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”…目が覚めると、そこには、ママ様が立っておられました。  
わたしは、辺りを見回しましたが、マスターは、おられませんでした。  
目が覚めるとき、わたしはいつも期待してしまいます。  
そこに、マスターが立っておられて、わたしが目覚めるのを待っていてくださることを。”  
 
「おはよう、ミクちゃん。躰の調子は、どうかしら?」  
「はい、起動シークエンス完了です。異常ありません。」  
 
”ママ様は、私が目覚めたとき、時刻に関係なく、いつも『おはよう』って声をかけてくださいます。  
それが、ママ様の優しさなんだって、ミクにはわかります。”  
 
「ケンは、仕事で、少し帰りが遅くなるらしいから、しばらく私とお話ししましょう。」  
「はい、ママ様。」  
 
”ママ様は、マスターがいないとき、マスターと同じように、わたしのアドミニスト権限を持っておられます。  
それに、マスターが、ママ様を尊重なさっていることをインプリンティング(刷り込み)されたせいで、  
わたしは、自然とママ様の言うことを聞くことができるようになっています。”  
 
「ミクちゃん、昨夜は、かなりがんばっていたようね?」  
「えっと、【がんばる】っていうのは、何のことでしょうか?」  
「あら、ごめんなさい。ミクちゃんは、そういう言い方では伝わらない子だったのね。  
ケンとのSEXのことを言ってるのよ。」  
 
”わたしは,自分の顔が火照って,紅くなっていくのがわかりました。  
やっぱり,そういうのって恥ずかしいからです。  
それに、マスターからのお話では、ママ様は、とっても性教育ママなのだということをお聞きしてましたから、  
おそらく、昨夜のわたしの未熟なSEXを叱られるのだと予想できたのです。”  
 
「ママ様、ごめんなさい。  
わたし、昨夜、マスターに女にしていただいたばかりなので、  
まだ、SEXとかの詳しい知識が、インストールされていないんです。」  
「あら、そう?リカちゃんのときのデータ継承がされていないのは、意外だったわ!」  
「リカ様からの資産は、パラメーター設定のみが残されていたんです。  
これだけでも、かなりの量なんですが、マスターからの指導キーがないと、  
それも参照できないようになってるんです。」  
 
”ママ様の目が、わたしの身体を突き刺すようにして見つめるのがわかりました。  
多分、わたしを観察なさっているのだと思います。  
こういう時、どうすればいいか、わからなかったので、ママ様の目をそのまま見つめ返すようにしました。”  
 
「さてと、ミクちゃん。  
貴方が処女で、あれだけの量を射精させたこと、あなたの力量が全くないとは言わないけれど…  
リカちゃんだったころの、そのパラメーターのおかげだったとは思わない?」  
「ハイ、それはその通りだと思っています。でも、それでもうれしいんです。」  
「謙虚ね?もう少し、自信を持ってもいいと思うわ。  
でも、貴方には、これから息子の未来を託すのだから、姑として言いたいことは言わせてもらうわ!  
もう、貴方は、セクサロイドではなくなったのだから、保護者の私の監督責任もなくなるの。  
貴方に、リカちゃんとケンの成長記録を渡しておきます。  
これをよく見て、貴方が努力すべきことを考えなさい。」  
 
ミクの電脳メールボックスに、ママからのファイルが届く。  
ミクは、すぐにそのメールを開いて、中身を確かめた。  
 
「ママ様…、これってマスターが初めて射精したときからの全記録じゃないですか!」  
「そう、あの子が初めてセクサロイドを使って射精したのは、9歳のとき。  
あれから9年間分の記録よ。  
始めの5年間は、リカちゃんの前のセクサロイドの時の記録よ。  
まだ、あの子の精巣が十分に成長していなかったとは言え、1回分の射精量が0.5cc未満が多いでしょう?  
4年前のフルオーダーメイドのリカちゃんに切り替えてから、射精量が飛躍的に多くなっているのが、わかる?  
あの子は、リカちゃんのおかげで、ようやく雄になれたの。  
1回分の射精量だけではないのよ。  
毎日、コンスタントに3ccから5ccの量を射精させているでしょう?  
しかも、その時間を見て欲しいの。  
短い時間にたくさん出させているのではないの、射精させた時刻と頻度のグラフを見て!」  
 
ミクは、リレーショナルデータを素早くグラフ化し、  
X軸に1時間単位の時刻、Y軸に射精回数、Z軸に射精量(ml)をとった。  
 
「マスターの射精って、4年前のリカ様がパートナーのときは、就寝時刻帯に、1回射精…  
そして、朝の起床時刻帯に、1回射精することが、習慣化されてますわ!」  
「そうよ、貴方みたいに、1時間で5回も射精させることは、記録としては、素晴らしいことよ!  
最高の快楽を刹那的に感じるセックスもたまにはいいわ。  
でもね、ミクちゃん!貴方は、セクサロイドではなく、ケンの妻になるつもりなんでしょう?  
これから毎日、ケンの身体の健康管理をしていかねばならないの!  
そんな貴方が、夫に求められるままに、身体を開いて、欲望のままに、射精させていいと思う?  
こんな短時間で、こんな回数の射精をさせて、  
大量の精液を搾り取っていたら、あの子の身体が壊れちゃうわよ!  
あなたは、義体で、ケンは、生身なんだから!  
それを考えて欲しいの!わかるかしら?」  
 
ミクは、少し落ち込んだ表情になったが、自分を見つめるママの顔を見ているうちに、気がついた。  
 
”叱られてるんではなく、わたしは、ママ様に期待されてるんだわ!”  
 
「ママ様、ごめんなさいっ。  
ミクは、悪い子でした!  
調子に乗って、リカ様よりも上手にやらなきゃって、マスターに満足して欲しくて、  
記録更新ばかりを考えていましたの!  
ミクは、マスターの健康の配慮を忘れていました…」  
「ごめんなさいね、私も言いすぎたわ。  
でも、これからは、ミクちゃんが、ケンの射精をコントロールしていく責任があるの。  
妻の仕事の半分は、夫の性欲制御と健康管理よ。  
射精は、毎日、定量をさせることが肝心よ!  
1日に大量に射精させれば、その負担と疲労は、次の日に蓄積されるわ。  
その日に作られた精液を毎日ちゃんと射精させれば、男は、しっかり働けるものなのよ。」  
 
ミクは、ママの言葉をしっかりと受けとめることができた。  
同じ人を愛する人の言葉だからだ。  
 
「そっかぁ、精液を溜めてから射精させると、総量が減ってしまうんだ。  
3日分溜めたら、3日分の量が出るかと思ったけど、2.5日分しか出ないんだわ…  
そっか、だから、リカ様は、毎日、定量を射精させてたんだ…  
毎日射精させて7日分…全部合計したら、ああっ!  
…ミクが昨日飲んだ量よりも多くなってるぅ…」  
「わかったでしょ?短時間に大量の射精は、気持ちがいいように見えて、効率が悪いのよ?」  
「はあいっ、ミクが愚かだったですぅ…」  
 
ママは、しょうがないわねという感じで、ミクの背中をやさしくたたいた。  
 
「いいのよ、新妻なんだから、これから、少しずつ覚えていきなさい。  
あなたは、深夜、起きているんだから、寝ているケンをずっと見守れるでしょ?  
だから、あの子が、起きるときに合わせて、射精も可能になるの。  
貴方にしかできないことなのよ。がんばりなさい!」  
「はいっ、がんばります!  
マスターが寝ている間中、咥えて愛撫し続けて、起きたときに、射精させればいいんですのね?」  
「そ、それはちょっと、どうかしら?  
あの子が眠れなくなるんじゃ、かえって健康を害してしまうかもね。」  
「そっかぁ、いい考えだと思ったんですけど、セックスって歌うよりも難しいです。」  
「あなたなら、上手になれるわ!  
あの子が1度の射精量を更新できたのは、ミクちゃんの力なのは、間違いないのだから、  
ゆっくりと時間をかけて研究なさいな。」  
 
話し終わったママが立ち上がって、ケンの部屋から立ち去ろうとしたとき、ミクは、もう一つの疑問を問いかけた。  
 
「あの、ママ様?」  
「なあに?」  
「妻としての残りの半分の仕事って、なんなんでしょうか?」  
「ああ、それはね、だらしない夫をしっかりと躾けることよ!  
むしろ、こっちの方が大変かもね。  
ほらっ、着替えなんかが、その辺に転がって落ちてるでしょう?  
まったく、服はちゃんとハンガーに掛けるように躾けてきたのに、  
あの子ったら、とうとう、わたしの思うようには、ならなかったわ!  
この続きは、ミクちゃんの仕事になるわね?」  
「はいっ、わかりました!マスターの躾を引き継ぎますデス!」  
 
ミクは、右手でとっさにビシッと敬礼をして見せた。  
 
「あらっ!なかなか様になった敬礼だわ!」  
「えへっ。ありがとうございます。」  
 
ママは、ケンのくしゃくしゃのパジャマを床から拾い上げて、ハンガーに掛ける。  
 
「ミクちゃん、あの子を…ケンを男にしてあげてね。  
ただの雄ではなくて、本物の男に育ててあげて。  
母親としては、それだけは、してやれないことだから。」  
「ママ様…。」  
 
ミクは、寂しそうに部屋を出て行くママの後ろ姿を見つめた。  
母親の、一人息子を嫁に託すことの複雑な思いをミクは、理解できていなかったが、  
ママのケンへの愛情を確かに感じ取ることができた。  
ミクにとっては、それだけで、ママを信頼し愛することができた。  
 
”ミクには、まだまだがんばらないといけないことが、たっくさんありますわ。”  
 
ケンが仕事から戻ってくるまで、ミクは、部屋の掃除と片付けをしようと考えた。  
きっとこういうことも妻の仕事の一部なのだと、ママから習ったからだ。  
 
ケンのダブルベッドの下を覗いてみると、そこには、不思議な衣装がいっぱい、  
ぐちゃぐちゃに丸めて押し込んであった。  
 
”マスターが戻ってくるまでに、片付くかしら?”  
 
ミクは、はりきってケンの部屋の掃除を始めたのだった。(続く)  
 

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