暗い部屋に響くヒワイな水音。  
後ろ手に縛られながらも己の陰茎を舐め続けるミクにがくぽはそっと笑みを浮かべる。  
「がくぽ様ぁ…。ふぅ、ん。好き、好きぃ」  
体に埋められたローターが与える快楽に身悶えしながらも必死に言葉をつむぐ姿はがくぽを愉快にさせる。  
アクアブルーの髪の毛を一房手に取り口付ける。  
「ふふっ、ミク殿はホンに可愛らしっ」  
「氏ね、変態」  
 
ごっす!!  
 
腹部に受けた激しい衝撃にがくぽの意識は急浮上する。  
「おねがい、しんで」  
視界に入るのは蛍光灯の灯りとやけに無表情な青頭。  
「君の変態嗜虐趣味の持ち主だろうとどうでも良いけど」  
「グフッ」  
胃の上にジャスト置かれた足をグリグリされる。  
「だけど、毎晩の妄想夢及びヤケに明瞭な寝言には耐えらんない」  
「ウグゥ」  
体重をおもいっきりかけられる。  
「うざくてキモイんだよ」  
「ゲフ」  
足を外されると同時に脇腹を思いきり蹴りあげられた。  
「夢見るのでさえ35世紀ほど早い、腐れ茄子」  
「カッハァ…」  
転がり壁に顔面を強打したがくぽにカイトはにっこりと擬音をたてて微笑んだ。  
酷い言い草である。  
でも、この程度の攻撃がくぽは負けない。変態だか、いや武士(もののふ)だから。  
「つまり、だ」  
紫ロンゲが、妙にフラフラ立ち上がる様はまるで落ち武者。  
「カイト殿、いや義兄上を倒せば、拙者とミク殿の関係を認めて下さるのだな」  
「あに?」  
カイトは呼称から異議があるようだ。  
つか、どうしてそうなる?がくぽは止まらない。  
「つまり、めくるめく快楽の世界!一例をあげるとするなら縛り、目隠し、道具の使用ももちろん許可頂けると!!」  
漢として叫んだがくぽの頬に間発いれず、兄カイトの右足の甲が炸裂する。  
見事な回し蹴りである。  
倒れこんだがくぽのドタマににカイトは踵落としを決めた。  
見事なトドメである。  
がくぽは息絶えた。  
 
「しまったなぁ」  
やり過ぎた。  
カイトはそれを確認してから反省した。  
ボーカロイドはマスターの所有物、財産である。  
いくらキモイからといって破壊するのは同じくボーカロイドとしてハリキリよろしく無い。  
一応外傷は軽微で電源が落ちただけのようだが、明日の朝起動しなおさせて見な  
いとなんとも言えない。  
コンコンっ。  
フイにノックの音が響いた。  
「おにいちゃん」  
ミクである。  
「どうしたの?」  
「おっきい音して…どうしたのかなって?起きちゃったの」  
大きな瞳を眠そうに擦りながら、カイトの寝巻きの裾をヒシッと掴む。  
夜中の異音が怖かったらしい。  
可愛いな…、カイトはソッと笑った。  
「おにいちゃん?」  
「んっ?ごめんな、うるさかったよな」  
「ん〜」  
甘えたにカイトにしがみついて頭をスリスリするミクの頭をゆっくりと撫でる。  
こんな可愛いミクをあの変態の餌食にはしない。そう再度意思を固めながら。  
「おにいちゃん」  
「何?」  
「がくぽまた床で寝てるのね」  
お布団かけてあげなきゃ、と白眼を剥いているがくぽてとてと近付こうとするミクをカイトは慌てて止めた。  
「ミク、それは危険物だ。近寄っちゃ駄目だよ」  
「でも…」  
「ミクは良い子だな。眠れないならお茶をいれてあげる」  
おいで、と差し出された手をコクリと頷きとる。  
その姿はあまりに絵になって…。頑張れ、がくぽ!!この壁を越えて行くんだ!!!  
 

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