ケンとミクの新婚生活は、幸せで蜜月な時間であったことは言うまでもない。
他人からは、セクサロイドを利用した成人男性の,
単なるマスターベーションだと見えていたかもしれない。
しかし、初音ミクという人格が、単なるセクサロイドではないレベルに洗練されていたという事実は、
マスターであるケンにしか認識できないことだった。
初音ミクの真価を「自分だけが知っている」というある種の優越感で、
ケンの男性本能は満たされていたのだ。
その一方で、初音ミクに本来の唱う機能を取り戻させてやるべきという責任感と,
今のままでいいという欲求がせめぎ合ってもいたのだ。
おそらく、ミクの記憶が、徐々に戻りつつあるなら、このまま放っておいても、
そのうち完全に記憶が戻って唱えるようになる可能性が高い。
しかし、そもそもミクが記憶を失うことになった原因を知らずして、
単純に記憶が回復していくことが、果たしてミクにとって幸せなことなのだろうか。
記憶が戻れば、ミク自身が苦しむようなことにはならないのか?
あるいは、自分のそばから離れていくような事にはならないのか?
むしろ、ミクの記憶は戻らないで、ミクが自由に唱えるようになる方法を探すべきではないのか?
ケンは、この不安に耐えながら、矛盾した問題を解決せねばならなかった。
そんな時、タローから何気なく提案された電脳世界でのデートは、なかなかいい考えだ思えた。
セクサロイドボディの制約を解いた電脳世界で過ごせば、
ボーカロイドミクの記憶を取り戻すきっかけがつかめるかもしれないし、
電脳世界では、『ケンだけがミクを守る』ことができ、ミクに対する自分の愛情をはっきりと示しやすいとも考えたからだ。
「おい、ケン?ミクちゃんに唱わせてやりたいなら、プロの電脳アーティストのライブを聴かせてやるのが一番だろ?
イサカ=コリーノ嬢の貴重なチケットを二人分譲ってやろう!」
「…ほう、俺にそのチケットを譲るとお前にどんなメリットがあるんだ?」
「失礼なことを言うな!お前に譲るわけではない!ミクちゃんに譲るんだよ!」
「他人のセクサロイドの歓心を買うような行為をするとは、礼儀知らず、マナー無視、エチケット違反も甚だしい奴だな!」
「俺は、ミクちゃんの健気なところが大好きなのさ。リカちゃんの時は、
セクサロイドとしての自覚と能力があったから、貴様のような男の世話をするのも仕方がなかったが、
ボーカロイドの能力だけでお前の世話をするのは、可哀想すぎるよ。そんな彼女を応援してやりたいだけさ。」
「なっ!なんだと!ミクが不幸だと言うのかよ!」
「ああ、その通りだ、今頃気がつくなんて、ミクちゃん可哀想!」
「俺だって、ちゃんと、ミクの幸せを考えているんだ!
てめぇこそ、ミイ姉ちゃんの苦労を労ってもいないくせに、人のことばっかり、心配してんじゃねえよ!」
そう言って、ケンは、タローから2枚の電子チケットをもぎ取った。
素直に、相手の好意を受け取らない二人の姿をミクとミイは、微笑ましく見ていた。
「ごめんね、ミイ姉ちゃん。今度は、僕が、ミイ姉ちゃんにコンサートのチケットを贈らせてもらうからね?」
「そんなこと気になさらないでください。
私は、ケン様が愉しんでくだされば、それでうれしいんです。タロー様だって、そう思っておられますのよ。」
「うん、ミクちゃんが幸せになって、おまけで、ケンも幸せになるのなら、それも仕方ないことだ!」
「もうっ!マスターは、素直に、好意を伝えるようにしないと、信用を失いますわよ?」
「ダイジョーブだって、こいつと俺との間に信用なんてモノは存在しない!なあケン?」
「そうだな、信用はないが…友情は少し…あるかもな。」
「おおっ!ケンが俺に、御礼を言ったぜ!これは珍しい!ああ、ケンに頭を下げられるって気持ちいいなあ!」
「う、うるさい!べ、別に御礼したわけじゃない!少し…感謝しただけだ!」
「ねえ、ますたぁ?ミクには、御礼と感謝の違いがよくわからないんですが…」
電脳世界へ初めて出かけるミクには、期待がふくらむデートだった。
ケンも、セクサロイドを連れてのデートは、久しぶりだった。
リカのときは、電脳世界へ連れて行ったことは1度もなかった。
電脳世界での行動は、原則一人でアクセスする方が効率良く、
セクサロイドの管理権限を維持したまま、二人で電脳世界を動き回ることは、
自分の電脳処理能力に余裕が無くなってしまうからだった。
「えっと、それじゃあミクは、ベッドに寝て。」
「はい、マスター。仰向けでいいんですね?」
「うん、そう。僕も隣に寝るから、向こうにずれて寝てくれる?」
「はい、じゃあ、こんな感じでいいでしょうか?」
「OK。じゃあ、手をつなごうか。」
「はい、手をつなぎます。」
横たわったミクとケンは、ベッドの上で仲良く手をつないだ。
別に電脳世界にアクセスするとき、寝る必要はないし、手をつなぐことにも意味はない。
しかし、ケンにとっては、ミクを初めてエスコートする、電脳初アクセスになる。
それなりに、段取りを整えて、ミクをサポートしたかったのだ。
「うわぁ、なんかドキドキします!この前の公園での初デートも素敵だったけど、
ベッドの上から外へお出かけできるなんて、不思議の国のアリスみたいですわ。」
「その物語も覚えてるんだね。ウサギを追って、彼女は、何を見つけたんだっけ?」
「アリスは、素敵な家族のもとに戻ってこれたんですわ。大好きな人が待つところへ。」
「戻ってこれない可能性もあったと?」
「出かけるという行動は、安全な世界から危険な世界へ出て、自分を鍛え、
他者を救うという意味があると思うんです。
ケン様は、ミクをいつも守ってくださいます。
『今の』ミクには、電脳世界で、ケン様を守る力がありませんもの。
でも、ミクは、どこまでも一緒について行きます。
ケン様のお役に立てなくても、そばにいたいんです。
ケン様の邪魔にならないのなら、ケン様をずっと見ていたいんです。」
「うん、君を守るよ。僕がずっとそばにいて、ミクを守る。だから、安心して、ついてきてね。」
「はい、お供します。マスター。」
「じゃあ、行こうか、電脳回線へダイブアクセス!」
ミクが目を閉じると、さっきまでの室内の天井の風景が消え、
すぐに周囲がグラフィカルな風景に変化し、躰はふわふわと宙に浮いていた。
でも、ケンが右手を握りしめている触感覚だけは、そのまま途切れることなく残っている。
隣で、ケンもふわふわと浮きながら、ミクを見つめていた。
初めてなはずなのに、ここには、かつて来たことがあるような不思議な風景だった。
視覚的には、先の見えない広大な夜の空間で、星のような光の粒が夜空を埋め尽くしており、
その光の粒を見ようと意識さえすれば、自らの躰がその目的の粒まで引き寄せられるようになっている。
光の粒をよく見ると、アクセスゲートを構成していることがわかる。
無数の球体が、三次元的に散らばっていて、ここでは、上下左右、東西南北は、意味のない空間だった。
「大丈夫?」
「はい、大丈夫です。」
「慣れてくるまで、手はつないだままで行くからね?
手を離して、二人の距離が離れても、迷子になることはないから、安心してね。
ここでの視覚的な距離は、お互いのデータの独立性を意味するけど、
リアル世界のように行方不明になるような事は、絶対に起こらないから。」
「はい、ミクも手をつないでくれた方が、うれしいです。」
「じゃあ、まずは、このチケットが使える認証ゲートまで進むよ?」
ケンは、両脚からジェット気流を出すようなイメージで、ミクの手を引きながら、
上空に見える青い球体の中へ飛び込んだ。
ゲート内では、認証が自動的に行われ、ライブ会場の電脳空間席に、二人は現れた。
電脳世界での座席指定は、仮のものでしかない。
電脳アーティストは、観客が望む最も見やすい位置に動いてパフォーマンスを行う。
手を伸ばせば、手が届くような距離感で唱っている女性がいた。
そして、息づかいや飛び散る汗の匂いすらもわかるぐらいのリアル情報が、
自分たちのためだけのように注がれてくる。
それでいて、全観客の一部として会場の雰囲気や興奮がフィードバックされるために、
観客全員と一体化した臨場感も味わえるのだった。
「マスター…なんかこわいです。」
「大丈夫、君が、怖いと思うと、その感情が相手に伝わってしまうよ。
こういうライブでは、相手が伝えてくる情報をそのまま受け取ることが、大切なんだ。」
女性アーティストに対して嫉妬でもしているのかな…そう思ったケンだったが、
ミクが慣れていないだけだろうと思い、ミクが感じている嫌悪感に、ケンは気がつかなかった。
コンサート最初の「紅いウサギ」の曲が始まると、ケンとミクの視界がぐるぐると回り出す。
軽い吐き気を感じたミクは、自分への入力情報を制限しがら、ケンの顔を見る。
ケンは、心地よさそうに笑って、ミクを見つめていた。
でも、何かに取り憑かれているかのような顔…いつものケン様ではない!
これは、心配のないものなんだろうか?
ミクには、自分が受け取る情報が、『危険なもの』として認識されているのに、
マスターケンには、その様子が感じられなかったのだ。
鮮やかすぎる風景が電脳世界を取り囲み、『幸せすぎる』空間が演出されていく。
意味不明のフラッシュライトと理解不能の知覚中枢を刺激する泥のような怪しい快感だけが、
ケンとミクの電脳を浸食してきた。
「なっ、これは強烈な印象の曲だな。ミク、どんな感じ?参考になることがあるかい?」
ケンのその問いかけに、ミクは自分が感じていた嫌悪感をあからさまにした。
「こんなの…歌じゃないです!!
私が知っている歌は、人間を幸せにするものです。
なのに、この歌みたいのは、人間を貶めています!」
「でも、これが、電脳世界で聞く歌なんだよ。
ミクには合わないかもしれないけど、リアルで口頭音声情報だけの歌というのは、
僕だってミクから初めて聞かせてもらっただけなんだから。」
「マスターは、フル電脳化を嫌って、ネットから自立モードにしてあるので、
お気づきにならないのですわ。
この曲の情報の中には、脳内分泌物による精神の高揚と肉体の覚醒が図られています!
人間の快感を高めるため、脳内麻薬物質を電脳制御で無理矢理分泌させられているんですよ。
表現情報の中に、わざとそういう命令コードが混ぜられているんです。
これって、サブリミナル広告禁止の法令に抵触するんじゃありませんか!
この歌は、薬物中毒を起こす恐れがありますわ!」
”そうなのか、この強烈な印象はそのせいか!”
ミクからの危険情報アドバイスを受け取った瞬間、ケンは、電脳ライブ情報を全て遮断した。
とたんに、無音暗闇となり、ミクの姿だけが見える状態になった。
ミクは、息を切らすように”はぁはぁ”と呼吸が乱れ、具合が悪そうになっていた。
「どうして、日本でこんな歌が許されているんですか?法律違反ですわ!」
「大丈夫?ミク。今の時代、その法律は、もう効力を停止しているんだ。
大戦後の日本の法律の大半が書き直されるか、停止しているんだ…
今の日本は、日本国民を守るために国家があるんじゃないんだよ…」
「日本は、日本国民を守るための国家システムじゃないんですか?
そんことって、おかしいと思います。
わたし、…ミクだったら、日本人を守るためだけに…
あれ?今、私、何か、ヘンなこと言ってますね?」
「いいや、ちっともヘンじゃないよ。
今の日本は、おかしな方向へ歩んでいる…
あの大戦以来、日本は、滅びることへの恐怖故に、自立よりも依存を選んでしまったんだ。
国家が、安全と安心と安定をもたらすシステムだったはずなのに、
安易に安価で安楽を求めてしまったのが、今の日本なんだ。
電脳化し、快楽を子どもの頃から簡単に手に入れ、義務を忘れて、
権利が無償で手に入ることを当然のように考え、それが国家の役割だと思いこんでいるんだ…」
「マスター…こんなの歌じゃありません…誰もが自分で気に入った歌を選ぶ権利がありますわ。
でも、こんな薬をばらまいて、集まってきた人を中毒にさせるやり方!ミクは、気に入りません!」
「ごめん、こんなライブに連れてきて、悪かったよ。
もしかしたら、ミクの歌のヒントが見つかるかもと思ったボクが浅はかだったね。もう帰ろう!」
「ごめんなさいっ、マスターのせいじゃないです。
せっかく、タロー様がチケットを譲ってくださったのに…ミクが、わがままでした。
もう、ミクが知っている頃の日本じゃないんですね…
これも、日本のみんなが選んだ歌なら、ミクも、こんな歌を歌わないといけないのかな…」
「ううん、ちがうよ。ミク、君が初めて歌ってくれたあの『メロディ』をボクは聴いているから、
あの歌をミクは歌えばいいんだよ。
ミクが、これは違うって言うなら、ボクは、ミクを信じるよ。
もう、こんなライブには、行かない。そして、もう聴かないよ。
これから、ボクは、ミクが歌う歌だけを聴くことを約束する…それで、いいかい?」
「マ、マスター…わたし、がんばります。
きっと、マスターに歌を聴いていただけるように、がんばります!」
「うん、ボクもがんばるからさ。君に歌を取り戻してもらえるように。」
「はいっ!二人でがんばりましょう!
あの、それで、帰ったら…今日の夜、マスターの白いお薬をいただけないでしょうか…
変な歌を聞いちゃったから、ミクのお腹が、とっても気持ち悪いんですの。」
「?ご、ごめん、白い薬って何のこと??」
「マスターの白いお薬…いつも飲ませてもらってるでしょ!」
「へっ?何のこと?」
「もうーっ!わかってるくせに!」
「いや、マジでわかんないんだけど…」
「じゃあ、こう言えばわかります?毎日少ししか造られないとーっても貴重な、ますたぁの白い、お・く・す・り!…」
そう言ったミクも、ケンが本気で何のことかわかっていないことに気がつくと、
自分の言い方がまずかったことに恥ずかしさを感じ、顔を赤らめた。
ミクが恥ずかしそうに、顔を俯かせて、指先でケンの股間をたどる仕草をすると、ようやくケンは、その意味を悟った。
「!あっ、ああ、そ、そうだね。うん、ミクにとってはお薬になるかもね。うん、じゃあ、今夜は、多めに飲んでもらおうかな?
でも、体に悪いからって言って、最近、一晩に一回しか射精させてくれないようになったものなあ。
二回とかダメでしょうかね?ミク姫様?」
「どうしてもミクに飲ませたいと勇者様がおっしゃるのなら、姫としても断る理由はないでしょう?ケン様?」
「ずるいなあ。自分が飲みたい時は、回数を増やして、僕が出したい時は、お預けって言うくせにさ!」
「じゃあ、いつもと同じようにします?ミクが飲みたいって言ってるのに、飲ませてくれない勇者様なんて、シンジラレナーイ!」
「じゃあ、お口に3回、膣に1回出してもイイ?」
「うん、お願いします。ミクのお口にたくさん出して欲しいの。」
「じゃあさ、僕にもミクのお薬を飲ませて欲しいな?」
「えっ?ミクはお薬なんて出ませんよ?」
「それが出るんだな。ミクの2つのチッパイからは、体内のアミノ酸や脂肪酸から生産できる、
擬似的な母乳を分泌させることができるんだよ。
あまり、使ったことがないパラメーター機能だけど、それを飲ませて欲しいな…。」
「それって、おいしいんですの?」
「うん、滋養強壮剤としての効能があって、それを飲むとかなり元気になってやりまくれるんだ。
タウリン配合だから、寝ないでもやりまくれるよ!」
「そんな強いお薬を飲むのは、マスターのお体の負担になりますわ。」
「でも、ミクとできるだけ長い時間愛し合えることも、僕の幸せなんだよ?
僕の身体のことを心配してくれるのはうれしいけど、心も満足させることも健康の考え方だろ?」
「そうですけど…リカ様があまりお使いにならなかった機能をミクがうまく使いこなせますかしら?」
「ミクにならできるし、できないからといって、嫌いになんてならないよ…
ミクには、今日はたくさん飲んでもらいたいな…だから、おあいこで、僕にも『ミクミルク』を飲ませてくれる?」
「はい、わかりました。じゃあ、今夜は、初夜の時みたいに、無制限でやっちゃいましょうか?」
「やったぁ!久しぶりのエンドレスナイトだ!うれしいなあ。ミクの匂いと味と触感を存分に楽しめるんだあ!」
「もう、…そんなに喜んでくれるなら、これから、毎晩二回…三回…に増やしてみます?」
「えっ!いいの?」
「ま、ますたぁがどうしてもミクを愛したいっておっしゃるなら…マスターの心の健康も考えるとしかたないですもんね!
べっ、別にミクが欲しいって、言ってるんじゃあないんですからねっ?」
「まあ、そういうことにしておきましょうか。」
「でも、短時間にあんまりたくさん射精させたら、ママ様に、怒られてしまいそうです。
妻として、失格だって言われたくありませんもの。
やっぱり、射精は、1晩1回の方が、いいかもしれませんわ。」
「毎日じゃなくてさ、今日みたいに特別たくさん愛したい時もあるはずだろ?
ミクと僕とで、話し合って決めようよ。
もう、ミクは、セクサロイドじゃないんだから、お互いに話し合って、決めていけばいいと思うんだ。
ママのことは、気にしないでイイよ。もう、僕たちの愛し合うデータは、ママのところへは伝わらないんだから。」
「そうですわね!じゃあ、今晩は、少しだけがんばってくださいね?」
「そうだね、がんばるのはミクも一緒だよ?」
「そうでした!」
「そうだよ!」
「じゃあ、ここから戻るよ?」
「はい、お願いします。」
ミクとケンは、暗闇の遠くで輝く星に向かって移動する。
その星が、面積を増し、大きく扉のようなゲートへと変わっていく。
そのゲートの中に、手をつないだ二人の身体が進入すると、物理世界の諸感覚が戻ってきた。
二人が目を覚ますと、ベッドルームで横たわって見つめる天井があった。
「ただいま。マスター」
「お帰り。ミク。」
「二人で出かけたのに、ただいま、は変でしたね?」
「そんなことないさ。ミクがこの部屋に戻って来られたことを僕は、うれしく思うもの。」
「戻って来られないことって、あるんですか?」
「まあ、滅多にあることではないけど、電脳障害とか、電脳誘拐とか、年間に数人の人が、
ネットから戻れなくなって、寝たまま亡くなる人もいるね。」
「それって、怖いですわ。その確率は、高いんですの?」
「うーん、それって交通事故に遭う確率よりも低いから、
むしろ、この前、公園に出かけた時よりも、今回のネットでのアクセスの方がずっと安全なんだよ?」
「でも、ミクがマスターに守ってもらうだけで、
ミクがマスターを守れない世界での危険性は、できる限り小さくしておきたいですわ。」
「まあ、僕にだって、甲斐性のあるところを見せたいからさ、電脳世界では、僕を頼ってよ、ミク。」
「マスターを信頼していない訳じゃないんですのよ?
ただ、電脳世界では、ミクにとって、怖い思い出があるから、不安になるみたいですの。」
「何か、思い出した?」
「いいえ、何も…でも、何か怖いことがあったように、覚えているんです。」
「そう…じゃあ、これからは、電脳空間にアクセスしない方がいいかな?」
「いいえ、ミクのせいで、マスターの行動を邪魔したくないです。
電脳世界へ連れて行ってくれるだけでも、ミクは、ずっとうれしいんです。
一人で、部屋で待っているよりは、ずっと幸せですわ!」
「うん、わかった。できるだけ、ミクと一緒に出かけるようにするね?」
「ありがとうございます。おそばにいれば、きっとミクは、マスターのお役に立ちますわ!」
「役に立つとか、立たないとか、そう考えなくてもいいさ。
君が、そばにいれば、なんだか僕は、とても元気が出るんだから。」
「そうなんですか?」
「そうだよ?」
「ホントに?」
「ホントさ!」
「えへへっ!なんだか、ミクってすごい贅沢な気分です!こんなに幸せでいいのかしら?」
「そう言ってくれるなら、今晩は、期待してもいいよね?」
「マスターがお望みなら、お好きなだけ、おつきあいしますわ!
ううん、この言い方は、ずるいですね?ミクが、マスターを求めているんですの。
マスターの身体が壊れちゃうくらいに、マスターの愛が欲しいんです!
ダメって言われても、ミクが、マスターを欲しがっているんですの。」
「じゃあ、お互い欲しいものを交換しないとね?」
「はい、マスターの精液とミクミルクの交換ですね?」
「どちらが、いっぱい満足させられるか競争だね?」
「ミクは、母乳機能パラメーターを使うのは、初めてだから、負けちゃいそうです。」
「大丈夫…ミクなら上手くできるよ。」
「はい、がんばります。」
「じゃあ、脱がせてくよ…」
ケンは、ミクのピンクのブラウスのボタンを外していく。
ミクの白いブラが、小さな2つの丘を隠している。
フロントホックを指先ではじいて、すぐにミクの小さなピンクの乳頭を発見する。
同時に、唇で吸引を開始した。
「あうっ!」
ミクが、乳首を軽くかまれて、反応する。
ミクは、母乳パラメーターをローディングし、そのプログラムを走らせる。
身体の機能が覚醒し、体内のミルクプラントが稼働し始める。
セクサロイドボディには、いったいどれほどの機能と工夫が隠されているのだろうか。
自分の身体なのに、知らないことがあまりにもたくさんあって、
先代人格OSのリカがどれほどの高度な義体ボディの使い手だったのかがわかる。
だからこそ、ケンを愛するミクは、この身体を上手く使いこなして見せなければならなかった。
リカが,自分に預けてくれたのだから,そうしなければならなかったし,そうできるようになりたかったのだ。
”身体は一流なのに、心は二流だなんて言われたくありませんもの!”
ミクは、乳首から伝わるケンの唇と前歯の感触を味わいながら、
体内の全プラントの能力を高めるようにルーティンワークプログラムを組み直し始める。
自分の体内にある栄養分を分解・合成・調整しながら、
マスターにおいしく味わってもらえるようなものを造らなければならない。
ミクの頭の中では、ミイ姉様が調理する姿をイメージしながら、ケンの頭部をやさしく抱きかかえる。
”なんか、マスターって赤ちゃんみたいだな…”
ケンが夢中になって乳首を吸い続ける様子をミクは、そういう感じで見つめていた。
”男を抱く女性の心理って、男の人を子ども扱いしてしまうものなのかしら?
それとも、たくましくって、頼りがいのある大人として尊敬すべきなのかしら?”
チュパチュパと音を立てて乳首をしゃぶり続けるケンの様子は、ミクを幸せな気持ちにしてくれた。
心地よい感触と耳から聞こえる音と体温がミクを興奮させていく。
”マスターが私のを飲んでくれるんだ。私の身体から出る分泌物のミルク…
これを飲めば、マスターはすごく元気になれるって仰ったわ。
じゃあ、たっくさん、造って、濃いーのを出さなきゃ…。”
ミクの乳房が硬くなり、乳首が勃起し始める。
同時に、腋や首筋からミクの発情臭が匂い始める。
ミクは、自分の乳頭から何かしらの液体を放出する感覚を感じた。
”ああっ、なんか出そう。胸がどんどん膨らんでく感じ…マスターのお口の中に射乳するの?
…ううん、マスターが吸引してるから、注乳って感じ?
ああん、なんて表現すればいいかわかんない…ますたぁのお口で、ミクのが飲まれていくんだわ…”
ミクの乳首から分泌される乳製品は、乳児が飲むためのものではない。
純粋にセクサロイドとして成人男性機能を活性化させるための滋養強壮剤であった。
しかし、その成分を調整するパラメーターは、リカとミクがマスターケンを想う気持ちで調合されていた。
身体に負担をかけるようなカフェインやタウリンなどの興奮剤は少なく、
口当たりがよいように乳脂肪と糖分を多めに、そして、
ミクの発情と愛情を伝える味と匂いの成分と水分を混ぜたものを乳首先端から分泌させていった。
その量は、総量100c程度の量でしかなかったが、ケンは、ごくごくとその雫の液体を飲み干していった。
少し蒼い匂いと母乳特有の白い粘性とミクの匂いと味がした。
1滴もこぼさず、味わいながら飲み干していくケンの仕草。
乳首を強く吸い込まれるその感覚に、ミクは、愛おしさを狂わんばかりに感じた。
「ま、マスターぁ。ミク、とってもうれしいです。ミクのことをこんなにも愛してくれているんですのね?」
ケンは、しゃべる余裕がない分、右側の乳首から左側へと口撃を移す。
「あんっ!そっちからも出るんですの?」
ちょうど、片方の量が無くなる頃に、ケンは巧みに、吸い口を切り替えた。
”これは病みつきになりそうですわ!”
ミクは、ミルク製造のプラントを続けて稼働し、量を増やす。
その分、股間の膣への分泌が間に合わなくなるが、仕方がないだろう。
たぶん、この後は、インサートよりもフェラチオに移行するはずだから、
膣が充分に濡れていなくても大丈夫なはずだ…。
ミクは、パラメーターを同時に処理できなくても、優先順位をつけて、処理する余裕が出てきていた。
以前のように、言語機能を停止させずに抱き合えるようになったのは、ミクのAIとしての成長でもあった。
”この後,口内射精させるために、今のうちに喉と舌と口内の動きのパラメーターの諸元入力をして,
モーションプログラム計算を済ませておかないといけないし…
ミルクを製造しながらだと,計算が終わるまで…あと約625秒もかかっちゃう…
マスターには、このままミクのミルクを飲み続けてもらえるかしら。”
フェラチオは,セクサロイドOSなら専用のモーション処理プログラムを積んであるので,
簡単にリアルタイム計算ができるが,今のミクは,それを楽譜に変換し,無理矢理処理をさせるので,
リアルタイム計算ができないのだった。
事前に計算を済ませて,それを動作直前に走らせるしかないので,
計算中は,他の動作や言語処理が追いつかなくなるのだった。
”やっぱり,お話しできなくなるのは,はずかしいもんね。”
ミクは,ケンが大好きなフェラチオでの口内射精を優先して計算を始めた。
その後,イラマチオでの口内射精,そして,ごっくんする前の口内でしばらく溜めてのネバスペ…計算の量は膨大だった。
”この計算は,その日のマスターの体調や気象条件までをパラメーターに組み込むから,ややこしいんだわ。
こんな計算をリアルタイム処理できたリカ様って,天才よね!”
そう思うミクだったが,本来,計算できるはずのないセックス技能プログラムを翻訳して再計算できるボーカロイドミクも天才AIと言えた。
ミクの胸から次々と搾られるミルクは,ケンの体内で興奮剤と栄養剤として働き,ペニスを勃起させていった。
睾丸が硬くなり,ペニスの先端から,カウパー液が漏れ始めていた。
ミクは,その状態を嗅覚から察知し,ペニスを咥える必要性を認識した。
”まだ,射精する可能性は低いけど,パンツの中で暴発させたりしたら,マスターの精液をこぼしちゃうことになるわ!
射精は,口内か膣内に限るものって,習ったから。計算終了していなくても,咥えるタイミングを早めた方がイイかしら?
それとも,このまま,ミクミルクを飲ませ続けて,計算終了させてから咥えた方がイイかしら?迷っちゃうな!
マスターは,まだまだ飲みたそうだしぃ,かと言って,体外射精なんて失態は絶対に許されないしぃ…。”
ミクは,幸せいっぱいの気持ちで,ケンとのセックスを悩みつつ愉しんでいるのだった。
(続く)