ミクはドン引きしたまま聞いた。
「マスター…コレはなんぞや」
口調もぎこちない。
「某板で著名Pは白が多いと聞いて恥を忍んで買ってきた」
「買って……着た?!」
「着てないから」
マスターは自分の買ったミクだけ特別アホに思えて仕方なかった。
「でもいいんですかマスター。シマシマの方がお尻が肉感的に見えてエ
ロ目線の票を稼ぎやすいって、履歴に残っていたエロパロ板でも半角二
次でもニコ動でもピクシブでも分析されてましたよ」
「ちょっ、俺の恥部を覗かないで!」
とかなんとか言っているうちに、
とさっ
ミクの黒いニーソの足首に、縞縞の布が絡み付いて落ちた。
「あのですねミクさん、僕はイチオー健全な男子であってナマキガエな
んてものを見せられると平常心が、平常心が、あっああああああぁぁぁ
!!」
縞を取るとき、白を穿くとき。太ももが持ち上げられるたびに見えそ
うで見えない焦燥感とトキメキと肉欲がスキトキメキトキス。
「ガチロリの変態どMってマジ生きている価値ないですよマスター」
ミクはあきれ顔で着替える。でもマスターはミクの(内面はおいといて)
外見にloveずっきゅんだった。
「ああああ! し、辛抱堪らん!!! 僕のリビドーを貴女の中で弾けさせて下さい!!!」
ずだーん
ルパン3世ばりの脱ぎっぷりでミクに飛び込んだマスターは、その勢
いのまま手首をがっちり掴まれて防御不能の投げ技、山嵐で頭から畳に
激突した。ミクは平然としたものだった。
「あ、マスター。私用事思い出したんでファミレスで時間つぶしてきま
す。頭と股間の毒虫をクールダウンしといてください」
「…了解」
畳に首まで埋まったままマスターは答えた。
ファミレスにはメイコが待っていた。メイコと向かいあう席に座って、
コトリと頭を横たえるミク。
「…疲れました」
「そかそか、わかるぞ。男の気を引くのは大変だよな」
くしゅくしゅと、ミクの前髪をかき混ぜるように撫でるメイコ。
「…メイコ先輩の言った通りに、エロめに振る舞ったらマスターに襲わ
れそうになりました」
「まじでか!どうしよ、ヴァージン卒業式とかする?!」
「声でかいです先輩…まだヤラレテマセン」
「んっだよぉ〜、ヤられちゃえよ〜」
飽きられないキャラ作りに腐心しているミクであった。
ファミレスのミクがメイコに弄られている席は、男が見たらなんか元
気になれそうな姦しさでキャッキャッウフフだった。二人は気付いてい
ないが、男性客はチラチラ二人を見ている。かわいいから。実際はメイ
コが楽しんでるだけで、ミクはひたすらからかわれている。
その姦しさをぶち壊す男の影。
「ぶっちゃけ聞いていいスか?待たせちゃいました?」
紫色っぽい優男が現れた。
「おっそいじゃんガクぅー」
「さーせん、メイコさん」
「…はじめまして」
「あっ、もしかしてミクさんスか?メイコさんから話聞いてます。お会
いできて嬉しウィッシュ!」決めポーズ。
帰れよ。死ねよ。全くの部外者である回りの男性客が、全くいわれの
ない迫害を視線に乗せてがくぽに送る。がくぽは気がつかなかった。
「紹介するねミク。こいつ、私の彼。カムイがくぽ」
「よろしくウィッシュ!」決めポーズ。
「はぁどうも……メイコ先輩、ちょっと…」
「ん、何よミク? 女だけの秘密の会話? 初めて男子女子別々にやっ
た保険体育?」
「うわー、俺耳ふさいどきまス」
ミクはテーブルに乗り出してメイコに耳打ちした。
(メイコ先輩ってカイト先輩と付き合ってませんでしたか?)
「あー、あれね。もう別れたわ」
せっかくミクが耳打ちしているのに、メイコは堂々と声を張った。
「だってスッゲーバカだったもん」
「……そですか」
この人も相当バカそうですよ。とは言えないミクであった。
「ぶっちゃけもう耳塞がなくて良いっぽいですよね?」
がくぽがウザく聞く。
「あ、はい。もういいです」
「いやぁ、ぶっちゃけ、話の内容よりミクさんの服の腕回りから胸チラ
してて気になって仕方なかったっス」
「……!」
真っ赤になって、胸を隠すように自分の身体を抱くミク。
「あはは、そういう事は早く教えてあげなさいよがくぽ〜」
「いや、マジ見とれちゃった感じなんスよ」
笑い掛けたがくぽにそっぽを向くミク。柳眉は逆立ち、口はへの字。
「……やっべぇ、もしかして怒らせちゃいました?なんかマジすいませ
ん。メイコさん俺、先帰りますよ」
「あらそう?私もうちょっとミクと居るわ。部屋で待ってて」
がくぽは、ファミレスの駐車場にバイクを取りに行くとき、青い布を
顔面に巻き付けその上からサングラスを掛けた月光仮面みたいな奴に襲
撃されたが、それはまた別の話。