「止まってる!?」
「何やら事故があったそうだ。明日の朝まで動かないらしい。」
「今から明日の朝まで待つのかよ!」
「えぇーーー!?絶対無理っ!!」
仕事で、俺とリンとミク姉と神威さんの4人で地方に来て。
いざ帰ろうとしたら、新幹線が止まっちまったらしい。
しかも明日の朝まで動かないとか。うわー、マジかよ。
とりあえず、神威さんが、一足先に帰っていたマスターに電話をかける。
そして、傍らでリンがケータイでなにやら調べる。
「ちょ、何してんの?」
「どっかさー、泊まるとこ無いか調べてんの。
だってさー、駅に泊まるとか、やだもん!」
そっか。相変わらず気が利くってゆーか、仕事速えーな。
「なんかさー、安いとこだともう結構埋まっちゃってるっぽいよ?
あと、シングルだとほぼ全滅っぽい。」
グーグル先生に聞いた結果をリンが言う。
それを聞いて。俺はちょっと、あることを思いついた。
「なーリン?ちょっといーこと考えたんだけど。」
なんだかんだで結局、ホテルに泊まることになった。
駅から通路で繋がった大きなタワーの中の、けっこういいホテル。
しかもホテル代はマスター持ちらしい。
「あたし達がきいてくるー!」
とりあえず、ミク姉と神威さんにはロビーで待っててもらい、
リンと俺とで、フロントに向かって、部屋を取る。
上手いこと、隣同士の二人部屋がふたつ取れたので、
4人でエレベーターに乗って、部屋のある階まで移動した。
「よかったねえ。ちゃんとお部屋があって。」
「ねー!」
「主に感謝だな。こんないいホテルに泊まらせて貰えて。」
「なあ見ろよ、夜景マジキレイ!すげー!」
滅多に無いホテル泊まりと、
あと、これからのことを考えて、テンションが上がる俺。
手に持つ鍵をぶんぶん振り回したり、なんだか妙に饒舌になったり。
そして部屋の前に到着した。
「はい、これミク姉達の部屋の鍵。」
俺は、二つ持ってた鍵のうち、一方をミク姉に渡す。そして。
「じゃあね、ミク姉、がっくん!また明日!」
「ごゆっくり〜。」
ニヤニヤして、ふたりに手を振る俺。
「ちょっっ…。」
「お、おいっ、待ちなさ…。」
戸惑う二人を置き去りにして。
俺はもう一方の鍵で部屋を開け、リンと一緒に入っていった。
そしてバタンとドアを閉める。
計画は大成功。
リンが、部屋にひとつしかない大きなベッドの上に座り、
足をぶらぶらさせながらこう言った。
「やったね、レン。」
とりあえず俺も、リンの隣に座る。
「実は、あたしもアヤしいと思ってたんだー、あのふたり。」
「だろー?いー作戦だよな?」
「レンてば、やるーぅ。ね、どーなるかなあ?」
「ミク姉、オクテっぽいからなー。
神威さん、意外と何もできなくて悶々としてんじゃね?」
「きゃはは、やだー!でもそれ言えてるー!!」
ケラケラと笑うリン。俺はそんなリンににじりより、そして耳元で囁く。
「なー、リン。」
「ん?」
「俺たちは俺たちで、さ。」
「!!……うん。」
リンの耳が赤くなったのが分かった。
リンと、初めてエッチしたのは結構前で。
それから、事あるごとにヤッちゃってるわけなんだけど。
なかなかこう、うちにはいっつも他の家族が居るし、
公然と、落ち着いて二人きりになれる機会なんてそうそう無くって。
だから、ぶっちゃけ、今回の件も、
ミク姉と神威さんのことをダシにしたってわけで。
俺は、いつものようにリンの服を脱がしにかかった。
そしてリンも、いつものように俺の服を脱がしにかかる。
いつも、気付かれないように、びくびくしながらヤッてるから。
リンもいつもの癖で、声を上げないよう、口に手を当てている。
でも、今日は。今日くらいは。リンの声が聞きたい。
「口、塞ぐなよ。」
「だってぇ……、となりに、聞こえちゃうよう……。」
「大丈夫だって。部屋、こんな広いんだし、聞こえねえよ。」
こう言って、リンの口に当てられた手をどかす。
リンは、遮るのが無くなって、あっ、あっ、と甲高い声を漏らす。
ずっと聞きたかった、リンのあえぎ声。やっべえ。すっげえ可愛い。
「やあ……っ!…いくっ!いっちゃう!」
「あぁ、俺も、もう……っ!」
そうして、俺は思い切り、リンの中に全てをぶちまけた。
リンの後始末をしてやり、俺の後始末もして。
布団に横になってまどろんでると、隣の部屋からなんか聞こえてきた。
あれこれ、ミク姉の声?
なんか痛がってるみたいなんだけど。
ていうか、アレですよ。
姉が隣の部屋で処女喪失中ですよ奥さん。
いや、自分でけしかけたとはいえ。うっわーーーー。
…………ていうか。壁、薄くね?
そう思っていると、隣で寝ていたリンに、枕で殴られた。
「何だリン、殴んな!」
「『殴んな』じゃないよっ!
なによバカレン!丸ぎこえじゃない!!どーすんのよ!!!」
真っ赤で涙目のリンに、枕でぼふぼふと殴られる。
「あーもう、どうしよう……。
明日、がっくんとミク姉にどんな顔して会えばいいの……?」
「いーじゃん、向こうもヤッてんだから。お互い様じゃね?」
俺がそう言うと。こんどはグーで殴られた。………すげえ痛かった。
次の日、帰りの新幹線の中がめちゃめちゃ気まずかったのは、言うまでもない。