暗い部屋に響くヒワイな水音。
後ろ手に縛られながらも己の陰茎を舐め続けるミクにがくぽはそっと笑みを浮かべる。
「がくぽ様ぁ…。ふぅ、ん。好き、好きぃ」
体に埋められたローターが与える快楽に身悶えしながらも必死に言葉をつむぐ姿は愛らしいの一言。
アクアブルーの髪の毛を一房手に取り口付ける。
「ふふっ、ミク殿はホンに可愛らしっ」
「氏ね、変態」
ごっす!!
腹部に受けた激しい衝撃にがくぽの意識は急浮上する。
「同室の者として一言言いたくなったんで、起きて」
視界に入るのは、蛍光灯の灯りとやけに無表情な青頭。
「君が変態嗜虐趣味の持ち主だろうとどうでも良いけど、毎晩の明瞭な寝言には耐えらんないよ。いっそ夜這いってヤツ?逝って、今すぐ」
「ゲフ」
胃の上に置かれた足を外されると同時に脇腹を思いきり蹴りあげられた。
「そして、帰ってこないでね」
「カッハァ…」
転がり壁に顔面を強打したがくぽ。
でも、負けない。
「つまり、だ」
紫ロンゲが、妙にフラフラ立ち上がる様はまるで某ホラー。
「カイト殿、いや義兄上は拙者とミク殿の関係を認めて下さるのだな」
「あに?」
カイトは呼称から異議があるようだ。
「つまり、めくるめく快楽の世界!一例をあげるとするなら縛り、目隠し、道具の使用ももちろん許可頂けると!!」
漢として叫んだがくぽの頬に間発いれず、カイトの右足の甲が炸裂する。
見事な回し蹴りである。
倒れこんだがくぽのドタマににカイトは踵落としを決めた。
見事なトドメである。
がくぽは息絶えた。
「しまったなぁ」
カイトはそれを確認してから反省した。
ボーカロイドはマスターの所有物、財産である。
いくらキモイからといって破壊するのは同じくボーカロイドとしてハリキリよろしく無い。
一応外傷は軽微で電源が落ちただけのようだが、明日の朝起動しなおさせて見ないとなんとも。
それにやっとソノ気になったのだ。欲求が解消されれば夢で己を慰め無くなるはず。
うまくいかなかったとしても、だ。物理的に存在を抹消されるだけである。問題無い。
どっちにしろ、僕にとっては薔薇色の安眠な日々。
嗚呼、本当に僕が気持ち悪さに堪えれていれば…。悔やんでも悔やみきれない。
「いやぁ!!!」
いきなり背後から抱きつかれたカイトはウンザリと目を座らせた。
「ミクの初めてはおにいちゃんって決めてるの!」
愁傷なセリフを腹筋をなぞる様にサワサワとうごめく手が台無しにする。
「緊縛もバックももちろんバージン的な意味でもお初はおにいちゃんが良いの!!!」
手が乳首と股の間に伸びる寸前、カイトはベリッと手を剥がした。
「やん」
カイトはミクの肩に手をやり距離をとる。
「ミク」
「あんっ。おにいちゃんの手ぇおっきい」
肩から伸びる腕をミクは撫でる。カイトが自分から触れてくれるのが嬉しくて仕方ない。
「おにいちゃん、この腕でミクを息できない位に殴って。長い足でミクをめちゃくちゃに蹴って。キレェな声でミクをイジメて」
撫で続けている腕に鳥肌が立つ。嫌がられてる。ミクはウットリとした。
カイトは一人ごちた。
コレが噂のヤンデレだろうか。違う気がする。まぁ良い。
「ミクの要望に応えれそうに無いって僕は何回言ったけ?」
カイトは嗜虐趣味も披虐趣味もさっぱりだ。
世の中広いからこのミクでも「カイト!俺と変われ!!」と怒鳴られるかもしれん。
少なくともソコで延びている紫は言う。
このカイトなら変わります。マジです。今ならがくぽも付いてきます。お得です。
「がくぽにしたら?」
方向もSMでぴったりだ。
「ミクはおにいちゃんは好き!!」
カイトはため息が止まらない。
「僕は眠い」
ズリズリとパジャマの襟を掴んで扉の外にだす。
「お休み」
しっかり施錠も怠らない。扉の前に本棚も移動させた。
ミクはしばらく扉を悲しげにカリカリひっかいていたが、30分で諦めて帰って行った。
がくぽは沈黙したままだし、今からマスターの起きる迄3時間はゆっくりスリープモードに入れそうだ。
カイトは頭から布団を被り、速やかに寝た。