をもってもう一回なのよ、何の単位なのよ!!  
トータルして一回ですか、そうですか。  
あのままお風呂で。移動して布団で。  
何回中に出されたか、4回目以降憶えてないんですが。  
結構知識あるつもりだったのに。知らない体位いっぱいあったし。  
英雄色を好むってヤツですか?鬼だよ鬼。  
 
薄れていく意識の中で、確かに聞いた。  
「ついカッとなってやった 反省はしておるが後悔はしておらぬ……!」って!!  
 
……あれ?そういえばがくぽさんは何処行ったんだろう?  
 
そのとき。  
 
ドゴォオオオオオン!!  
 
遥か上空から、凄まじい爆音が響いてきた。  
 
「何?何なの!!」  
とりあえず、浴衣を着て表へ駆け…いや、歩き出した。  
 
表へ出ると、がくぽさんとウイルスバスターさんが、にらみ合っている。  
さっきのはバスターランチャーの威嚇射撃だったんだ!!  
 
道の両向こう側には黒山の人だかり。  
馬に乗った武将的な人や足軽的な人、明らかにがくぽさんの関係者だ。  
 
「お前!こんなにファイルをこのPCに持ち込んで何していようとしてやがる!」  
「ここに害のある様な事などしておらぬ。いちいち口を挟まないでもらいたいものだがの!」  
「このPCの秩序を守るのが俺の仕事なんだよ!邪魔する気か?」  
 
……ヤバイ、ガチでやり合い始めそうだ!!止めなきゃ!!  
人込みを縫って、必死に二人の元へとたどり着く。  
「止めて!二人とも何やってるのよ!!」  
 
『ホントお前ら、何やってんだよー!』  
 
あ!この声。マスター気づいてくれたんだ!!  
PCの中には入ってこれないから、声だけだけど。  
何とかしてくれれるのはこの人だけだ!  
 
『ウィルスバスター、ありがとね。  
 ファイルの素性はわかったから、私が何とかさせとくよ。  
 ったくよー、なんでこんなにデータ落としてくるんだよー。  
 てか、がくぽ、お前何したかったん?』  
「祝言を挙げる準備だが何か?」  
『……ちょ、お前は!!何言ってんのーー?!』  
「何か問題でもあったのか?」  
『人ん家の嫁、何勝手に娶ろうとしてんだよ!』  
 
え、私?私との結婚式?!  
 
『まぁ幼な妻設定も萌えるけどさー、一応イメージとかあるでしょ!  
 別にお前らの仲は邪魔はしないけど、ちったぁ自重してってば、がくぽ!』  
「うむ、そうだったか。ここは腹を切って……」  
『ボケがあぁああ!!勝手に消えようとすんじゃねぇーーーー!!  
 とりあえず、こいつら帰らせろ!重いんだってば!!』  
「……お前達すまないが、城に戻っておれ」  
統制の取れた戦国集団は、あっという間に去っていった。  
 
入れ替わりに、うちの家族がやって来た。  
「おねえちゃーーーん!」「ミク姉ーーーー!!」  
「ミクーー大丈夫だったーーー?!」  
「この騒ぎなのに連絡が付かないから心配したぞ!!」  
うわ、爆睡していた間に携帯鳴ってたのかなぁ?  
「心配かけてごめんね……一応、無事…」  
 
『お前は。ここで。歌う。それが使命でしょうが。  
 まだろくに歌わせてもいないのに何やってるんだよーー、もうーー』  
「うむ、初心を忘れていたようだ」  
『罰として領土没収。リン、レン。後でがくぽの茄子畑の三分の二を整地しておいて!』  
「「イエッサーーー!!」」  
 
『がくぽってばさー何ていうか女で人生踏み外しそうなタイプだよねぇ。  
 とりあえず、ミク!ちゃんとがくぽの面倒みてやってよ。頼んだ!』  
「はっ!!はいっ!!」  
 
えっと、なんて言えばいいんだろ。  
「が、がくぽさん、これからもよろしくお願いします」  
「…ミク殿ォおおおおーーーー!!!」  
うわ!!みんなの前で抱きついてこないでよ!!  
 
『これにて一件落着!!』  
「マスター、大岡裁きのつもりですかー?」  
『黙っとけバカイト!』  
 
女性陣二人が耳打ちする  
「やったじゃないミク、玉の輿よ玉の輿!変な人だけど!」  
「しかも美形だし。変な人だけど!」  
…やっぱ変な人なのかぁー。まぁいいけど。  
 
レンはそっぽ向きながら何か差し出してきた。  
「目のやり場困るから、これ貼っとけよ!」  
絆創膏…?ちょ!やだ!キスマーク見えてるの?!  
 
「準備してないなら、がっくんもウチで一緒に晩御飯食べようよー!」  
あぁ、お兄ちゃんだけだ。わかってないのは。  
 
「では、ご馳走になろうかのぅ」  
がくぽさんは平然とした顔で親睦深めモードに入ってるし。  
 
 
 
「じゃ、帰るわよー!!」  
良かった。なんだかんだで歓迎ムード。  
そんな四人の背中を見つめながら、がくぽさんが私の手を取る。  
「我々も行くとしよう」  
 
つないだ手は温かかった。  
 
 
END  
 

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