ああ…何でリン、あの時かくれんぼの鬼になっちゃったんだろう…  
リンが茶室に隠れていたら、みんな幸せだったのに…  
 
 
 
「はじめまして。ガチャッポイドです。[がちゃ]って呼んで下さい。よろしくお願いします。」  
やほー、リンだよーっ!  
やっとリンより年下のボカロが、リン達のパソコンに来たんだ〜!もう嬉しくて嬉しくて。嬉しいのはレンも同様。  
年下の特権を譲る事になっちゃうのはちょっと残念だけど、それよりやっとリン達お姉ちゃん&お兄ちゃんの  
立場になったんだもん。しっかりしなきゃっ!  
 
がちゃ君が来てしばらくするとインターネット組の屋敷に変化があった。がく兄が離れに茶室を作ったの。  
がく兄曰く「我ら日本語VOCALOIDも祖国の文化をしっかりと理解しなければ。」だって。  
それにはリン達も大賛成 …だけど、それはがく兄の建前だったのを後に知る事になるw  
 
今日は二人揃って久々のオフ。リン達はインターネット組の屋敷へ向かった。理由は勿論、遊ぶ為だ。  
「グミ姉〜、がちゃく〜ん、遊ぼ〜」  
玄関から声をかけると、グミ姉とがちゃ君が奥からやって来た。  
「リンちゃんレン君いらっしゃい。」  
「リンねぇちゃん、レンにぃちゃん遊ぼ〜」  
ああん、がちゃ君可愛いよぉ。リン思わずがちゃ君を抱きしめちゃう。  
「くっ、苦しいよぉリンねぇちゃん…」  
それを半ば呆れ顔で見ながらレン。あーあ、がちゃ君がリンの弟だったらなぁ…  
そういやがくぽさんいないな…どうしたのかな?  
「グミさん、がくぽさんは?」  
同じ事を考えていたのか、レンはグミ姉に聞き出した。  
「兄さんはレコに行ったけど。確か今回はミクちゃんとデュエットだった筈よ。」  
その言葉にリンはレンと一緒に「あー」と納得してしまった。  
何故ならミク姉は今日しっかりとお化粧をして超浮かれモードで、バレリーナの様に舞いながら出て行ったのだ。  
わかりやすいよミク姉。  
「何?ミクちゃん浮かれてた?」  
グミ姉がにた〜っと笑顔で聞いてくる。  
「そのとーり。察し早いねグミさん。」  
レンが溜息混じりに返すとグミ姉は中指を立てて  
「まーかせて!」  
と決め台詞。鋭いというか、リン達もそんなにわかりやすいのかな?  
「それより早く遊ぼうよっ!」  
がちゃ君に急かされ、リン達は家に入った。  
 
最近リン達はアナログなゲームにハマっている。特にトランプやUNOといったカードゲーム。プログラムから  
生まれたリン達にとって結構斬新に見える物なのだ。  
一時間くらいUNOをやった後、敷地内限定かくれんぼをする事になった。インターネット組が住む古民家の  
間取りは、リン達が住んでいる家とは全然違うから面白そうっ、と思ったらリンが鬼…まぁ仕方ないか。  
「リンねぇちゃんが鬼ー。玄関で数えてねー。」  
可愛く言うがちゃ君。それとは反比例する様に  
「リン、ズルするなよ。」  
釘を刺すレン。あー可愛くない。  
「わかってるよ、数えるよー。いーち、にーぃ…」  
数え出すと皆一目散に離れてゆく。リンは考えた…絶対誰かは離れの茶室へ隠れるwあそこには小さな押し入れ  
みたいのがあって、横になって膝を曲げればグミ姉でも何とか入れるのだ。数え終わったら直行だ!  
「…きゅーぅ、じゅー。探すよー。」  
リンは早速玄関を出て離れの茶室へ向かうと、ミク姉とがく兄の姿が見えた。レコが終わったみたい。  
二人共リンには気づいてないみたい。幸せそうに腕を組んで仲良く茶室へ入ってしまった。  
ありゃりゃ。もし誰か茶室に隠れていたら面白…いやいや、確かに面白いけど二人の邪魔になっちゃあ悪いし…  
仕方ない、茶室に誰もいない事を願いますか。  
 
「レンみーっけ!」  
リンは母屋へ戻り、廊下奥にある納戸の中に潜んでいたレンを発見した。  
「ちぇっ、見つかったか。」  
「次はレンが鬼ねー。」  
リンは次に隠れていそうなところ…部屋に入って掘り炬燵の中を調べる。いたいた、可愛いあいつ。  
「がちゃ君みーっけ!」  
「あーあ、見つかっちゃった。」  
もそもそと炬燵から出てくるがちゃ君…うぅっ可愛いよぉ。レンじゃあこうはいかない。  
「レンにぃちゃん、こたつ譲ってくれてありがとう。」  
そう言いながらがちゃ君はレンに抱き着いた。  
「いいんだ。がちゃが風邪ひいたら大変だからね。」  
どうやらレンはがちゃ君に隠れる場所を譲ったみたい。レンもやるじゃん。  
さて、残りはグミ姉だけど…あ。リンは気づいた。  
グミ姉が離れの茶室に隠れているんじゃ…さっきミク姉とがく兄が入ったから、出るに出られないよね?  
ちょっと面白…いやいや、やっぱりミク姉達に声をかければよかったかなぁ…時既に遅しだけど。  
 
「ねぇレン、グミ姉って…」  
リンはレンに尋ねた。だけどレンは  
「何だよ、グミさんの居場所は教えないぞ。」  
…やっぱり可愛くない。言い方を変えなきゃ。  
「がちゃ君、ちょっとゴメンねっ。」  
リンはがちゃ君の返事を聞かないでレンを廊下へ連れ出す。  
「何すんだy(ry」  
「さっき離れの茶室へ行こうとしたら、がく兄とミク姉が入っていっちゃったんだけどさぁ…」  
リンが告った途端、レンがジト目で10秒フリーズした。ビンゴか。リンと同じ事を考えていたみたい。  
「ヤバいなそれ。実は茶室へ隠れるの、取り合いになってさ…ジャンケンでグミさんが勝って…」  
あいわかった。これはリンが確認するべき。ピュアながちゃ君を巻き込みたくないから。  
リンは思わず敬礼する。  
「レン、リンが確認してくるから、がちゃ君をよろしく頼むよ。」  
するとレンもリンに敬礼した。  
「リン、了解した。ここのボカロチーム、最後の砦であるピュアながちゃ君を穢したくないもんな。」  
やっぱりレンはリンの良き心強い片割れだ。レンにがちゃ君を託し、リンは離れの茶室へ向かった。  
茶室へ足音を忍ばせ近付き、聴覚を最大限にして茶室内を伺った。がく兄とミク姉の声が聞こえる。  
「あっ…あふっ、がくぽ…さぁん…」  
「ミク殿…」  
うん。バッチリお取り込み中。そしてリンは茶室が造られた本当の理由がなんとなくわかった。  
(なんちゅう羨まけs(ry違う違うw…グミ姉、(好奇心的な意味で)代わってあげたいけど…ごめん。)  
そう心の中でグミ姉に謝りながらリンは静かに撤退し、レン達の所へ戻った。  
 
レン達の所へ戻ると、何も知らないがちゃ君が走りよって来て  
「リンねぇちゃん〜、みんなでグミねぇちゃん探そうよぉ。グミねぇちゃんは何処に隠れてるんだろ?」  
と言いながら、無垢な瞳をクリクリさせた。  
ああ…がちゃ君、そんな無垢な瞳で攻めないで。無垢な瞳がこんなに痛い物だったなんて…「グミねぇちゃんは  
遠い所へ行ったんだよ」なんて言えないし。  
レンに視線を運んで首を振ると、レンは溜息をついた。さて、がちゃ君にどう説明しようかと考えていると  
レンはがちゃ君にこう言った。  
「がちゃ、俺達お腹空いたからさぁ、一緒にうちに来てお菓子食べない?」  
 
その言葉にがちゃ君の無垢な瞳が輝いた。  
「うん、行く!」  
レンGJ。やっぱりレンはリンの良き心強い片割れだ。  
グミ姉、非力なリン達を許して下さい。リン達はがちゃ君を守るのが精一杯です。どうか耐えて下さい。  
本当は(好奇心的な意味で)代わってあげたいけど…ごめん。大事な事なのd(ry  
そう祈りながらリン達はインターネット組の屋敷を後にした。  
 
自宅にがちゃ君を連れてきておやつを食べ終えた頃、グミ姉がうなだれてやってきた。  
「あっ、グミねぇちゃん、何処に隠れていたの?」  
無垢過ぎるがちゃ君の台詞に応えないまま、グミ姉はそのままソファーへ腰掛けた。  
「はぁぁ…」  
グミ姉の重い溜息が室内に響く。何があったのかリン的には無性にkwsk!!何だけど、流石にがちゃ君の  
目の前では聞けない。でも無性にk(ry  
「…グミさん、心中お察します。」  
似た様な経験があるレンが(レンのドキドキ☆部屋チェック参照)グミ姉にコーヒーを煎れて差し出すと、グミ姉は  
熱いのにも関わらず一気飲み。そして  
「兄さんサイテー…」  
と言葉を漏らして顔を上げた。その顔はリン達が退く程、人相悪かった。  
そんな空気が凍るリビングに  
「ただいまーっ!…ってみんなどうしたの?」  
お肌ツヤテカ幸せオーラを振り撒きながらミク姉が華麗に参上。余りにも差が歴然過ぎる。  
そして暫くの間…グミ姉はリン達の家、クリプトン組の家に泊まった。プチ家出である。  
がく兄とミク姉…一体ナニしたんだろ?  
 
 
 
ああ…何でリン、あの時、かくれんぼの鬼になっちゃったんだろう。  
リンが茶室に隠れていたら、みんな幸せだったのに…  
 
 

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