残暑厳しき折、如何お過ごしでしょうか。僕は相変わらず青いマフラーです。夏乗り切  
った…!  
 時節の挨拶とかどうでもいいよね。  
 やぁどうも。僕は卑怯とアイスとメイコと妹をこよなく愛すナイスガイ。カイトだよ。  
 僕がキッチンで徳用2リットル入りのアイスを貪っていると、視界の端にブリーチした  
茶髪のような色が素早く移動したんだ。わかるよね?そう、Gだ。コックローチくんだ。  
 別段虫嫌いでない僕は、アイスをかたずけたのち、そのGを二枚重ねたキッチンペーパ  
ーで華麗にキャッチした。  
 Gって摘んで腹側から見ると結構カッコいい。けど、家じゃあ飼ってやれないんだ。ご  
めんよ。  
 嫁(メイコ)に見られぬうちにGを処分するため、トイレに向かう。下水直行ウォータ  
ースライダー。  
『カイトー?シャンプー取ってー』  
 バスルーム前を通過するとき、浴室のリバーブが効いたメイコの声に呼び止められた。  
 そういやシャンプー切れてたかもしんない。  
 Gで右手がふさがってるから、左手で姿見の鏡の扉を開ける。在ったあった、詰め替え  
用。  
 浴室の扉を拳ひとつ分くらい開け、詰め替え用を滑り込ませる。  
『ありがと。覗いてかないの?なんならソーププレイする?今身体洗ってたからアワアワ  
で見た目エロいよ』  
 大胆な嫁ですいません。  
「風呂は身体を磨くとこ。僕は原石よりも磨かれた宝石を見ていたいの。舞台裏を覗くよ  
うな野暮は致しますん」  
『語尾があやふやですぜダンナ』  
 ちょっと夫婦漫才を繰り広げ、愉快な気分のままバスルームを離れようとした瞬間、  
「…あれ?」  
 気付いた。キッチンペーパーに感触がない。あるのはただ、黄色い油の染みだけ。  
 Gちゃんが右手に居ない。  
『いやぁぁぁーーーー!!ごきぶりーーー!!」  
 ……どうやらGくんはソーププレイに乗り気だったようで。  
 悲鳴に掛かったリバーブは半ばで途切れ、浴室から飛び出したメイコは泡塗れの身体で  
僕に飛び付いた。全裸で。  
 良い身体してるなぁ…ほんと、どこ触ってもヤワラカいよ。濡れた髪が細かい束になっ  
て頬に幾筋が張り付いてるのがまた色っぽい…おしりはマロいし…泡がまたエロいし…泡  
?  
 ちょっ、泡自重!  
「離れて!ボディソープが付く!服が!服が痛むから!マフラーごわごわになるから!」  
「無理!そんな服とかいいからゴキブリを!早く!早くどうにかして!カイト!」  
 そんな服って……!  
 メイコの言葉にちょい傷つきながらてんやわんやしていると、  
「なになに?ゴキブリ?どこにいんのー」  
 弟分のレンきゅんがキンチョールを持って登場。  
 地球防衛軍とメンインブラックとスターシップトルーパーズはG狩りを楽しい遊びに昇  
華したと僕は思うわけです。  
 
「え、ちょ、なんで裸──」  
──ずだーん!  
 宮崎アニメのキャラみたいに髪を逆立ててリアクションしかけていたレンに流れる様な  
動作で払い腰。  
「お前にはまだ早い!薄目でモザイク透視してなさい!」  
 メイコは僕の嫁だっ。馬鹿野郎。  
 フローリングにしたたか叩き付けたからしばらく動かないだろう。  
「なんかスゴイ音したよ〜?大丈夫?」  
「ゴキブリどこー?」  
 ああメンドクサイ。ミクとリンまで出て来た。  
「気にするな。メイコの裸をつまみ食いしようとしたヤカラを退治しただけだよ」  
「ふーん」ネギを囓りながらミク。  
「ほぉ〜」キンチョールとライターを携えてリン。……なんでニヤニヤしてんの?  
「ミク姉、邪魔しちゃ悪いから行こう」  
「へ?」  
「ほら、メイコ姉の下の……」  
「……きゃ!マニアックだ!」  
「マニアックだね!」  
 ミクとリンは勝手に相談して納得して部屋に引っ込んでしまった。  
 一体なにがマニアックだって──はっ。  
 マニアックと言われた所以が発覚。  
「カイト!早くゴキブリ何とかしてよ!」  
「ゴキブリよりさ……メイコのそこ、どうしちゃったの」  
 指差して、まだ動転しているメイコに問う。  
「へ?」  
 メイコが、僕の指が指示する、メイコ自身の身体に視線を落とす。  
「あっ」  
 今気付いたらしいメイコ。  
 メイコのインモーがほとんど全部剃り落とされていた。  
「えと……ゴキブリ入ってきたとき、ムダ毛処理してて」  
 今更タオルで身体を隠すメイコ。遅いです。  
 
 
───────  
 
 
 居間にて。  
「あれってテイモープレーだよね?ね?」  
「うん、間違いない。絶対そう」  
 ミクリンは勝手に誤解して楽しんでいる模様。  
「ヤラシーよね〜」  
「ヤラシーヤラシー!」  
 二人がキャッキャッしていると、  
「うう、全身が痛い……」  
 レンが居間にやってきた。  
「……ね、リン。テイモーって、男の子にやっても楽しそうじゃない?」  
 ミクは意味深な含み笑いでリンに話しかけた。  
「あ、楽しそうかも!剃刀ないけどライターならあるよ!」  
 レン危うし。  
 
 
FIN  
 

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