畳敷きの居間、その中心に据えられた座卓に向かって三人が座ってい
る。
一方にカイト、対面の位置にがくぽ、その隣りにミクである。
カイトは微妙な表情。がくぽの目はキラキラ。ミクはモジモジ。
「お初にお目にかかりまする…小生、姓は神威、名はがくぽと発します
る。つきまして、貴殿の妹君たるミク殿との懇ろな付合を承諾願おうと
馳参じた次第」
ビシッと決まった正座のまま、仰々しい日本語を使うがくぽ。
たじろぐカイト。
ミクはがくぽの横でモジモジと、のの字を畳にぐりぐり。顔は赤い。
「カイ兄、聞いてのとおりなんだけど……問題ない、よね…?」
「えーと、半角丸括弧セミコロン全角中黒オメガ中黒半角丸括弧」
「は?カイト殿、失礼ながら明瞭に聞き取りざりけるが」
「……ごめんなさい、がくぽさん。カイ兄は動揺すると口頭で顔文字使
っちゃうの……今からカイ兄が顔文字使ったら私、顔文字にして見せま
すから」
ミクは袖のコンソールをポチポチと押して、ディスプレイに表示され
たものをがくぽに見せた。
『(;・ω・)』
「……」
眉根を寄せてミクの袖ディスプレイを睨むがくぽ。
「カイト殿……少々困惑しておられるようなれど、小生は是非ミク殿と
御付合申し上げたい所存である。本当に真剣な想いである故、どうかお
赦し願えませぬか?」
「いや、その……半角丸括弧ハイフンアンダーバーハイフンセミコロン半角丸括弧」
『(-_-;)』
「そこをなんとか!」
「にしこり」
『にしこり』
「わ、わからん!意味が把握できかねまするぞカイト殿!」
「ぷ。」
『ぷ。』
「えっなにコレ?ボーリング?なんで今のタイミングでボーリング?!
ちょっ、カイト殿!どうかまじめに…」
「……小文字ディー半角丸括弧キャップハイフンキャップ丸括弧」
『d(^-^)』
「あっ…!よ、良いんでありまするか?!やった!なんか頑張ったかいが有り申し…」
「小文字キュー半角丸括弧キャップハイフンキャップ丸括弧」
『q(^-^)』
「どっちだ!どっちなんだ貴様!!斬り捨てられたいのか!!!!」
そのときミクが割り込んだ。
「がくぽさん酷い!カイト兄さんを斬るだなんて!そんな乱暴な人だと
思わなかった!」
たじろぐがくぽ。
「い、いや、だってカイト殿が……」
「言い訳なんて聞きたくない!帰って!帰ってよ!!」
がくぽは二度と顔文字を使わなくなったそうな。