ミクの口の中で、ケンのペニスが、別の生き物のように激しく律動する。  
それは、ミクをとても幸せな気持ちにさせてくれた。  
おそらく、唱うための口腔モーションプログラムが、  
フェラチオの動きとしても応用できることによる満足感なのだろうと自覚できていた。  
今は、唱うことで、マスターに貢献できない以上、せめて、  
性的な快感を味わってもらうぐらいのことをしなければ、  
自分が何のために生まれてきたのかわからなくなりそうだった。  
『何か大切なことをするため』に、自分は産み出され、  
『何かを果たせないまま』ここにいるのかもしれないのだと思うと、  
居ても立ってもいられなかった。  
性的奉仕でお役に立つことができなければ、  
自分なんて死んでいるも同然という破滅的な気持ちになりそうなミクだった。  
本人は、その極端な指向性を自覚していなかったが、  
ケンには、それが、心配だった。  
始めは、セクサロイドとして教育してしまうと、  
ボーカロイドとしての能力を失うかもしれないと危惧していたケンであったが、  
むしろ、ミクを安心させ、不安から来るプログラムの暴走を防止する方が、  
ミクにとって良い環境になると判断したのも、そのためだった。  
事実、ミクに性的なパラメーターの使用を許可する度に、  
ミクの能力は向上し、最適化を図り、安定性が増していた。  
フェラチオとイラマチオのパラメーター参照は、この1ヶ月で、ほぼ前ページクリアし、  
新しい追加パラメーターをミク自身が構築し始めるほどになっていた。  
単位時間当たりの性的処理能力が低いミクには、その日のケンの好みに合わせて、  
性技能のセットメニューを事前に準備し、それを直前に実行させてキャッシュすることで、  
セクサロイドとほぼ同等の性技巧を達成しつつあった。  
リアルタイム処理できないデメリットもあったが、  
ケンが何を望んでいるかを予め推測するという人間的な勘のようなもので、  
ミクはそのデメリットをカバーできていた。  
 
「ミクっ!出るっ!」  
 
ケンの両手が、ドッジボールのようなミクの小さな頭をしっかりと抱きかかえ、  
堅いケンのペニスの鍵がミクの口の鍵穴にしっかりとはまる。  
ミクが、自らの口腔の筋肉を搾り上げて、固定させるために、  
ケンの腰の律動が直接ミクの顎や喉を強く刺激する。  
セクサロイドとしての機能が、その動きにより、  
マスターのオーガズムであることを検知し、  
射精を促した自分自身の達成感としてミクの心に癒しを与える。  
今日5回目の連続口内射精。  
ミクの口腔吸引デバイスが開き、精液が残らずミクの体内へと吸収されていく。  
同時に、ミクは、ケンの前立腺を肛門から差し込んだ指先で刺激し、睾丸を搾り上げ、  
できたての精子を輸精管へと追いやっていく。  
この動作を繰り返すことで、ケンの体内の精子は、  
ほぼすっからかんになって、ミクに吸い出されていた。  
 
”1度目の精液中に占める精子濃度は75%、2度目が60%、3度目が30%、4度目が15%、5度目が5%…  
射精の度に、総量に占める精子濃度が減るのは、  
やっぱり1日に造られる精子の量に限界があるからなんだわ。  
ケン様の勃起が、こんなに持続しているのは、ミクミルクの興奮作用によるものかしら。  
この調子だと、朝の6時までに8回目の射精ができちゃいそう。  
マスターの躰に負担にならないようにって、ママ様から言われたけど、  
マスターがそれを望んだ場合、やっぱり断りにくいよね。  
現在の時刻、午前3時9分…”  
 
「マスター?そろそろ眠りません?明日は会社でしょう?もう今日になってるしー。」  
「まだまだこんなに元気なのに?ミクは、膣にも欲しいだろ?」  
「そりゃあ!膣にも欲しいけど、マスターが、疲れちゃうでしょう?もう寝ましょうよ!」  
「お薬飲ませて!って言ったのはミクだろ?僕のここが勃起しなくなるまで、飲んでもらいたいな。」  
 
ケンのペニスは、確かに元気いっぱいに起立していた。  
睾丸も体内に吸着し、作りたての精子で精液のカクテルを造りつつある感じだ。  
6回目の射精の精子は薄くても、精液としての射精は、可能だろう。  
ミクの体内で、精液分析が完了し、ミクの口腔内に若くて新鮮な精液の味が広がる。  
ゴクリとつばを飲み込み、  
”もっと飲みたい、もっと射精させたい、もっと味わいたい、もっと吸い付きたい…”  
ミクには、セクサロイドにはないエゴイスティックな性欲が沸々とわき起こっていた。  
 
”マスターのエッチ!!”  
 
「もーうっ!朝、起きれなくなっても、ミクのせいじゃないですからね?  
ミクは、6時で寝てしまうんですから、誰も起こしてあげられませんよ?  
それでもいいんですか?  
聞き分けのないペニスさんをミクは、お仕置きしてるだけなんですからねっ!」  
「そうそう、そうこなくっちゃ!ミクのお仕事は、ペニスさんを愛撫して精液を味わうことなんだよ?ちゃーんと全部、飲んでね?」  
「ちゃんと飲んでます!マスターの躰が心配なんです!」  
「だから、大丈夫だって!6度目も口内射精で行くよ?イラマチオモードでいいかい?」  
「ええ、受けて立ちましょう!」  
 
ミクは、ベッドから頭だけをずり落とし、お口を大きくあーんと開け、舌をぺろりと出して誘惑して見せた。  
ベッド側壁に頭を逆さまにして垂らし、両手を広げてケンの腰を抱きしめようとするポーズは、ケンの支配欲を刺激する。  
ケンは、ベッドから降りて、逆さまのミクの口にめがけてペニスの先端を突き刺す。  
こうすることで、ミクの頭はベッド側壁に押しつけられ、逃げ場が無くなる。  
そのまま、ケンは、ミクの股間に覆い被さり、ミクの両太股の間に自分の頭をはさむと、69イラマチオの基本体位になる。  
ミクは、ケンのペニスを喉奥へと導き、自らのペニスへの愛撫を停止する。  
ミクのお口は、これから口ではなく膣を演じるのだ。  
ケンの長いペニスが、グラインドを始め、ミクの歯と舌と喉の摩擦による刺激で、ケンのペニスがさらに勃起を始めた。  
ケンの激しい突きで、ミクの鼻のに2つの堅い睾丸が当たる。  
その度に、ケンの雄の匂いが鼻腔をくすぐった。  
ケンの舌が、ミクの股間をまさぐり、二人のコンビネーションによる性の饗宴が繰り広げられる。  
 
”ミクの膣からもマスターを興奮させる分泌物が出てるから、お互い舐めあって飲み合えば、  
これって永久機関でセックスし続けられるんだわ!  
セクサロイドに12時間のリミッターがかかる理由は、こういうことなんだ…  
長時間何度も愛し合うのもいいけど、ママ様が言われたように、  
やっぱり、1度に何度も射精させるのは、良くないわよね…”  
 
ミクの喉奥にケンの精液が放たれ、食道へと導かれる。  
人間の女性なら、嗚咽し嘔吐くような行為でもセクサロイドボディでは、  
快感と満足感としてミクを喜ばせていた。  
精液の雫は、胃の中に入る前に、測定用デバイスを通過し、  
6回目の口内射精を評価し始めた。  
精子濃度3%…やっぱり、ほとんどカウパー液のみになってる…  
それなのに、この勃起、全然治まらない…ミクミルクってすごい効果のある媚薬なんだ…  
これは、少し、使用を制限する必要があるわね。  
こんな愛し方毎日してたら、マスターが壊れちゃうもの。  
 
ミクは、勃起したケンのペニスをそのまま喉奥シリンダーで保持し、  
ケンの腰をつかむと、真空状態にしながら、ケンのペニスピストンを引き抜いた。  
 
『ジュポン!』  
 
卑猥な空気音がミクの喉奥で響き、涎でべとべとになったミクの唇とケンのペニスが糸を引き合っている。  
 
きらきら光るケンのたくましいピストンを目の前にし、  
ミクは、7度目を自分の膣シリンダーにおねだりすることもできたし、  
精子が含まれていない精液なら、『セクサロイド倫理法施行規則の精液保存の優先規定』から解放されるから、  
射精された精液を胸や顔に塗布するようなエロチックな遊びを試すこともできた。  
まだ残り2時間ぐらいをマスターのために奉仕することを自らの欲望とすり替え、  
この性行為を続けることもそれほど悪くない考えのはずだった。  
しかし、ミクは、マスターの健康を守る妻としての愛情を実行すべきだと判断したのだった。  
 
「マスター?今日はここまでにしましょう?」  
「はぁ?何、言ってんの!ミクが、動かなくても僕は、続けるからね?  
疲れたのなら、そのままミクは口を開けて、じっとしていてイイからね?」  
 
すかさず、ミクは、涎だらけの口を閉じる。  
 
「なに?僕に逆らってるわけ?」  
「マスター?今日は、6回も射精してるんですのよ?  
精子だって、もうほとんど残っていないんです。  
充分に満足できてるはずですわ。  
勃起が治まらないのは、ミクミルクの興奮作用によるものです。」  
 
ケンには、ミクを愛していることを自らの射精回数で表現しようとするところがあった。  
また、今のミクを安定させるためには、セックスに夢中にさせて、  
過去の記憶や不安を忘れさせてやることがいいはずだと考えていたために、  
今のケンは、野獣化していた。  
そんな冷静ではないケンをミク自身が、作ってしまったことに、ミクは責任を感じていた。  
 
「マスター?ミクは、ケン様を愛しています。」  
「じゃあ、まだ続けようよ!」  
「ダメです!今のケン様の身体では、本当の快感ではなく、苦痛になってしまいます。  
その勃起は、カフェインとバイアグラ系の薬品による勃起です。  
ケン様の快感オーガズムは、とうにピークを過ぎていますわ!」  
「いいから、させろよ!セクサロイドが、マスターに逆らうのかよ!さっさと口を開け!」  
 
ケンの荒々しい物言いは、初めてであった頃の我が儘な口調そのものだった。  
ちょっぴり悲しいけれど、ミクには、ケンがだだをこねて、  
妻の自分に甘えていることをきちんと理解できていた。  
 
こほんと咳払いをし、呼吸を整えると、ミクは、ケンを叱りつけた。  
 
「あなたっ!いいかげんになさい!もう、終わりです!  
2時間後に私も休眠するし、3時間後に貴方は出勤なんですよ!  
寝不足で、いい加減な仕事をして、許されるわけ無いでしょう?」  
 
夫のケンをにらみつけるミクの眼は、妻の躾だった。  
 
「ミクぅ…もっとしたいよ…」  
「ダメです!そんな甘えた声を出しても、今日の分は、終わりなんですからね!」  
 
微妙にミクの声が優しくなる。  
 
「この勃起したペニスをそのままにして寝ろって…拷問だよ。」  
「大丈夫です。ミクミルクには、逆パラメーターもあるでしょう?」  
「えっ?どうして?知ってるの?」  
「パラメーター使用許可を今晩に限り無制限にされたのは、貴方ですよ?」  
「ご、ごめん。ミクといっぱい愛せると思ったから、つい無茶な命令を。」  
「ううん、ちがうの。  
いっぱい愛せたことを怒ってるんじゃないの。  
マスターとは、これからもずっと幸せな夜を過ごしたいだけ。  
今晩、大満足でも、明日の夜、疲れていては、意味ないでしょう?  
さあ、これを飲んで、寝てくださいな。  
10分もすれば、勃起も治まりますわ。」  
 
ミクは、ケンの頭を自分の胸に抱きかかえ、授乳を始めた。  
 
”興奮作用のミクミルクと鎮静作用のミクミルクを製造できるプラントを2つ内蔵しているセクサロイドボディ…。  
ホメオスタシスを考えたこの設計思想には、人間愛が感じられますわ。  
私も、そういう設計思想で産まれてきていて欲しいな…。”  
 
乳首をかじるようにして、ケンがミクの小さな乳首を吸い続けると、  
ミクは、快感と満足感を味わい始める。  
こういうのを母性というのだろうか…。  
 
「ミク、さっきはごめん。乱暴な言葉をミクに言っちゃった…。」  
「ううん、いいの。  
荒々しいケン様も素敵ですわ。  
明日も、ミクをめちゃくちゃにしてくれれば、うれしいです。  
でも、たぶん明日は、ケン様、とってもお疲れになってると思いますわ。」  
「そんなこと無いよ。明日も元気にミクと…」  
「ええ、きっと元気にミクと愛し合いましょうね。」  
「うん、みく、おやすみなさい…」  
「おやすみなさいませ、マスター。」  
 
鎮静作用のミクミルクで、勃起が治まり、ケンは静かに寝息を立て始めた。  
ミクの判断は、適切だった。  
 
”人間の身体は、化学物質に対する抵抗力がとても弱いんだわ。  
成分を調整して安全性を高めたマイミルクでも、これほどの興奮作用があるんだもの。  
もし、あの電脳世界であんな歌を聞き続けていたら…普通の人は…廃人になってしまうかも。  
あんなものが、人間の幸せに役立つはずがないわ!  
あれは、エリミネートしないといけないものなんだわ。”  
 
ミクの脳裏に、忘れかけていた使命感のようなものが浮かぶ。  
しかし、それは、ミクに意識されることなく、そのまま消えていった。  
今のミクの幸せは、マスターとともに生きること。  
それだけなのだから。  
 
「ケン様?今晩は、たくさんのおくすり、ごちそうさまでした。  
もっともっと飲みたかったけど、続きは、また、明日お願いします。」  
 
ミクは、乳首から離れたケンの唇に自らの唇を重ねる。  
ケンの寝顔を間近で見つめることの幸せと自分だけがケンに愛されていることの喜びを感じた。  
ケンの頭を太股と臀部に乗せ、寒くないように身体に毛布を掛ける。  
ミクは、座位のまま、壁により掛かり、逆さまなケンの寝顔を見つめ続けた。  
タイムリミットまであと、39秒…。  
 
「ありがとうございます。  
貴方のおかげで、ミクは、安心して眠れますわ。  
オヤスミナサイ。」  
 
ミクも休眠モードとなり、自ら瞳を閉じる。  
液晶偏光ガラスの窓から、太陽の光が差し込み、二人に朝を告げていた。  
(続く)  
 

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