神威がくぽさん。  
 
初めてデモ動画を見たとき、  
その端正な顔立ちと、艶っぽい低音に、心奪われました。  
「恋に落ちる音がした」ってこーゆうことなんだ、というくらい。  
そりゃもう見事に。  
 
それ以来。  
彼のデビューがすごく楽しみで。そして一緒にお仕事できる日が楽しみで。  
その日が来ることをずっとずっと心待ちにしていたのに。  
 
ああ。  
だのになぜ。  
 
なんで一緒に歌える初仕事が、よりによってこの曲だったんでしょう。  
 
♪にゃんにゃんしよ!いっぱいしよ! にゃんにゃんしよ!いいでしょ?  
♪ねえいいでしょ?ねぇいいでしょ? お願ーい!  
 
 
私が昔歌って、ランキングからしっかり「名誉の除外」認定をいただいた曲。  
 
決して、あの曲自体が嫌だと言ってるんじゃあありません。  
むしろ、オケも格好いいし詞も凝ってるし。  
クオリティの高い、良い曲だとは思うんです。  
 
ただ、憧れの人との初仕事、という点を考慮すると、これはいかがなものかと。  
 
憧れの人の前で、しかも初対面で、  
一緒にあんなきわどい歌詞の歌を歌わなきゃなんないなんて。  
なに、この公開羞恥プレイ?て話ですよ。  
 
 
……まあでも、お仕事ですから。きっちり歌わなきゃ、なんですけどね。  
 
 
そしてレコーディング当日。  
 
初めてお会いしたがくぽさんは、  
デモ動画そのままの(冷静に考えれば当たり前ですね)端正な顔立ちと、  
艶っぽい低音で。  
 
「しかし、改めて聴くと、すごい歌詞だのう。」なんてカラカラ笑いながら、  
あの歌をさらっと歌い上げました。私と一緒に。  
 
なんというか、私が歌う分にはまだよかったんです。  
多少恥ずかしかったですけど。そこはもう、プロ根性で歌い上げましたよ。  
 
 
でも。なんというか、その。がくぽさん側が、こう……。  
 
 
もともときわどい歌詞だったのが、  
あんな低音の、艶っぽい声で歌われちゃうと妙に生々しくて。  
 
 
ていうかその…………、妙にいやらしくて。  
 
 
がくぽさん的には全然そこに含みとかはなくて。  
普通に、お仕事としてやってるんです。  
 
だから、そんなこと考えてる私の方が、よっぽどいやらしいんです。  
 
 
 
平静さと、いつもの「明るく元気な初音ミク」を演じながらも、  
内心はすごくドキドキしてました。そして……、ちょっと自己嫌悪。  
 
 
レコーディング後も、なんだか妙に意識してしまい、  
せっかく少し話せる機会があったのに、全然上手く話せませんでした。  
 
それはほんと、今でもものすごく後悔していて、反省もしていて。  
いつも夜寝る前とかに思い出しては、  
ひとり布団の中でじたばたしてしまっています。  
 
 
ああ、暗い子だと思われたんじゃないかな。  
失礼な子だと思われたんじゃないかな。  
 
でもそれにしても。  
 
 
やっぱりすごく、良い声だったな。  
 
 
できればもう一回、二人で一緒に歌いたいです。  
できれば今度は、……もうちょっと綺麗な歌詞の歌で。  
 

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