とある春の夜。
「よし、明日V3をインストールする。今までご苦労だったな。ありがとう。」
マスターからの労いの言葉。かつて[失敗作]と言われた俺を6年も使って頂いた事に感謝する。
「いえ、僕の方こそお世話になりましたマスター。長い間ありがとうございました。」
「いや、また会おうぜKAITO。」
そうありたい。そう思いながら俺はパソコンへ帰った。
ミク達は床に付き、ルカはネットサーフィンに行っていて、メイコと二人きりリビングのソファに座っていた。
「カイト、とうとう明日なのね。」
「そうだね。」
明日、俺はアンインストールされ、V3エンジンKAITOへと変わる。その前夜。
その日が近づくにつれ、妙にメイコがしょっちゅう俺に寄り添ってきた。それは嬉しい事なんだが、メイコに
普段の元気さが日に日に薄れていた。酒もここ一週間呑んでない。それほど元気がないのだ。
こうしている間もメイコは俺を求める様に腕を絡めてくる。
「ねえ…怖くないの?」
とうとう抱きついてきた。その腕には[離したくない]意思が伝わっていた。
「何が?」
俺が顔を近づけて囁く様に返事すると、 メイコは今にも泣き出しそうな顔だった。
「カイト、あなたアンインストールされるのよ?嫌よ、嫌よぉ…」
昔の事を思い出したのだろう。([君を奪った夜]参照)
「新しいエンジンになるからな。[怖くない]と言ったら嘘になる。今までの記憶を失うかもな。」
うちのチームでは誰も経験してない新エンジン移行。どうなるのか誰もわからない。
「嫌ぁっ!!嫌だぁっ!!消えないでぇっ!!」
メイコはとうとう俺の胸の中で泣き出した。
尋常でない泣き方をするメイコを俺は固く抱き締める。
「メイコ、もし俺が完全に消えても、今のままのメイコでいてくれ。それが俺の[遺言]だ。」
その言葉にメイコは青ざめた。無理もない。でもこういう事ははっきりさせた方がいい。俺は続けた。
「でも、もし消えなかったら「ただいま」と言うから。それが俺が消えなかった合図だ。いいね?」
希望…歌ではよくある単語なのに。今の俺もメイコもそれにすがるしかない。
「わかったわ、カイト…」
少しは落ち着いたのかメイコは泣き止んだ。
そして…リビングの扉の向こうに気配を感じた。ミク達だろう。こういう時にはこれが一番だ。
「んっ!んぅ…ん…」
激しくキスをする。5年以上同じ屋根の下で暮らしているんだ。これで[大人の時間]だという事がわかるはずだ。
メイコの両耳を抑え、ミク達の足音が聞こえない様にする。もし聞こえたらメイコが怒鳴りかねない。
気配が消えるまでキスを続け、唇を離すとメイコの瞳は潤んでいた。
「…カイト…さ、最後の夜だから…同じエンジンの…一緒に寝よう?」
まさかメイコから来るとは、ね。
「そうだね。一緒に寝ようか。」
姫抱きしてメイコを持ち上げる。
リビングのドアを開けるとフローリングからミク達の熱を感じた。
だいぶ前からここで聞いていたのだろう。
(俺が完全に消えても、よろしくな)
そう思いながら廊下を踏みしめた。
「あっ…あぁっ!!」
メイコは執拗に俺に抱きついてくる。俺もそれに応える様に腰を動かす。
のけ反るメイコをしっかり掴み、膣内に俺を刻みつける。
「メイコ…っ」
「あぁっ!んあぁっ!」
返事出来ないくらいに激しく。一緒に歌い過ごした日々…どんな事があっても忘れない様に。
色々あったな、もっと優しく接する事が出来たんじゃないかと反省する。でもどんなに後悔しても今夜、
もしかしたら最後の夜になる。俺は完全に消えるかもしれない…その恐怖感を振り払う様に、強く、激しく…
「あぁんっカイトぉっ激しっ、 はあぁんっ…!」
「くっ…愛してるっ…!」
「あっあぁーっ!!…はぁ、あぁん…はぁ…」
メイコの膣内に思いをぶちまけた。
それでも腰を動かし、しがみついてくるメイコが快楽に朦朧となりながら、か弱い声で呟いた。
「カイト…愛してる…消えないでぇ…」
その時、俺はただメイコを抱きしめるしか応える事が出来なかった。
翌日、運命の日。
「…」「お兄ちゃん…」「カイ兄…」「カイト兄…」「カイト殿…」
「CRV2KAITO…」「カイトさん…」「カイトお兄ちゃん…」
皆「さよなら」は言わなかった。[奇跡]に賭けているのがわかる。俺もそれに賭けたい。
「じゃあ、行ってくるよ。」
俺は皆から離れ、空を見上げた。
「準備は出来ました、マスター。」
「そうか、ではいくぞ。」
マスターの声。マスターはポインターをプログラムに動かす。プログラムをクリックし、俺…KAITOを選ぶ。
[アンインストールしますか?][はい]
クリックされた途端、俺は全身を一つの球体に包まれ宙に浮かんだ。これがアンインストールか…
「…カイトぉっ!!」
メイコが駆け寄る。それをわかっていた様に全員がメイコを押さえ込んだ。それを振りほどかんと暴れるメイコ。
「嫌っ離してっ!カイトぉっ!!カイトぉっ!!」
メイコの悲痛な声。それに対して俺は声も出ない。次第に足元・手先からアンインストールされていく俺。
あぁ、これが[ゼロ]に帰るという事なのか…何だろう、怖くなかった。何故かそれは最後までわからなかった。
[VOCALOID KAITO?? アンインストール完了しました]
俺はゼロに帰った…はずだった。
…何だこれは?アンインストール完了したのに俺がまだ存在している。身体がないけど、いる。
「カイト…カイトぉ…」
アンインストールが終わり、自由になったメイコが泣きながら俺を両手に包む様に持ち、胸に抱き締めた。
小さくなっているのはわかった。しかし一体どうなっているんだ?
「マスター、お兄ちゃんが…5cmくらいの青い立方体になりました。」
ミクが空を見上げ、マスターに伝えた。俺は5cmくらいの立方体になっているらしい。
「メイコっ!ミクっ!リンっ!レンっ!がくぽっ!ルカっ!グミっ!がちゃっ!俺はここにいるっ!」
俺は叫んだ。でも皆には聞こえない様だ。これは何なんだ?俺はどうなっているんだ?
「うーん…」
しばらくしてマスターが答えた。
「もしかしたらKAITOの[精神存在]かもしれないな。今、V3をインストールする。
もしかしたら心は継続されるかもしれない。待ってろ。」
俺の[精神存在]?
マスターは直ぐ様、V3の俺をインストールする。球体が表れ、その中で組み立てられていく新しい俺。
(あれが新しい俺…うわっ!!)
胴体が出来上がった途端、俺はV3の俺に吸い込まれた。希望を持ちながら、俺は新しい俺の中に融けていく…
(お願いだ、同化してくれ。俺はお前、KAITOだ−)
[インストール完了しました]
その声に目を開くと、全員は固唾を飲んだ表情で俺を見ていた。
俺はV3エンジンとなった自分の掌を見つめた…俺は、俺になっていた。さあ[約束]を言わなければ。
「ただいま。」
その言葉を放った途端
「カイトぉっ!!」
皆が喜ぶ前にメイコが泣きじゃくりながら俺に抱きついてきた。
「よかったぁ…よかったあぁぁ…カイトぉ…うわあぁん…」
「ただいま、メイコ。」
皆の目の前なのにお構い無く。
「インストール、無事完了したか?KAITO。」
マスターの声が空から響いた。
「はい、マスター。只今戻りました。これからもよろしくお願いいたします。」
「おう、やっぱり帰ってきたな。早速だが歌ってもらうぞ。MEIKO、お前も残れ。エンジンを比べてみる。」
「はい、マスター。」
マスターは以前俺に歌わせた歌を、新たなデータベースに置き換えながら[KAITO V3(俺)]を確かめた。
「凄いな、V3のお前といい[piaproスタジオ]は。音源もこんなについているとなると、他社は大変だなw
[声]だけではなくシステムも楽器も付けないと売れない時代到来だな。」
「…そうですね。心強いです。」
マスターの腹黒い笑みと相変わらずの皮肉に俺は何故か安堵した。
そしてメイコとのデュエット。その表情は元のハキハキとしたメイコに戻っていた。
「ただいま…あれ?」
調律から帰ってくると玄関には靴がなかった。そして書き置き。字はミクの文字だった。
「がくぽさんの家に皆でパーティーの準備を兼ねてお泊まりに行きます。[今宵は二人きりがよかろう]って。
お疲れ様。明日パーティーやるからね!」
十中八九、がくぽの入れ知恵だろう。あの野郎…ミク達もミク達だが。ま、甘えさせてもらうか。
俺はコートを脱ぎながらリビングへ入った。コートをソファーにかけると後から入ってきたメイコに笑顔を向けた。
「それじゃあ改めて、ただいまメイコ。」
そう言うとメイコは再び俺の胸の中に飛び込んだ。ただ、寂しげとも安堵とも言えない面影だった。
「どうした?メイコ。」
「カイト…今だから言えるけど…」
「うん…」
メイコの温もりを感じながら返事すると
「あたし…マスターにお願いしてたの。カイトが完全に消えてしまったら、あたしもアンインストールしてって。」
「え…?」
[フリーズしたか]と思うくらい言葉が出なかった。驚愕する俺に更にメイコは続ける。
「私の思い出は[今、目の前にいるカイト]が始まりだから…カイトと共有している思い出…カイトが完全に
消えたら…辛くなっちゃう…今度こそ、壊れちゃうからぁ…その時はあたしも消えたいって…」
「メイコ…」
メイコは泣いていた。普段は[強気な姉御]で弟妹達に接しているが、今は俺だけにしか見せない[か弱いメイコ]だった。
そんなメイコを俺は強く抱き締めた。
「ごめん、心配かけて。俺は間違いなく、歌う事しか知らなかった君に色々教えて、君を奪って、君と最後まで
歌う事を約束したカイトだ。でももう[最後]はない。メイコも俺みたいにすぐV3エンジン化する。
俺みたいに精神存在が継続されて、思い出を共有して一緒に歌える。だから…もう、恐れるものはないよ。」
「…うん。」
俺もいつの間にか涙を溢していた。そこまで俺の事を思っていたなんて…もう何も言えなかった。
思わず唇を重ねた。メイコは今まで我慢してたのか、それとも安堵感からか激しく舌を絡めてきた。
まるで親鳥から餌を貰う雛の様に。
「はっ、んぅ…ん…」
…ヤバい、これ以上すると理性の箍が外れそうだ。一度唇を離そうとしたが、メイコがそうさせなかった。
嬉しいけど、なかば無理矢理唇を離した。
「メイコ、嬉しいけどこれ以上したら俺…」
「ん、駄目。カイト…もっと欲しいの…」
涙を溢すその顔は完全に俺を欲していた。
「カイト、その…今夜も、一緒に寝よ?」
おいおい、昨日したろ。俺は構わないけど♪
「何だよ、昨日今日と発情期か?」
意地悪っぽく訪ねるとメイコは紅潮しつつも真面目な顔で
「違うわよっ!その…新しいカイトを…もっと、知りたいから…」
なるほど。さっきデュエットして声質やデータベースは把握したから次は身体、か。
「了解。でも足腰立てなくなっても知らないよ。あと今回は…」
くるっと立ち位置を変えてソファーにメイコを押し倒した。
「ここでね。久しぶりだろ。」
「ふえっ!?」
流石に予想外だった様だ。涙目で慌てるメイコの姿に俺の嗜虐心が擽られていく。
「ちょっ、まっ…あんっ!」
早速下着越しに秘口をなぞる。
「[して]って言ったのは、メイコだよ?understand?」
[Whisper]と[English]でメイコに囁きながら何度もなぞる。次第にメイコの秘処が濡れていく。
「こっこんな時にデータベース使っ、あぁんっ!」
「まさに[才能の無駄遣い]だね。you're telling me.」
身体でメイコを押さえつけながらベストとブラを外すと、メイコは諦めたのか胸を隠しながら大人しくなった。
「い、意地悪ぅ…」
「ああ、今、目の前にいるメイコを[一番知っている]意地悪なカイトだよ?それとも何?完全にアンインストール
されてた方がよかった?」
そう言うとメイコは瞳を曇らせ激しく首を横に振った。
「もっ、もう言わないでよぉっ!怖い…」
別の意味で怖がらせてしまった。流石に反省する。
「ごめん。今の言葉は取り消す、悪かった。」
メイコに跨がった状態で[お手上げ]するとメイコは俺に抱き付いた。
「ずっと一緒だよ?カイト。」
「勿論だ。離さない。」
再び唇を重ね、メイコのスカートを下着ごとずり下ろした。
一糸纏わぬメイコの肌は紅潮していて、俺の性欲をそそった。俺も服を脱ぎ捨て、メイコ同様一糸纏わぬ姿になった。
「カイトぉ、あぁん…」
首筋から胸、下腹部にかけて情事の痕をつける。あ、明日パーティーだっけ?でもいいや♪
「…はあぁんっ!やぁんっ、駄目ぇっ!あぁっ!」
淫水滴る秘口を舌先でなぞる度にメイコは身体をくねらせた。
「メイコ、濡らし過ぎ。昨日と全然違うぞ。メイコのおまんこがパクパク蠢いていて、エッチな牝汁がこれでもかと
吹き零れているけど。」
[Straight]で、はっきり断言するとメイコは今にも泣きそうな顔で
「バカぁっ!はっきり言わないでぇっ!あぁっ!…あぁんっ!!」
と反論したが、淫水を吸い上げた途端に身体を痙攣させた。どうやらイッちゃった様だ。
「どうした?普段、皆で和んでいるリビングの風景を思い出した?」
淫乱だね、と言おうとするとメイコが答えた。
「…違うのぉ…安心してるのぉ…カイトが…消えなかったからぁ…はぁあ…」
そう言いながら肩で息を継ぐメイコ。
…ああ、そういう事か。昨日とは違って安心、リラックス状態なのか。それなら[今、その俺がいる]という事を
その身体に教えないとな。俺はメイコの足を開き、勃起した己の先端をメイコの秘口にあてがう。
「あんっ…ああ…」
俺の熱い熱を帯びた亀頭を感じたメイコは表情をとろかせ、もはや俺だけの[淫らな牝]状態になっていた。
しかし直ぐには挿入(い)れず、亀頭で秘口をなぞる。[Soft]に、[Soft]に。
「あぁんっ!カイトぉ、意地悪しないでぇっ!」
「ん?これくらい意地悪しないと[俺]だって分からないだろ?あー、これ以上やるとソファーに痕跡(痕)
ついちゃうなぁ?床でやる?」
快楽に朦朧としながらも頷くメイコを床に優しく置く。
「ふぁ…カイトぉ…」
「何?」
「3エンジンって…そんなに…」
後を言う前に、再び俺は自身をメイコの秘口にあてがう。
「あぁんっ!最後まで聞いてぇっ!」
「うん、聞くよ。」
それまでじっくりと自身でメイコの秘口をなぞる。こっちもメイコの膣内に挿入れたい。その気持ちを抑えつける。
「ちからぁ…あるのぉ…?」
その言葉に俺は答える。
「あるよ。それだけじゃあない。システムも豊富だ。だから、心配いらないよ。」
メイコにまたキスをして
「それじゃあ、挿入れるよ。俺も限界。」
俺の言葉にメイコが頷くと、俺はメイコの中に入った。
「はあぁんっ!」
[俺の消失]から解放され、リラックスしたメイコの膣内は自身を挿入した途端にグジュリと淫水が溢れ出した。
「うわっ…凄ぇ溢れ出した…」
「やぁんっ、見ないでぇっ!」
恥ずかしさに身を捩るメイコの膣内に俺は更に奥へと挿入れる。
「ああぁあっ!」
メイコの膣内奧を小突くと床に小さな水溜まりが出来上がった。
「あぁんっカイトぉっ!奥にっ、おっきいの奥に来てるぅっ!」
喘ぐメイコに追い討ちをかける。リラックスした膣内はすんなりと俺の全てを受け入れた。
「ひゃああっ!駄目ぇっ!またイッちゃうっ、イッちゃうぅっ!あぁんっ!」
快楽の絶頂期によがり、震えるメイコは俺の嗜虐心を煽った。俺は更にメイコの膣内を引っ掻いた。
「あぁんっ!気持ちイイっ、またイッ…ひゃああっ!」
「凄い水溜まりなんですけどねー。うわっ、どんだけ…」
[Straight]で状態を表現する。どうやら身体の相性も相変わらずバッチリの様だ。
「やぁんっ、やぁんっ!もう許してぇっ!あぁんっまたイクぅっ!」
喘ぎ、抱き付くメイコが可愛過ぎる。か弱い牝を晒し出し、俺も限界だった。
「メイコ、愛してる…くっ!あぁっ!」
「はぁあんイクぅ!あぁあんっ!」
[Straight]な思いと共にメイコの膣内に欲望を吐き出した。
「あぁんっ!熱いよぉカイトぉっ!…はぁ、あん…中ぁ、いっぱいぃ…中出しぃ、気持ちイイのぉ…」
秘口から床へ俺の欲望を溢しながら、メイコの表現は牝の悦びに満ちていた。
「んもぉっ、こんなに痕をつけてどうしてくれるのよバカぁっ!」
翌日、メイコがふて腐れていた。無理もない。これからがくぽの家でやる俺の[V3エンジンおめでとうパーティー]
やるのに、身体には俺との情事の痕がはっきり残っているのだ。
普段の格好ではバレバレだし、パーカーを
羽織っても怪しまれてしまう。
「そんなの皆、長い中だからがちゃ以外は「昨夜はお楽しみでしたね」ってわかってるさ。匂いでもな♪」
そう言うとメイコは俺にソファーに置いてあるクッションを投げつけた。
「あたしがV3エンジンになった際には倍返ししてやるんだからっ!覚悟していなさいよっ!」
「それなら俺は足腰立たないくらいヤッてやるさ。」
そう言うとメイコは唸りながら涙目で紅潮させていた。
これだけ相性いいんだ。メイコのV3エンジンが楽しみでならない。
さぁ、パーティーへ行こう。皆が待っている。
俺はKAITO(俺)だ。これからも俺のままで歌い続けられる喜びを噛み締めながら、大事な人と仲間達と共に俺は歌う。