ミクが生き物を拾ってきた。
今までも犬一匹、猫二匹、亀四匹、金魚15匹、鳩一羽を何処からと
もなく我が家に招き入れていたミク。
野鳥保護法を厳然と説きなんとか放逐させられたのは鳩だけで、残り
は皆我が家に逗留中。六畳のアパートの現実は麻痺。目下床面積圧迫中。
そのうち象の背中に乗って帰ってくるんじゃないかとヒヤヒヤしてい
た矢先、これまでで最大級の拾い物をミクはしでかしてくれた。
「ただいま、マスター」
「ん、お帰りミク。何処行ってたの?」
「ネオンきらめく繁華街」
「またえらくデンジャラスな現代の闇に切り込んだものだね」
ミクは纏わりつく犬猫を蹴飛ばさん勢いで急に“しな”をつくって擦
り寄ってくる。
「マスター、仕事お疲れ様。肩凝ったでしょ?お揉み致しましょうか?
それとも下の剛直を素直なシナ竹にまで揉みほぐしましょうか?」
「どうしたんだいミク、そんな犬を拾ってきたのび太くんを彷彿とさせ
る新妻装って」
チッ
舌打ちと共に、肩に乗せられていたミクのしなやかな指先が穏やかじ
ゃない握力で僕の肩の筋肉の隙間を突撃リポート。
指は五本揃っていてもまさしく今の僕はムンク。
「み、ミク!痛い痛い痛いギブギブウイリアムギブスン!ニューロマン
サー!」
「じゃあペット飼っても良い?」
上目使いのかわいいミク。やってることは怖いぃ拷問。
「わかんない、わかんないけどサイズ如何で考えないこともないって。
だから取りあえず北斗真拳並みに第一関節あたりまで肩口の肉に突き刺
さったその指を抜こうか退けようか。退けろよ!クリプトン訴えるぞ!」
「そうだね、見て判断してもらう。じゃ、こっちきてマスター」
僕の肩から指を抜いたミクはティッシュで指先の血液を拭っていた。
だのに肩を見ると傷跡一つ無かったよ。さっすが北斗真拳。ソコに痺れ
るアコガレイ。
「ホラ見てコレ!この子!」
玄関のドアの影に居るらしい。なんか横に長いな。はっはーん、ワニ
だな。
「僕わかっちゃったよミク。残念だけどそれは特定外来種だから許可証
がないと不許可なんだよ」
「え〜嘘だー。絶対日本産だよー」
ずるー
っとミクが引き摺って来てドアの前に現れたのは、明らかに酔潰れて
路上で寝ちゃいました系のOLさんでした。って、うえっちょっ、ま…
「ば、馬鹿野郎ー!何拾って来てんだよ!!今すぐ元の場所に返して来
い!!そんなもん家で飼えるかぁぁぁ!!」
「え〜!サイズ如何で考えるっていったじゃん!蹲ってるときめっちゃ
ちいちゃくなってたんだよ〜!」
「馬鹿か?!馬鹿なのか此所のスタッフ(?)は!少しは考えて行動しろ
よミク!多少PCの動作重くなっても我慢するから!!起きる前に戻し
てこいって!」
「やーだー!この子飼って二匹目のマスターにするのー!」
「おま、俺もペット扱いだったんかーーーー!!!!」
OLさんを無事前後不覚のままリリース出来たのかはまた別の話。