「ねー、がっくん見て見て!」
新しい水着買ったから早速見せびらかしたくて、家の中だけどつい着ちゃった。がっくんに1番に見せたかったってのもあるけど。
振り向いたがっくんは少し目を瞠って、動かなくなっちゃった。
「どうしたの?大丈夫?」
心配になったあたしは膝の上に乗って体を揺すぶってみる。
「ふっ」
「ふ?」
「ふしだらであるっ!」
がっくんは、顔を赤らめてそう言った。ふしだらって、嫌らしいって意味だよね?
「だって、海で着るんだから普通の服じゃびしょびしょになって気持ち悪いでしょ?」
「それでも、おなごがこのように肌を出すなど言語道断!」
ひどい…そんな事言われるなんて思ってもみなかった。いっつもみたいに似合うって言ってくれると思ったのに。
「がっくんの馬鹿!嫌い!もう知らない!」
悔しくて涙が溢れてくる。ホルターネックの可愛いビキニで、一目ぼれして買ったやつなのに。折角嬉しかったのに。
「がっくんに可愛いって言ってもらえると思ってたのに!」
あたしはがっくんを突き飛ばすようにして立ち上がって、自分の部屋に戻った。
鍵を掛けて、もう今日は誰も入れないって心に決める。
一緒に海とか行きたかったのに。その日は水着に合わせて買ったパーカーとかビーサンとか合わせて、とか色々想像してたのに。
波打ち際で水掛けあったりとか、ベタだけど、そんなのもしたかったのに。
目茶苦茶可愛かったはずの水着を脱ぎ捨てて、そのままベッドに突っ伏す。涙はいつまでたっても止まりそうになかった。
夕飯時になって、メイコ姉がドアをノックしたけど、あたしは食欲がないって答えてベッドから動かなかった。
お腹はすいてたけど、何もいらなかった。
でも、さすがに素っ裸じゃ駄目だなって気付いて、うすい素材のワンピースを頭からかぶる。
部屋の中は真っ暗だったけど、電気をつける気にはならなかった。
ミク姉やお兄ちゃん、レンが代わる代わるどうかしたのかって聞きにきたけど、あたしはドアも開けずに大丈夫って答えるだけだった。
がっくんはリンが心配じゃないのかな…
そう考えるとまた泣けてきた。顔がひどい事になってるだろうなって考えたけど、鏡も見たくない。
泣き疲れたのか、寝てしまったみたいだ。目を覚まして時計を見ると深夜1時。
メイコ姉が、もう寝るけど、ご飯は冷蔵庫に入れておくからって言いにきてくれたのがぼんやり頭に残ってる。ほんとはすごぉーく食べたかったけど、みんなが寝てからにしようって思った。
30分位して、さすがにもう誰も起きてないだろうと予想して、部屋を出た。
そっとドアを開けて覗いた限り、どこにも電気は点いてなかった。まず、ずっと行きたかったトイレに向かう。
冷蔵庫には、冷めてもおいしそうなご飯が入ってた。みんなと一緒に食べたらもっとおいしかっただろうな、とか、また泣きそうになる。
誰か起こしたら嫌だし、がつがつ食べて、さっさと後片付けをした。歯磨きをして、逃げるように部屋に戻った。
部屋に戻ってすぐに、誰かの部屋のドアが開く音が聞こえた。セーフ。1人呟いて床にへたり込む。
すると、小さなノックの音。思わずビクっとして音を立ててしまう。アウト…心の中で訂正を入れる。
「リン、自分だ。入れてくれないか」
でも、多分、やっぱり、心の中でずっと待ってたんだと思う。だって、その声を聞いてホッとしたから。
鍵を開ける前に部屋の灯りを点ける。床に投げ出していた水着をお店の袋に戻した。
「…どうぞ」
部屋の中に招き入れると、がっくんはいきなりあたしを抱き締めてきた。
「すまなかった。自分はこの時代の文化に疎いゆえ、リンを傷付けてしまった」
「…リン、がっくんと海に行きたかったの」
「すまない」
「可愛いって言ってほしかったの」
「…もう1度着てみせてくれないか?」
「……後ろ向いててくれる?」
「ああ、勿論だとも」
「いいって言うまで振り向いちゃ駄目だよ」
緊張して、着替えにもたもたしてしまう。着替え終わったら、鏡に映して変じゃないか確かめる。あ、目は腫れてないや、良かった。
「いい、よ」
振り向いたがっくんに近寄ろうとすると、手で制される。
や、やっぱり駄目なのかな…ついしょぼくれてしまうと、それに気付いたのかがっくんは慌てた声を出す。
「いや、その、綺麗だ。だが、自分には少々刺激が強すぎるゆえ、また先刻のような非道な振る舞いをしてしまうやもしれぬ」
ああそうだ。がっくんが、こんな風にいつもにもまして昔っぽい喋り方になる時は、照れてるんだ。それで、あたしはそんながっくんを見るとついついからかいたくなっちゃって…
ぎゅっと抱きついてみる。
「リン、離れないか」
「い・や・だ」
「離れないとどうなっても知らんぞ」
「がっくんがリンにひどい事する訳ないもん」
じっと目を見つめてたら、体が宙に浮いた。
「ひゃっ」
ベッドに降ろされて、真上にはがっくんの真剣な顔。これは、押し倒されてるんだよね。
「こういう事だ。分かったら」
なんかすごくムカついて、あたしはがっくんの首を抱き寄せてキスしてた。開いてる口の中に舌を滑り込ませてやる。
分かったら何だって言うの。そんな事であたしが怖がるなんて思わせたくなかった。がっくんにだったら、全然嫌じゃないし、子供扱いされてるみたいで悔しい。それに、あたし、今すごくドキドキしてて、その感じは悪くないって思う。
舌は入れた事あったけど、今日は、がっくんがいつもと違う。なんか、乱暴っていうか、激しい。上顎の裏を舐められて、今まで感じた事ないような快感が走る。思わず、鼻にかかったような声が出てしまう。
何、今の。恥ずかしくて顔が熱くなる。あ、駄目だ、恥ずかしいって思ったら余計気持ち良くなってきた。
声が我慢出来ない。しかも、舐められてる所だけじゃなくて足の間までむずむずする。
頭がぐるぐるになってると、いつの間にか唇は離れてて、目を開けたらがっくんの顔が申し訳なさそうにしてた。
「すまない。つい、夢中になってしまった」
起き上がろうとする腕を掴む。このまま放っていくなんて許さない。
「リン、体がむずむずする…がっくんのせいなんだから、何とかして」
「痛い思いをさせるかもしれん」
「いいよ、がっくんの好きなようにしてくれて」
ちらっとその目の中に迷いが走ったのをあたしは見逃さなかった。でも、すぐに覚悟を決めたような強い眼差しになる。
「言い訳がましいかもしれんが、リン、愛してる」
「知ってるよ、そんなの」
嬉しかったけど、なんか照れくさくてわざと素っ気なく返してみる。枕元のリモコンで部屋を暗くする。
「リン、電気を点けさせてくれないか」
「駄目っ!やだよ恥ずかしいもん」
「しかし、こう暗いと何も見えぬだろう?」
そう言われればそうだ。悔しいけど。
「じゃあ、1番暗いのなら」
再びリモコンを操作すると、部屋がオレンジの光に包まれる。
「あのね、する前に、ちょっとだけ抱っこして?」
「ちょっとと言わず、いくらでも」
体を起こして、広げてくれた腕の間に入った。抱き締められて、心も体も暖かくなる。
でも、ふと体の下に何か固いものがあるのに気付く。えーっと、これは、きっと、あれなんだよね。
「んっ」
がっくんの手が脇腹を撫でてきて、くすぐったいようなむず痒いような感じに襲われる。漏れそうになる声を抑えようと力が入ってしまう。
「リン、聞かせてくれ」
「恥ずかしいよ、あんな声」
仕方ないな、って呟いたから、諦めるのかと思いきや。脇腹をなぞる手は止めないまま、唇を合わせてくる。
舌先で口中かき回されて、我慢も出来なくなる。声が直接届いてしまうって考えると、余計に気持ち良くなってきちゃって。
唇が離れたと思ったら、太腿にじれったいような指の感触。
「あっ!」
つい口を塞ぐと、なんだかすごく色っぽく笑う顔と目が合った。
「それはそれで、可愛らしい」
何を言ったらいいのか分からなる位、格好良くて。
迷ってるうちに少し上を向かされ、首筋を舐め上げられる。あ、これ、すごい気持ち良い。体中に快感が広がる感じ。
「もっとして」
「気持ち良いのか?」
「うん」
答えながら、息が浅くなるのを感じてた。息と一緒に甘い声が零れてしまう。これが喘ぐってやつなのかな。
首筋をなぞり上げた舌が耳たぶを舐めて、唇で弄んで、甘噛みをする。
気持ち良い。たまにびくんってなる位気持ち良い場所があって、がっくんが、ここか?とか言いながら繰り返す。
恥ずかしいから何も言えなくて、でももっとしてって思っちゃう。
首の方に気を取られてたら、ビキニの中に入り込んでた指が乳首を撫でる。
「ぁっ!」
電流が走ったみたいに体が震える。指で弄ばれて、びくんびくんってなる。
「ぁ、だめっ、やだぁ」
「痛いのか?」
「ちがっ、でも、っ」
「そんなに甘い声で言われると、もっと、と聞こえる」
耳元に囁かれて、もう体中わけが分からない位快感だらけになる。
背中を探っていた指が、ビキニのフックを解放する。いつの間にか首の後ろの紐も解かれていたらしく、ビキニが落ちた。
再び押し倒されて、急に無防備さを実感する。思わず隠してしまうと、やんわりとどかされる。
舌や唇がいっぺんに触れてきて、電流が更に強くなった。目が快感で閉じそうになる。
「ぁ、だめ、へんに、なっちゃうっ」
「変などではない。可愛い」
「や、みないでぇ」
顔を手で覆うと、手をどかされてキスが降ってくる。じわっと目が熱くなる。
「今夜のリンを全て覚えておきたい」
「可愛いとこしか見せたくないよ。変なの。今日のリンすごく変なの」
「それが愛おしい」
流れた涙を掬う指の動きさえ気持ち良くて吐息が零れる。
「リンの事嫌いにならないでね」
「なるわけなかろう」
それでも何か手の行き場が欲しくなって、がっくんの浴衣を握りしめる。
「これでは身動きが取れないだろう。仕方がないな」そう言うとささっと浴衣を脱いでしまった。
「これ、ぎゅーってしてていい?」
「好きなように使うが良い」
がっくんのいい匂い。息をするたびにそれが香って、なんだか安心する。
「ぁ」
内腿を舐められて、快感がぶり返す。舌は、足の付け根の近くまで行くと、焦らすようにそこばかり舐め続ける。もう片方の脚は、上下に指でなぞってるのに。
リンが触って欲しいのはもっと先だって分かってるに違いない。
「がっくん」
「どうかしたのか?」
「もっと上、触って」
言うと、すぐに指がそこに触れる。
「リン、こんなに濡らしていたのか」
そう言いながら円を描くように触ってくる。布の上からでも気持ち良さに体が震える。
「言わないでぇ」
「恥じらう姿を見ていると、更にいじめたくなるのだぞ」
水着の下半分も取り去られて、閉じようとした脚はあえなく阻止される。指がそっと敏感な所をなぞって、悲鳴めいた声が漏れる。指が優しく何度も行き来して、じわっとまた溢れるのが分かる。
「なんか、熱いよ、」
「すぐに良くなる」
良くなるもなにも、気持ち良くて仕方ないのに。あ、そんなに触っちゃ駄目。良く分からないけど、何か大変な事になる気がする。
「がっくん、だめ、やだ、いやっ、あっ、あぁっー」
頭が真っ白になる位気持ち良いのが襲ってきて、内側が痙攣みたいになってる。これがイクって事?
なんだか、ひどく消耗した気がしてぐったりしていると、指が中に入ってきた。まだびくびくしてるのに色んな風に探られて、きゅっとなる。
「そんなに締めると指でもきついのだがな」
「あ、そんな、言われたって」
「力を抜いてみろ。そうそう、上手だ」
するりともう1本指が入ってくる。
「ん、変な感じ…」
2本をばらばらに動かされて、また翻弄される。
「リン、いいか?」
あ、とうとうこの時が。こくりと頷く。がっくんがパンツを脱ぐと、覆い被さってきた。
「力を抜いていろ」
声にならなくてこくこくと首を振る事しか出来なかった。途端、下半身が裂けた。
「いたぁぁぁい!」
「少し我慢してくれ」
そう言ってぎゅっと手を握ってくれる。けど、痛いものは痛いんだもん。涙が耳に流れて、気持ち悪い。小刻みに入ってくる度に痛みが増幅していく。
「いたい、いたいよがっくん」
「すまない」
全部入ったらしく、がっくんの動きが止まる。握っていた手を放して、リンを丸ごと抱き締めてくる。
「痛くなくなるまでこうしているから」
しばらくそうしてると、少しだけ痛みが和らいで、涙が止まって、頭にも少し余裕が出てきた。
「気持ち良い?」
「ああ」
「そっか、なら良いの」
「リン、愛している」
「リンもがっくん好きだよ」
そう答えると、ぎゅっとされる力が強くなった気がした。
「ね、もう動いていいよ」
「痛くないのか?」
「痛いけどこうしてたらずっと痛いもん」
「申し訳ない」
「謝る事じゃないよ。リンの事はまた今度気持ち良くしてね」
よしよしって撫でてあげると、がっくんは可愛い顔になる。うー、このギャップは卑怯…
「了解した」
がっくんはお返しとばかりにあたしの頭を撫でる。
「なるべく早く終わらせる。首に掴まってくれ」
「うん」
がっくんが動き出すと、再びズキズキと痛み出す。痛さでぎゅっと体に力が入る。
でも、あたしは顔をしかめながらも、がっくんが気持ち良さそうな顔をしてるのを眺めて、気分は悪くなかった。痛いけど。だけど、泣いたら気にするだろうし我慢しなきゃ。
あ、がっくんのこんな、なんかこう、たまらないって感じの表情ってレアかも。
「リン…!」
整った顔を歪めてがっくんはそう呼ぶと、動かなくなった。
その後、シーツと水着を洗わなくちゃいけなかったり、だからリンの部屋では寝られなかった。
でも、がっくんが夜中ずっと抱き締めててくれて、こんなのも悪くないなぁなんて。
以上。
以下おまけ。というかがくぽは何故パンツ派なのかという解釈。
「ところで、がっくんパンツ派だったんだね」
「ふんどしだと羽織の下が着れんだろう」
「そっか。でもふんどしよりパンツの方がリンは好きだから良かった」
「リンがそう言うてくれるならふんどしを諦めた甲斐もあろう」