野郎達は「『バナナイス』でおっさんホイホイ歌うぞゴルァ!」
という、マスターの思いつきの一声で呼び出されている。
おそらく、この週末は帰ってこないだろう。
「こらー、ミクー、キャミとパンツでうろついちゃダメでしょー」
「おねーちゃんと露出度変わんないよー。襟詰まって袖重いんだよ、たまにはいいじゃん」
「いやいや、眼福ですぞーーお姉さま方。もう脱いじゃえ脱いじゃえー」
ダラダラ加減ここに極まれり。女子校的ノリとでも言うべきか。
リビングのラグの上で腹ばいになって頭悪そうなファッション誌を広げながら、
スナック菓子を食べている妹二人。
「うん、これならネギ味もありかもね『焦がしネギ醤油味』」
小皿に分けて、ソファで酒のつまみにしている長女。
「やーん、なにこれー。すっげー普通の事しか書いてないんですけどー!」
「あー、ホントだー。何これ。男性雑誌的HOW TO SEXじゃーないですかー」
「綺麗になるってなんぞこれー。女性ホルモンがドバー、ですかー?」
キャハハハハハ。馬鹿笑いが響き渡る。
「ったく、あんた達は何読んでんのよ」
思わず上からMEIKOはその雑誌を取り上げる。
「……!」
その表情が曇る。
こりゃ、怒鳴られるなと顔を見合う二人。
「……これ……普通って、どこまで本当なの?」
「な?何言ってるのお姉ちゃん?」
「え?KAITO兄ぃとヤっちゃってんじゃないの!?」
「…っていうか…」
更にトーンの落ちた声でMEIKOは続けた。
「私は不感症なのかしら……」
怒鳴られる所の騒ぎじゃない。とんでもない地雷を踏んだらしい。
しかも、かなりの量を呑んでいる様だ。真昼間なのに。
「やっぱり初代だから?エンジンが違うから?感じ方も違うの!?」
「ちょ!お姉ちゃん!!落ち着いて!!」
「だって!だってちっとも気持ち良いって思えないんだもん!!
挿れられて動かれて出されるだけで!!」
情けない。なんて情けないんだ、あの甲斐性無しめ。怒りの炎が立ち上る。
「ふえーーーーん!」
「お姉ちゃん、いい子いい子、泣かない泣かない」
「そんなの男のせいだって!お姉ちゃんのせいじゃないって!」
『いやー可愛いですのぅ』
『いやー堪りませんのぅ』
『ヤっちゃいますか!』
『ヤっちゃいましょう!』
インカム越しに電波を飛ばし意思の疎通。無論MEIKOには聴こえない。
「そんなお姉ちゃんの不安を解消するために!リンちゃんが一肌脱ぎましょー!!」
「私も脱いじゃうーー!!」
女三人寄れば姦しい。まさに字の如く。
「ゴルァアアア!ちゃんとハモれ!ちょいそこモタついてる!」
ピロリロピロリロ♪
「ありゃ、ミクからメールじゃん」
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マスターへ。
曲作りお疲れ様です。順調に進んでいますか?
んー、忙しい時に言うのもアレなんですが、お願いがあります。
MEIKOお姉ちゃんがすごく悩んでて可愛、いや可哀想だったから。
そんなわけでメールを送ったんです。
ぶっちゃけKAITOお兄ちゃん、女の子わかってないよ!!
わからせてあげてください。テク無し!早すぎ!勘違い!
いや、まぁどっちもどっちというか。
初めて同士じゃその辺は多分仕方ないのかもしれないけれど。
あ、お姉ちゃんはリンと二人で開発しておきました。
ちゃんとイケるようになったよ!自信は付いたと思う!
あとはお兄ちゃんが何とかなればおk!
それじゃ、レコーディングと課外授業、頑張ってくださいv
添付ファイル:画像1.jpg
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「おいおい、裸で川の字ですか。娘さん達は楽しそうだねぇー」
充血した目で遠くを見つめるマスター。
「ちょっと休もっか。あ、がくぽとレンは今送ったデータ、見といてー」
データ認識中。主はミクのメールをそのまま転送したのだ。画像付きで。
「……え、マジ?」
「これは…ちょっとアレでござるな……」
カチカチッ。数値を入力して決定。
『ジェンダーマジックで女の子になぁれ♪』
ミョミョミョミョミョミョキラリラリーンピコピコピコピコ
「うわ、効果音までつけて、マスターノリノリだ」
「VSTiの無駄遣いでござるな」
そこにはお馴染みのKAIKOの姿が。
「あれ?あれ?マスター、今日はKAIKOの出番じゃないはずじゃ?!」
「うーん、何というかねー。要請がございましてね。
女の子のキモチを身をもってわかっていただきたく思いまして。
って言うか、お前に拒否権は無い!!がくぽ、レン!ヤっておしまい!!」
「とは言われても、操は立てたいと言うべきか…」
「元を知ってるから勃つものも勃たないと言うか…」
「気持ちは判らんでもないがなぁ。まぁミクとリンのお願いだからさー」
渋々KAIKOを押さえ込む二人。
「じゃ、手だけって言うことで」
「うぬ、それが限界だな」
「え!何?手だけって加●鷹?AVの見すぎなんじゃないの!?」
はぁーーーーー。三人分ため息が漏れる。
「あーもうーじゃあーバナナも使いますよ!」
「ぬ。ならばナスもでござるな!」
「それもいやぁああああああああああ!!」
KAIKOの甲高い声が響き渡る。
「大丈夫、KAITO。お前はやれば出来る子ってマスターよく知ってるから……
ちゃんと可能性を伸ばしてあげるのがマスターの役目。頑張って、KAITO!」
「いい笑顔で言わないで下さいーーーーーーー!!いやぁあああああああ!!!」
こうして週末の夜は更けていったのだった。