インターネット組の家の縁側にて、あたしの兄貴分がくぽ兄さんが妙な事を尋ねた。  
「GUMI殿、そなたもここへ来て大分慣れたであろう。その…カイト殿をどう思う?」  
失恋しました。心中察してよね、兄さん。  
   
やあ、メグッポイドGUMIちゃんだよ(キラッ☆ミ)  
あたしもここへ来て、この環境に大分慣れたよ。  
がくぽ兄さんを始め、クリプトン組の人達も皆優しくていい人。  
とくに…カイトさんはとても優しい人。  
「心配事や悩みがあったらいつでもおいで。相談にのるよ。」  
インストールされたばかりで不安だったあたしにかけてくれた優しい言葉と  
差し延べられた大きくて温かい手。  
それに比べて兄さんは「神威がくぽだ、よろしく頼む。」って。侍とはいえ素っ気  
なかったなぁ…おまけにこの後、真っ白フリーズして(他人の弱みでmsum参照)驚いたよ。  
カイトさんは気さくであたしに声をかけてくれた。ミクちゃん達と一緒に発声練習を  
させてくれたり、  
マスターから初めて曲を戴き、上手に歌えた時は一緒になって喜んでくれた。  
そして一番嬉しかったのはミクちゃんが兄さんに会いにきた時、二人の邪魔になりそう  
だから外出したのはいいけれど、何処に行こうかと途方に暮れている時も声をかけてくれた。  
「ミクに気を使わせてごめんね。いつでも家(うち)に上がりなよ。皆いるからさ。」  
段々とカイトさんの優しさに心が惹かれていくのがわかった。  
でもカイトさんにはメイコさんがいる。  
あの二人はVOCALOID1エンジン同士。強い絆がある事にすぐ気付いた。いつも寄り添う  
様にいる二人。あの二人は好き合っている。叶わぬ恋なんだと自覚していた…筈だった。  
   
ある日の深夜、ネットサーフィンから帰ってくるとパソコンの外からカイトさんと  
メイコさんが戻ってきたところだった。きっと歌を歌ってきたのだろう。  
たけどメイコさん、カイトさんを腕を強引に引っ張っている?顔を真っ赤にして…  
何かあったのかな?  
 
あたしはゲームフォルダの影に隠れ、二人の様子を伺った。  
「メイコ、一体どうしたんだよ?」  
引っ張られているカイトさんがメイコさんに尋ねた。  
するとメイコさんはカイトさんに抱き着き…唇を重ねた。  
「ん…」  
カイトさんのくぐもった声。そしてカイトさんもメイコさんを抱きしめて、やがて  
二人は舌を絡ませた。  
そんな二人の姿にあたしの目は釘付けになってしまった。  
―この恋は実らない。判っていたのに、割り切っていた筈なのに目の前に現実を  
突き付けられ、胸の奥が、目の奥が痛かった。涙が溢れた。  
カイトさん、あなたは卑怯なくらい優し過ぎます。見ているのは辛い筈なのに…  
やがて二人は唇を離した。  
「落ち着いた?」  
カイトさんが声をかけた。勿論メイコさんに。その言葉に頷くメイコさん。  
「カイト…あたし、ルカにカイト取られちゃうんじゃないかって…ミクやリンじゃあ、  
こんな事なかったから…無我夢中で…」  
な…何したのマスター?取られちゃうって……ルカさんと何かあったの?  
頭がスポンジなあたしとは裏腹に、カイトさんは判った様だった。  
「だから…思いきって…あたしが盗み飲みしたのが悪いのに…」  
盗み飲みって…お酒かな?メイコさん、凄いお酒好きだし。…ていうか泣いてる?  
「だったらもうマスターの酒を狙わない様にするんだよ、メイコ。」  
そんなメイコさんを窘めるカイトさん。カイトさんの言うとおりだよメイコさん。  
―うん、潔く諦めよう。やっと決心出来た。  
本当、羨ましいよメイコさん。あなたの幸せを祈るよ、カイトさん。  
あ、カイトさんがメイコさんを抱きしめた。いいなぁ…  
「メイコ、卑怯なくらい可愛すぎだよ。今夜覚悟しろよ?優しくしないからな。」  
…あたし見ちゃった、カイトさんの表情。まるで[子羊を弄ぶ狼]の様な笑みだった。  
なんだろう、ちょっと退いたというか…カイトさんの本性を見てしまった…そんな気分。  
メイコさんもまるで子猫みたい。頷いてる、って事は…  
 
うん、今めちゃめちゃ恥ずかしい妄想をしました。多分正解だと思う。顔が熱い。  
メイコさんはきっとあたしが知らない[優しくないカイトさん]を知っているんだろうな。  
なんだろう、あの仲睦まじい二人を見ているとこっちまで胸が温かくなる。それが  
あの二人の魅力でもあり、強さなんだろう。  
あたしの身体をデザインした漫画家さんの言葉で  
[フォワードどバックアップは一心同体]  
なんてあったけど、それ以上だよね。結婚しちゃいなよ二人とも。  
やがて二人は寄り添って家へ帰っていくのをフォルダから頭を出して見送った。  
正直まだ辛いけど、これでいい。これでいいの。  
   
先程の時間に戻る。  
「カイトさん?優しいし、余所のカイトさんと比べて珍しく男らしいと思うよ。」  
何事もなかった様にさりげなく答えるあたしに兄さんは溜息をついて  
「そうではない、その…」  
「まさか恋愛対象?ないないっ、カイトさんメイコさんがいるしっ!」  
手を振って否定を表す。うんうん、我ながらイイ演技。すると兄さんは  
「…そうか。それなら構わぬが。」  
と、涼しそうな表情であたしを見た。  
「な、何よ兄さん…」  
目を遭わせたのがヤバかった。  
「嘘をつけぬ顔をしておる。健気だのうGUMI殿は。」  
「う…」  
もしかして見抜かれている?本当、読めないわこの人。  
 
 

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