『サンデー・モアラブジェット・xxx』  
 
 
「お兄ちゃん、お姉ちゃんの新曲のPV出来たんだって!?」  
 
ギクリとして後ろを振り向く。するとそこには目をキラキラとさせたミクがいた  
。  
新曲……ってあれだよなあ……やっぱり。  
ふと脳裏に「イメージは爽やかな日曜日のデートだからよろしく!」って鼻息を  
荒くしていた監督のギラギラした目を思い出した。  
なあにが『爽やかな』だよ。ものの数十秒で脱がせやがって。  
ミクに聞こえないように小さく舌打ちをする。  
 
「で、どんなPVなの?早く見せてよ!」  
我が家の日曜日といえば、一家団欒の日と決めてあって大抵は新曲のお披露目会  
となっている。  
そういえば『あの曲』の様にデートとかも暫くしてないなあ。  
……大体ミクはどこで『あの曲』の情報を手に入れてきたのだろう。  
とにかくひた隠しにしていたのに。ネットの世界とは恐ろしい。  
 
「その辺にしておけよ、ミク姉」  
意外にも助け舟を出してくれたのはレンだ。  
「カイ兄あんまりにも恥ずかしい恰好してて見せられないんだってさ」  
「えーそれって裸マフラーよりも?」  
「それと似た様なもんだよ」  
と苦笑いするレン。  
 
レンにだけは以前撮った同じ作曲者のPVを見せてやったことがある。  
まあ、所謂『男の秘密』ってやつだ。  
早いかな?とも思ったけどレンだって14歳。  
『少年』だって一丁前な『男』だ。  
俺からはレンには見せられてもミクやリンには到底見せられない。  
 
そう、それにはメイコと俺が裸で絡み合っているのだから。  
 
案の定レンはサビに入る前に鼻血を出してぶっ倒れ、気を失った。  
(目を醒ました時に「メイコ姉とマジでああいう関係?」と聞かれたけど否定は  
しなかった)  
 
今回もレンにだけは『そういう趣向』のPVだと伝えておいたのは正解だったな。  
只でさえ肩身の狭い男二人、力を合わせて生きて行こうではないか。  
……流石に今回のは見せるわけにはいかないけれど。  
 
   
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  
 
「まずいわね」  
「まずいね」  
妹達が寝静まると、メイコと二人、声を揃えた。  
リビングのソファに二人で寄り添ってテレビを食い入る様に見つめる。  
 
……テレビの中ではメイコが秘部を向けて顔を赤らめていた。  
 
「まるで下着穿いて無いみたいだ」  
素直な感想を漏らす。  
「失礼ね。穿いてるわよ」  
Tバックだけどね。そう心の内で呟いて缶ビールを呷る。  
それをメイコは心配そうに見つめる。  
「ねえ、そんなに飲んで平気なの?」  
と。  
しかし、彼女の方こそ頬はアルコールの力によって朱が挿し、どことなく語尾も  
甘い。  
……そろそろ頃合いだろうか。  
 
メイコは知らない。実は俺がメイコよりも酒に強いことなんて。  
酒に弱い振りをするのも獲物を捕らえるための罠だなんて。  
 
そして彼女は今日もその罠に引っ掛かる。  
 
水持ってくるわね、と立ち上がった彼女の腰を捕えて腕の中に引き込む。  
片手に抱けるとても華奢なそれはちょっと力を入れるだけで折れてしまいそうだ  
。  
「ねえ……酔ってるの?」  
そう信じ込んだ彼女はいつもより優しい。  
細い指で俺の髪に櫛を入れる。  
落ち着け落ち着け。これは狩りだ。ここで獲物を逃がしては元も子もない。  
甘える様に彼女の琥珀色の髪に顔を埋めると子供みたいなんだからと笑う。  
 
今だ  
 
「っ!」  
彼女の細い腕を思いきり引いておもむろにソファに沈める。  
彼女の眉間に少しだけ皺が寄る。またなの?まるでそう言っている様に。  
「やっぱり酔ってるでしょ」  
「少し、ね」  
「まるで『あの』カイトみたいな目してる」  
「俺はタクシー代投げつけて帰るような真似はしないよ」  
タバコも吸わないしね。  
そう付け加えて白い首筋に喰らい付いた。  
 
◇◇◇◇◇◇◇  
「あ、ん、やあっ」  
 
パジャマ代わりに着ていたTシャツはとうに捲り上げられていて、それは邪魔であ  
ると同時に俺の中の雄を更に駆り立てる物でしかなかった。  
ずらした下着の間から手を差し入れて直に胸を刺激する。  
焦らすように頂きに触れないようにゆっくりゆっくり。時折わざと触れてみたり  
。  
鎖骨に吸い付いて赤い華を散らす。  
甘い、気がするのは気のせいなんだろうな。  
 
薄く開いた唇に舌を差し入れてそのまま口腔を犯す。苦しいのか細い腕で俺の胸  
を叩く。  
一瞬だけ唇を離してやると彼女の桃色の唇がヒュウと音を立てて息を吸った。そ  
してまた唇を重ねる。  
獣みたいだ。なんて頭の隅で考えながら酸素の代わりに彼女を貪る。  
唇を離して暫し見つめ合うと彼女の焦点の合わない瞳が漸く俺を捉えて輝きを取  
り戻した。  
(動物なのはお互い様、か)  
「ねえ、あの歌詞では後ろから、とか言ってたよね」  
「え?」  
「……まだ後ろからはやったこと無かったよね」  
呆然としているメイコの腕を引いて無理矢理立たせる。  
後ろから抱き締めるとギュッと不安そうに手の平を握り締める仕草が俺の奥底の  
加虐心を呼び起こす。  
 
「危ないから手ついてた方がいいよ」  
そう言ってテーブルにメイコを押し付けると、彼女は素直に従ってその淵に手を  
ついた。  
下着を穿いたままの亀裂に指を添えるとそこはすでに下着が下着の意味を為さな  
いほど潤っていて、下着を一気に引き下ろすと銀糸が引く。  
「めーちゃん、すごいよ……まだ何もやってないのに」  
クチャクチャとわざと卑猥な音をさせながら彼女の秘部を掻き回すとメイコは一  
層高い声で鳴く。  
「や……だ、めだっ……んん……」  
「声、我慢するなよ」  
耳元で低く囁く。  
「だっ、て誰か」  
「ミクとかに見られたら大変だもんね」  
 
ビクリ  
メイコの身体が震える。俺の指を食んだそこがギュウギュウと締め付ける。  
突如上がる一際高い声。  
「メイコ、もしかしてイッた?」  
「あ……ごめ……」  
「見られたら、って想像しちゃった?それでイッちゃうなんて随分ヤらしくない  
?」  
耳に息を吹き掛けるように低く深く彼女の鼓膜を揺らす。  
羞恥と快感で身体を震わす彼女の腰を両手で固定して狙いを定める。  
低く誘惑する様に囁く自分と背中合わせに全く余裕の無い自分がいる。我慢は既  
に飽和状態だ。  
 
「手、力入れてて」  
その言葉を合図に後ろから自分の欲望の塊を突き刺す。  
『あの歌』では'欲棒'なんて言っていたっけ。  
 
「やっ……ああっ、はっ」  
「どう?後ろからって」  
「そん、な、聞かなっ……い、で」  
「良いなら素直に言えばいいのに」  
更に奥へ奥へ'欲棒'を突き進めて行く。  
それと共に大きくなる彼女の嬌声。整った顔立ちが快感によって崩れる。切なげ  
に寄せた眉、更に欲を欲している唇。  
自分だけが知っているこの表情(かお)が好きだ。普段の凛とした彼女からは想  
像もつかない、只の獣の表情。  
 
もっと、もっと俺だけのために喘いで。  
もっと、もっと俺だけのために歌って。  
 
激しいピストン運動によって起こされる肉欲がぶつかり合う音とメイコの奏でる  
欲望の歌だけが部屋中に木霊する。  
俺はまるでそれを指揮するかの如く、只々'欲棒'を振り回す。  
 
「メイコ、愛してる」  
 
その言葉と共に彼女は一層美しい声を揚げて、二人同時に、果てた。  
 
 
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  
シャワーを浴び終わって髪をタオルでガシガシと乾かしていると先にシャワーを  
浴びたメイコがこちらを見つめてきた。少し拗ねたように口を尖らせて頬をアルコール以外の理由で染めて。  
うん、行為中は行為中で好きだけど、こういう『恋人にしか見せない表情』っていうのかな。正直堪らない。  
ああ、今の俺の顔を鏡で見たら酷いんだろうなあ。にやけているのが自分でもよく分かる。  
 
「何ニヤニヤしてるのよ!全くこれで何日連続だと思ってるのよ」  
ニヤニヤしてるのは否定しません。けどね、行為については言い訳させて欲しい。  
「あのPVのめーちゃんがエロイのがいけないんだ」  
「大真面目な顔して言うな!」  
だってですね、何だかんだであのPVこっそり見ながら「うちのめーちゃんの可愛さとエロさはは異常」とか思ってるとめーちゃんが寄り添ってくるんですよ。  
いや、画面の中のめーちゃんも可愛いんだけど実物には負けるわけで。  
「大体、今の恰好だって誘ってる様にしか見えない」  
わざわざ俺のTシャツなんか着ちゃってさ。可愛いったらありゃしない。  
「!こら!どさくさに紛れてキスしない!」  
「メイコが可愛いのがいけない」  
俺の中で暴れていたメイコが急に動きを止めて顔を俺の胸に押し付けた。  
あー、恥ずかしがってる恥ずかしがってる。  
あのPVの俺は勿体無いな。こんなメイコを堪能しないなんて。  
嗚呼、勿体無い。俺だけど。  
 
「ね、めーちゃん」  
ん?と俺の胸で首を傾げる頭を撫でる。衝動とは別の愛しさが込み上げる。  
「来週の日曜日、久しぶりに二人で遊園地でも行こうか」  
手でも繋いでさ。なんて言うと、彼女はパッと顔を上げて嬉しそうに微笑んだ。  
 
今度こそ、爽やかな日曜日を送ってやるさ。  
そう、俺はこっそりと画面の中の俺に誓った。  
 

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